企業価値と信頼性の向上に向け、ESGを担当
──現在所属している部署の概要と松本さんの役割について教えてください。
私が所属するESG Globalは、オリンパスが持続的な成長をめざすに当たって、環境(Environment)、社会(Social)、およびガバナンス(Governance)の3つの側面に関する取り組みを推進・統括する組織です。当社の企業価値を高め、さまざまなステークホルダーの信頼を得ることを目的として、社内で進められているガバナンス体制や事業活動、サプライチェーンにおける環境・社会分野の取り組みを、情報開示を通じて見える化する役割を果たしています。
中でも私が担当しているのが、ESG評価機関分析です。ESG評価機関とは企業のESGの取り組みを評価・格付けする専門機関のこと。当機関の評価基準の理解、スコア分析等、当社が適正に評価されるための活動を行っています。
また、社内におけるESG戦略の推進にも携わっています。ESG評価機関の多くは企業の公開情報を評価対象としている上、近年は有価証券報告書においてサステナビリティに関する企業の取り組みやコーポレートガバナンスに関する情報の開示が必須となりました。ESGに関連する社内の各部署にアプローチし、開示が必要な情報やその理由を説明しながら、情報提供を依頼することも私の重要な任務となっています。
当社は「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」というパーパスを掲げ、「誠実」「共感」「長期的視点」「俊敏」「結束」という5つのコアバリューを策定しています。これらと共鳴しながら、オリンパスの企業価値や信頼性を高めていくことが、ESG戦略を担当する私たちの使命と考えています。
──オリンパスでESGに取り組む意義をどんなところに感じていますか。
私は以前、病気で苦しみオリンパスの製品に助けられたことがありました。オリンパスの一員として、最先端の医療に貢献できていることをとても誇りに思っています。
また、部署を横断しながらクロスファンクショナルに課題を解決していくのがESGの取り組みの特徴です。SCMや人事をはじめ、社内のさまざまな部署で働くさまざまな方と関わり、それぞれの業務について理解を深められることもやりがいにつながっています。
見えない取り組みの発掘。GRIスタンダードとDJSIを軸とした情報開示の試み
──入社後、どんなキャリアを歩んでこられましたか。
2019年に入社したときからESGを担当しています。入社するまで学校で教員をしていてコミュニケーション力が養われていたため、他部署の方とコミュニケーションする機会の多いこの仕事は自分に向いていると感じてきました。
私の入社当時は、SDGsと共にESGという言葉がちょうど注目を集め始めていたころ。オリンパスとしてもESGに積極的に取り組む姿勢を示していましたが、社内にはまだ情報開示に対する強い抵抗感があったため、まずは非財務情報を開示することの意義を理解してもらう必要がありました。
情報開示するに当たって私たちが参考にしたのが、非営利団体「GRI(Global Reporting Initiative)」が提供する国際的なガイドライン「GRIスタンダード」です。これを指標として、世界の代表的なコーポレート・サステナビリティ評価指標である、「DJSI(Dow Jones Sustainability Indices)」も参考にしながら、グローバル・メドテックカンパニーにふさわしい情報開示のあり方を模索してきました。
──ESGに取り組む中で、どんな気づきがありましたか。
情報開示していないだけで、ESGに関する取り組みが社内ではかなり進んでいました。ただどれほど価値ある取り組みでも、それが社外に公開されていなければ、課題を認識してさえいない企業と判断される可能性があります。適正な評価を得るためにも、積極的な情報開示が急務だと感じました。
当時、活動内容・情報開示の対応ともに先進的だったのが、環境・健康・安全衛⽣を担うEHS(Environment Health Safety)チームでした。オリンパスではCO2排出量を55%削減(対2020年3月期)しているほか(2023年時点)、国内の主要な開発・製造拠点における使用電力の100%を再生可能エネルギーに転換しています(2022年時点)。これらの実績の情報開示は非常に高い精度のものでした。
一方、取り組みは先進的でも情報開示が進んでいないものもありました。たとえば、ソーシャルの分野では従業員満足度調査の結果開示など、いくつかの取り組みが積極的に社外に公開されていませんでした。
DJSI Worldの構成銘柄に2年連続で選定。ESG担当として得た手ごたえ
※取材内容は2023年10月時点のものです。その後、DJSI Worldの構成銘柄に3年連続で選定されました。リンク
──これまでの取り組みの中で印象に残っていることがあれば教えてください。
世界的なESG投資指標であるDJSIの「World Index」の構成銘柄として、2年連続で選定されたことは忘れられない経験になりました。DJSIの構成銘柄は、世界の時価総額上位3,500社を評価対象としていて、各産業グループから毎年上位10%が「DJSI World」として選定されています。
DJSI Worldに選ばれること自体が目的ではありませんが、医療へのアクセス、人材の確保と定着、税務戦略、環境方針とマネジメントシステムなどにおいて高い評価を得たことは、ESG戦略を推進してきた立場としてたいへん励みになりました。
また、どのような情報開示が役立つのか、部署の皆さんと検討したことは今でも印象に残っています。オリンパスでは、手技トレーニングをはじめ若い医師の育成に力を入れており、トレーニング件数はかなりの数に上ります。
この活動は世界の医療の質を向上させる活動であり、ひいては患者さんの健康につながります。オリンパスだからこそ発揮できる価値です。マーケティング部門の活動であったため、社内では社会貢献活動としての意識は薄かったですが、十分社会から評価いただける活動でした。こうした情報の開示がステークホルダーとの信頼関係を維持・強化します。
──ESG戦略を進めていく上で、どんなことが大切だとお考えですか。
ESGに関する一連の取り組みに関わっていて感じるのは、従業員の多くが高品質な製品・サービスの提供を通じて事業の持続的成長や企業価値向上に貢献したいと考えているということです。オリンパスでは、皆さんが自分の仕事に誇りを感じながら働いています。そうした会社や仕事に対する愛情・愛着をどう引き出せるかが、適正な情報開示をする上での鍵になると考えています。
社内の情報が必要以上に社外に出ることで組織にダメージを与えるのではと危惧する方は少なくありませんが、現代は情報を開示しないことがかえってリスクになる時代です。価値あるESGの取り組みをなきものとしたいと考えている方はひとりもいません。課題を認識できていない企業だと評価されるおそれがある、とお伝えすることが、もっとも皆さんの心に響くと感じます。
組織の理念や活動について社外に広く伝え、信頼関係を構築することをめざし、これからも実態に即した情報を提供し続けていきたいと思っています。
情報開示の精度と効率のさらなる追求を。新時代のESG戦略に向けて
──今後の展望をおしえてください。
開示を求められる情報の範囲は今後ますます広がっていくことが予想されます。グローバル・メドテックカンパニーとしての信頼性を担保できるよう、これらも精度の高い情報を提供していくつもりです。
また、社内の各部署で働く方々あってのESG推進です。皆さんが情報開示のために煩わしい想いをすることがないよう、情報提供のための効率的な仕組みづくりも進めていきたいと思っています。
CO2排出量の削減や製品のリサイクルといった環境課題のように、今後は複数の部署が連携して取り組むべき課題が増えていくでしょう。そうしたクロスファンクショナルな取り組みをリードするのも、私たちESG Globalの役目です。ESGにおけるガバナンスのために、ESGコミッティというものを2023年に発足しました。ESGコミッティを通じて、各部署が連携ミスによるロスを起こさないよう、課題を整理し解決に向けた取り組みを進めていきたいと考えています。
※ 記載内容は2023年10月時点のものです

