ミクロの世界に挑む設備設計。縁の下で進化するものづくりを支える
──所属する部署やそこでの仕事の内容について教えてください。
組立工程技術 自動化推進は、オリンパスの各工場で用いる医療系製造機械を設計・開発し導入する部署です。中でも私は、内視鏡の先端部分に使われるレンズを研磨する装置を担当しています。
装置の大きさはさまざまです。横幅1mに満たない小型の装置もありますし、現在取り組んでいるような大規模な装置もあります。
基本的なプロセスとしては、工場側から「こういう機械がほしい」という要望を受け、それに基づいて装置を設計するところから始まります。以前と同じ仕様が求められる場合もあれば、既存の主力装置を一から設計し直すケースもあります。
とくに新しい装置の場合は、いきなり本番用の生産機をつくるのではなく、まず実験機で性能を確認します。その後、生産機を組み立てて実際に動かし、加工精度などを検証した後、問題がなければ工場へ搬入し、最終確認を経て正式に導入するというのが大まかな流れです。
新しい装置の開発が必要になる背景もさまざまです。現在進めている主力装置の開発が始まったのは、約30年前に設計された古い主力装置を最新技術で刷新する必要があったためでした。
内視鏡に使うレンズは年々小径化が進んでおり、従来の精度では対応が難しくなっています。たとえば、同じ0.05㎜程度の誤差でも、直径10㎜のレンズなら許容できますが、直径2㎜のレンズでは大きな問題です。
さらに、近年はデータをセンサーで取得してサーバーで管理するなど、デジタル化が求められています。古い設計ではこうした要件が想定されていなかったため、このタイミングで装置全体を刷新することになりました。
──オリンパスで働くやりがいをどんなところに感じていますか?
内視鏡を通じて医療現場を支え、人々の健康に貢献できる点が大きなやりがいになっています。
実際、私の父が数年前に内視鏡によってがんを早期発見・治療したおかげで健康を取り戻した経験がありました。また先日、私自身も大腸内視鏡検査を受けて、昨年に続いてポリープを除去したところです。
自分の仕事が誰かの役に立っていると感じられることが、やりがいにもつながっていますね。
限界への挑戦でつかんだ自信、飽くなき探求が育む成長
──入社の経緯と、入社後の仕事内容について教えてください。
たまたまオリンパスの会社説明会に足を運んだ際、「直接患者さんを診るわけではないけれど、多くの人々の健康に貢献しています」と熱心に話す社員の言葉に強く心を動かされました。医師とは違うかたちで患者さんの役に立てる仕事があると知って興味を持ち、入社を決め、いまに至っています。
入社後、主に消化管の出血を止めるために使用される止血クリップの新製品開発にともなう生産設備の立ち上げと導入を担当しました。金属板からクリップを成形するのですが、スケジュールがタイトである上に寸法精度が非常に厳しく、頭を悩ませる日々が続いたのを思い出します。
入社前は、多くの理系学生が憧れる花形の製品開発こそがものづくりの醍醐味だと考えていましたが、生産設備の導入担当として完成した機械や技術を工場へ導入していく過程は非常に興味深いものでした。お互いの条件に折り合いをつける交渉など、開発側とのやり取りを通して、製品がかたちになっていくプロセスを理解できたことは、非常に貴重な経験になったと思っています。
──その後、内視鏡レンズ加工機の設計開発を担当されますが、そこでどのような経験や成長実感がありましたか?
内視鏡レンズ用の加工機は、生産設備の中でもとくに高い精度が求められます。図面や3Dモデルを確認し、わからないことを先輩に教えてもらいながら基本原理や設計への理解を深め、導入済みの設備を少しずつアップデートするところから始めました。
当時、外科手術用の硬性鏡に用いられるリレーレンズ加工で直面した問題がとくに印象に残っています。通常、レンズと砥石を同じ方向に回転させ、速度差を利用してレンズを削りますが、なんらかの理由でレンズが正常に回転せず、砥石だけが回ってしまうことで、レンズ形状が歪む問題が起きていました。
消化器内視鏡に用いられる小さなレンズの加工機には、この問題を防ぐ機構が組み込まれているのですが、リレーレンズは消化器内視鏡のレンズと比べて非常に大きく長いため、その加工装置にはこの機構を組み込めないことが理由でした。
そこで、まずはCAD上でシミュレーションして解決の糸口を探り、先輩や上司とも議論を重ねました。その結果、「試す価値がある」と判断し、実験用の部材を用いて、似た構成を持つ別の機械で試験を行ったところ、狙い通りの成果を得ることができました。まだ入社2〜3年目でしたが、誰もが難しいと考えていた課題に挑戦し、解決へと導いた経験は、私にとって大きな自信と成長につながっています。
また、設計そのものが非常に楽しく、自分で機械を操作して精度検査を行う過程では、技術者としての探究心が大いに満たされました。当時、次々と新しい機械に携わる機会に恵まれ、オリンパスのものづくりに貢献できている実感がモチベーションになっていたと思います。
新たな挑戦で切り拓く技術革新。データドリブン設計の実現に向けて
──内視鏡挿入部の設備開発ではどのような学びがありましたか?
内視鏡挿入部の硬さを測る設備や、外側にゴム素材をコーティングする機械の付帯設備などを担当しました。
これらの設備では、設計のプロセスだけでなく、設計に対する考え方そのものがレンズ加工機とは大きく異なります。新しい発見が多く、視野が大きく広がりました。
また、レンズ加工機の開発ではいつも同じメンバーで進めることが多かったため、新しいメンバーと仕事をする機会も増えました。設計方法ひとつとっても、「こんな考え方があるのか」と学ぶことが多く、成長につながったと感じています。
──再び内視鏡レンズ加工機に携わるようになって印象に残っていることを教えてください。
いま取り組んでいる設備には、とくにやりがいを感じながら取り組んでいます。当初は既存の主力機を小型化し、いくつかの機能を追加する計画でしたが、すべての要望を実現するには従来の構造では対応できないことがわかり、実験機の段階で大幅な設計の変更を上司に提案しました。
その後、導入予定の現場で実験機のプレゼンを行い、精度向上などのメリットについて詳しく説明したところ、構造の大きな変更に不安を抱える声もありましたが、「これを機会に新しいことに挑戦しよう」と前向きに受け入れていただけることに。
結果として、砥石の形状や使用回数、精度情報などのデータを一元管理し、加工機上でリアルタイムに測定・修正する仕組みを採用することで、常に一定のレンズ品質を保つことに成功しています。
現在は、生産機の組み立てと電気配線が完了し、精度検査に着手しようとしている段階です。来年には加工検証を終え、現場に導入される見込みですが、自分がゼロから設計したものが現場で実際に使われることに、大きな手ごたえを感じています。
私が入社してからの十数年で、レンズの小型化が進み、求められる精度が飛躍的に向上しました。また、近年はデータを収集し、数値で管理する方向にシフトする流れがあるため、特定の機能に依存しない柔軟な設計を心がけ、省人化や技術の向上を常に意識しながら取り組んでいます。
現状に満足せず、常に一歩前へ。変化を恐れない挑戦が、未来の価値を生み出す鍵に
──仕事をする上で、どんなことを大切にしていますか?
既存の価値観にとらわれ過ぎないことです。現在導入されているものを参考にすることは非常に重要ですが、「これまで問題なくできているから、このままで良い」と安易に判断せず、それが本当に最適なのかを常に疑い、見直す姿勢を心がけてきました。
また、世の中には次々と新しいニーズが生まれています。時間があれば展示会に足を運んだり、メーカーの方から紹介された新しい技術や製品の情報を蓄積したりすることで、新しい価値観を積極的に取り入れるよう心がけています。
さらに、知らないことに対してオープンであることも意識している点です。間もなくキャリア15年目を迎えますが、ベテランだからといって立ち止まることなく、新しい情報にいつも敏感でありたいと思っています。
──今後の展望を教えてください。
これまで10年以上にわたってレンズ加工機に携わってきましたが、今後は別の分野の生産設備開発にも取り組み、技術者としての知見をさらに広げていきたいと考えています。たとえば、忙しく動いている組立機のような、メカ好きの好奇心を刺激するような設備にも携わってみたいですね。
レンズ加工機だけを手がけていると、どうしても技術領域が偏ってしまいがちです。新しい技術やニーズに柔軟に対応できる力を養うためにも、常に新しいことにチャレンジし続けたいと考えています。
※ 記載内容は2024年12月時点のものです

