環境規制を見据えた材料開発を推進。厳しい制約を乗り越えた先にあるやりがい
──現在の仕事内容について教えてください。
内視鏡に使われているゴム材料の開発を担当しています。Oリングと呼ばれる水漏れ防止用のゴムなど、内視鏡ではさまざまな部位にゴム材料が使われていますが、私が主に取り組んでいるのは、製品の外側を覆っている材料の開発です。
近年、化学物質に関する環境規制が厳しくなり、いま使用している材料も将来的に規制される可能性が出てきています。しかし、医療機器の材料を変更するには、医療機器の法規制に従い多くのプロセスを経る必要があり、その手続きにはかなりの時間がかかります。
そのため、使用規制が強化される前に代替となる候補材料を選定し、準備を進めておかなくてはなりません。現在は、そのための材料検討を進めている段階です。
私が所属しているチームは5名体制で、それぞれのメンバーが各候補材料を担当して開発を進めています。テーマリーダーとして、チーム全体を取りまとめることが私の役割です。
また、現行品のBCP(事業継続計画)対応の一環として、製品の安定供給に向けた取り組みも行っています。たとえば、いま使っているゴム材料のひとつに、メーカー側が製造方法の変更を予定しているものがあります。そのため、変更後に問題が生じないかどうかを検討しています。
このプロセスでは工場側とも連携しながら、工場が対応すべき部分は工場に任せ、材料開発側が対応する部分は私たちが責任を持って進めるという役割分担で作業を行っています。
──オリンパスで医療機器の開発に携わるやりがいはどんなところにありますか?
医療機器に使用されている材料は、大半が工業用途を前提として製造されており、医療用途として保証されているものはほとんどありません。そのため、私たちが材料の安全性を検査し、医療用として使用可能かどうかを判断しなくてはなりません。
しかし、こちらが十分に検査を行い「安全性に問題はない」と保証しても、最終的にメーカー側が「医療用途には適さない」と判断するケースも少なくありません。医療機器で使える材料の選定には多くの制約があり、難易度が高い仕事ですが、そこにやりがいも感じています。
材料技術部門から生産現場へ。工場での不具合対応が技術者として幅を広げるきっかけに
──入社の経緯、配属後の仕事内容について教えてください。
オリンパスに興味を持ったきっかけは、高専時代に同じ研究室の同期がオリンパスの関連会社に就職したことです。
その後、大学に進学し、大学院では血液中のタンパク質を検出して病気の早期発見につなげる研究に従事しました。その経験から医療業界への関心が高まり、医療機器開発のトップ企業で自分の力を試したいと考え、オリンパスに入社しました。
入社後は、開発の基礎を学びながら、ゴム材料だけでなく樹脂チューブやゴムの複合材料の開発にも携わりました。2年目からはゴム材料の主担当となり、柔軟性と高強度を両立する材料の配合開発に取り組んでいます。
当時、開発部門から要望を受けてさまざまな材料を試作しましたが、期待した成果は得られませんでした。試作段階では物性が良くても、生産に移行するとばらつきが出てしまい、思うような結果を出せなかったのです。会津オリンパスに出向するまでのあいだは、もどかしい日々が続いていました。
──会津オリンパスに出向した理由は?そこでの経験とあわせて教えてください。
入社当初から工場で働きたいと考え、上司にも伝えていました。大学院での研究生活を通じて、自分には現場でのものづくりが性に合っていると感じていたからです。入社4年目に、ようやくその希望がかないました。
会津に出向して3カ月後に経験した不具合がとくに印象に残っています。
当時、私の先輩が中心となってゴムの成形過程で使用するある副資材を導入したのですが、その際に不具合が発生してしまいました。その副資材は、すべてのゴムチューブの成形に使う共通の材料でした。そのため、どのチューブで不具合が発生しているのか、どのくらいの不良率なのか、どのような不具合が起きているのかなどが把握できず、効果的な対策を打つことができませんでした。
最初は私も一緒に現場で不具合対策に取り組みましたが、現状を把握できていないため、解決の糸口がまったく見えませんでした。原因分析を進めるためには、まず情報を整理し、メンバー間で共有することが必要でしたが、先輩は現場対応に追われ、そこまで手が回らない状態でした。
そこで、先輩をフォローするかたちで私が現状整理に当たることに。これまでにも現状をまとめることで業務を前に進めてきた経験があったので、自ら率先してその役割を担うことにしました。
その結果、課題が可視化されてメンバー間での情報共有が進み、対策に向けてチーム全体が一丸となれたことで、無事に原因の特定に成功。副資材の変更が必要だと判断し、材料技術のメンバーとも連携しながら、不具合発生後約3カ月で候補材を絞り込んでいきました。
さらに、2年かけて副資材の使用条件のチューニングや成形品の機能面での同等性を確認し、最終的にはすべての形状の成形品を生産できる状態にしました。
会津工場で学んだ現場力。コミュニケーションの重要性を学んだことが転機に
──会津工場での経験を通じてどんなことを学びましたか?
コミュニケーションの大切さです。工場で不具合が発生すれば、ただちに生産スタッフにヒアリングを行い、不具合の内容を正確に把握することが求められます。その後、ヒアリングした内容をまとめ、すみやかにメンバー全員に展開し共有することが非常に重要です。
現場で問題を解決した後も、品質保証部門とやり取りし、生物学的に安全かどうか、滅菌後も品質が維持されるかなどを確認しなくてはなりません。こうしたさまざまな部署と連携しながら問題に対処する経験を通して、密なコミュニケーションの必要性をあらためて実感しました。
また、現場への理解が深まったことも収穫でした。現在、材料技術部門で開発している製品は、会津工場で生産している製品の延長線上にあるものです。不具合対応や新製品立ち上げ、改善業務を通じて、工場での新製品導入や成形作業の流れを把握できたことは、新しい材料を開発する上で大いに役立っています。
メンバーから「工場ではこの部分をどう処理しているのか?」と相談を受けることも多く、現場での経験がチーム全体に良い影響を与えていると感じています。
──現在の部署に戻ってから、以前と比べて仕事への向き合い方に変化はありましたか?
大きな変化を実感しています。材料技術部門に復帰後、すぐにテーマリーダーとして環境規制材料への対応に着手しましたが、メンバーがどのような業務を進めているのかを常に把握できるよう、意識して話しかけるようになりました。また、毎週の定例ミーティングでは、メンバーの進捗状況を確認する前に、まず雑談を交えて場の緊張をほぐすようにしています。これは、以前にテーマリーダーをしていたときにはできていなかったことです。
さらに、会津工場で現場の情報を整理する中で、全体を俯瞰する視点を養い、チーム内のキーパーソンを見極める力が身につきました。コミュニケーション力が大きく向上し観察眼も磨かれたと思います。
また、スピードと正確さのバランスを重視できるようになったことも大きな変化です。たとえば、議論した後は、決定事項などをまとめた摘録を即日配信するようにしていますが、スピードを優先するあまり正確さを欠いてしまうと、かえって相手の時間を奪うことになりかねません。そのため、ポイントを見極めつつ、すばやく展開・共有することが、相互理解の促進と業務の円滑化につながると考えるようになりました。
会津工場でそれまでの仕事の進め方を見直し、優先事項を明確にできたことが、キャリアの転換点になったと思っています。
フォロワーシップを貫き「患者さん第一」を実現。広い視野と技術で次なるステージへ
──コアバリューにある「PATIENT FOCUS(患者さん第一)」については、日々の活動の中でどのように意識されていますか?
共に働く仲間にとって助けになるような仕事をすることが、チーム全体の成果を最大化し、それが結果として「患者さんを第一に考える」ということにつながると考えています。
たとえば、材料に不良が発生すると生産側に負荷がかかり、製品の安定供給が難しくなります。材料として物性が優れているだけではなく、製品として組み立てたときにほかの部材に悪影響を与えないかなど、製品として必要な要件をすべて満たすことを意識して開発を進めることが重要です。
材料技術を担う者として、生産しやすい材料をつくることこそが、「PATIENT FOCUS(患者さん第一)」の理念を実現するための一歩だと信じています。
──今後の展望をお聞かせください。
いま開発中の材料が市場で使用されているところを見届けたいと思っています。単に開発するだけでなく、現場での生産プロセスを自分の目で確認し、製品としてかたちになるところまで関わりたいという気持ちがあります。
また、これまでメンバーやチームをまとめながら業務を遂行する経験を重ねていく中で、自分にはマネジメント業務が向いているのではないかと思うようになりました。将来的には職制クラスに挑戦し、管理業務を担いながら、高い視座で開発業務に取り組むことも考えています。
さらに、これまで長く携わってきたゴム材料以外の分野にも挑戦してみたいですね。ゴムを洗浄するプロセスの開発方法や、生体への安全性評価における基準、試験内容、法律対応など、チャンスがあればさまざまな領域で知見を広げていきたいと思っています。
※ 記載内容は2024年10月時点のものです

