技術者からマネージャーに。挑戦を楽しむマインドセットが導いたOVNCへの道
──ご経歴と現在の業務内容について教えてください。
阪本:2007年に新卒で入社し、長野県の辰野工場にて半導体検査装置や液晶パネル検査装置のソフトウェア開発を行っていました。入社4年目に人材開発部門へ異動後は、約7年にわたって科学事業や全社の人材開発業務に携わりました。
2019年に、OVNC(オリンパスベトナム)へ赴任。総務人事部のマネージャーとして約80名のチームマネジメントを経験しました。2021年に映像事業が譲渡されてからは、工場での映像事業と医療事業のリソース分割を担当することに。効率化に伴い、駐在員が帰任する中で、施設管理、EHS、医療事業の人材開発機能を段階的に総務人事部へ統合し、マネジメント範囲が大きく拡大しました。
また、2023年にOVNCが医療工場として運営を再開するために、スムーズなスタートをきれるようさまざまな業務に着手しました。その後、2024年4月に帰国し、現在は日本リージョンにて、次世代リーダー育成、リーダーシップ開発、キャリア開発を主軸とする組織人材開発部門のマネージャーを務めています。
新田:私は1993年の入社以来、約15年間、生産技術本部の生産技術者として、またマネージャーとして、レンズやモールドなど部品加工法の開発業務に携わりました。その後、2009年から製造関連の企画や戦略を担当するようになり、2013年からはOT経営統括本部でものづくり担当部長を、2017年からOT製造統括本部で製造戦略部長を、さらに2019年からはバイスプレジデントとしてManufacturing Strategy Globalをリードしました。
私が責任者としてOVNCに赴任したのは2021年です。阪本さんとは実は同時期に辰野工場にいたこともありましたが、直接接点を持つようになったのは赴任してからですね。
現在はOVNCの責任者として、工場経営はもちろんのこと、中期計画策定(ローコスト、リスクマネジメント、人材育成基盤構築)、グローバル生産構造改革の検討と実行管理等に取り組んでいます。健全な組織運営の鍵を握るのは、阪本さんをはじめとする駐在員たちの存在です。彼ら、彼女らの能力向上を支援し、それぞれが担う機能を果たせるようサポートすることが、私にとって重要な任務だと考えています。
──お二人のキャリアは自ら希望して歩んできたものでしょうか。
阪本:そうですね。最初はソフトウェアエンジニアとしてキャリアをスタートさせたのですが、学生時代に教員をめざしていたこともあり、ひとの成長やひとに関する仕事への興味が強かったです。人材開発部門への異動をしたのも自ら手をあげたので、自身の希望が、現在のキャリアにつながっていると思います。
新田:私は技術者としてキャリアを築くだろうと思っていたので、現在のポジションは自分自身にとって意外な展開になっていますね。OVNCの責任者になるとは想像していませんでした。ただ、新たな役割に挑戦をしたことで、多くの貴重な知見を得られたと思っています。
分社化とコロナ禍が重なる中、リーダーシップを発揮。経営視点からの助言が支えに
──阪本さんがOVNCへの赴任を決めた経緯と、現地で取り組んだことについて教えてください。
阪本:上司からの突然の打診がきっかけでした。オリンパスはグローバルに事業や生産を展開していますが、人事などコーポレート部門で現地人材をマネジメントできる拠点は限られています。人材開発担当としてキャリアの幅を広げたいと考えていたため、部門全体のマネジメントを経験できるOVNCは非常に魅力的でした。
ところが、赴任後にメインで取り組んだのは、いわゆる人事や総務といった業務ではなく、映像事業の分社化にともなう工場の物理的な分割業務でした。当時の私にとって、工事や施設管理は未経験の分野。映像事業側やゼネコンとの折衝、工場内でのレイアウト変更の調整、生産や既存インフラを維持しながらのリノベーション、新食堂のオープンなど、非常にチャレンジングなプロジェクトでした。
これに追い討ちをかけたのがCOVID-19です。世界中が混乱する中、現地でOVNCの特別対策本部を立ち上げ、体制の整備に努めました。ロックダウン対応、ワクチン接種、検査プログラムなど複雑な取り組みをOVNC内の各機能と連携して対応し、従業員の感染者を最小限に抑えて生産を維持できたことは、「患者さん第一」「誠実」といった当社のOur Core Valuesにつながる重要な取り組みだったと感じています。
約3年の歳月を要しましたが、他の駐在員や配下のスタッフ、そして新田さんらに支えられながら、2023年4月に落成。医療工場として無事に再スタートを切ることができました。
──当時の阪本さんの活躍は、新田さんにどう映りましたか?
新田:映像事業の分社化プロセスにロックダウンが重なり、業務は複雑さと多忙さを極めていました。組織や施設の分割は、当時のOVNCでは前例のない非常に困難な作業。毎日のように上がってくるトラブル報告を同時並行で処理しながら、コストダウンも進める必要がありました。
連日の会議をファシリテートし、情報共有や指示出しに追われるなど、当時のOVNCの中で最も大きな精神的負担と肉体的負担が阪本さんにかかっていたと思います。私が行ったのは最低限の支援に過ぎません。阪本さんにはとても感謝しています。
阪本:分社化やCOVID-19対応では、行政を含む社外とのやり取りが少なくありません。新田さんとミーティングする時間を頻繁に設け、経営視点での助言や推進体制づくりのサポートを受けたことは、意思決定する上で非常に助けになりました。現地メンバーとのコミュニケーションを深めようと、一緒に交流したことも印象に残っています。
赴任経験で学んだ現場の重要性と経営視点。挑戦の先に見えた新しいキャリアの道筋
──現地での新しい人事制度導入の取り組みについて教えてください。
阪本:2008年の設立以来、OVNCでは大規模な人事制度の見直しがされておらず、等級、評価、報酬などの仕組みに大きな課題を抱えていました。それらにようやく着手できたのは、当時取り組んでいた映像事業の分社化とCOVID-19の対応後でした。
私が企画立案した人事制度改革案をベースに、現地のコンサルティングファームのスタッフらと共に現状分析を実施。オリンパスのグローバル人事制度の考え方を取り入れる一方、現地の実情を考慮しながら、パフォーマンスに応じて従業員を評価する制度づくりをめざしました。スタッフ層だけでなくワーカー層についても評価基準が明確化されたことで、透明性や公正性が確保されるようになりました。
新田:OVNCにとって大きなミッションのひとつであるコストダウンを実現するためには、現地メンバーのモチベーションや能力の向上が欠かせません。阪本さんのこの取り組みは、彼ら、彼女らの意欲の喚起や業務に集中できる環境づくりに貢献する非常に重要なステップだったと理解しています。
──現地での一連の取り組みを通じて、お二人はどのような気づきや学びを得ましたか?
阪本:あらためて現場の重要性を認識しました。人事部門にいると、どうしても現場から遠ざかりがちです。現場では日々何が起きていて、それを一つひとつ解決することで初めて製品をお客様にお届けできることを肌で感じられたことは、非常に有意義でした。
また、さまざまな問題に直面するたびに新田さんや上長と相談しながら進めることで視野が広がり、経営視点が身についたと感じています。意思決定の精度が高まり、マネジメントスキルが大幅に向上しました。
さらに、総務人事部マネージャーとして本社機能やインフラ維持を担当する中で、社内外の多くのメンバーとやり取りする機会がありました。関係者と密にコミュニケーションしながら施策を推進することの重要性を実感できたことも有益でした。
新田:こうした重責を任される機会はなかなかありません。阪本さんのこの5年間の赴任経験は、ビジネスパーソンとして大きな価値があったと思っています。重要な本社機能の代表者として責任を果たすことが、自主自立の精神やタフさに磨きをかけ、成長につながることを阪本さんは身をもって示してくれました。
一方で、私個人は家族の大切さを身に染みて実感しています。私はベトナムに単身赴任していますが、会社の責任者としての責務を全うしながら私生活を充実させることの大切さと難しさを噛み締めているところです。
阪本:私も現地に同行した家族に助けられる場面が多くありました。無事に乗り切ることができたのは、家族の支えがあったおかげだと思っています。
挑戦意欲と挑戦を支える風土の醸成が、組織の未来を切り拓く原動力に
──今後のお二人の展望を教えてください。
阪本:これからも引き続き人事の仕事に携わりたいと思っています。組織人材開発の施策を通じて従業員の成長を支援し、ひとりでも多くの方が「オリンパスで働いていて良かった」と思えるような組織にしていくことが目標です。
新田:OVNCでは今後も継続してコストダウンと従業員のエンゲージメント強化に取り組む一方、内視鏡処置具の生産拡大と新製品導入に伴い、新棟の建設を予定しています。新たな挑戦が目白押しです。課題の解決に向けて、私もこれまで以上にリーダーシップを発揮していきたいと考えています。
──これから挑戦しようとする方に向けて、メッセージやアドバイスはありますか?
阪本:キャリアには偶然と必然の両側面があります。偶然に訪れたチャンスや予期せぬ出来事を必然へと昇華させられるかどうかは、個人の裁量次第です。新たな挑戦には不安をともないますが、積極的にチャレンジすることが自己成長に直結します。困難な状況に直面しても、周囲の人々を巻き込み、前向きに取り組むことが、必ず将来のキャリアの糧になります。
新田:私はコロナ禍での赴任となったため当初は苦労もありましたが、他企業の方々と出会う機会に恵まれ、非常に貴重な経験をさせていただきました。もし、機会やチャンスがあるのであれば、変化と失敗を恐れずに新たな世界へ足を踏み入れ「DEEP DIVE」してもらいたいです。思わぬところで思わぬ広がりや大きな成長につながります。阪本さんと同様に、躊躇せずにチャンスを確実にものにしてほしいと私も願っています。
また、挑戦の過程では困難に遭遇することもあると思います。そういったときは周囲に相談をしてほしいです。1人で抱え込んでしまうと抜け出せないこともあると思うので、同僚や上司を頼ることも大切です。悩んだときに支え、声を上げやすい環境をつくるのが上司の役目ですから、私自身もそうした環境をつくっていきたいです。挑戦を後押しし、チームで成功へと導く環境をつくることが、オリンパスがより強い組織になるための近道だと信じています。
※ 記載内容は2024年5月時点のものです

