偶然出会った就労継続支援B型事業所。経営と福祉への想いから、副業を決意
NTTデータには「Tangity」と呼ばれるデザイナー集団が存在します。眞下はここで、デザインを軸に新規サービスの創出や既存サービスの改革・改善などの業務に携わっています。そんな眞下が、就労継続支援B型事業所「リハスワーク伊勢崎」を立ち上げたのは、2023年10月のこと。そのきっかけは、ふとした出来事にあったと言います。
「娘を保育園に送り迎えする際に、就労継続支援B型事業所を見かけたんです。気になってインターネットで調べてみたら、障がいのある方を支援する福祉サービスだと知りました」
眞下はグロービス経営大学院でMBA(経営学修士)を学んでおり、その知識を生かして「世の中にある格差を少しでも縮めたい」という志を持っていました。
「NTTデータの一員としてできることはたくさんあります。その一方で、会社の規模が大きいことで直接的な貢献度が見えにくいと感じることもありました。そこで、自身で経営者として活動してみたいという思いを抱えるようになったんです」
就労継続支援B型事業所の存在を知った眞下は、もともと福祉やサステナビリティの分野に興味を持っていたこともあり、「リハスワーク伊勢崎」の立ち上げを決意。しかし、本業に影響が出るのではないか……。そう懸念し、眞下は上司に相談します。
「すると、NTTデータは新しい挑戦を後押しする文化があるのか、拍子抜けするぐらいあっさりと許可をもらえたんです。また、家族にも事業所立ち上げについて抵抗なく受け入れてもらえました」
具体的な事業所の運営にあたっては、フランチャイズを利用することにした眞下。初めてのチャレンジでも本部のアドバイザーから専門知識を教えてもらえ、そのサポートのおかげで副業のハードルも下がり、安心感があったと振り返ります。
「事業所を立ち上げるための認可でつまずいて開業できない人もいるそうです。最初は私も方法がわからず悩んでいましたが、約30~40枚もの書類作成を代行してもらえ助かりました。とはいえ開設にあたっては不動産の要件が厳しいので物件探しには苦労しました」
こうして、眞下はNTTデータのデザイナーに加え、障がい福祉サービス事業所代表として歩み始めました。
本業のデザインとデータドリブンを生かして。地域貢献や利用者の成長で感じるやりがい
「リハスワーク伊勢崎」では、群馬県伊勢崎市のキャラクターである“くわまるくん”の栞などの商品をデザインして市役所に販売しています。ヒバ・ヒノキなどの国産の木を使った独自の商品の制作や販売、軽作業を通して就労支援を行っています。
「材質に関しては本部の指定があるんですが、レイアウトや色使いはこちらで検討しています。その辺りは本業のスキルが生きています。この活動を通して、市民の方にも事業所のことを知ってもらうことができました。地域とのつながりを感じた瞬間でしたね」
事業所で働く利用者さんの成長を感じることは、眞下のやりがいの1つです。日々のちょっとしたことが自信になり、その積み重ねが利用者さんの一般就労につながっていきます。利用者さん自身はブログで日常の記事投稿もしており、眞下はそれを読むことで、日々の成長がうかがえると言います。
また、眞下は利用者さんを増やすためにマーケティングに力を入れています。
「事業所への問い合わせは、インターネット経由のこともあれば、相談支援員さんからなどさまざまなルートがありますが、そこは本業の強みを生かしてデータドリブンで意思決定できる仕組みを整えています。
たとえば、問い合わせチャネルと連携活動(事業所訪問・DM・電話)を紐づけることで、どの連携活動が問い合わせ数に寄与するのかを分析したり、問い合わせ~体験~契約までのコンバージョンをチャネルごとに可視化し、離脱ポイントを把握して対策を打ったり。限られたリソースをどこに投下するか、デジタルと経営の知見を生かして、素早く間違いの少ない意思決定ができる環境を整えるように心がけています」
周囲の支えで実現した4拠点生活。新たな視点が相乗効果に
「リハスワーク伊勢崎」の運営を始めてから、NTTデータでの眞下の働き方は大きく変わりました。立ち上げ時にも、上司が快く応援してくれたほか、同僚もプロジェクトが忙しい時にフォローしてくれ、多くの仲間に支えられていると語ります。
「現在は、埼玉の自宅、NTTデータのオフィス、群馬の実家、事業所の4拠点を日々行き来しています。NTTデータの業務は『リハスワーク伊勢崎』からテレワークで行うことが多いです。両立できているのは家族のサポートがあることと、テレワークという場所を選ばず仕事ができる環境があることが大きいですね」
また、NTTデータでの眞下の業務はPCでの作業が主ですが、「リハスワーク伊勢崎」ではまったく異なります。スタートしたばかりの事業所をよりよくするために、小さなことでも試行錯誤する必要がありました。
「たとえば、当初は利用者さんに口頭で説明したり、手順を示した紙を貼ったりしても全然伝わりませんでした。しかし、用具に名前を入れる、机にラベルシールを貼るなどの工夫をしたことで利用者さんが自発的に行動してくれるようになったんです」
ちょっとした工夫で利用者さんの行動が大きく変わることに、衝撃を受けたと話す眞下。
「デザイナーはいろんな視点が必要になってくるので、『リハスワーク伊勢崎』での経験が『Tangity』での業務にも役立っています。お客さまとのコミュニケーションでも、人によって知識や経験の違いがあることを理解しておくと、人に優しくなれる気がしますね」
挑戦を認めてくれるNTTデータでかなう、副業という働き方の選択肢
「リハスワーク伊勢崎」の運営を通して、福祉の現場の慣習や問題点も見えてきたと言う眞下。福祉事業に対する自身の想いをこう話します。
「福祉事業において大切なことは、社会貢献と経済面の両方を維持することです。福祉の現場の一部には、利益を求めず奉仕するべきという風土や、会社組織としての参入があまり歓迎されない側面もあります。
しかし、中には社会貢献のために自己犠牲の精神で活動し、体を壊してしまう人もいます。無理なく続けるためには、活動に見合った対価を得ることが重要だと思います」
眞下は事業を安定して継続することで、障がい者が活躍できる社会をめざしていきたいと話します。また、障がい者の賃金が安くて当たり前という社会の風潮を問題視しています。デザインを商標化してライセンス販売をするビジネスなど、デザインやアートなどの分野で、障がい者ならではの感性を生かせないか事業を通して模索中です。
最後に、新しい挑戦を始めたいと考えている人に向けて、副業という道の可能性を語ります。
「自身の業務以外でやってみたいことがあったら、一度上司に相談してみてください。NTTデータにはチャレンジを認めてもらえる環境があります。退職にはリスクもありますから、会社に属しながら挑戦するという選択肢も知っておくと、自己実現の可能性が広がります。本業と副業を両立することで、経験や知識が双方に役立ち、いっそう自分に合った働き方ができるようになると思います」
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
