シングルユース十二指腸内視鏡の開発を担当。医療現場の期待に応えるやりがいを胸に
──現在の仕事内容について教えてください。
シングルユース十二指腸内視鏡の開発に携わっています。私の主な役割は、製品の品質を確保するためのプロセスバリデーションです。これは、出来上がったモノを検査するのではなくプロセスを保証することで、常に良品を生産できるようにする仕組みづくりのこと。たとえば、部品を接着する際には、接着剤の塗布範囲や接着剤の量など、手順を細かく定め、それをドキュメントとして整理し、現場に浸透させることで品質の安定化をめざしています。
この取り組みは、手作業だけでなく機械加工にも応用されています。たとえば、カシメ加工では部品に掛ける力がバラつく可能性があるため、力の変動範囲や検知方法を事前に設定し、管理することが求められます。
また、設計の意図を理解せずに工程を組み立てると、大事なポイントを見落としてしまうことがあります。そのため、どこに注力すべきかを意識しながら工程を構築することが大切です。設計上に無理があるような場合には、許容範囲を的確に判断し、工程管理の幅を広げることができるように設計変更の提案をし、よりよい品質のものを、安定した生産ができるように心がけています。
──オリンパスでの仕事に、どのようなやりがいを感じていますか?
いま実施しているプロセスバリデーション活動では、実行リーダーとして約40名のメンバーをまとめ、計画化から進捗管理・課題管理だけでなく、メンバーの配置も任されています。自由度が高い分、プレッシャーもありますが、自分の裁量で物事を進めることができることにやりがいを感じています。
医療機器に携われるのもオリンパスならではの魅力です。リユースタイプの十二指腸内視鏡は構造がとても複雑で、細部まできれいに洗浄することが難しく、洗い残しによる二次感染のリスクが課題となっていました。こうした背景から、シングルユース十二指腸内視鏡のニーズが高まっており、製品を待ち望む医療従事者や患者さんのために、日程通りに製品を提供できるようチーム一丸となって取り組めることに、大きな意義を感じています。
16年にわたる成形レンズ技術の集大成。海外で培った技術移管のノウハウが糧に
──入社後、どんな仕事を経験してきましたか?
製造部に配属され、主にカメラ用レンズの製造に携わり、0.1㎛レベルの高精度な金型加工技術を磨いてきました。レンズの金型加工には、成形や成膜といった多くのプロセスが含まれるため、幅広い知識と技術が求められます。どんなレンズ形状であっても、安定して生産できる技術の開発に注力していました。
また、高い精度を実現するためには、機械の精度だけでなく、工具の状態やワークの変形、段取りの精度、室温、測定精度など、さまざまな要素に気を配る必要があります。これらの経験を通して、細部に目を向ける視点が身につきました。
その後、生産技術部に異動し、製造の効率化や工程改善に取り組みました。要素技術部では、製造方法そのものの見直しに携わっています。
入社10年目に石川事業所へ転勤となり、金型加工の前工程や後工程に加え、成形レンズの二次加工、金型成膜、金型材料の探索、レンズ成形といった幅広い技術開発を担当しました。
約16年にわたって成形レンズに関する一連の工程を経験し、知識と技術力を身につけられたことは、私の強みになっています。
──当時、とくに印象に残っていることを教えてください。
海外で技術移管に取り組んだ経験です。現地に出張し、中国では金型加工の精度向上やコスト削減の技術を伝え、ベトナムでは成形レンズの二次加工の職場を立ち上げました。中国のレンズ製造拠点は歴史が長く、現地スタッフも経験豊富でした。技術を5割ほど伝えれば、残りは自分たちで改善しながら成果を上げてくれていました。
一方、レンズ製造拠点が新設されたばかりのベトナムでは、設備の立ち上げや治工具の準備、作業基準書などのドキュメント作成、現地スタッフへの作業指導、生産運用の構築まで、すべてを私主導で進めなくてはなりませんでした。パソコンの立ち上げ方すら知らないワーカーも多く、教えた技術を習得する前に辞めてしまう人が相次ぎ、技術の定着がなかなか進みません。そのため、何度も現地に足を運ぶ必要がありました。
「なぜ教育が進まないのか」と課題を立て、「なぜなぜ分析」を通じて根本原因を探り、動画の手順書を取り入れたことが突破口となりました。動画は動作を視覚的に伝える点で効果的ですが、重要な部分を見逃されることもあります。タイミングよくテロップを入れたり、シーンを分割して要点を強調したりと、理解を促す工夫をしました。
その後、スタッフの定着率が上がり、技術の習得が進んだことで、技術移管は無事に成功。海外工場への技術移管の難しさと、その解決方法を学べたことは貴重な経験になりました。また、当時は非常に高いレベルの加工精度を求められていました。このときの経験は、いま取り組んでいるシングルユース十二指腸内視鏡の開発でも活かされています。
未経験から内視鏡開発の最前線へ。試作を重ねて手にした新たな視点と成長
──現在の部署に異動した経緯や、製品開発のプロセスについて教えてください。
異動のきっかけは、この部署の創立メンバーである部長からの指名でした。部長も私と同じ成形レンズ出身だったことから、立ち上げにあたって声をかけていただいたのだと思います。これまで内視鏡にほとんど携わったことがなく不安もありましたが、シングルユース製品はオリンパスがとくに力を入れている重点分野のひとつです。前向きな気持ちで異動を決めました。
シングルユース十二指腸内視鏡の開発では、まず製品の特徴や取り入れる要素技術など、基本的な部分から議論をスタートしました。すべての部品や機能のバランスを整えるために、長い試作期間を設け、慎重に進めていったことを覚えています。
製品コンセプトは社内の戦略部隊から示され、それを具体的な製品へと落とし込むのが私たちと設計部隊の役割です。当初は内視鏡の知識が足りずに苦労しましたが、試作を繰り返す中で徐々に理解を深めていきました。
試作イベントは毎日ミーティングを行い、課題出しと方向付けを行いながら進めていきました。課題に伴い多くの設計変更を行いながら、設計や組み立て方法を検証する試作イベントを取りまとめる役割も任され、課題と計画などを管理しました。
開発の初期段階では予想外の不具合が次々と発生しましたが、一つひとつ原因を突き止めて対処していくことで、少しずつ全体像がクリアに。製品がかたちになっていく過程で大きな充実感を得ることができました。
その後、製造移管のフェーズに入り、内視鏡開発の難しさをあらためて実感しています。部品の一つひとつに意味があることを知るなど、深く内視鏡の知識を学べたこの3年間は、私にとって大きな成長の時間になりました。
──仕事をする上で大切にしていることは?
一緒に働く仲間とは、苦しみも楽しみも分かち合いたいと考えています。そのため、職場の内外を問わず、積極的にメンバーとコミュニケーションを取ることを心がけてきました。
いまの部署は、さまざまな部署からメンバーが集められたチームです。とくに開発当初はコロナ禍の影響で交流のチャンスが限られていたため、積極的に声をかけて食事に誘ったり雑談したりと、メンバー同士の関係づくりに取り組んできました。
また、周囲のメンバーに気を配り、壁をつくらないことも大切にしています。チームにはあまり自分の意見を表に出さない方もいますが、そうした方々の意見や発想が新たなヒントになることも多いからです。
部門の枠を超えた連携を現場でリードし、プロジェクトを成功へと導く存在に
──直近の目標を教えてください。
これから始まる上市に向けた組み立てイベントを計画通りに進め、製品をスケジュール通りに出荷することです。そのためには、限られた期間内で効率よく業務を進めることが求められます。
約40名のメンバーのうち、半数以上は東京や長野から応援に来てくれている方々なので、チームとして一体感を生み出すのは簡単ではありません。ほかにも多くの課題がありますが、力を合わせて一つひとつ解決しながら前に進んでいます。
──中長期的なキャリアイメージについても聞かせください。
プロジェクトをリードする機会が増え、今後もこの方向でキャリアを築いていきたいと考えていますが、管理職になることは視野に入れていません。現場に立って、部門を超えてメンバーをまとめながらプロジェクトを推進する、コンカレントエンジニアリングの第一人者をめざしています。
そう考えるようになったのは、シングルユース十二指腸内視鏡の開発に携わり始めたころ、映像設計を担当していた方から指導を受けたことがきっかけです。2カ月先の予定を1日単位で緻密に組み立てる方法を教わり、長期的な計画を立てるスキルを身につけたことで、視野が大きく広がりました。
良い製品を生み出すためには、ひとつの工程だけではなく、隣接する複数の工程を横断し、全体を見渡しながら課題を解決していくことが大切です。シングルユース十二指腸内視鏡の開発においても、そうした仲介役が重要だと考えており、私がその役割を果たしたいと思っています。
私はこれまで、設計業務と並行して工程設計や要素技術開発にも携わってきましたが、これこそがまさにコンカレントエンジニアリングのプロセスです。
成形レンズの周辺工程をすべて経験している技術者は、オリンパス社内でも私以外にあまりいません。独自の経験と知見を活かしながら、コミュニケーション力や課題解決力、情報をまとめる力をさらに高めて、チームの力を最大限に引き出せる存在になりたいと考えています。
※ 記載内容は2024年9月時点のものです

