鉄道会社が町や住民に寄り添えば、より良いまちづくりができるはず
もともと私が住んでいた東北地方は自然が豊かで、農業が盛んです。また、両親が旅行好きで、幼いころからいろいろな場所に連れて行ってもらいました。生まれ育った東北での暮らしの他に、各地の特徴的な風景や自然、生物に触れてきたことで、幼少期から自然環境に関する興味があり、大学では生物工学を専攻するまでに。いずれは生物工学に関する知見を活かす仕事をしたいと考えていました。
そんな中、大学1年生のときに暮らしていた北海道の長万部でワークショップに参加したことで、町と鉄道のあり方を強く意識するようになります。長万部は、北海道新幹線が札幌まで延伸したら新幹線が停車する町。ワークショップは、実際に新幹線が通るようになったら町はどのように変わるのか、町をどうしていきたいかを半年かけて町の人たちと議論するものでした。
私はそれまで、新幹線延伸は町に活気をもたらし、住民にとっても期待に溢れるポジティブなことだと思っていました。けれど、ある住民がこぼした「こういうワークショップをやっても、町はどうせ変わらないよね」という本音。新幹線が通ることを楽しみにしつつ、不安や戸惑いなどもあるのだと気づいたのです。
新幹線延伸による経済効果や世間の期待が表に出る中、そこには住民との温度差があることを感じました。
鉄道会社は住民たちも巻き込んで何かできないのだろうか。地域の方々に良い影響を与える鉄道の在り方はなんだろうかと鉄道と地域のつながりに興味がわきました。就活においては、大学での専攻を活かした仕事に就きたいと考えていたものの、新幹線延伸に関するワークショップでの町の人の本音が忘れられず、鉄道会社への就職を考えるようになり、その中でも日本国内で広いエリアに貢献できるJR西日本への入社につながったのです。
駅員時代に目の当たりにしたお客様の課題を、ITとデザインで解決したい
JR西日本のIT部門に入社し、まず配属されたのが姫路駅の新幹線乗り換え窓口と改札です。駅員としてお客様と実際に会話し、切符の販売を行っていました。そのとき、お客様から直接さまざまなお声を頂くなど、お客様の反応を直接見聞きしたことが、いまの仕事に活きています。
お客様窓口は券売機の横にあったのですが、お客様の中には券売機が空いているのにお客様窓口に並んで切符を買いにくる方が多くいらっしゃいました。またオンライン予約サービスに関する質問も多く、使いづらいのだろうか、UXがあまり良くないのだろうかと思案する日々でした。
駅員として過ごした1年間は、毎日お客様の顔を見ながら、これからITでお客様にとってより使いやすく楽しい鉄道にしていきたいという気持ちを大きくしました。
その後、JR西日本SC開発株式会社に出向し「WESPO」というスマホのポイントアプリを運用している部署に異動。協力会社のデザイナーと、どこを工夫すればユーザーに響くか、このターゲット層ならここを意識した方が良いかなど議論を重ねて試行錯誤する日々は、ユーザーに寄り添ったデザインのイロハを私に叩き込んでくれたように思います。
一方でこの頃はコロナ禍真っ只中。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令される中、ショッピングセンターの各飲食店から「営業していいのか」「お酒が出せないと売上が伸びない」など問い合わせを受け苦しい思いを抱きながら、とにかく真摯に向き合うしかありませんでした。
株式会社JR西日本ITソリューションズに出向すると「JRおでかけネット」の駅時刻表や乗換案内機能の運用保守や、コールセンターでお客様の声を集めるシステムの開発を担当。親会社と協力会社とのつなぎ役として、とにかくわかりやすい説明や提案を心がけていました。
そして業務にも慣れ自分らしい仕事ができるようになってきた頃、JR西日本システムマネジメント部内に発足した顧客中心設計の思想を基にスマホアプリを内製する「アジャイル開発チーム」への社内公募が始まったのです。私の中で年々、デザインでお客様により良いサービスを提供したいという想いが膨れ上がっていたので、これはチャンスだ、いましかない。駅員時代に目の当たりにしたお客様の課題解消を突き詰められるのはここしかない。そう確信し、思い切って応募しました。
その結果、いまアジャイル開発チームでスマートフォンアプリのUI/UXデザインに取り組んでいます。
お客様のリアルな声を反映することが、本当に使われるサービス作り
アジャイル開発チームへ異動後、乗換案内や運行情報の確認、WESTERポイントを貯めたり、使ったりできるアプリ「WESTER」やJR西日本が運営しているホテルヴィアインの宿泊予約やポイント確認などができる「ホテルヴィアイン公式アプリ」、鉄道専用SNS「Railil」などのUI/UXデザイン検討に取り組んできました。おもに実際にお客様が見ている画面を作っています。
デザイン検討においてはお客様目線がとても大事です。そのため、アプリのユーザーが何に困っているのかをインタビューし、その内容をデザインに反映するといった取り組みも行っています。
例えば「WESTER」のホーム画面にある、自分の自宅や職場の最寄駅を登録できる「マイ駅」や「経路検索」機能に運行情報に関する情報を表示するようになったのは、まさにユーザーの声を反映して搭載したものです。
「列車が遅れているとき、何を考えながら行動しているか」とユーザーにインタビューしたところ、多くの人が「どのくらい遅延していて、いつ目的地に着けるのか」を一番気にしていることがわかりました。当たり前のことですが、社内だけで開発しているとどうしても「こういう機能があったらもっと使ってもらえるのではないか」などビジネス観点での改善に寄りがちです。
しかし、こうした実際のユーザーの声を反映することが、本当の意味でもっと使ってもらえるサービス作りになるのだと思います。
最近はフィールドワークも実施しています。実際に駅に行って券売機を使用しているお客様や新幹線乗車までの行動を見たり、ホテルのフロントでどのような方が利用し、どのような行動をしているのかを、お客様の目線や様子を細かく観察したりしています。そうすることでデータでは見えない、生のお客様の姿を掴むよう心がけています。
今後も、お客様・ユーザーの課題を解消できるようなサービスを展開していきたいです。
鉄道会社は期待されない。だからこそ期待を超える新しい体験を提供したい
私が所属するシステムマネジメント部の果たしたいことの役割の1つに「変化するニーズに応えた柔軟なシステムの提供」があります。コロナ禍を経て人々の鉄道の使い方が変わったいま、当社は鉄道事業だけでなく新規事業にも取り組んでいかなくては生き残れません。しかもそこには、次々と変わりゆくお客様のニーズに対応できるスピード感も必要です。
そこで取り組んでいるのがアジャイル開発で、最短1週間でアップデートをすることにより短期間での改善対応などを続けることで、お客様の細かいニーズに対応しています。
しかし個人としてはまだまだ実力不足。いまは経験を積むのはもちろん、さまざまなセミナーに参加して他社のデザイナーから学んだり、お客様の行動を観察したりしながら、知見を溜めているところです。いずれはUI/UXの専門家として、社内のあらゆる分野で貢献していきたいと考えています。
一番は、お客様がJR西日本を使ってハッピーな経験ができるようにしたいです。人々にとって電車に乗ることは日常ですし、当たり前のものであるため、ある意味、鉄道会社に何か期待していることはないかもしれません。けれど、「WESTER」や「ホテルヴィアインアプリ」を通して、実際に鉄道に乗ったときやホテルに行ったとき、ショッピングセンターで買い物をしたときなどJR西日本グループを利用して幸福度を少しでも上げることに貢献できたら嬉しいですね。
大学1年生のときに出会った長万部の住民は、新幹線が通っても「どうせ変わらない」と期待していませんでした。けれど私は、お客様のことを第一に考えて寄り添う姿勢を持ち続けることで、良い意味で期待を裏切って「鉄道会社ってこういうこともするのね」と思ってもらえるような経験を提供していきたい。そう強く思っています。
所属しているシステムマネジメント部も、トレイルブレイザーも新たな挑戦へのモチベーションが高い会社です。スピード重視で、例えば「お客様の行動観察のために明日フィールドワークに行きたい」と言ったらすぐに実行させてもらえますし、大きな夢にも「やってみな」と言ってくれる環境があります。
一方で、現段階ではこれまで鉄道事業ありきで進んできたJR西日本出身のメンバーが中心のチームなので、良くも悪くも思考が鉄道に染まりがち。なので、これから仲間になってくれる方には、鉄道とは違う視点の意見をぶつけるなど新しい風を吹かせてほしいですね。
一緒にスキルを高め、意見を交わしながら西日本という広いエリアに対する地域貢献をめざしていきましょう。
※ 記載内容は2024年1月時点のものです
