医学・生物学的な観点から製品を評価し、安全で有効な医療機器を患者さんのもとへ
──所属する部署やそこでの仕事の内容について教えてください。
医療評価技術には、医学・生物学などの専門知識を持つメンバーが集まっています。開発中、あるいは開発後の製品を、医学的・生物学的な観点から試験・評価し、安全性・有効性を確認することが主な職務です。
製品の安全性や有効性の担保は、医療機器を世に出す上で欠かせないプロセスであり、機械・電気といった工学系出身者が多い当社にとって、少数ながら私たちが担う機能は非常に重要だと考えています。
現在、チームに在籍するのは、獣医師、生物学・化学出身の技術開発者など約80人のメンバーです。専門分野はさまざまですが、「できるだけ早く適切な医療を患者さんに届けたい」という強い想いを全員が共有しています。
私は本部長として組織運営やマネジメントを行いながら、生物学的安全性評価の分野ではディレクターも兼任しています。現場の状況を把握し、マネージャーと連携して、医療評価技術全般を高い水準に保つことが私の役割です。
──オリンパスで働くやりがいをどんなところに感じていますか?
オリンパスには、多彩な分野で高い専門性を持って活躍している人材が多く、一緒に仕事をしていて多くの学びがあります。
また、一人ひとりを尊重する文化が根づいているのも当社の特徴です。年齢やバックグラウンドを問わずフラットにコミュニケーションできる環境が整っており、若手の提案にも耳を傾け、「まずはやってみよう」と挑戦を後押ししてくれる風土があるところに魅力を感じています。
海外の大学での研究員を経て再びオリンパスへ。チームで掴んだ成果が変えたキャリア観
──入社当初の仕事内容と、退職後に取り組んだこと、再入社に至った経緯について教えてください。
入社当時は遺伝子研究やゲノム研究が盛んで、経産省が主導する国家プロジェクトに参加し、遺伝子解析装置の開発に携わりました。経験豊富な先輩方に囲まれながら、理解を深める日々はとても刺激的でした。
また、社外の共同研究の場で定期的にディスカッションを行うなど、他企業や研究機関との協業を通じて、さまざまな視点に触れることができ、貴重な経験を積むことができたと思っています。
その後、夫の留学に帯同するため退職し、アメリカの大学に約1年間在籍しました。専門分野の研究室を訪ね、「研究に参加させてほしい」とお願いしたところ、受け入れていただけることに。それから約1カ月後には、技術研究員のポストに就くことができました。
企業とは違い、大学では純粋にサイエンスを追求します。学術研究に取り組めたこと、多様な価値観に触れられたことは非常に新鮮な経験になりました。
ただ、いつかオリンパスに戻りたいという気持ちはずっと持っていましたね。アメリカで技術研究員をしていたのも、実験の腕を磨いて再入社の足がかりとしたいと考えたからです。
帰国後、上司からの後押しもいただきつつ、採用面接で海外での研究経験を活かして貢献したいという想いを伝えたところ、無事に再入社をすることができました。
現在では、配偶者転勤や育児・介護などやむをえない理由で退職された方向けのリエントリー制度が設けられており、会社としても制度が整ってきたと感じています。
──再入社後の仕事と、リーダーを任された経緯を教えてください。また、リーダーになってどんな心境の変化がありましたか?
研究のトレンドが遺伝子から細胞レベルの解析へと移行していました。当時とくに注目されていたのは、生きた状態の細胞を顕微鏡で観察する技術です。生物学の知識を活かせる業務にはとてもやりがいがありました。
チームリーダーに就任したのは、再入社から8年目のことです。私は実験や解析が好きで、マネジメント業務は不向きだと思っていましたが、「自分のやりたいことを実現するには、仲間をまとめる力を培うことも必要だ」と感じ、オファーを受けることを決めました。
リーダーになると、メンバーがそれぞれの得意分野で新しい視点や手法を提案してくれます。その結果、1人では成し得なかった成果を出せるようになり、リーダーのおもしろさに気づきました。メンバーが成長していく姿を間近で見守れることも、この時に知った新たなやりがいです。
葛藤を超えて見つけたリーダーシップ。未知への挑戦が育んだマネージャーとしての覚悟
──その後、管理職登用試験に挑戦された時は、どのような想いでしたか?
当時、管理職になることには葛藤がありました。チームリーダーとして、メンバーと一緒に働く楽しさを感じる一方で、当社には高度専門職という専門性を突きつめるキャリアパスもあったからです。
そんな中、私の背中を押してくれたのは上司からの言葉でした。「研究者には個性豊かなメンバーが多く、まとめるのは大変だが、それができることがあなたの強みだ」と言われ、メンバーの良いところを引き出しながらチーム力を高めていくことで、自分なりに貢献できるのではないかと思えるようになりました。
自分では気づいていなかった可能性に光を当ててもらったことで、私にしかできないリーダーとしてのあり方があるなら、そこに身を投じてみようと挑戦を決めました。
私には見えていなかった可能性を引き出してくれた、当時の上司やメンバーにはとても感謝しています。
──管理職となってから印象に残っている出来事を教えてください。
2022年に、医療事業を手がけるオリンパスメディカルシステムズに異動したことが大きな転機になりました。それまで主に科学事業に携わっていた私にとって、医療事業は未知の領域です。人脈もなく業務フローがまったく見えない中、新設された部門で新たなメンバーを率いることは、会社人生で最大の挑戦でした。
もともと10名ほどいたところへ、約30名をともなっての合流です。協力的な方ばかりでしたが、仕事の進め方や考え方の違いがありました。課題が多く、メンバーの疲弊感が高まっている中で、まだ見えていない解決策を模索していく厳しい船出となりました。
そこで私が徹底して心がけたのは、丁寧なコミュニケーションによる相互理解です。メンバーのモチベーションや方向性を揃えるために、「患者さんのために何ができるか」という共通目標のもと、対話を重ねる中で異なる価値観を尊重し合い、互いに協力し、支え合う努力を続けました。
業務の面でも、計画通りに試験遂行をしながら、グローバル連携を含めて体制強化を図る必要があり、しばらくは四苦八苦しながらでしたが、人員補強や部門を横断しての支援にも助けられ、チームは徐々に安定。無事に生物学的安全性の評価機能を立ち上げた成果が認められ、部門メンバーがGlobal CEO Awards(社長賞)を受賞することができました。スポンサーの立場として、とても嬉しく思いました。
科学事業から医療事業への移行という大きな環境変化の中で、メンバーがモチベーションを切り替え、「医療の現場に貢献しよう」と同じ方向をめざしてくれたことが成果につながったと感じています。この経験は、私にとっても大きな学びとなりました。
思い込みを超えた先に広がる新たな可能性。多様性を力に変え、さらに一歩先へ
──リーダーをめざす方へのメッセージをお願いします。
私はもともとリーダー志向ではありませんでしたが、成し遂げたいことを考え、どう実現するか模索していく中で、仲間を巻き込むことで大きなアウトプットを生み出せることに気づきました。
リーダーの役割を提案されているとしたら、それはあなたに可能性があると考えるからこそ。ぜひチャンスを活かしてほしいと思います。一歩踏み出すことで、思いがけない景色が見え、俯瞰的な視点が得られるはずです。
オリンパスには、若手の意見や提案を頭ごなしに否定せず、背中を押してくれる文化があります。私がそうだったように、自分の価値観や先入観で自分の視野を狭めず、まずは行動することでリーダーとしての可能性を見出してみてください。
私自身、「リーダーらしいリーダー」ではないと思っています。特別強くもなければ、圧倒的な存在感があるわけでもなく、強引に引っ張るタイプでもありません。
大切なのは、いかにメンバーの強みを活かし、チームで何を成し遂げるかです。リーダーシップには多様なスタイルがあっていいし、肩に力を入れすぎる必要はありません。「良い影響を与えたい」という想いを持つ人たちを束ね、より大きな力へと発展させることが、リーダーの役割だと考えています。
──今後の展望を教えてください。
私たちは、医学・生物学の知見を活かし、安全性・有効性を担保することで、患者さんの負担を減らし、医療従事者が使いやすく安全な製品づくりに尽力してきました。この評価機能をさらに強化し、製品開発の初期段階から参加することで、より効率的で高品質な開発プロセスを実現したいと考えています。
また、会社の外にも目を向けています。私は大学の社会人メンターとして、これから社会に出る学生、とくに女性のキャリア相談や支援に携わってきました。今後も、彼女たちが抱える無意識のバイアスを解消し、誰もが安心して自分の可能性に挑戦できる仕組みづくりに貢献したいと考えています。
社内に限らず、他業種や大学、地域コミュニティとの交流を通じて、新たな気づきや考え方を得られると感じています。これからもさまざまな方とのつながりを大切にし、多様性を力に変えて前進していきたいと考えています。
※ 記載内容は2024年12月時点のものです

