アビストは、設計開発の技術力と最新のデジタル技術を組み合わせ、顧客の潜在ニーズに応える「デジタルソリューション企業」をめざしています。 その一環として、社内DXを推進する取り組みのひとつが、生成AIを活用したQAシステム『Asquery(アスクエリー)』です。
自社開発した旧QAシステムは2021年頃から使われていましたが、検索の精度や操作性に課題があり、十分に活用されていませんでした。 今回の刷新では生成AIを活用し、従来のQAシステムが抱えていた「検索の壁」を解消するとともに、 技術情報に加え、社内規程や業務マニュアルまで幅広くサポートできるツールとして生まれ変わりました。
開発を主導したイノベーションセンターのエンジニア2名が、『Asquery』が生まれた背景や、業務効率化につながるポイント、開発の裏側について語ります。
※ 本記事では社員の名前をイニシャルで表記しています。
社内の「わからない」をなくす!生成AIを活用したQAシステム 『Asquery』とは
──バージョンアップした『Asquery』は、何が変わったのですか?
S.O:単なるアップデートではなく、社員に寄り添ったより使いやすいシステムへと刷新しました。 生成AIチャットボットの導入により、検索時におおまかな質問やキーワードを入力するだけで、必要な情報にたどり着きやすくなっています。 また技術情報だけでなく、会社の規程や出張申請などの事務手続きに関する情報も、簡単に調べられるようになりました。
S.O:例えば福利厚生について社員が調べたい場合、メッセージに「福利厚生」といれると、ビスくんがわかりやすく回答してくれます。
S.O:さらに、チャットボットだけでは答えが得られない場合は、社内の専門知識のある社員に質問を投げかけることができます。やり取りが蓄積されることで、AIが回答精度をより高め、次第に人の手を借りずとも回答できるようになる点も特徴の一つです。結果的に、情報共有のスピード向上や業務効率化にもつながります。
──今回のバージョンアップにおけるお二人のそれぞれの役割は?
S.O:私はシステムの土台作りを担当しました。全体の構成設計に加えて、生成AIの実装や、それを動かすアプリケーションサーバーやクラウド環境の整備などを行いました。
R.I:私はその土台をもとに、実際にユーザーが触れる部分を担当しました。具体的には、WEBアプリケーションのフロントエンド・バックエンドの開発です。
──イノベーションセンターでは、どんな仕事をしているのですか?
S.O: ARチームとAIチームに分かれていますが、私はAIチームで、これまで3D形状の特徴量を解析するAIモデルの開発や、大手化粧品メーカー向けの電力自動予測システム(太陽光発電量と消費電力の傾向からの予測)など、さまざまなAIモデル開発に携わりました。
R.I:私もAIチームに所属し、主にデータ分析を担当しています。これまで、2D図面などの差分検出アルゴリズムの開発にも携わってきました。イノベーションセンターでは、デジタルソリューション開発センターと連携して社内DXのシステム開発に関わり、AIアルゴリズムを設計して開発センターに移管することもあります。今回の『Asquery』の刷新も、旧QAシステムを作ったデジタルソリューション開発センターから引き継ぎ、私たちが一から作り直す形でスタートしました。
なぜ刷新した?背景にあったのは「教育の課題」と「検索の壁」
──今回のバージョンアップにはどのような背景があったのですか?
S.O:アビストでは毎年多くの新入社員を迎え、経験者・ポテンシャル採用も増えています。一方で、顧客から求められる技術レベルは年々高まっており、現場配属後も継続的な教育が欠かせません。その結果、教育を担う現場リーダーの負担が増え続けていることが課題でした。
そこで、人に頼らなくても、社内に蓄積された知識から自動的に回答を得られる仕組みがあれば、リーダー層は簡単な質問に対応する時間を減らし、より付加価値の高い業務や育成に注力できるようになる。という考えから『Asquery』の刷新に着手することになりました。
──もともとあった旧QAシステムの課題はどこにあったのですか?
S.O:旧システムは、PDF資料を検索して表示するような仕組みでしたが、新入社員には、「何をどう検索すればいいか」がわかりづらいものでした。資料に書かれた専門用語と、経験の浅い人が使う言葉が大きく違うため、必要な情報にたどり着けないことが多かったんです。
そこで私たちはまず、「わからない人がどんな聞き方をするのか」をデータとして集めるところから始めました。機械設計エンジニアの方々に積極的に使ってもらい、質問と回答を蓄積すれば、将来的には専門的な情報もチャットボットによる自動回答が可能になると考えたんです。
「使われない」から再出発。社員の声から進化した開発の2年間
──今回のプロジェクトは具体的にどのように進めていったのでしょうか?
S.O:話があったのは2023年の夏ごろです。会社として社内DXに積極的に取り組み始めていた時期で、旧システムを刷新して、翌年の新卒研修で使ってみたいという依頼を受けました。
約10カ月という限られた期間でのリリースだったため、どんなシステムにしたいかの大まかなイメージを作り、それに必要な機能をすべて洗い出しました。将来的な拡張性を考えた設計を1〜2か月でまとめたうえで、すぐに開発をスタートしました。
最低限の機能を搭載した状態で、新卒研修で利用してもらえるようにしましたが、はじめはあまり使ってもらえなかったんです。
──なぜ使ってもらえなかったのですか?
S.O:社員アンケートを実施したところ、システムの存在を知っている社員は半数以上いましたが、使い方を知っている人は2割、実際に使ったことがある人は1割ほどだったんです。リリースを急いだ分、社内への浸透や、使い方・メリットの伝え方に十分な時間を割けていなかったのだと感じています。イノベーションセンターが現場社員と密に連携して、展開の仕方まで一緒に設計していくべきだと感じました。
R.I:テキストを入力することがハードルになっていたことも原因の一つでしたね。特に機械設計では、CAD画面を見ながら説明することが多く、言葉だけで伝えるのが難しい場合もあります。 画像データをアップロードできる機能もありますが、回答する側も口頭で画面を見ながら説明する方が早く、結果として本来便利なはずのシステムが、かえって手間になってしまっていました。
──そこからはどのようにして進めていきましたか?
S.O:まずは、使うハードルをできるだけ下げるために、AIチャットボットを入口に据えました。エンジニアリングマニュアルのデータを読み込ませ、まずはユーザーが気軽に質問できる設計に変えました。チャットで解決できない場合は、そのまま質問ページに遷移できる導線も作っています。
また、システムを作りながら実験・検証している中で、私自身が過去に社内規程を探すのに時間がかかった経験を思い出しました。「自分が困ることは、ほかの社員も困っているはず」と考え、社内規程も実験データとして組み込み、そのまま本番に反映しました。
R.I:そのほかにも、アンケートで、画面の見やすさや使いやすさ、匿名性なども要望として上がっていました。それを踏まえ、UI改善や匿名投稿機能の追加対応を行いました。
当初は「リーダー層の負担を減らす」という目的で開発を進めていましたが、アンケートや実際の利用状況を確認する中で、想定以上に多くの課題やニーズが見えてきました。本来の目的だけでなく、社員がどう使いたいか、何が使いにくいと感じているかを踏まえたシステム作りが重要だと感じました。
──ほかに開発を進めるうえで重視していたことや、大変だったことは?
S.O:開発の序盤は、すべて自分で環境構築から対応する必要がありましたが、AWSなど初めて扱う技術が多く、とにかく一つひとつ覚えながら進める点は技術面でかなり鍛えられました。また、プロダクトとして使ってもらう以上、「一度使いにくいと感じると、次は使われなくなる」ということが分かっていたので、初期の段階では、バグや使い勝手の細かな違和感をできるだけ排除することに、特に気を配っていましたね。
R.I:機能自体を作るだけならシンプルですが、全社員が使えるシステムにするためには、セキュリティや運用ルールとの連携が欠かせません。そのため、社内基準に合わせた細かな調整には、想像以上に時間がかかりました。 ただ、会社全体の仕組みが以前より整ってきたことで、最近ではスムーズに連携できる部分も増えています。
社員の仕事を、もっと楽に。『Asquery』が目指す未来とエンジニアとしての挑戦
──『Asquery』を今後どのようにしていきたいですか?
R.I: まずは社員のみなさんに積極的に使ってもらいたいと思っています。そのうえで、『Asquery』を“アビストのことならまずここに聞けばわかる”というレベルまで、少しずつブラッシュアップしていきたいです。 ただ、エンジニアが必要とする専門的な情報は仕組み化が難しく、自発的に使ってもらう工夫がまだ必要だと感じています。今後は、使うメリットをより実感してもらえる形を探りながら、改善を続けていきたいです。
S.O:社内のドキュメントがどこにあるかわかりにくく、必要なデータを知っている人を探すところから始まってしまうことがあります。これは非常に非効率だと感じています。
将来的には、社内のドキュメントやCADデータなどを一元管理できるプラットフォームに育て、そこから自動設計などにも応用できるような仕組みにしていきたいです。 そのためにも、CADの画像データをどう構造化してAIが扱える形にするかなど、技術的な改善はまだまだ必要だと感じています。
──アビストのエンジニアとして、今後挑戦したいことは?
R.I:新しい技術はどんどん出てくるので、それを学びながら、社内向け・社外向け問わず新しいサービスを生み出していきたいですね。そうすることで、自分の成長にもつながりますし、会社の発展や社員の業務効率化にも貢献できると思っています。
S.O:生成AIを活用したシステムは世の中に数多く出ていますが、その中でも重要だと感じているのは、「いかにデータを構造化し、抽象的な情報と具体的な情報を結びつけられるか」という点です。
機械設計では、パーツごとのCADデータが大量に存在します。既存パーツの組み合わせで成立するケースも多く、これらをつなぐ「最適化」ができたら、自動設計も実現可能だと考えています。テキスト、画像、CADなど、あらゆる形式のデータを構造化し、AIが理解できる形でアウトプットできるような仕組みをつくることに、今後はチャレンジしていきたいです。
──ありがとうございました。
現場の声に耳を傾けながら試行錯誤を重ね、少しずつ形にしてきた『Asquery』。その裏側には、技術と真剣に向き合い続ける2人のエンジニアの挑戦がありました。
この挑戦が、アビストが目指す「デジタルソリューション企業」としての未来にもつながっています。
※ 記載内容は2025年11月時点のものです
