生命に関わり、社会的責任も大きい医薬品業界。コロナ禍において製薬会社の名前を耳にする機会が増え、就職先の選択肢になったという方もいるかもしれません。
そこで本記事では医薬品業界の概要、そして実際に医薬品業界で働く人々の声をご紹介していきます。もともと医薬品業界をめざしていた理系分野を専攻した方はもちろんのこと、文系だけれども医薬品業界が気になるという方もぜひ情報収集に活用してみてください。
「医薬品業界」とは?
医薬品業界は次のような企業で成り立っています。ここでは、一部をご紹介します。
・製薬会社
病院や日常で私たちが使用する医薬品を開発、生産しています。
・医薬品卸会社/商社
製薬会社から医薬品を仕入れ、病院や薬局などに提供、販売します。医薬品卸会社で営業活動を担う人をMS(Marketing Specialist:医薬品卸販売担当者)と呼びます。
・CRO(医薬品開発業務委託機関)/CMO(医薬品製造委託機関)/CSO(医薬品販売業務受託企業)
CROは製薬会社から医薬品開発の委託を受け、主に臨床試験工程をサポートします。またCMOは医薬品の製造部分の開発・委託を受け製造工程をサポートします。CSOは医薬品の営業販売を委託され、営業販売やマーケティング活動をサポートします。
製薬会社にはどのような職種があるの?
ここからは、医薬品業界の中でも医薬品メーカーにどのような仕事があるのか、その一部をピックアップしてご紹介していこうと思います。
・研究職
医薬品を開発するための新たな医薬品の候補を見つけるために、研究や実験を行います。また、発見した成分の効果や安全性などを評価するために、人間以外の動物などを用いた試験(非臨床試験)なども行います。
・開発職
新薬の候補を、実際の医薬品として市場に出すために、開発を行います。効果や安全性を確かめるために、人間を対象とした臨床試験などを行います。
・生産管理/製造
医薬品を市場に流通させるための生産計画や製造、製造設備の管理、品質検査などを担います。
・薬事
医薬品を製造、販売するために、厚生労働省に対する承認申請業務などを行います。
・MR(Medical Representatives:医薬情報担当者)
医療機関や薬局などを訪問し、医師や薬剤師に対して医薬品の情報提供を行います。営業職に分類されることもありますが、一般的な営業職とは異なり、医薬品などを直接販売することはありません。
・学術
医学や医薬品の情報を収集し、MRや病院や薬局に対してそれらの情報を提供したり、アドバイスを行ったりします。
研究職・開発職になるためには、6年制の薬学部を卒業していることや、理系学部で修士課程もしくは博士課程を修了していることが求められるケースが多くあります。一方で、MR職では専門知識が求められるものの、文系出身の方が活躍されていることもあります。
ここでご紹介した職種以外にも、専門的な職種やマーケティング、バックオフィス系など多くの職種の方が活躍しています。
医薬品業界で働く人々のリアルな声
実際に医薬品業界で仕事をする方々はどのような想いで医薬品業界に入り、どのようなキャリアを歩んでいるのでしょうか?医薬品業界で働く方々の声をピックアップしました。
※ 記載の情報は記事公開当時の内容です
▶︎エーザイ株式会社
事業内容:医薬品の研究開発、製造、販売および輸出入
・2020年新卒入社
・仕事内容:原薬を分析して品質をチェックする分析業務、分析試験をより効率的に実施するための改善業務を担当
・きっかけ:
村松さん 「就職活動のとき、どの業界に進もうかと考える中で頭に浮かんだのが、『生活の中で“なくてはならないもの”をつくっている業界に行きたい』という想いでした。誰もが必要とするものに携わることで責任感が生まれ、仕事へのモチベーションが高まると思ったからです。
最初は食品や日用品業界も視野に入れていましたが、最終的に『これがないと困る』と思えたものが薬。そこで、製薬業界を志望するようになりました。エーザイを選んだ決め手は、患者様第一のhhc理念に共感したからです。また、患者様により近い位置でものづくりに携わって薬を届けたいと考え、研究職ではなく生産部門を選びました」
・やりがい:
村松さん「薬の品質は目で見てもわかりません。だからこそ、きちんと分析をして自信を持ってデータを示すことが品質管理部のミッションであり、それが仕事のやりがいにつながると考えています」
・ストーリー:薬の品質を守る“最後の砦”として──データ分析に携わる品質管理部の誇りとやりがい
・2021年中途入社
・仕事内容:疾患の予防に関するソリューション開発や医薬品の研究開発の推進を目的に、社内外のデータの解析を担当
・きっかけ:
小林さん 「医薬品開発に取り組む中で、薬剤によって疾患が完治する方もいれば、薬剤と共に予後を過ごす必要がある方もいることに気づかされ、疾患の予後や予防に興味を持ち始めました。
また、ひとつの新薬の上市を見届けたことに達成感を覚えたこともあり、疾患の予防や予後の領域にデータサイエンスで貢献したいと思い、転職を決めました。
当社を選んだ決め手は、製薬会社の中でもいち早くエコシステムを構築し、疾患に関する多様なデータやソリューション創出には欠かせない、社外パートナーが集積する“るつぼ”なのではないかと思ったからです。それらのデータやネットワークを利活用しながら自分の技術も高めていきたいという志がありました」
・やりがい:
小林さん 「私がデータを扱っていておもしろいと感じるのは、データを通してその方の生活が見えてくるところ。データを眺めていると感情移入してしまいます(笑)。
たとえば、定期的にスコアが取られている臨床試験のデータを見て『この方は症状が和らいできている、よかった』と思うことがあります。また、ウェアラブルデバイスのデータでは、『このデータの欠測は、入浴中だからか。仕方ないね』とデータの取り扱いを検討します。日々患者様の生活に想いを馳せながら、データに向き合っています」
・ストーリー:データ活用で健康に貢献したい──数字から患者様や生活者様に想いを馳せるデータサイエンティストの挑戦
▶︎住友ファーマ株式会社
事業内容:医療用医薬品、食品素材・食品添加物、動物用医薬品等の製造および販売
・2017年新卒入社
・仕事内容:再生・細胞医薬分野の研究員として、大学との共同研究に従事
・きっかけ:
池田さん 「大学院卒業後の進路選択は、とても迷いましたね。大学に残る道も考えましたが、将来何をしていきたいかと考えたときに、『私は人の役に立つ仕事をしたい』と思ったんです。大学院で研究してきたことを一番役立てられて、自分が一番ワクワクする分野は何かと考えると、やはり再生医療でした」
・やりがい:
池田さん 「私をサポートしてくれていた先輩は全製造工程の中でも要となる難しいステップを担当されていたのですが、一つひとつの課題に向き合い、解決に向けて粘り強く努力をされていました。その姿をそばで見ていて感銘を受け、仕事に対する姿勢やあり方を学ばせていただきました。
企業研究では成功だけではなく、上手くいかなかった原因を突き止め、それが起こらないようにどう対処するかも重要になります。
再生医療は新しい分野で前例も少ない上に、それぞれの課題の解決方法として決まった答えがない場合も多く、研究者の知識や機転、粘り強さがダイレクトに結果に表れます。先輩のようになりたいという気持ちは今もありますし、自分たちのデータは製品に直接つながるので、やりがいと責任を感じています」
・ストーリー:【研究】入社2年目で大学との共同研究に参加。再生医療分野で挑戦を続ける女性研究者
・2021年新卒入社
・仕事内容:栃木営業所でGeneral領域の医薬情報担当者(MR)を務める
・きっかけ:
葛城さん 「学生時代に接客業のアルバイトを経験し、人とお話をする仕事がとても楽しかったことから、営業職を志望していました。そんな中、MRとして働いている大学時代の先輩とたまたま話す機会があったんです。MRが人の命や生活に深く関わる仕事であり、やりがいを多く感じられる仕事だと知って興味をもち、医薬品業界を中心に就職活動をするようになりました」
・やりがい:
葛城さん 「MRとしてやりがいを感じるのは、医師との信頼関係を深めることでお話ができるようになることや、医薬品の普及に貢献できたときです。とくに、『これまでなかなか症状が改善しなかった患者さんが良くなって喜んでいるよ』と言葉をいただくと、MRをやっていて本当に良かったと思います」
・ストーリー:【MR】地域の医療課題の解決に貢献できる存在へ──進化を続けるMR3年目の挑戦
▶︎中外製薬株式会社
事業内容:医薬品の研究、開発、製造、販売および輸出入
・キャリア入社・仕事内容:製薬技術本部で抗体の特性解析や分子の開発を担う
・きっかけ:
大学院で博士号を取得し、助教としてキャリアを歩んでいた南部さん。中外製薬への入社を決めた背景には、社会に貢献したいという想いがあった。
南部さん 「自分が携わった仕事がかたちとなり、社会に貢献するところを見てみたいと思い企業に移ることを決めました。助教として研究室に入る前は、ひとつのことを突き詰めて、それらを蓄積するのがアカデミックだと思っていたんです。
しかし、実際は社会情勢や研究資金などの事情もありますし、やりたいことだけを追求できるわけではないという現実に直面しました。それならば、広く社会に貢献できる仕事がしたいと考えたんです」
南部さんが転職先を選ぶ上で軸としていたのは、これまで培ってきた自分の知識を活かせること、新規性が高くチャレンジングな姿勢があり、これからさらに大きく成長する勢いがあるという点だった。中でも中外製薬は、会社とともに自分自身も成長させられる環境だと確信し、入社を決めたと振り返る。
・やりがい:
決して容易ではない分析研究に向き合い、着実に成果を出している南部さん。入社当時に軸としていた「社会貢献をしたい」という想いを日々の仕事の中でも感じられるようになった。
南部さん 「実は、入社当時は社会に貢献するという漠然とした目標はあったものの、具体的には想像できていなかったんです。しかし次第に、製品を出すことに対してどういうプロセスが必要なのか、分析技術では何が求められるのかを考えるようになり、“研究者の視点”から“企業で製品を生み出す者の視点”へと変わっていきました。
そして入社してすぐに関わった分子が市場に流通し、その薬が実際に役立っているという知らせを受けたときは、素直にうれしいと感じました。広く社会に貢献し、少しでもかたちに残すという目標を達成でき、喜びを感じられた瞬間ですね」
・ストーリー:チャレンジングでおもしろい「製薬の分析研究」。大学助教からのキャリアチェンジで見えた景色
・2005年入社・仕事内容:患者団体との協働プロジェクトをリード
・やりがい:
国内製薬会社で患者団体との協働に早くから取り組みながらも、手探りの部分も多くさまざまなハードルも感じてきた。その背中を押してきたのは、患者団体から届く声だった。
竹内さん 「ダイアログに参加してくださった患者団体の代表の方々から『打ち上げ花火のように1回やって終わるのではなく継続した取り組みを行っている』という言葉をいただけたときは、今まで取り組んできたことが患者さんにも評価してもらえて、本当に嬉しかったです。
また、意見交換会を経験した他部署の社員から『患者さんの声を聞いたことで研究を行っていく上でのモチベーションが上がり、1年以上たった今でも患者さんを思い出して何が最適な薬かを考えるようになった』といった言葉を聞くことが大きな活力になり、ここまでやってこられました。
また外部の患者団体調査(PatientView社実施)でも国内総合評価1位を獲得でき(調査期間2022年11月~2023年2月)、これまでの活動は決して間違っていなかったと感じられ、今後に向けた励みにもなっています。
日本において患者さんの声を創薬研究に取り入れることが1日も早く当たり前になるよう、そしてさまざまな社会課題を患者さんも含めたマルチステークホルダーでともに解決していく社会となるよう、この活動を続けていきたいです」
・ストーリー:患者さんとともにめざす、誰もが最適な治療を選択できる未来の実現
▶︎マルホ株式会社
事業内容:医療用医薬品等の研究・開発・製造・販売・輸出入ならびにこれに付帯する業務
・2021年キャリア入社
・仕事内容:代表取締役社長
・きっかけ:
もともと商社勤務だった杉田さんが製薬業界に興味を持ったきっかけは、その後のMBA留学時代に製薬企業でサマーインターンを経験したことでした。
杉田さん 「全社集会で患者さんが登壇し、その製薬企業の医薬品を服用して人生が変わったとお話をされているのを耳にしました。それまでBtoB領域のビジネスに携わってきていたので、切実なニーズを持った方から直接感謝のメッセージを聞くのは初めての体験。心が揺さぶられるような気持ちがしたのを覚えています。
その後、外資系製薬企業を経て、患者さんの声を経営の意思決定により活かしやすい環境で仕事をしたいという想いが募り、マルホへの入社を決めました」
・やりがい:
マルホにとって、最大の転機となったのは2002年。皮膚科学領域に軸を絞った時のことでした。
杉田さん 「特定の疾患領域にフォーカスしてより深く患者さんに寄り添いたいという想いから、皮膚疾患領域に的を絞ることを決めました。世の中に製薬企業が数多くある中、マルホが取り組むべきことは『世の中で見過ごされ、軽視されている声、“アンメットニーズ”に対して粘り強く取り組み、ソリューションを提供していくこと』だと考えたからです」
マルホのアンメットニーズへの取り組みについて杉田さんは続けます。
杉田さん 「たとえば、現在マルホが販売している皮脂欠乏症の治療薬は、最初は別の疾患の治療薬として用いられていました。その後、医療関係者や患者さんからのニーズに応え、新たに適応を追加し現在に至ります」
ニキビのケースでは、マルホ独自の調査や患者さんへのインタビューを通して、皮膚疾患に罹患している方の悩みや苦しみを知ったことも背景にあったと言います。
杉田さん 「ニキビは、10年ほど前まで『青春のシンボル』と表現されることもあるなど『あって当たり前のものだし、気にすることはない』とみなされていました。
しかし、患者さんの中には『ニキビが原因で学校へ行けない』といった深刻な悩みを抱える方も多くいます。こうした状況のギャップを埋めるべく、有効な治療薬の開発と並行して2017年ごろからざ瘡の啓発活動に励んだ結果、患者さん自身が適切な治療法に気づき、希望通りの対処法を選択できるようになったと考えています」
・ストーリー:“一人ひとり”のかけがえのない日常のために。マルホの存在意義とミッションに込める想い
・新卒入社
・仕事内容:研究企画推進部に所属し、薬理研究を担当
・きっかけ:
大藪さんが薬学に携わる仕事を志したのは、小学6年生のとき。最愛の祖父が肺がんで他界したことがきっかけでした。
大藪さん 「闘病生活の苦しさや残された家族の悲しみを少しでも和らげるような仕事がしたいと考え、がん治療に貢献する医薬品をつくる研究者になりたいと思うようになりました」
医薬品研究の中でもメカニズムベースでの医薬品創出に憧れを抱いた大藪さんが選んだのが薬理の道。大学・大学院時代は生命科学部で病態生理学を学び、生物学の範疇でがんを治すためのメカニズム探索に没頭しました。
・やりがい:
ひとりの研究者として、まだ誰も気づいていない疾患領域の探求にも意欲を見せます。
大藪さん 「満足のいく治療法に出会えていない患者さんの助けになる薬を世に出したいと考えています。また、現在は国内市場をターゲットにした医薬品がほとんどですが、将来的には世界に通用するようなブロックバスターを発掘したいという気持ちもあります。いずれはそういった薬剤を継続的に生み出せる仕組みの構築にも取り組んでみたいですね」
・ストーリー:革新的なアイデアをかたちに。オープンイノベーションを加速させる交流拠点をめざして
医薬品業界で働く方々のストーリーをご紹介してきましたが、医薬品業界では他にもさまざまな人材が活躍しています。ぜひ各社のコンテンツをチェックしてみてくださいね。
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