グローバル化の過渡期にあるオリンパスで、監査の「その後」を仕組みと文化で変革する
──所属部門の概要と、自身の役割について教えてください。
私が所属するのは、内部監査部門のGlobal Planning & Qualityチームです。私が所属するチーム以外に、世界5つの地域に監査人が所属しており日々の内部監査業務を行っています。その中で私のチームはヘッドクオーターのような役割を持ち、主にステークホルダーとの連携強化や各地域との方向性の確認を議論し、部門全体の運営効率化や価値の最大化をめざしています。
内部監査の目的は、単に問題を指摘することではなく、組織の改善や成長を支援することにあります。そのため、監査後の改善状況の「見える化」にも積極的に取り組んでいます。具体的には、監査で改善に合意したアクションが実行されず、そのままになっている案件がどれだけあるか、現状を可視化しています。
その原因は、コミュニケーションの停滞やフォローアップ漏れの場合もあるため、内部監査部門以外のメンバーとの連携を強化し、経営層にもアプローチしながら、効果的な改善を進める体制づくりに取り組んでいます。
私自身の役割は、Global Planning & Quality チームのヘッドです。リーダーに求められることはいろいろあると思いますが、今の私は「オーケストラの指揮者」のようなものだと考えています。一人ひとりのメンバーがプロフェッショナルとして演奏する中で、全体を見渡し、物事がうまく進むようにコーディネートしていく。そして、メンバーが日々楽しく、気持ちよく働けるよう、ワクワクする雰囲気を作ることも、リーダーの重要な仕事だと思っています。
──オリンパスで働く魅力や、やりがいは何ですか?
もともと私は、仕事のやり方を改善して、チームや会社の仲間に「効率が上がったよ、ありがとう」と感謝されることが好きなんです。
このポジションのお話を受けたとき、「会社も内部監査部門もグローバル化の過渡期にあり、改善すべき点がたくさんある。その手助けをしてほしい」と言われ、まさに私のやりたいことだと感じました。これまでグローバル企業でキャリアを重ねてきたため、私の経験を通して貢献できれば、という想いで取り組んでいます。
また、オリンパスはものづくりの会社であり、「患者さんのために」「より良い製品を」という真摯な思いを持って仕事に向き合っている人たちが大勢います。そんな仲間と共に「会社をより良くしていこう」と働ける環境は、大きなやりがいになっています。
これまで出会ったリーダーの背中を追って。子育てと両立しながら進む
──オリンパスに入社した理由と、入社後に感じていることを教えてください。
私はこれまでアメリカの複合企業で 18 年間、主にファイナンス分野で経験を積んできました。オリンパスに入社した理由は、面接を受けた際、会長から「内部監査は、違反を厳しく追及する検察官のような役割ではなく、共に改善をめざすパートナーだ」と言われたことに、良い意味でカルチャーショックを受けたからです。これまで私自身も、監査を受ける側として、第三者の視点からのアドバイスに価値を感じていたので、この考え方に強く共感しました。
入社後に印象に残っているのは、製品トレーニングで初めて内視鏡に触れたことです。その技術や人々への貢献を知ったことで、会社への意識が変わり、それまで遠い存在だった製品を「自分事」として捉えられるようになりました。この素晴らしい技術を持つ会社が長く続くよう貢献したいと、会社愛のような気持ちが芽生えました。
入社して感じているのは、チームメンバーが本当に優しいということです。リーダーである自分を快くサポートしてくれることに、日々感謝していますし、「1人でできる仕事はない」とチームワークの重要性を再認識しています。
──キャリアの中で、リーダーシップに影響を与えた経験はありますか?
これまでに出会ったさまざまなリーダーから影響を受けています。彼らは私に密に寄り添い、並走し、新しい視点や広い視野を与えてくれました。私はもともと「リーダーになりたい」と強く思ってキャリアを歩んできたわけではなく、旗を振ってぐいぐい先導するのは、あまり得意ではないタイプでした。
それでも、リーダーから後押ししてもらうことで、「やってみよう」と一歩踏み出すことができました。今度は私も、チームメンバーや困っている人に同じようにできたら、と考えています。
また、前職でCFOを務めていた経験も大きな学びとなっています。ビジネスの買収・売却が盛んな環境にいたので、カルチャーもオペレーションも異なる組織が1つになる中で、「どうすればより良い組織になるか」を各部門と協議し、つくり上げていきました。
そこでは、答えのない中でも、進むべき方向を見定めるスキルを学びました。予測不能なことが起きても「大丈夫」と思えるメンタリティは、この時期に養われたと思います。
自身の経験を役立てながら、オーケストラの指揮者のように場をつくる
──子育てとの両立など、リーダーの仕事の難しさをどう乗り越えてきましたか?
前職でのCFO時代は、ちょうど子どもが0~3歳で、最も手がかかる時期と重なっていました。子育てに限らず、何かを得るためには何かを調整する必要があります。私の場合、一番大事にしていたのは、独りで抱え込まないことと、周囲にオープンに話すことでした。
たとえば、グローバルな会議は時差の関係で夜遅くなることもあります。子どもをお風呂に入れて寝かしつける、まさにピークタイムです。日本人特有の「言わなくても察してくれるだろう」という期待は捨て、正直に上司に相談しました。すると、会議の頻度を減らしたり、時間を調整したりとサポートしてもらえました。
子育てや介護など、人にはそれぞれ事情があり、普段の仕事では見えにくい部分もあります。だからこそ、お互いの状況をできるだけ理解しながら、「できることはする」という姿勢とともに交渉することが大事だと思います。
また、キャリアの中で悩む時は、周囲と対話することで新しい視点を得てきました。一見すべてを完璧にこなしているように見えるリーダーも、個人的に話すと実は苦労していることが多いです。そういった率直な話を聞くことで、「リーダーも人間なんだ」と気づき、励まされましたね。
その他にも、「失敗しても逆にそこから学べるチャンスなのだからやってごらん」と自信を持たせ、うまく波に乗せてくれる人たちもいました。こうした経験が、難しさや迷いを乗り越える力になっています。
──チームを率いる上で、大切にしていることを教えてください。
3つあります。1つめは、チームの「天気」をつくることです。リーダーの態度はチームの天気を左右します。とくにリモート会議では、リーダーが仏頂面をしていたら、誰もが発言しにくくなりますよね。そこで、意識的に口角を上げたり、大きく頷いたりして、話しかけやすい雰囲気づくりを心がけています。「みんなの鈴木さん」のようなポジティブな空気を感じてもらえたら嬉しいですね。
2つめは、相手に合わせることです。リーダーシップやコーチングには、1つの決まったアプローチを踏襲するのではなく、相手のステージや志向性に合わせたカスタマイズが必要だと考えています。メンバーが何に幸せを感じているのか、次に何をすれば成長できるのか。そうした個々の内面を見極めるのは難しく、私もまだまだ勉強中です。
3つめは、相手の背景を理解し、フラットな気持ちで話を聞くことです。以前、フランス人の上司から人前でネガティブなフィードバックをされ、思わず感情的になってしまったことがありました。しかし後で、フランスには「フィードバックはギフト」という文化があり、カジュアルに伝えることが当たり前だと知ったんです。私は、日本人のフィルターを通して物事を捉えていたと気づきました。それ以来、自分の癖やバイアスを取り払って相手の話を聞くことを意識しています。
──リーダーになったからこそ見える醍醐味やおもしろさはありますか?
リーダーのおもしろさに気づいたのは、本当にここ2〜3年のことです。キャリアや子育てについて相談を受け、私なりの経験を伝えた時に「ありがとう、助かったよ」と言われることが増えました。その時、「ああ、私のアドバイスが役に立つことがあるんだ」と気づきました。
どんな些細なことでも、自身の経験が誰かの役に立ち、導きとなる。それがリーダーになったからこそ見える醍醐味だと感じています。
「リーダーは1日にしてならず」。気負わずチームを信じ、一歩を踏み出して
──内部監査部門の組織として、また個人としての、今後の展望を教えてください。
組織としては、監査を通じて、よりレベルの高いアドバイスができるようになりたいです。たとえば、個別の事象だけでなく、複数の監査結果から傾向やトレンドを分析し、「根本原因はここにあるのではないか」といった提言ができる組織をめざしています。
また、チームメンバーの成長のためにも、新しい監査の分野や手法に挑戦していきたいです。私自身、内部監査人としての経験は浅いため、本質を理解するために資格取得をめざして勉強中でもあります。
個人の展望としては、実は、「これをやりたい」「このポジションに行きたい」という明確なものはあまりないんです。ただ、根本にあるのは「みなさんの仕事のやり方をより良くしたい」「会社の中で滞っている部分を解消したい」という想いです。
一方で、私は「飽きっぽい」性格だとも自覚しています。良く言えば、慣れてしまうと成長が止まる気がするんです。ルーティンを回すのは楽ですが、新しい視点が得にくくなる。
だからこそ、あえて環境を変えたいという想いがあります。もし機会があれば、日本を離れて、英語圏などの新しい環境に身を置き、自分がどこまでできるか挑戦し続けたいですね。
──最後に、次世代のリーダーをめざす人たちへメッセージをお願いします。
「そんなに心配ないよ」と伝えたいです。リーダーというと、「1人で全部やらなければ」「自分が答えを持っていなければ」とプレッシャーを感じるかもしれません。
でも、リーダーは完璧である必要はありませんし、すべての答えを持っている必要もないんです。リーダーの役割は、答えを示すことではなく、ディスカッションを促すことだと私は思います。
私自身もこれまで苦労をしながら、試行錯誤しながら、徐々にリーダーとして成長していきました。まさに「リーダーは1日にしてならず」。ですから、あまり気負わずチームを信じて、一歩を踏み出してほしいですね。
※ 記載内容は2025年11月時点のものです

