日本×米国のグローバルなプロジェクトをリード。患者さんへの貢献がやりがいに
──現在の業務内容について教えてください。
私は現在、泌尿器科用の内視鏡である軟性尿管鏡に、新たなレーザーシステムを組み合わせるプロジェクトに携わっています。レーザーシステムは、主に尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に発生した結石をレーザー装置によって細かく破砕して、体外に排出するために用いられるものです。
今回のプロジェクトでは、結石の効率的な破砕が可能となった新レーザーシステムを軟性尿管鏡に組み合わせることで、手術時間を短縮し、患者さんの負担軽減に貢献することをめざしています。
結石のレーザー治療では、結石の破片が除去されずに残っていると再度手術が必要になるため、素早く細かく粉砕しなければなりません。手術時間が長引くと、敗血症などの合併症が生じるリスクが高まるため、手術時間を短縮することで患者さんの安全に寄与することができると考えています。また同時に、小型化された新レーザーシステムを組み合わせることで手術室での省スペース化、手術室間の移動のしやすさを実現し、医療現場の作業効率向上にも貢献できると期待されています。
新レーザーシステムは米国のグループ会社OSTA(Olympus Surgical Technologies America)が開発した製品であるため、プロジェクトを進める上では、米国メンバーとも連携しながら、法規制、組み合わせ品質などさまざまな点で問題がないかを確認しつつ、検証を行っています。
──仕事の意義をどんなところに感じていますか?
私が医療業界を志したのは、家族ががんに罹患し、そのつらさや不安を経験したことがきっかけでした。幸いにも早期発見されたことで現在は寛解していますが、同じようにご苦労している患者さんやご家族は多くいるはず。製品づくりを通じて患者さんの安全、健康、そしてご本人とご家族の幸せに貢献できることが何よりのやりがいです。
また、泌尿器科用内視鏡に関わる学会に参加した際、あるドクターが「医師だけでは病気の治療が難しい。医療機器の進歩は速いので医療機器メーカーと協力して最新の治療法に取り組むことが、患者さんを救う近道だ」とおっしゃっていて、医療機器の開発に携わっていることにますます誇りを感じるようになりました。
とくに当社にとって泌尿器分野は、消化器科・呼吸器科に並ぶ注力分野。そうした領域で新しい価値提供ができることに、大きな意義と使命感を抱いています。
入社2年目、社内の第一人者になる覚悟で挑んだ婦人科用軟性子宮鏡プロジェクト
──入社後、どのようにキャリアを歩んでこられましたか。
入社後、外科内視鏡開発部に配属され、次世代泌尿器科用軟性腎盂尿管鏡の開発ドキュメント業務を担当しました。これはいわば開発部の新人にとっての入門編。試験の実施からレポート化、社内の会議での提案まで、内視鏡の製品開発業務の一連の流れを学びました。
その後、次世代婦人科用軟性子宮鏡の設計開発とドクターへのユーザー評価を担当。ユーザー評価では、ドクターのニーズを調査し、それらの要望や設計意図に沿って製品が開発されているかを検証・評価する仕事を主査として推進しました。
当時、オリンパスの婦人科用軟性子宮鏡は高い販売シェアを獲得している一方、市場規模が消化器用内視鏡など他分野と比較して小さく、自社の内視鏡ラインナップや開発有識者、臨床情報が非常に少ない状況でした。
世界中で少子高齢化が進む中、社会的意義のある取り組みだと感じた私は、有識者がまだ少ないからこそ「自分がこの分野の第一人者になろう」と決意。まず、国内のトップドクターを含めた婦人科医の方に子宮鏡に関するヒアリング調査を実施し、その要求を仕様に落とし込むことが技術的に可能かを分析しました。
その結果わかったのは、「患者さんのために内視鏡を0.1mmでも細くしたい」というニーズがあること。婦人科用内視鏡は無麻酔で挿入をし、子宮筋腫やポリープがないかを確認するケースがあるため、痛みを低減するために細径であることが望まれていたんです。
そこで、従来の内視鏡を細径化する設計を考え、それらがユーザーニーズを満たせる仕様なのかを評価する新たな取り組みを行いました。医学生物学評価技術部と連携し、子宮鏡の画像評価・挿入性評価のための婦人科用臓器評価モデル(膣道~子宮)を作製。このモデルを用いて、次世代軟性子宮鏡に関するドクター評価を実施することができました。
これら一連の業務では総勢25名以上のドクターにご協力いただき、社内でも「軟性子宮鏡のことなら安田に聞こう」と言ってもらえるまでに。確かな手ごたえを感じた案件でした。
──入社2年目ながら、こうした実績をあげられた要因はなんだったのでしょうか?
年次や立場に関係なく、本人の意欲次第で大きな裁量を与えてくれる当社の風土があったからこそだと思っています。また、ドクターのニーズに応え、最終的に患者さんの負担軽減に貢献したい、という想いに共感してくれた周りの方たちが部署を超えて協力してくれたことも心強かったですね。オリンパスのコアバリューでもある「empathy」を実感した経験でもありました。
販売継続のための再申請プロジェクトを推進。米国の申請部署との連携強化が成功の鍵に
──これまでの取り組みで、印象に残っていることを教えてください。
2019年から参画した、泌尿器科用軟性膀胱鏡/婦人科用軟性子宮鏡の再申請プロジェクトが印象に残っています。
アメリカで医療機器を販売する際は、アメリカ食品医薬品局(以後、FDA)に承認を得る必要があります。既存の医療機器に対する重要な変更や改良が加えられた際には、既存製品についても再度申請を上げる必要があり、改良品が安全かつ効果的であることをFDAに証明し、販売を継続させることが私たちのミッションでした。
外部規格などの外部環境の変化に即座に対応していく必要があるため、米国における内視鏡の申請は当社製品の中でもとくに難しいといわれています。私が婦人科用軟性子宮鏡の開発組織での申請リーダーを担うようになった時点で、プロジェクトは予定よりも大幅に遅延している状況でした。
まずは「申請業務の日程を短縮するにはどうすればいいのか」を分析することからはじめたところ、申請プロセスに後戻りが発生していることに気づいたんです。
原因は、グローバル間の連携不足。米国の申請部署(以下、米国RA)は、日本チームのリーダー層との協議が中心で、担当者レベルでは密に連携できていませんでした。業務を効率化するには、新たな体制構築が必要だと考え、日本の担当者たちと米国RAの連携を強化するチームを立ち上げ、定期的なミーティングを繰り返しながら、申請を前に進めていくように変えていきました。
さらに、プロジェクトに参加したメンバー内でFDAからの指摘に対する技術的な解釈をそろえていくことを行いました。この取り組みは、有識者を交えて技術的な背景や他社事例を理解し、技術的なバックグラウンドを持たないメンバーとも納得する形で進められるようにしました。
これらの取り組みにより、リードした婦人科製品での後戻りがない状態を達成し、申請期間も大幅に短縮。FDAと合意した最終申請期日よりも早く申請を完了することができました。グローバルにいるさまざまな立場の仲間たちと共に、課題をクリアできたということを経験できたのは、本当に印象深いです。
──グローバル連携を強化する中で、どのような苦労と成果がありましたか?
実は、大学時代から英語に苦手意識があったんです。「グローバル連携を強化するにはこのままではまずい」と感じたのですぐさまオンライン英会話に通い、TOEICの点数を200点ほど上げました。その甲斐あり、米国RAとのミーティングでも片言レベルではありますが発言できるようになりました。
とはいえ、仕事で英語を使うのは初めてだったので、最初のミーティングではかなり緊張しましたね。議題ごとに適切な関係者や有識者を招集し、英語が苦手なりに入念な準備をして臨んだのですが、それでもやはり慣れない場なので……。
でも、そうした背景を知っていた米国RAの主担当者が「ユースケ、君なら大丈夫だよ!自信を持って!」と励ましてくれたんです。自分自身の気持ちもほぐれ、場の雰囲気も和やかになり、そこからスムーズに進められるようになりました。
自分にとって何よりも嬉しかったのは、プロジェクトが完遂した際に米国RAの担当者から感謝のメールをもらったこと。文面には「これまで多くのプロジェクトチームを経験してきましたが、これほど高いパフォーマンスを見せたチームは初めてでした」と書かれていました。
周囲に支えられたおかげではありますが、苦手意識を乗り越え、グローバルなプロジェクトで評価をいただけたことは、大きな自信につながりました。
内視鏡事業に精通する専門家として、オリンパスの新たな経営戦略策定に貢献できる存在
──これまでの経験が、現在の業務にどのように活きていますか?
婦人科系分野と泌尿器科分野は扱う製品は違っても技術的に近しい部分があり、技術や考え方などを転用できるケースも多くあります。
また、現在のレーザーシステムのプロジェクトでは、初めて正式にプロジェクトリーダーを務めているのですが、以前の再申請プロジェクトで主体的に動いたり、グローバル連携を強化したりした経験は大いに役立っています。
とくに海外メンバーとの連携で痛感したのは、相手と同じビジョンや方向性を共有することの大切さと、拙い英語でも臆せず自分の想いを伝える姿勢が重要だということ。今後はもっとグローバルの舞台で、日本の製品と他国の製品を組み合わせて新たな付加価値のあるプロダクトをつくる、というプロジェクトが増えてくると思うので、これらの経験を活かしてチャレンジしていきたいですね。
──今後の展望を教えてください。
まずは現在進行中のレーザーシステムのプロジェクトを無事に完了させること。そして中期的には、泌尿器・婦人科分野の知見をさらに深め、次世代製品のプロジェクトマネージャーとして開発に携わりたいと考えています。この業界を志した原点でもある「自分の想いを込めて手がけた製品を患者さんに届け、早期診断、治療に貢献すること」を引き続きめざしていきたいです。
長期的には、内視鏡事業に精通したプロフェッショナルとして企画戦略や企画管理に関わったり、プロダクトエキスパートの立場で経営層と共に製品戦略の策定に貢献したりする存在になりたいと思っています。
※ 記載内容は2023年11月時点のものです

