不確実性の高い状況の意思決定こそ、世の中の本質。データ分析の奥深さを知った
大学と大学院では、建築学を専攻し、地震ハザード・リスク評価に関する研究をしていました。建物を建てる時にどのくらいの大きさの地震の揺れを想定するかを決めるための研究で、確率・統計学を使い、地震が起きる確率や揺れの予測モデルなどから、将来発生する揺れの大きさを建設地点ごとに評価します。
地震ハザード・リスク評価に興味を持ったのは、地震という不確実性の大きなものに対して、人々が意思決定をするための支援ができるという点です。地震という現象は不確実性が大きく、起きたときの被害も大きいという厄介なものですが、安心して日常生活を行うためには、その背後に納得できるロジックが必要です。
確率論に触れるまでは、ほとんどのことは事前に予測できると考えていましたが、世の中の本質は不確実な中での意思決定をしていくことにあると気がつき、ものの見方が大きく変わりました。実際に大学生のときにリーマンショック、就職活動期に東日本大震災が起き、従来の統計論では「想定外」として片づけられる出来事で世の中や人生が大きく変わってしまう様子を目の当たりにしたこともあり、非常に衝撃を受けたのを覚えています。
大学・大学院時代の研究は、データ分析の基礎の習得をはじめスキル面でも、その後のキャリアの土台となっています。
博士号を取得した後は研究職を志し、2012年に公益財団法人鉄道総合技術研究所に入所しました。新幹線をはじめとする鉄道は、人やものを運ぶ上で欠かせないものであり、震源地に近いエリアを通っている路線もあるため、人命はもちろん、物流を守るうえでも耐震対策が非常に重要です。そのため、鉄道領域であれば、私の専門性を活かせると考えたのです。
入社後は主に、鉄道関連の地震防災・耐震設計に関わる研究開発業務に従事していました。
手ざわり感を求め、JR西日本へ── 社会の役に立っているという実感が持てる
2021年に社内のJR出向制度を利用し、JR西日本に出向しました。きっかけは、今のデータアナリティクス部にデータサイエンスのコンペに参加して上位入賞するようなメンバーが所属しており、機械学習やAIの実装に取り組んでいると知ったことです。
私自身も機械学習に興味を持ち、研究のかたわら独学してデータサイエンスコンペに参加し、そこで学んだスキルを研究に活かしていました。研究所に戻った後も、JR西日本で身につけた経験を活かせると感じ、手を挙げることにしました。
また、ユーザーのフィードバックを受けながら、プロジェクト設定から価値創出までを一気貫通して取り組む経験をしたいというのも出向を希望した大きな理由です。
前職は主に基礎研究に携わっていました。研究分野の発展に貢献でき、やりがいはあったものの、鉄道関連の地震防災・耐震設計は、建物のような寿命の長いものを取り扱います。
50年~100年の長期スパンでようやく成果がみえるものも多く、自分の研究が社会の役に立っている手ざわり感が得にくい部分がありました。データアナリティクス部であれば仮説検証のサイクルが短く、ユーザーの評価に繰り返し触れられると考えました。
出向後は、鉄道オペレーションの生産性向上に関わるソリューション開発などに携わりました。特に印象に残っているプロジェクトは、列車の動揺の測定をスマーフォンアプリで測定するツールの開発です。従来は専用機材を用いて複数人の保守作業員が測定していたので、業務効率化につながるものでした。
社外に営業を行った際には、お客様からも「こんなツールが欲しかったんです」と喜んでいただくことができ、出向前に抱いていた「ユーザーのフィードバックを受けながら開発したい」「価値創出まで関わりたい」という思いを実現できたと考えています。
出向の期間に経験できたことは私にとっては貴重なものでしたが、実は一人ひとりのデータサイエンティストが単発で結果を出すだけでは全社レベルではあまり大きなインパクトにはなりません。私をはじめとするデータアナリティクス部のメンバーが経験したことを再現性のある形で仕組み化し、「なめらかな価値創出」ができる組織づくりにチャレンジしたいと思い、2023年にJR西日本に入社しました。
技術開発プロジェクトは、開発初期であればあるほど不確実なことが多く、最初から明確なゴールや成果物がイメージできるものばかりではありません。開発プロセスで素早く仮説検証プロセスを回し、プロジェクトの軌道修正を行わないと、一生懸命作ったものが誰にも使われないといった悲劇が起こります。資本力があり、実行力の高いメンバーが多い組織ほど、悲劇ではすまされない規模になります。
そうならないよう、特にデジタル技術を活用した社内プロジェクトにおいて、プロジェクト設定から価値創出までがなめらかに進むようサポートし、仕組みを作っていくことが私の役割だと感じています。
実現すれば、開発に投じた費用が、血が通うようにオペレーション向上に直結して、社内の仲間にスピード感を持って価値を届けることができるようになります。
簡単ではありませんが、データアナリティクス部が実施する多種多様なプロジェクトにおいて、一人ひとりのメンバーが質の高い仮説検証サイクルを経験し、成長することを陰ながらサポートすること、それぞれが得た知識を形式知化し、組織自体を成長させていくことで実現できると考えています。
「なめらかな価値創出」によって、安全で便利があたりまえの優しくなれる世界をつくる
私の目標は、「安全で便利があたりまえの優しくなれる世界をつくる」ことです。
鉄道事業は、一人ひとりの生活に根ざし、息を吸うようにあたりまえなサービスを提供しています。不具合が起こるとお客様に多大なご迷惑をお掛けしてしまう非常に厳しい仕事ですが、責任が重い分やりがいも大きい仕事です。
しかし、未来は少子高齢化が進み労働生産人口の減少がほぼ確実だと予想されます。その結果、安全な運行やサービスレベルを維持するために、これまで以上に社員一人ひとりにかかる負担は大きくなります。
「なめらかな価値創出」ができる組織を実現することで、これらの変化に対応し、維持するだけでなく、さらに良いものにしていけると考えています。
「優しくなれる」という部分には、価値創出によってより質の高いあたりまえを持続的に提供し、お客様と社員の日常に心のゆとりをもってもらいたいという思いを込めました。
不便を感じている時は、気持ちの余裕がなくなってしまうものです。例えば、ご家族で旅行中のお客様の移動がスムーズにいかないと、旅行の思い出も台無しになってしまうかもしれません。技術開発を通して便利さを維持し、誰もが優しい気持ちで利用できる環境を整えたいです。
これは社員も同じです。働く人がどんどん減るとその分、社員一人ひとりの負担が増え、その人の余裕もなくなってしまいます。その結果、職場全体の会社に対するエンゲージメントが下がってしまうでしょう。技術開発を通して、人数が少ない状況でもゆとりのある働き方を実現したいです。
一人ひとりの「成し遂げたい」という強い思いを、マネジメントで後押しする
現在は、出向時代に担当していた業務と並行して、データアナリティクス部に所属する計17名のデータサイエンティストやデータエンジニアのマネジメントを担当しています。
データサイエンティストは、鉄道オペレーションにおける生産性向上に携わるメンバーと鉄道マーケティングによる成長エンジンの構築に携わるメンバーの大きく2つにわかれています。
鉄道オペレーションにおける生産性向上に携わるメンバーの多くは、実際に現場で鉄道業務に従事してきたため、ドメイン知識と現状の改善に強い意識を持っています。それに加えて、データ分析やデジタル技術に高い関心があり、常に新しい知識をキャッチアップして自己研鑽をしています。
ちなみに私のチームでは、フルリモートに近い働き方をしています。本社のある大阪から1時間圏内くらいに住んでいる人がほとんどなのですが、本人の希望や家庭の事情により遠方で働いているメンバーもいます。
私自身、香川に住んでおり、週1回程度対面コミュニケーションのために出社しています。組織全体でリモートワークと出社のハイブリットが基本となっているため、不便はほぼ感じません。家から一歩外に出ると会社のある関西とは全く違った景色が広がっているので、オンオフの切り替えがしやすいですね。
マネジメントをするうえで大切にしているのは、一人ひとりのメンバーが仕事にぶつけたエネルギーが最大限の結果につながる環境づくりです。主に2つの取り組みをしています。
1つは、1on1などを通して一人ひとりと密にコミュニケーションを取ることです。やりたいことやチームの方向性についての希望など、意見を聞く機会を設けています。もう1つは、メンバーがやりたいことと会社がめざす方向性の調整です。大きい組織なので、方向性が合わなくなってしまわないようすり合わせや動機づけを地道にやっています。
鉄道や関連するサービス、街づくりに強い興味関心があって、自分自身でデータを使って成し遂げたいことがある方に来ていただけると、すごく嬉しいです。強い思いがあるからこそ、現状を変える解決策を見出し、プロジェクトを推進できると考えています。
トレイルブレイザーはチャレンジに敬意を払う社風なので、新しい提案は大歓迎です。もちろん、取り組む意義や周りを巻き込む行動力は必要ですが、すぐに行動に移せる環境です。私自身もそうでしたが、成し遂げたい強い思いを持つ方にとっては魅力的な環境だと思います。
これまでの内製データサイエンティスト・データエンジニアと、全く違うバッググラウンドを持つ方が入社し、既存のメンバーと刺激し合い、トレイルブレイザー発信で新しいものが生まれる。そんな未来を楽しみにしています。
※ 記載内容は2024年1月時点のものです
