DI缶とTULCの最終工程を担当。追求してきたのはメンバーが働きやすい環境づくり
茨木工場 製造第二課 第四工程に所属する松本。現在は、DI缶とTULC(Toyo Ultimate Can)の最終工程を担当しています。
「製品を積み付ける工程と不良品を取り除いて整える工程とふたつあるうち、私は後者を担当しています。
TULCは缶コーヒーなどに用いられる強度の高いスチール缶ですが、DI缶はアルミ製で軽い接触でも凹みやすいため取り扱いには慎重さが要求されます。決められた数の製品を決められた時間に出荷できるよう、丁寧かつスピーディーに作業を進めることが当工程のミッションです」
派遣社員、契約社員、協力会社から構成されるメンバーの中で、松本は唯一の社員として工程の責任者を務めています。
「全体を見渡しながら進捗状況を確認して段取りを調整したり、メンバーへの指示出しをしたりするのが私の主な仕事です。また、私だけで判断できないことも多いため、品質を管理する品質課や出荷業務を担うSCMなど社内の関係部署との調整もするほか、自らフォークリフトを運転して製品の運搬をすることもあります」
現在の工程を担当するようになって約4年になる松本。不良品ゼロをめざす上で、メンバーが働きやすい環境づくりに努めてきました。
「工程ではイレギュラーな事態が発生することが多く、急な確認が必要になるなど突発的な業務が日常的に発生します。少しでも気持ちよく仕事に取り組んでもらえるよう、指示出しする際は言葉づかいに気をつけ、命令口調にならないよう心がけています。
機械の不具合などが理由で大量に不良品が出てしまった時など、作業が長時間に及ぶこともある中、派遣社員や契約社員、協力会社の方々は一日中立ちっぱなしの作業に文句ひとつ言わずに対応してくださっています。
工程が成り立っているのは、皆さんの献身的な働きがあってこそ。仕事一辺倒にならないよう休憩時間に談笑するようにしているほか、普段からメンバーの体調に気を配り、休みを必要としている場合には快く受け入れるようにしています」
現場の社員として初めて産休を取得。前例がない中、仕事と育児の両立に奮闘
高校の担任に勧められ、1989年の卒業と同時に地元島根を出て茨木工場に入社した松本。最初に配属されたのは印刷課でした。
測定員として8年間の勤務を経て、松本は製造課へ。TULCのプリンター工程で主に現場サポートに従事しましたが、前任の退職に伴ってDI缶・TULCの最終工程の責任者を任され、現在に至っています。
「プリンター工程には20年ほど携わりました。最終工程に移った当初はもうひとり社員がいてふたりで業務を分担していましたが、その方も数年前に退職。それからはひとりですべて担当してきました」
一方、松本は2004年に産休を取得した当時のことをこう振り返ります。
「結婚や出産のタイミングで女性が辞職するのが当たり前の時代でした。産休後に職場復帰する人は増えつつあったものの、現場での前例は皆無。不安はありましたが、私も仕事を続けたいと考えていました。
復帰後、同じ職場に戻って周囲と同じように働くつもりでしたが、保育園の送り迎えなどどうしても時間に制約が生まれてしまって。以前のように仕事に精を出せなくなったことにもどかしさや後ろめたさを感じる時期もありました」
悩んだ末、子育てに力を傾けることを決めた松本。周囲に見守られながら、仕事と子育ての両立に励みました。
「保育園が始まるのは早くて7時半。復帰後も8時に出勤していたので、子どもを送ってから急いで職場に向かう毎日でした。
子どもが急に体調不良を起こした時は、途中で仕事を切り上げて帰ったことも。周囲は男性ばかりでしたが、『しかたないね』と皆さん嫌な顔をせず、暖かく受け入れてくれていたのを覚えています。
ただ、いつ休むことになるかわからないので、周囲に迷惑をかけないよう、頼まれた仕事はできるだけ早く済ませるように心がけていました」
茨木工場で女性として初めて機械保全技能検定1級に合格。キャリアを支えた挑戦の道筋
産休から復帰後も、20年近くにわたって現場に立ち続けてきた松本。上司に支えられながら意欲を失うことなく仕事に取り組んできました。
「20年も同じ職場にいると、どうしてもモチベーションが下がる時があるものですが、面倒見の良い上司がそれを察知してすかさず新しいミッションを与え続けてくれました。私の負けず嫌いな性格を理解し、『今年はこれをめざそう』『これができるようになれば給料上がるよ』『ラインをひとりで見られるようになろう』と具体的な目標を設定してもらったおかげで、前を向き続けられたと思っています。
その上司にはいつも、女性だからといって特別扱いすることなく接してほしいと伝えていました。実際の成果はともかく、与えられたミッションに全力で取り組んだからこそいまがあると思っています」
一方、松本は資格の取得にも取り組んできました。
「これも上司に勧められて始めたことですが、機械保全技能検定1級に挑戦しました。難易度が高い国家試験とされ、茨木工場ではそれまで女性が合格した前例はありませんでした。
しかも、私は機械科の出身ではないので、参考書を開いてもわからないことばかり。基礎から学ぶ必要がありました。当時、子どもがまだ小さかったこともあり、少しでも勉強時間を確保しようと早く寝かしつけようとしていた記憶があります。
工場にいる機械の専門家の方にわからないことを尋ねたり、勉強会を開いてもらったり。試験日の直前に押さえておくべきポイントについて教えてもらったこともありました」
受験のチャンスは1年に1度だけ。松本は3回目の挑戦で、実技試験と学科試験の両方に合格します。
「合格を知った時は、信じられない気持ちでした。『合格できるとは思っていなかった』と周囲も驚きを隠せない様子だったのが印象に残っています。
ラインで機械に不具合が起きた場合などに、専門家から受ける説明を理解できるようになりました。現在も工場内には私以外に女性の合格者はおらず、資格取得に向けて励んだことが業務に役立っていると感じています」
性別に関係なく評価される存在に。30年の経験から学んだやりがい
現場の女性として初めて産休から職場復帰を果たし、難しい資格にも合格するなど女性活躍を体現してきた松本。工場で働く女性たちに対して伝えたいことがあると言います。
「等しく評価してもらうためには、性別に関係なく同じように努力し、成果を残すことが大切です。多くの知識を身につけ、幅広い業務に対応できるよう努力してほしいと思います。
事務職と違って、現場の責任者を経験したことのある女性はまだいません。近い将来、そのような役割を担う女性が現れることを期待しています」
入社から30年以上にわたって一貫して現場に立ち続け、ひたむきにキャリアを駆け抜けてきた松本。その経験があるからこそ発見できた仕事のおもしろさがあります。
「性別に関係なく周囲から認められたくて、人の3倍は働くことを目標に努力してきました。ただ出勤して工場で1日を過ごし給料を受け取るのではなく、現状に満足せず常にスキルアップをめざしてきたと自負しています。
誰にも負けない強みを持つことは、他人から頼られることにつながり、それがやる気にもつながるものです。最終的なゴールは人それぞれですが、私はそうやって一歩ずつ成長していくことに喜びを見出してきました。
ひとりでも多くの若いメンバーたちが同じ喜びを感じてくれることを願っています」
キャリアを通じて挑戦を続け、新たな領域を切り開いていてきた松本。その足跡は、未来の女性リーダーにとっての道しるべとなることでしょう。
※ 取材内容は2023年12月時点のものです
