内視鏡の小型化・高付加価値化に向けためっき技術の開発に“現場視点”で取り組む
──所属する部署の仕事内容について教えてください。
私が所属する金属加工技術は長野事業場にあり、オリンパス製品の金属部品に関する加工法開発を担う部門。プレス加工やめっき、切削加工、バリ取りなどについて、最先端の技術開発をめざしています。
中でも私が携わっているのが、内視鏡の製造におけるめっき技術の開発です。めっきは、内視鏡の先端部において、電気的な回路を形成するために使われています。一般的な上部消化管用の内視鏡の先端部は直径9~10mmほどで、その中に対物レンズや照明レンズ、撮像素子などの小さな部品がたくさん組み込まれています。そのような内視鏡製品をさらに小型化・高付加価値化、かつ低コスト化するための加工法の開発に取り組んでいます。
これほど小さなものを加工するのは決して簡単なものではなく、また、内視鏡は体内で使用するものなので皮膜が剥がれるようなことがあってはいけません。さらに、現在開発を進めている製品には新しい技術や知見が必要とされています。そうした中で、より安全で高品質な加工法を開発しなければならない難しさを感じますが、近い将来製品化され、多くの人の健康のために役立てられる日が来ることを目標にしています。
また、安定した品質で生産するために、製品の管理方法や加工条件の確立、生産設備の仕様作成なども担当。現在は原価低減に向けた改善活動にも携わっています。歩留まりをできるだけ下げないこと、生産工数を削減することを意識しながら取り組んでいます。
──仕事をする上でどんなことを大切にしていますか?
今の仕事では、機械メーカーや薬品メーカー、そして長野オリンパスの方たちとのコミュニケーションが欠かせませんが、とくに大事にしているのは、現場の意見を聞くこと。長野オリンパスにはベテランの技術者が多く、「この攪拌設備はこういう仕様にしたほうがいい」「他のラインだと加工条件をこれくらい変えたらこんな結果が出た」などのアドバイスをもらうことも。実際に生産をするのは現場の方たちなので、作業や管理のしやすさなどを考慮した“現場視点”で技術開発に取り組みたいと考えています。
また、事態の緊急性が高いときほど早い段階で助けを求めることも心がけています。以前、初めて生産設備の仕様決めを担当したとき、不具合やトラブルがあって窮地に陥ったことがあったんです。そのときはすぐに上司に相談し、検討の仕方や日程の組み方を一緒に考えてもらったおかげで、期限内に仕様を決定することができました。
そうやって周囲から力を借りる場面が多いので、普段から廊下ですれ違ったときに雑談を交わすなど、日常的なコミュニケーションを丁寧に積み重ねて信頼関係を築くことを意識しています。
精密機器を見えない部分で支えるめっき技術に魅せられて
──大学でめっき技術を学んだきっかけと、オリンパスに入社した理由を教えてください。
大学3年のとき、就職するか大学院に進むか迷ったのですが、働くなら地元・長野がいいなと。もともとものづくりに興味があり、長野でものづくりと言えば精密機器メーカーが多いことから、関連分野の研究室に入って知識を身につけようと考えました。それまで学んでいたのが化学だったので、自分の強み(化学)を活かせる、かつ精密機器にも関連する分野として思い当たったのがめっきでした。
めっきと言うと装飾品や外観をきれいに整える技術というイメージがありますが、電池やPC、スマートフォンなどの電子部品にも多く使われています。大学院の研究室では、めっきによって電池の寿命をいかに伸ばすか、どうすれば長期間使える電池がつくれるかという研究をしていました。
当初は「就職のため」という理由で研究対象に選んだめっきですが、電子部品を動かすのに必要不可欠であり、人の目に触れず裏方としてさまざまな部品の働きを支えている──そこに魅力を感じるようになり、精密機器をめっき技術で支える仕事がしたいと思うようになりました。
数ある精密機器メーカーの中でもオリンパスを選んだ決め手は、医療分野に携われること。学生時代にオリンパスと共同研究をした経験があり、医療機器の製造にもめっきを活用できると知ったんです。研究で学んだ知識や経験を活かしながら、多くの人の役に立てる仕事だと感じ、入社を決めました。
──学生時代の研究と仕事としての技術開発では、どんなところに違いを感じますか。
量やスピード、スケール感に至るまですべてが違います。たとえばめっき加工では、対象物を液体の中に浸す作業があるのですが、大学の実験室の機械は1機当たりの液体量が1リットル程度だったのに対し、現在は数十~数百リットルになることも。量が違えば管理の方法もまったく異なるので、そこも含めて学ばなければなりません。
また、技術開発においては、製造現場で働く方たちが作業しやすいか、管理しやすいかという観点も重要。さらに、不良品を出さないための対策を講じる必要もあり、ただ単に技術を突き詰めるだけでなく、検討すべきことがぐんと増えました。
一方で、学生時代に身につけた化学やめっきの基礎知識は、今の仕事でも大いに役立っています。不良品が出たときや不具合が起きたとき、原因を推測・特定して解決策を考えるところまで素早く対応できるのは、大学でしっかり学んだおかげだと思います。
知見のない新しい内視鏡のライン立ち上げに挑む。一歩ずつ生産化に近づく手応え
──仕事のやりがいをどんなところに感じますか。
現在、新製品の生産ラインの立ち上げ準備に携わっていますが、その工程が着々と前に進んでいることに手ごたえを感じています。
最初は小さいビーカーレベルのスケールから始まって、次に試作機を導入。その後、生産機の仕様を決めるなど、一つひとつ順にクリアして、ようやく生産のための最終的な条件を固める段階にまで進んできました。これまでの工程に5~6年ほどかかっていますが、着実に生産へと近づいている実感がありますね。
また、現在開発中の新製品はこれまでの内視鏡と違って、新しい知見も使いながら製品化をめざしているため、苦労する場面が少なくありません。
最初は10~30個、次に生産を想定して数百個単位で試作を行うのですが、試作品をつくればつくるほど新しい課題が出てきて、そのたびに解決してきました。手間も時間もかかりましたが、原因を特定して対策を講じ続けた結果、不良品が出なくなったときは大きな達成感を覚えました。
──めっき技術ならではのやりがいは、どんなところにありますか。
めっき加工で使う液体は室温や使用時間によって状態が変わるため、コントロールしづらいのが特徴です。機械でパラメータを設定すれば、それで完了というわけにはいきません。そうやって扱いが難しいものを化学的な知識や経験を活かして自分の手でコントロールし、安定した品質につなげられたときには、大きなやりがいを感じます。
──反対に、仕事の難しさを感じるのは?
実は以前、現場との連携が足りないまま試作機を導入した結果、「扱いづらい」「求めていた性能と違う」「すぐ壊れる」などの声が上がり、生産性を下げてしまったことがありました。現場の意見は大事にすべきですが、コストとの兼ね合いもあり、どちらを優先するのか折り合いをつけるのに難しさを感じます。
いずれにしても、技術移管をするときは「自分たちが何を実現したくて、どんなことをやろうとしているのか」を現場の方全員に共有し、開発段階から意見を聞いていくことが大事だと思っています。
めっき以外の知識・技術も身につけ、自分の武器を増やしていきたい
──オリンパスで働く魅力を、どんなところに感じていますか。
豊富な経験や専門分野の知見を持つ方から助言をもらいながら仕事ができるところです。もともとオリンパスは、医療以外の分野も手がけていたので、私の周りにも別の分野で経験を積んできた先輩方がたくさんいます。
内視鏡の場合、長期間で開発を進め生産ラインを立ち上げるのですが、デジタルカメラなどは比較的短期間で開発と生産が進められます。そのため、課題をすばやくクリアしてきた経験のある方が多く、スケジュールの立て方や段取りの組み方などについて相談でき、とても助けられています。
また、医療の現場に貢献できていると実感できることも、オリンパスで働く醍醐味。私の友人には看護師が多いことから、「オリンパスの内視鏡を使っているよ」とよく声をかけられます。両親が内視鏡検査を受けたこともありますし、当社の製品を身近に感じる機会が多いのが励みになっています。
医療分野の精密機器は高い品質や安全性が問われますが、オリンパスにはそうした高い基準を達成するために必要な知識や経験を備えた技術者が多くいます。こうした環境で自分の力を磨けることを誇りに思っています。
──今後の展望を教えてください。
今はめっきの技術者としてスキル向上をめざしていますが、将来的には「自分の武器はめっき以外にもある」と言えるようになりたいです。
とくに身につけたい知識や技術が3つあり、1つはめっきをつける母材となる材料に関する知識。母材はステンレスや銅、樹脂などさまざまありますが、それぞれの材質面の特徴をしっかり理解することで加工の精度が高まると思っています。他部門の人から「この母材にめっき加工はできますか?」と聞かれたときに、即座に回答できるようになることが目標です。
2つめが、治具(※)の設計。今回の新製品のプロジェクトでは、一般的な治具では対応できない場面が何度かあり、どんな固定方法でどんな形状・材質の治具が必要か、自分で考えて図面に起こせるようになったらいいな、と感じたからです。
3つめが、分析関連のスキル。不良や不具合が出たときに原因を解析する技術を持つ人は、他の工場にも少ないと聞きます。これを身につけ、生産の効率化につなげたいと思っています。
加えて、今後はグローバリゼーションが加速していくと思うので、英語スキルの必要性も感じます。以前外国からシニアマネジメントの方が工場見学にきた際、プレゼンテーションと質疑応答を英語で行ったのですが、自分の考えをうまく伝えることができませんでした。語学力を高め、自分たちの技術を社内外にアピールすることで、オリンパスの高い技術力や医療機器メーカーとしての存在意義を証明できればと思っています。
※ 加工や組立、検査などの工程において、製造をサポートするために用いられる器具
※ 記載内容は2023年8月時点のものです

