データ分析の「人間味」に惹かれ、日本初のデータサイエンス学部に進学
子どもの頃は本が好きで、物語の舞台として登場する国の地理や歴史に関心がありました。高校生になると、地理の先生がニュースの背景にある歴史や文化を解説してくれたこともあり、社会や世界の動きへの興味がさらに大きくなりました。今振り返ると、ずっとものごとの背景や成り立ちに興味があったのだと思います。
「データサイエンティスト」という職業との出会いは、高校3生の時です。「21世紀で最もセクシーな職業」としてデータサイエンティストが紹介されている記事を読みました。なんとなく理数系の人が活躍する職種という印象を持っていたのですが、詳しく調べるうちにイメージが変わっていきました。
もちろん、分析には数学的な知識が必要ですが、データ分析を基に結論や仮説を立てる際にはその人の考えが反映される部分が多く、人間味を感じたのを覚えています。統計やデータ分析を通して、ものごとの背景をひもとくことにおもしろさを感じ、挑戦したいと思うようになりました。
タイミングよく滋賀大学でデータサイエンス学部という新学部が創設され、第1期生を募集すると聞き、進学してデータサイエンティストをめざす決意をしました。
滋賀大学のデータサイエンス学部は、データサイエンティストとして一気貫通してクライアントに価値を伝えるところまで学べる点が特徴です。
特に印象に残っているのが、ゼミで取り組んだショッピングセンターの買い回り施策のデータ分析です。実際のデータを使って、課題の設定から自分たちで考え、現場の社員に聞き取り調査し、レポートにまとめて発表という一連の流れを経験できました。
お客様が持っている施設のアプリのデータから、買い物をしたお店や位置情報を分析したのですが、実際にショッピングセンターに行き現地調査をしたところ、意外なことがわかりました。
データ上はお昼の時間帯は人が少なかったのに、実は学生を中心ににぎわっていて、人は多いけれど買い物につながっていなかったんです。そこで、「いかに入館者を増やすのか」ではなく、「いかに入館者に買い物をしてもらうのか」に課題がシフトしました。現場に足を運ぶ大切さを実感した出来事です。現在のチームでも同じようなデータ分析を行っており、ゼミでの経験が活せればと思っています。
また、学問としてのデータ分析と実務としてのデータ分析の違いに気がついたことも大きな学びの1つです。AIや機械学習といった最先端の技術を駆使して複雑なデータ分析をしたとしても、価値提供につながらなければ意味がありません。逆に簡単な計算で完結するデータ分析であっても、課題解決や新しい発見につながれば、大きな価値があります。今の業務でも「価値提供につながるか」という視点はとても大事にしています。
「失うものは何もない。挑戦しよう」と自ら掴んだデータサイエンティストの道
就職活動で大切にしていたのは、確かな軸を持ったうえでデータ分析に携わることと、さまざまな分野のデータ分析ができることの二つです。一見すると、相反する希望のようですが、鉄道会社ならどちらも両立できると考えました。
プロジェクト単位でデータ分析に携わるのではなく、社内の事業という軸をしっかり確保したうえで、価値提供やその後の改善までトータルに関われる点に魅力に感じました。また、鉄道会社の事業は、鉄道だけではなく物販・飲食・宿泊・不動産と多種多様なので、さまざまな分野のデータ分析に携わるチャンスがあると考えたのです。
生まれ育った関西エリアの鉄道会社を希望し企業研究をしたところ、西日本旅客鉄道株式会社(以下、JR西日本)はデータの規模が大きく、なおかつ社内でデータ活用を進めていることを知り、入社を決めました。
入社1年目は湖西線の信号設備の保守業務を担当しました。保守業務では、毎日電車が運行していない時間帯に線路を歩いて点検します。ベテランの社員は、経験と知識に基づきメンテナンスが必要なタイミングなど的確に指示を出していました。その正確さをすごいと感じる反面、その人が判断の根拠としている気候などをデータに落とし込んだら、点検を簡略化できると思うようになり、データ分析の仕事をしたいという気持ちが高まりました。
当時の上司にデータ活用による改善をしたい旨を伝え、理解は得られていましたが、本来の業務に忙しくなかなか取り組めず、歯がゆかったですね。
そんな時に、デジタルソリューション本部のデータアナリティクスチームがデータサイエンティストを社内公募していると知りました。仕事内容はまさに私がやりたかったこと。入社1年目でも実力があれば応募できるという条件だったため、「失うものはない、挑戦しよう」と思い応募しました。
異動後は、いい意味でのフラットさに驚きました。若手であっても自由に発言できますし、上司が言ったことであっても、自分たちが納得できなければどんどん議論できます。肩書ではなく「さん」付けで呼び合っていることもあり、1人の人として関わり合えていると感じています。
データ分析の部署なので、もくもくとデータと向き合う雰囲気なのかなと思っていましたが、むしろ意見交換や質問が気軽にできる雰囲気です。基本的にリモート勤務なのですが、電話やチャットで密にコミュニケーションが取れています。
私は現場経験が浅く、特に飲食店や宿泊業などは全くの未経験です。そのため、課題設定や分析などをする時に「現場ではどうなんだろう?」と悩む時があります。しかし、JR西日本のさまざまな事業で経験を積んだメンバーから、的確なアドバイスがもらえて心強いです。
データ分析の力で楽しい個客体験を提供し「三方よし」の実現をめざす
私が所属する、デジタルソリューション本部データアナリティクスは、「お客様に『おトクで、便利で、楽しいWESTER体験』を提供することでいつまでも住み続けたい西日本を創る」というミッションを掲げています。
主な業務は、「WESTERポイント」に関するデータ分析や新たな企画のアイディア出し、キャンペーン後の効果検証です。お客様一人ひとりとJR西日本グループの多様なサービスをデータによってつなげ、個客起点のサービスを生み出すことが目的です。
仕事をするうえで私が大切にしているのは、近江商人の「三方よし」という経営哲学です。三方とは、売り手と買い手、そして世間を指します。まずは売り手である私たちが、お客様にとって本当に価値ある商品・サービスを提供することで喜んで利用していただければ、売上が伸びて会社の利益が上がります。そして、商売を通して地域社会の発展などに貢献できるという考え方です。
データ分析に基づき、個客起点のサービスを生み出すことは、まさに「三方よし」そのものだと考えています。「鉄道は利用しているけど、駅の施設は利用していない」といった行動データを分析することで、お客様自身も気づいていない「本当に求めていること」を推察できます。真のニーズを理解したうえで、お客様との接点を増やす施策やグループ全体への活用を実施し、より楽しい個客体験を提供していきたいです。
過去の取り組みとして、利用した店舗数に応じてポイントを進呈するキャンペーンを実施したところ、普段はお客様が少ない店舗や時間帯の来店者数が増えたという事例があり、的確な施策をすればお客様の行動は変わると実感しました。これからも、データ分析を通して、よりJR西日本グループのサービスをご利用いただけるよう取り組んでいきます。
社内に眠る価値あるデータを活用し、お客様とのつながりを進化させたい
今の目標は「データによるお客様とのつながりの進化」です。データ分析を通して、対面では会えないお客様に対してもつながりをつくり、輪をどんどん広げていければと考えています。
西日本地域には、あまり知られていない魅力的なスポットやおいしいものがたくさんあります。データをもとにそこに価値を感じる人を見つけ、デジタルで魅力をアピールできれば、その土地を訪れる人が増えるはずです。残念ながらJR西日本のエリアでも、赤字で廃線になる路線があります。今はあまり人がいなくても、実際に訪れればすごく魅力的な場所は多くあります。データとデジタルの力で地域活性化に取り組みたいですね。
現在の課題は、JR西日本グループが持つ膨大なデータの一部しか分析できていないことです。グループ内で私たちの取り組みに興味を持ってくれる人が少しずつ増えてきており、できる限り応えていきたいのですが、リソースが足りません。そのため、たくさんの価値あるデータが手つかずの状態で眠っています。
今のところ、商業施設の利用者といった大きな枠組みでのデータ分析しかできていませんが、新しいメンバーに入社いただいたら、ゆくゆくは1人のお客様の電車利用や店舗での買い物といった行動データをトータルで分析し、より良い個客体験につなげられればと考えています。
また、今いるメンバーはJR西日本での業務経験を持つ人が中心です。現場を知っている強みはありますが、どうしても経験があるがゆえのバイアスも存在します。全く違うバックグラウンドの方が加わることで、フラットな視点からの思い切った意見が出るのを期待しています。意見交換を通して、より良いアイディアが生まれ、新たな価値提供につながることが本当に楽しみです。
トレイルブレイザーはスタートしたばかりの会社なので、パイオニア精神のある方はとても楽しく働ける職場だと思います。まだ誰も触れていない膨大なデータに一番手として関われるので、データサイエンティストにとっては、すごくわくわくする環境です。ぜひ一緒に、新しい道を切り開く楽しさを味わいましょう。
※ 記載内容は2024年2月時点のものです
