ノウハウをシステム化し、人の意思決定をサポート。生産・物流最適化を実現
システムで世の中に貢献することをミッションに掲げる、電計事業本部 システムソリューション事業部。稲富は、そのCX推進部インテリジェントソリューショングループに所属しています。
「インテリジェントソリューショングループが開発するのは、技術を活用して人の意思決定をサポートするシステム。具体的には鉄鋼の製造工程における複雑な生産計画を、AIを活用して自動化するソリューションを提供しています。
このシステムを活用することで、たとえば順序関係のあるいくつかの作業を複数の機械で処理する場合に、すべての作業が完了するまでの所要時間が最小になるよう、各機械でどの作業をどの順番で処理するかが計画できます。また、ある一定の幅、長さを持つ板(母材)から、複数のオーダ(顧客の要求する幅、長さ)をうまく組み合せることで、歩留まりを高くする計画を作成することも可能です」
これまで、このような生産計画や現場での微細な調整は、長年製造に携わる熟練技術者の手に委ねられてきました。しかし、社員の高齢化、生産現場の人員不足、お客様のニーズの多様化等にともない、熟練技術者の知見をシステムに組み込み、それを自動化につなげる必要性が高まっていると言います。
「かつては大量生産が一般的でしたが、現在は多品種小ロット生産が主流になっています。混ざってはいけない成分の管理も含め、生産工程の順序をより細かく厳しく管理する必要性が高まってきました。
日本の製鉄技術は世界トップクラスです。熟練者の豊富な経験や直感をデータとしてシステムに取り込み、それを生産計画に活かすことで、生産現場をサポートしたいと考えています」
人手不足や技術伝承の問題は、どの業界にも共通する課題です。親会社である日本製鉄の製鉄所にシステムを提供する一方で、これまで蓄積してきたノウハウを活かし、日鉄テックスエンジでは他業界へのアプローチも積極的に行っています。新規案件の獲得に向けて、稲富はお客様との徹底した対話を心がけてきました。
「適切な要件定義を行うためには、お客様が抱える真の問題点や実現したいことを深く理解する必要があります。お客様からの要望を受け止めるだけでは不十分です。それをさらに深堀りし、問題の核心を探ることに努めてきました。
また、信頼関係の構築には基盤づくりが欠かせません。お客様に安心してまかせていただけるよう、その業界について徹底的に調査した上で打ち合わせに臨むようにしています」
約20年前から研究所に通い、手探りではじまったシステム開発。継続の先にいまがある
大学では電気・電子工学を専攻し、リニアモーター制御の研究に従事した稲富。2003年、日鉄テックスエンジの前身である日鉄エレックスに入社しました。
「面接の際、『工場のオートメーション化などに携わりたい』と話したところ、当時の八幡支店長から『当社なら興味深いプロジェクトに取り組める。ぜひ来てほしい』と誘われ、その場で入社を決意しました」
入社後、稲富は西日本事業本部の八幡支店に配属され、入社3カ月目からは千葉県富津にある日本製鉄の研究所へ。このときの経験が転機になったと振り返ります。
「研究所に赴任したのは、現在取り組んでいる生産・物流計画を最適化するシステムの開発を学ぶためです。先行して派遣されていた上司に合流する形での参加でした。当時、おそらく上司は今後予想される熟練技術者の技術伝承の問題に早くから意識を向けていたのだと思います。あるいは、景気悪化を受け、付加価値を生み出さねばいけないという使命感があったのでしょう」
研究所に着任した稲富。現場の課題解決に取り組む研究者のもとで学びながら、基礎知識を身につけていきました。
「数学的なアルゴリズムについて基礎から指導を受け、現場での課題解決の事例についても教わりました。また、プログラミングについても、独学では難しい部分をサポートしてもらったことも。与えられた課題に取り組み、その都度フィードバックを受けるというプロセスを何度も繰り返しました」
いまでこそシステム開発を通じて多くの現場の生産・物流計画の最適化に貢献している稲富ですが、事業の立ち上げ時期には苦労も多かったと振り返ります。
「前例のないことへの挑戦は厳しいものです。また、企業である以上、短期間での利益確保が重要視されるため、成果がすぐに出ないプロジェクトの意義を理解してもらうのは容易ではありませんでした。
それでも、現場の熟練者といっしょにPoC(概念実証)などを繰り返して、実際の運用で使えるように改善を行い、一つひとつ実績を積み重ねてきました」
そして約20年の歳月を経て、現在、当時蒔いた種が花開き始めています。時代がついに、手探りではじめた事業の先見性に追いついたのです。
世界初の開発に挑戦できる環境。ニーズが追い付いてきたいまこそ、感じるやりがい
2016年に、電計・システム事業本部開発企画部のアシスタントマネジャーに就任した稲富。これまでとは違う部署への異動は、新たなスキルの獲得につながりました。
「開発企画部は、技術開発を通じて自分たちの技術力や商品価値を高める役割を担う部門です。『どんなニーズがあり、そのニーズに応えるためにどんなシステムを開発すべきか』という視点が身につきました。
また、社内に対して説得力を持って伝え、企画を通す力も養われました。その力はお客様に提案する上で大いに役立っています」
入社して間もないころから、将来を見据えた事業の立ち上げに関わり、20年以上かけて事業を育て上げてきた稲富。時代が取り組みに追いついてきたいま、大きなやりがいを感じていると言います。
「私たちが開発するソリューションは、熟練技術者のノウハウをシステム化するだけでなく、AIの活用により、人間では導き出せない『最適な解』を見つけ出す可能性を秘めています。高度・先進技術を取り入れながらシステムを進化させる過程に携われること、世界初の開発に挑戦できる環境に身を置けることに、大きなやりがいを感じています」
一方、システムを現場に導入するには、シミュレーションを通じてシステムを利用するメリットを的確に伝えることが欠かせません。システムの「見せ方」にも工夫を凝らしてきました。
「システム導入後の現場の変化をよりリアルに体験できるように、デジタルツイン(仮想空間)上に再現し確認できるようにしています。現場のメンバーがゲームのような感覚で楽しみながら使えるようなシステムもめざしているんですよ」
そして現在、グループのチーム長として10数名のメンバーを率いる立場となった稲富。マネージャーとして、メンバーを信頼し、まかせることを大切にしてきました。
「機能要件の設定や設計書の作成、スケジュール策定などはメンバーに一任し、私は彼ら、彼女らの成果物を確認し、GOサインを出したり、必要に応じて見直しを促したりしています。
スキルも仕事の進め方も人それぞれです。相手の性格に合わせた情報の伝え方を心がけ、問題を抱えやすいメンバーとは日常的に対話を行うなど、迅速な問題解決をサポートしています」
世界で前例のない開発に挑戦。当社ならではの強みを発揮し、さらに前へ
今後も引き続き、稲富はメンバーの成長を促進しながら、事業の拡大をめざしていくつもりです。
「インテリジェントソリューショングループの半数以上を占めるのが、20〜30代の若いメンバー。新しいことを積極的に取り入れながら、若手メンバーが成長しやすい仕組みをどんどん整備していきたいと思っています。
また、一人ひとりが責任を持ってコツコツと自分の業務に向き合う雰囲気がありますが、チームとして相乗効果を高めて成果を最大化できるよう、潤滑剤のような役割を担っていきたいです」
世界トップの品質を誇る日本の鉄鋼材料の生産最適化に寄与するシステムの開発に取り組んできた稲富のもとには、鉄鋼以外の産業から多くの相談が寄せられています。さまざまなニーズに応えていく上で必要なのが、新しい仲間です。
「新しいことに興味がある方や、自ら調べて仕事を進められる方を歓迎します。わたしたちはいま世界で前例のない開発に挑戦しています。基礎的なことは教えられますが、前例のないことに挑戦する以上、正解のない問題を自分で考えるプロセスを経る必要があります。主体的に考え、動くことができる方とともに、現場の課題を解決していきたいと思っています」
そんな稲富が考える日鉄テックスエンジの最大の魅力は、現場でのフィードバックを迅速に得られる環境があることと言います。
「実際の現場で使用してもらい、そこからフィードバックを得ることがシステム開発にはとても重要です。日鉄テックスエンジには、日本製鉄グループの総合エンジニアリング企業として、製鉄所で実証試験を実施し、フィードバックを得られる環境があります。
さらに、グループ内で培った技術や実績を活かし、他業界に対してもシステムを提案し、採用事例も増えてきました。こうした一連の開発サイクルを実現できる環境が、当社独自の強みだと考えています。
生産計画や生産管理は、ものづくりにおいて欠かせない要素です。その工程に関わり、ITを通して高品質な製品を安定的に製造するサポートができることは、大きなやりがいです」
座右の銘は、「継続」。困難にたじろぐことなく、トライアンドエラーを繰り返し、これまで誰も見たことのない新しい世界を切り拓いてきた誇りを胸に、稲富はこれからもひたすら前だけを見続けます。
※ 記載内容は2024年4月時点のものです
