児童虐待ゼロへ向けて!社会人として無関心ではいられない
坂井が児童虐待ゼロに向けての取り組みを始めたのは2018年のこと。現在その第一歩として、家計が厳しい子育て世帯や助けを必要とする子どもたちへの経済的支援を目的とした事業を企画しています。この活動に至ったきっかけを坂井はこう語ります。
坂井:私自身は虐待を受けたことがなく、どこか遠いものだと思っていました。ただ、昔から誰かが人に恐怖を与えることに強く嫌悪感を覚える性格でした。児童虐待のニュースを見るたびに「この子たちはどれほど毎日怖い思いをしていたのだろう」と社会の理不尽さに怒りを覚え、自分にできることはないか考えるようになりました。
児童虐待への対策は行政やNPOがやることだと考える方も多いと思います。しかし、私は批判するだけで何も行動しない社会人になるのは嫌で、そうならないために、周囲に公言して、自分を追い込んでいきました。
1人ではなかなか動き出せずにいた坂井でしたが、公言していたこともあり、同僚の田港をはじめ徐々に志を共にする仲間が集まってきました。
メンバーにもそれぞれの思いがあります。
田港:私の親戚にいるひとり親の世帯は周りから支援が得られ、安心して子育てをしています。しかし、世間にはそういった支えが得られずに、1人で孤立して経済的な不安を抱え、虐待に走ってしまう人もいるのではないかと想像しました。
私自身も子どもを持ち、そんな怖い世界は絶対になくしたいと考えるようになりました。
藤田:もともと大学時代には教育社会学系のゼミに所属し、家庭の収入や地域差で教育格差が生まれてしまうことについて問題意識を持っていました。卒論を書く際に児童養護施設を取材して児童虐待や自宅に住めない子どもたちの現状を目の当たりにし、自分にできる支援を考え始めました。児童虐待ゼロへの取り組みは教育格差をなくすことにもつながると思っています。
こうして坂井たちは「児童虐待ゼロ」をテーマに、虐待解決へ寄与できるビジネスづくりに向けて、2023年春から本格的に活動を開始しました。
社内の心強い応援を受け、81人のリアルな意見を徹底調査
坂井たちは児童虐待ゼロへの課題を深掘りするために、半年かけて81人にインタビューを実施。こども家庭庁、児童相談所、自治体、NPO、スクールカウンセラー、児童養護施設、そして児童虐待の当事者などさまざまな関係者から話を聞きました。
坂井:立場によって児童虐待解決への課題の見え方が異なり、あらためて問題の複雑さを実感しました。一方で進学、勉強、金銭面については共通した問題があり、そこを仮説として明らかにできたのが大きな成果でした。
藤田:児童養護施設の職員さんのリアルな声を聴いて、民間が児童虐待にどう関わっていくか考えることは有益であると感じました。国や自治体だけではなく、企業が支援することも必要だと思います。
半年という短期間で81人もの関係者にインタビューできた背景には、NTTデータ社内の心強い応援がありました。社内のさまざまな部署の人に相談してつないでもらったり、NTTデータイベント「CAMPFIRE」で活動について話したりする機会もあり、それを見て関心を持った人たちが、さまざまな有識者への橋渡しをしてくれたと言います。
補助金がなくても継続支援できるしくみをつくりたい
坂井たちは、行政からの補助金がなくても継続的に支援できるしくみをつくりたいと今後の展望を話します。
坂井:児童虐待ゼロに向けては、やはり持続可能な支援が大事であると、専門家や当事者の方のお話を伺いながらあらためて実感しました。虐待を減らしていくには「予防」と「自立支援」が最も重要であり、その共通課題が貧困と孤立の対策です。
NPOや児童養護施設などの専門機関は、なくてはならない高度で重要な取り組みをしていますが、多くは行政が資金源であり、予算を取り合う構造が見受けられます。救える人を増やすためには、既存の構造を残しつつ、企業や消費者からビジネス対価を得て、支援に流れる社会的な構造をつくる必要があると考えています。
田港:支援を持続可能にすることと同時に、児童虐待の問題に多くの人が目を向けることが重要だと思います。目を背けたくなるような現実ではありますが、実際に苦しんでいる人がいます。身近な問題として捉えてもらい、その人たちのために何ができるか考えてもらいたいです。
私たちがその一助になり得ると思っていて、理解ある人が増えることで、苦しんでいる人を救える可能性が広がっていきます。
藤田:こども家庭庁の方にインタビューした際に、行政だけでは手が回らない、民間の方の参入もウェルカムだと言っていただいて、この取り組みはとても有益だと確信しました。
坂井たちはまず第一歩として貧困対策に着目し、家計に余裕のない子育て世帯や社会的養護を必要とする児童の金銭的な悩みを解決するビジネスを模索中です。
現在は、企業のお金が対価として、余裕のない家庭や社会的養護児童に流れるようなサービスが作れないか、ソリューション仮説の検証を行っています。事業として成立させることで、行政の支援に頼らずに継続的な活動が可能になります。
世の中に必要だと思ったことは、勇気を出して発信してみよう
児童虐待ゼロへの活動を通して、さまざまな課題が見えてきたと言う坂井。子どもと関わる機会が少ない人でも実践できる支援について話します。
坂井:日常生活や仕事のちょっとしたストレスの積み重ねも虐待の要因になります。自分の職場やコミュニティに疲れた様子の人がいたら、思いやりを持って優しく接するだけでも、間接的には虐待減少に向けた支援になると思います。
最後に、世の中の問題に取り組みたいと考えている人に向けて、坂井たちは思いを語ります。
坂井:児童虐待のような“儲からない”社会課題であっても「ビジネスで解決したい」という熱意を持っている人は少なくないのではないでしょうか。無理だと笑われても、他人にどう思われようとも行動を止める必要はないと思っています。
世の中に対して必要だと思うことがあれば、言葉にして発信することが大切です。社内にも社外にも共感してくれる人や、一緒に考えてくれる仲間が必ずいます。私たちの取り組みに興味を持ってくれる人がいましたら、連絡をお待ちしています。
田港:興味を持ってもらうだけでも、優しい社会への第一歩につながります。連絡までは難しいという方も、ぜひ心の中で応援していただければ嬉しいです。
藤田:児童虐待が身近なものであると少しでも知ってもらい、自分だったら何ができるか考えてみると、新しい視点が得られるかもしれません。興味があれば、一緒に取り組んでもらえるとありがたいです。
※ 記載内容は2025年1月時点のものです
