消化器内視鏡に使用する接着剤の耐久性向上を推進。耐久性と生産性の両立の実現に向けて
──現在のお仕事の内容について教えてください。
消化器内視鏡の外表面に使用する接着剤の耐久性向上プロジェクトに主担当として参加し、候補材料の選定、材料評価による候補の絞り込み、接着剤の仕様決定などを担当しています。
内視鏡は使用後に洗浄・消毒されますが、近年は各国の法規制により、洗浄・消毒のレベル強化が求められており、より強い薬剤が使われるようになってきました。これにともない、内視鏡の外表面に用いられる接着剤の材料をより耐薬品性の高いものに変更することが急務となっています。
加えて内視鏡は、数ミリの直径の中に多種多様な部品が組み合わさって構成されている精密機器です。組み立ての過程では顕微鏡を使って手作業で部品を接着する工程もあるため、接着剤には塗布しやすさに関して厳しい要求があります。そのため、これまで社内では生産性を優先した配合が検討され、耐久性との両立に悩みを抱えていました。
今までオリンパスは接着剤の材料を内製を中心に検討してきましたが、今回のプロジェクトでは、内製にこだわらず社外から調達した材料を改良する方針としました。調達した材料はそのまま使用できるわけではなく、内視鏡の接着剤の要求仕様を満たすよう耐久性を確保した上で改良を重ね、塗布のしやすさの向上をめざしました。
結果として、従来の接着剤の生産性と高い耐久性を実現する材料を開発することに成功。現在は工場への導入に向け、内視鏡の完成品の評価や、品質確保のために必要な製造工程・設備などの条件の最適化を進めています。
──オリンパスで働くやりがい、魅力をどんなところに感じていますか?
学術論文や学会発表などでオリンパスの製品を使用した診断法や治療法が取り上げられることも多く、オリンパスの製品が医療の発展に貢献していることを実感するたびに、大きなやりがいを感じます。
内視鏡は最小限の侵襲、正確な診断と治療、そして痛みや合併症のリスク低減を可能にする、すばらしい医療機器だと思います。そんな価値あるツールをつくっている会社で働けることを誇りに感じます。
また、私は中途入社なのですが前職と比べ、オリンパスが最終製品メーカーであることから、最終的な仕様を自社で決定できる点が魅力的だと感じています。最終的な仕様を自社で決められることは、どんな機能を搭載するか無限の選択肢があるということ。技術者にとっては、それらを実現する上で、高度な技術的課題に取り組めるということになります。無限の可能性を探求できるところに、おもしろさを感じますね。
人々の役に立ち、幸福な人生に貢献できるものづくりをめざして、オリンパスへ
──オリンパス入社の経緯や、入社後に携わった仕事について教えてください。
学生時代は材料研究に従事し、自分がつくったものをより広く使ってもらいたいという思いから、スマートフォンやタブレットなどのモバイル製品に使用される材料開発を手がける化学メーカーに入社しました。
接着剤や液晶ディスプレイ用の光学部材の開発に携わり、接着剤の設計・評価方法について学ぶ中で、次第に人々の役に立ち、幸福な人生に貢献できる製品に関わりたいと考えるように。これが、オリンパスへの転職を考えるきっかけとなりました。
オリンパス入社後は、当時から課題となっていた、内視鏡用接着剤の劣化メカニズムの解明に取り組みました。化学分析を通じて原因物質を特定できたことが、現在のプロジェクトにもつながっています。
──異業界への転職によって、ギャップを感じたことはありますか?
医療機器の開発期間の長さには驚きました。毎年新製品が発売されるモバイル製品と違い、人体に使用する医療機器には高い安全性が求められるためです。さらに、内視鏡は世界の各拠点で修理しながら再利用されているため、接着剤や部品を各国に輸出する必要があります。製品化に必要な工程の多さとハードルの高さを感じました。
社員の性格特性の違いも印象的だった点です。モバイル端末のようなコンシューマー製品を扱う業界は競争が激しいため、前職では体育会系の雰囲気を持つ方が少なくありませんでした。一方、医療業界は参入障壁が高く、市場シェアも安定しているため、オリンパスには技術開発に時間をかけられる環境があります。そのため、のびのびと創造的に働いている方が多いと感じます。
また、働きやすさの点でも違いを感じました。私は2022年に出産を経験し、約半年間の育休を取得して復帰したのですが、オリンパスに勤める夫も私と同じ期間の育休を取得しています。性別を問わずに育休が取りやすい会社だからこそ、男女ともに仕事と家庭を両立できる環境になっていますね。
新しい評価法と材料の導入をリード。前職と入社後の経験がかたちに
──現在のプロジェクトに取り組む中で、印象に残っていることはありますか?
材料技術部門の材料技術者と開発部門のメカ系設計者、そして工場の方々と議論を重ねた日々が印象に残っています。今回のプロジェクトでは従来行われてきた評価方法を見直し刷新しようと考えたため、コミュニケーションに苦労しました。
当初、材料技術部門では接着剤自体の評価が行われており、開発部門では内視鏡の完成品の評価が実施されていました。それぞれの専門性の観点で評価試験が実施されていたわけです。たとえば、材料技術部門では接着力を評価するために、ステンレスの板同士を接着剤で貼り合わせて接着強度のテストを行ったり、接着剤自体の機械的特性を測定したりしていました。材料単体の評価方法に関しては、材料技術部門はプロです。
しかし実際には、メカ系設計者の目線で材料技術部門の試験を見直すと、接着剤そのものの評価以外にも実施すべき項目が見えてきたのです。たとえば接着剤の使用箇所によって貼り合わせる材質も使用時にかかる負荷も異なります。それらが評価できるような評価サンプルの形態や試験法を考案しました。この評価法は完成品評価より簡便で、ばらつきが少ないというメリットもあります。
しかし、これまでの評価法と異なっていたため、簡単には受け入れられず、当初は議論が平行線を辿り、思うようにコミュニケーションを図ることができませんでした。
そこで、材料技術部門のラボに頻繁に足を運んで実験に立ち会うなど、直接の対話を心がけました。新しい評価方法で接着剤の耐久性向上に一歩近づけること、プロジェクト全体の方針やその評価の位置づけを含めて丁寧に説明した結果、徐々に皆さんの理解を得ることができました。
今回のプロジェクトで実施した、接着剤の耐久性向上に向けた社外からの材料選定や評価法の変更を適切に行うためには、接着剤に関する専門知識と、製造方法や使用方法を含む内視鏡の知識の両方が欠かせません。前職で接着剤開発や評価の経験を培い、入社後に内視鏡開発部門で内視鏡評価に携わってきたからこそ、材料技術部門と開発部門とを橋渡しする役割が果たせたと思っています。
製品開発の上流工程に関わり、オリンパスのより良いものづくりに貢献できる存在に
──仕事をする上でどんなことを大切にしていますか?
常に「Open & Fair」であることを心がけ、年次に関係なく相手に意見を伝え、また声に耳を傾けるよう努めてきました。上司や後輩はもちろん、派遣社員の方も、同じ技術課題を抱え、共により良いものづくりをめざす仲間である以上、誰もが技術者として対等だと考えています。
プロジェクトの中でも組織にとって何が最善なのか考え、対等に議論をしてきました。新しい評価法や材料の採用をする上でも、それが内視鏡の耐久性向上にとって技術的な最適解であると考え、立場に関係なく「Open & Fair」に話し合いを行いました。
また、品質の確保は第一ですが、コストとのバランスも考慮し、お客様を含むすべての関係者の利益を最大化することも大切にしている点です。たとえば、要素検討段階での技術検討を徹底することで、その後の製品化段階での作業量を減らすことが可能です。
しかし、製品仕様が詳細に決まっていない段階で多岐にわたるパターンのデータをとっても、製品化に活かせないこともあります。日程が遅延してコストが増加すれば、会社やお客様にとって利益になりません。無闇にデータをとるのではなく、必要な範囲を考え最小限の時間と労力となるよう意識しています。
──今後の展望を教えてください。
材料と内視鏡の両方の知識と経験を活かし、引き続き製品開発に携わっていきたいです。現在取り組んでいるプロジェクトのように、製品開発の要素技術の検討段階から関与し、さまざまな製品の材料関係のトラブル解決に貢献したいと思っています。
役職にこだわりはありません。材料と製品の知識をさらに深めながら、任されたポジションで最大限の力を発揮し、常に最高の成果を出し続けていきたいですね。
※ 記載内容は2024年1月時点のものです

