地域と農業への愛着が導いたキャリア。ふたりの金融マンが選んだ第二の舞台
前橋支店の担当エリアは畜産業が盛んな地域で、中でも養豚農家が多いことが特徴です。現在、同支店に在籍するのは約90名。職種やキャリアに関係なく、風通しの良い職場環境が醸成されています。
羽鳥:支店内の雰囲気は非常に良好です。全国転勤のある本店総合職と、地域限定の支店総合職が協働していますが、所属による区別はとくになく、働きやすい環境が整っています。
また、私のような中途採用者や、旧信用農業協同組合連合会からの転籍者など、多様なバックグラウンドを持つ職員が在籍していますが、みんながフラットな立場で業務に取り組んでいます。
共に群馬県で生まれ育ち、地元の金融機関を経て農林中央金庫に入庫した羽鳥と柳澤。転職を決意した背景には、幼いころに培われた地域や農業への深い愛着がありました。
羽鳥:新卒で県内の地方銀行に入行し、主に投資信託や保険商品の営業を担当していました。2カ店目では法人渉外担当として融資業務にも携わっています。
転勤のない仕事に就いて地元で安定して暮らしたいと思ったことが転職理由でした。中でも農林中央金庫を選んだのは、すでに当金庫に転職していた元同僚から良い評判を聞いていたからです。
また、田んぼや畑に囲まれた環境で育ち、祖父と祖母が田畑を営んでいた私にとって農業は非常に身近な存在。農林水産業に特化した金融機関である点にも魅力を感じていました。
柳澤:私は新卒で県内の信用金庫に入り、主に渉外・融資業務に携わりました。キャリアアップの機会を求めて出会ったのが農林中央金庫です。地元で働けること、当時興味があった企画業務に携われる可能性があることに強く惹かれました。
私も養蚕農家や酪農家の多い農村地域の出身です。近年の農業従事者が減少しつつあることに問題意識があったことも入庫の決め手になりました。
地道な努力が実を結んだ農業融資。現場目線で切り拓く地域農業の未来
入庫後、共に前橋支店だけでなく、本店やJAでの長期外勤などを経験してきたふたり。中でもとくに注力してきたのが、農業融資の推進でした。
羽鳥:農業融資とは、農業者が事業規模の拡大や設備更新を行う際に、資金面でサポートする金融サービスです。天候に大きく左右されやすい農業の不安定な特性を踏まえつつ、農業者が抱える課題の解決や事業展望の実現を支援するのが農業融資の本質だと考えています。
柳澤:農業者と接していると、多くの方が明確なビジョンや目標を持って取り組まれていることがわかります。そういった志を実現するための資金提供が農業融資の役割です。
羽鳥:また、突発的な自然災害による設備損壊などにも対応できる点も農業融資の大きな特徴です。農業者の将来に向けた投資支援だけでなく、農業特有のリスクに対する緊急支援としての機能も果たしており、こうした多様なニーズに柔軟に対応できる点に農業融資の意義があると考えています。
大規模な農業法人や食品関連企業などへの融資は農林中央金庫が担う一方、個々の農業者や小〜中規模な農業法人に対する直接的な融資はJAが行なっています。系統組織全体の経営を支えることが農林中央金庫の役割です。JAグループの中央機関の一員として、柳澤と私はJAによる農業者への融資支援に携わりました。
農業融資の推進強化が顕著な成果を上げつつあった2022年度に総括班に着任した羽鳥。農業融資の推進企画・管理を担当するに当たって最初に取り組んだのが、物価高騰にともなう緊急対策資金の創設でした。
羽鳥:当時、肥料・飼料・農薬などの生産資材価格が急騰し、業種を問わず農業者全般に深刻な影響を及ぼしていました。迅速な資金繰り支援が喫緊の課題でしたが、実効性の高い支援策でなければ意味がありません。多くの農業者が利用しやすい制度設計をめざしました。
最大の焦点となったのが金利設定です。農業者の負担軽減を目的に、実質無利子融資の実現にこだわりました。そのためには利子補給制度の導入が不可欠でしたが、これには農林中央金庫だけでなく、JA中央会、JA全農、JA共済連など、JAグループ全体の合意形成が必要です。
信用事業とは直接的な利害関係のない組織からの慎重な意見もある中、粘り強く協議を重ね、農業者の現状を丁寧に説明することで、系統組織全体の協力を取り付けることができました。
実際に農業者に対して融資提案するのはJAの役目。対策資金を推進する上で中心的な役割を果たしたのが、当時前橋支店からJAに出向していた柳澤らでした。
柳澤:対策資金を多くの農業者に周知するために、JAの職員と協力して農業者への情報提供に注力しました。直接農業者の元へ足を運ぶことが、JAバンク群馬の基本方針です。農業者との直接的な関係構築を重視し、作成したチラシを持参して個別訪問を繰り返しました。
この地道な活動が功を奏し、商品の優位性もあいまって、多くの農業者から好評をいただき、実際に多くの利用につながっています。
羽鳥:JAバンク群馬における農業融資推進強化の取り組みは、まだ10年程度の新しい施策です。JAの中には、農業融資に対して必ずしも積極的でない層も存在します。出向中の職員がJAを力強く牽引したことが、この施策の浸透に大きく寄与したと確信しています。
柳澤:JAが農業融資に対して積極的に取組めないのは、多くの場合、体制の未整備や専門知識の不足が原因です。私たちの役割は、これらの課題をひとつずつ解決していくこと。人材育成を含めた組織体制の構築や業務プロセスの改善支援に取り組んだことが、最終的に融資実績の向上につながったと考えています。
部門の垣根を越えて。クロスファンクショナルな協業が生み出す農業融資の新しいかたち
2022年度にJAバンク群馬の農業融資新規実行額が初めて100億円を達成。物価高騰緊急対策資金を含む一連の農業融資施策が高く評価され、前橋支店は2023年度に社内表彰を受賞しました。この意義について、ふたりは次のように話します。
羽鳥:農業融資のための仕組みづくりを行い、JAに出向する職員が実践トレーナーとして各JAの状況に即した推進策を立案・実行したこと。これら一連の取り組みが評価されたものと認識しています。
農業融資のための資金創設や各JAの推進策の立案は、JAグループの中央機関である農林中央金庫にとって本来の業務です。私たちはこれを特別な取り組みだとは捉えていません。
しかし、通常は先進的な施策が対象となる傾向にある社内表彰において、こうした基本に忠実な取り組みが認められたことは、非常に意義深いと感じています。
柳澤:支店が一丸となって取り組んだ成果が認められ、大変光栄に思っています。また、他県の同僚からは「これこそが農林中央金庫の根幹的業務だ」という声が届きました。この受賞が、県域を超えて職員が業務の本質を再認識するきっかけとなったという点で、極めて有意義だったと考えています。
農業融資を推進する上で、農業者の目線に立つことの重要性を強調するふたり。こうした地域に根ざした活動が、農林中央金庫独自の競争優位性を生み出す源泉ともなっています。
柳澤:現場に足を運び、農業者の声に耳を傾けることがすべての始まりです。農業者と直接的対話する姿勢の大切さをJAの担当者にも常に伝えています。
羽鳥:融資は農業者の想いや課題に応えるためのツールです。あくまで手段であり、目的ではありません。柳澤さんの言う通り、まずは農業者との対話が不可欠であり、このアプローチが最終的には業績向上にも寄与すると考えています。
さらに、JAにおける営農事業部門と信用事業部門の連携促進も重要な課題です。本来、両部門が個別に農業者を訪問するのが一般的ですが、前橋支店では、JAに出向する職員が積極的に働きかけ、両部門の同行訪問を推進してきました。
その結果、農業に精通した営農指導員と農業者との対話の中から、信用事業の担当者が資金需要を把握し、融資拡大につながるケースが生まれています。営農、金融、共済などの各部門が専門性を活かして新たな価値を創出できるのは、JAグループだからこそです。ほかの金融機関が容易に模倣できない農林中央金庫固有の強みだと認識しています。
柳澤:訪問時に限らず、営農事業部門と信用事業部門の担当者に相互の会議への参加を促して情報共有を奨励するなど、JAに出向する職員はさまざまな場面で両部門の橋渡し役を果たしています。こうしたクロスファンクショナルな取り組みから生まれるシナジー効果が、農林中央金庫の持続可能な成長の原動力になると信じています。
農林水産業を支えるリーディングバンクの一員として、地域に貢献し続けられる存在に
農業金融の最前線で活躍してきたふたり。支店総合職だからこそ、農林中央金庫だからこそのやりがいについて次のように話します。
柳澤:金融業務を通じて地域の農業や農業者への貢献を実感できるところに、支店総合職の最大の醍醐味を感じています。
また、担当者に与えられる裁量が大きいことが農林中央金庫の特徴です。新卒・中途採用を問わず、年次に関係なく、挑戦意欲のある職員を積極的に支援する文化が根づいており、進取の精神を持つ人材にとって非常にやりがいのある環境だと思います。
羽鳥:支店総合職として地元の農業の発展に貢献できることが、私にとって原動力となっています。また、前職の地方銀行では支店業務が中心でしたが、農林中央金庫に転職したことで、戦略的な企画業務に携われるようになりました。
さらに、柳澤さんが言う裁量の大きさに加えて、新たな資金スキームの企画立案に担当レベルで参画できるなど、自身のアイデアを具現化しやすい環境が整っている点も当庫ならでは。挑戦機会の豊富さが、大きなやりがいとなっています。
農業メインバンクの一員として、農林水産業と地域のくらしを支え続ける存在であるために。新たな挑戦を始めるいま、ふたりは決意を新たにしています。
柳澤:2024年度に貸出班が新設され、これまで分散していた農業融資機能を統合し、一元的に管理することになりました。現在、私はこの班で企画立案から実践までを一貫して担当しています。企画の実効性を自ら検証できるという利点を、いかに組織の競争優位性へと転換していくかが今後の課題です。
私たちの直接の取引先はJAですが、その先には農業者の方々がいらっしゃいます。JAの存在意義が農業者にあることを常に念頭に置きながら、JAだけでなく、その先にいる農業者にも視野を広げて業務に取り組むつもりです。
羽鳥:4月にJA実践班に着任し、JAへの包括的な支援を担当しています。今回の異動を通じて、JAが農林中央金庫に寄せる期待の大きさをよりいっそう実感しました。JAにとって不可欠なパートナーとなることが、私の当面の目標です。
中長期的には、農業者に寄与する業務に携わりたいと考えています。配属先や担当業務にかかわらず、この姿勢を一貫して堅持していく決意です。
※ 記載内容は2024年11月時点のものです

