2カ月の育休取得の背景と葛藤
2015年に新卒でSPLに入社した境田。そんな境田が育休を取得したのは、入社から7年が経った、2022年の秋のことだった。
「2022年というと、ちょうど男性育休に関する制度の改正があった時期で、育休を取得したのは休みを取りやすくなる制度に変わる1カ月前のことでした。ちょうど切り替わりのタイミングだったので、男性の育休推進の恩恵は受けていないんですよね(笑)」
取得を決めるまでに悩んだ時期もあった境田は、すでに執行役員として働いていた当時を振り返りながらこう続けた。
「育休を取得するかしないか、という点に関して、子どもが生まれる前から妻と相談していました。妻からは取ってほしいと言われていましたが、当時も執行役員でしたので、育休を取るのはなかなか現実的ではないと思っていました。今自分が担当している業務領域を考えると、現実的に権限等の兼ね合いからも引き継ぐことができる人が同じ部署の中にいませんでした。そういうこともあって、現実的に取得できるのかな、と悩んでいました。
そんな時に、出産を経験された社員の方や自分の友人からも、最初の1~2カ月はとくに困る機会も多いし、夜も3時間おきに起こしてミルクを飲ませなきゃいけないと聞いて、やっぱり大変そうだなって。それにわれわれ夫婦の親族のサポートが受けられる環境ではなかったので、ここは自分が頑張って取らなきゃだめだということで、育休を取得しました」
育休取得を決意したものの、 執行役員としての責任を重く捉えた境田は双方にとってより良い状態になる形を模索したと言う。
「自分の当時の役回りや会社から求められているものを実現するためには、自分がここで長期間休むのは仕事に対して無責任になってしまうなとも思ったんです。間を取ってじゃないですけど、いろいろ考え抜いて1~2カ月の取得にしたという感じです」
「歓迎される」育休取得にするため、周囲との関係構築に注力
育休の取得を決めた境田は、おおよそ決まっていた取得時期をもとに計画的に準備を進めた。
取得予定時期の2~3カ月前には、一緒に働いているメンバーや、不在の時に協力を打診する可能性のある他部署の部長に対し、育休を取得する旨を伝えた境田。育休に入る1カ月前になったころから、実際に業務の引き継ぎを始めたと話す。
「育休を取るにあたって助かったのは、同じ組織で働いていたメンバーの存在ですね。自分がいない時間の業務をメンバーがフォローしてくれる環境があったので、やっぱり自分1人の力だけでは育休を取れなかっただろうなというのが率直な感想です」
育休を取得し、仕事から一定の期間離れることを決めた際、境田には考えていたことがあった。
「『権利だから育休を取っていいよね』という考え方の人も多いと思うんですけど、せっかくなら周りの人に歓迎されながら育休を取得できる方がいいと思うんです。
誰からもそう思ってもらえるように、普段から周りとコミュニケーションをとって関係を構築することがポイントになってくると思います。取得に向けて準備が必要なら、普段の仕事に加えて事前に取り組むことは、取得する人の義務だと考えていて。細かくて目に見えない部分を整えていればいるほど、いざ仕事に復帰する時に戻りやすくなるんじゃないかなとも思っています」
時には思い切って家族との信頼関係構築に時間を費やすことも必要
念入りな事前準備や周囲のメンバーのサポートもあり、実際に育休を取得している間はほとんど仕事を行わず、育児に集中していたと話す境田。男性が育休を取得することについて、こう語る。
「理想を言うと、やっぱり半年から1年間くらい、キャリアが止まってしまう形でも完全に仕事をしないで育児に取り組む期間が必要だと思います。ただ今は、2週間でも1カ月でも、どんなに短くてもいいから、育児に対して家族に対して、しっかりと向き合う時間を取ることがとても重要だと思っています」
まずはその時間をつくる努力をすることが、どの役回りの人であっても必要だと語気を強めた。
「もちろん育児が仕事と同じかそれ以上に大変なことは理解しています。仕事も大切ですが、どうしても仕事を優先しなければならない時期が来た際に、家族との信頼関係を築けているかはとても大事になると思います。
『あの時、家族に時間をつくってくれた』という事実があるかないかは、いざ仕事で勝負をかけなきゃいけない時に、家族に理解してもらえるか、応援してもらえるかどうかにかなり関わってくると思うんです。そういう意味でも育休を取れるタイミングがあるのであれば、積極的に取ることが大事ではないかと思います」
境田が現在も働くヒューマンキャピタル事業部の責任者を任されたのは、育休から仕事に復帰したタイミングで、まだ子どもも小さく、育児が大変な時期だった。
「育休から復帰したタイミングで、今のヒューマンキャピタル事業部の責任者にアサインされたんです。その前に育休を取って家族に向き合う時間をつくれたこともあって、妻も『チャンスだろうし頑張ってね』という気持ちになってくれたので、あの時家族とのコミュニケーションを取れていたのはよかったなと思いますね」
「三方良し」な事業、組織づくりをめざして
自分の子どもが生まれ、子育てをするという経験を経た境田は、今後の働き方について考えていることがある。
「自分にとって、育休を利用して育児に向き合えたこと以上に、産まれる瞬間に立ち会えたことが大きな経験でした。でも、中には仕事との兼ね合いでどうしても立ち会えない人もいると聞きます。そういうことを踏まえると、今後は誰もが急なイベントにも対応できるように業務体制を整えていくことが必要だと思います」
育休を取得した執行役員として、組織のために何ができるのか。自身の経験を糧にめざす未来像について最後にこう語った。
「現在は次の子会社化をめざす事業部門で働いていますが、僕らの部署はこれからもっと組織やサービスを強くして成長していかなければならないタイミングにきています。
そこでSPLにすでにある組織以上に、新しい文化を取り入れ、働く人の生産性の高い組織と、社会にとっても必要な、付加価値の高い事業をつくっていきたいと思っています。
その時に、お客様にどうしたら喜ばれるかをまず考え、そのお客様に喜ばれる社員たちには、どんな組織でどういう仕組みで働いてもらうのか──そういうところもしっかり考えないといけないと思っています。お客様だけではなく、働く社員も大事にするべきステークホルダーだと思うので、社会にとっても良し、お客様にとっても良し、社員にとっても良し、という三方良しなビジネス、新しい会社をつくっていきたいです」
男性役員初となる育児休暇を取得した境田。育児休暇の経験を活かし、今日も三方良しな事業、組織づくりをめざし歩みを進めるだろう。
※ 記載内容は2024年5月時点のものです

