誰かの命を救う想いを背負って──10年先の命を守る技術で、未来の0.1秒を守る
日産自動車の衝突安全グループでは、未来を見据えた安全戦略の策定を行う「先行開発・安全戦略」、技術を用いて実際の車両の設計をする「安全性能計画」、コンピュータ解析によって衝突挙動をシミュレーションする「衝突CAE」、作り上げた車両の安全性能を実験で確認する「衝突安全実験」の大きく4つの領域で構成された部署がそれぞれ連携しています。その最前線で活躍するのが、先行開発・安全戦略グループの神保と衝突安全実験グループの岩渕です。
神保:私が所属する先行開発安全戦略グループは、10年から20年先を見据えた技術開発を担う部署で、衝突安全グループの中でも一番最前線に立っています。決まっていない未来を推測して仕事をしているため業務範囲が広く、サプライヤーや大学の研究部門との共同研究も積極的に行っています。
以前は、各国の情勢に合わせた衝突試験形態への対応策を考えることが主でしたが、現在は高齢者やゆったりとした姿勢で座る方など、より多様な人を保護する技術開発に手を広げています。
岩渕:私は、開発された安全技術が実際の車両で計画通りの性能を発揮するかを検証する衝突安全実験グループに所属しています。前面衝突だけでも20人以上のメンバーが所属し、私はチームリーダーとして3名のチームを率いています。
世界各国で異なる衝突形態の開発目標要件を達成するか実車実験で検証、評価して安全性能の保証を行っています。衝突現象は0.1秒程度という一瞬の出来事です。この短時間でクルマがぶつかったことを検知し、エアバッグやシートベルトが適切に作動しなければなりません。さまざまな部品にお客さまを守る技術を織り込み、0.1秒にすべてを込めた部品トータルでクルマとして評価しています。
当社の衝突安全グループ間の連携や雰囲気について、2人はこう語ります。
神保:先行開発で生まれた技術が実際の車両開発で使いやすい形になっているか。そして、実車実験の結果をフィードバックとして受け取り次の技術改善につなげることが重要だと考えており、グループ間の連携についてはメンバーみんなが大事にしていることです。
たとえば、衝突安全性能の先行開発グループでは、私たちが作ったアウトプットを次の安全性能計画の人たちが使いやすいツールにする必要があります。そのため、常に他部署からの要望やアップデート情報を吸い上げられるよう、他部署とのコミュニケーションを大切にしています。
岩渕:先行開発・安全戦略、安全性能計画、衝突安全実験。そこにデジタルの衝突CAEを加えた4つの技術領域の部署はそれぞれ独立していますが、どのグループもみんな近い存在で相談しやすく、かなりいい空気だと感じています。
そんなグループの中で2人に共通するのは、安全な車を世に送り出すという強い使命感です。
神保:部長から教わった「世界で誰かが助かっている」という価値観を大切にしています。衝突安全性能は、万が一の時に発揮される性能です。お客さまのレビューも、他の性能に比べて見ることはほとんどありません。
でも、人の命は何物にも代えられません。クルマで人の命を守る最後の砦として、譲れないものは絶対に譲らないという姿勢で仕事をしています。
岩渕:クルマは、運転する楽しさやモビリティによる自由や利便性をお客さまに提供してきましたが、交通事故というネガティブな側面も与えてしまっています。そのため、安全なクルマを世に送り出したいというマインドを持っています。
世界中では年間119万人が交通事故で亡くなっており、その方々は誰かの家族や大切な人であるので事故の影響力は甚大です。そのため、安全な自動車開発によりお客さまだけでなくお客さまに関わる人たちの心も救うことができるという想いで仕事に向き合っています。
安全技術に魅せられて──クルマで命を守るを志し、2人の技術者が進んだ道のり
神保と岩渕のキャリアの出発点はそれぞれ異なる形ではあるものの、両者ともに安全技術への関心から始まりました。
神保:幼い頃から新幹線や電車などの乗り物に魅力を感じていました。高校で物理を学び、大学では電気工学を専攻。当初はモビリティではなく家電製品の開発を志していましたが、レーダー技術の研究室に入ったことで転機が訪れました。
研究室では、交差点に接近するクルマを検知する技術や、鉄道車両にレーダーを搭載し線路内に侵入してきた人や動物を検知する技術を開発していました。そこから乗り物が事故を未然に防ぐ技術に関心が芽生え、より多くの人にそういった技術を届けられる自動車業界を志望しました。日産を選んだ理由はシンプルで、横浜出身の自分にとって一番身近な自動車メーカーであり、幼いころから日産が常に身近にあったからです。
岩渕:私は、漠然としたクルマへの憧れから機械工学科へ進学しましたが、入学初日に元日産の衝突安全エンジニアだった教授と出会ったことで明確な目標へと変わりました。教授が歩行者保護のためのポップアップエンジンフード技術について話すのを聞き、クルマが人を守る技術開発をしていることに衝撃を受けたんです。もともと人の命を守る仕事への憧れがあったのでそれと重なり、この道を志しました。
その後、大学4年間と大学院2年間を通じて教授の下で衝突安全研究に打ち込みました。大学の制度を使用して学術提携している他大学の研究室にも籍を置き、その研究室にはフランス人や中国人も在籍するグローバルな環境下で、英語を使う仕事への興味も湧きました。
群馬県出身なので他メーカーも数社検討しましたが、最終的には日産のグローバルな環境で衝突安全に携われることが決め手となりました。
入社後、2人は同じ衝突安全グループに所属し、その中で異なる経験を積んでいきます。
神保:R&D製品開発本部の衝突安全グループに配属されましたが、電気・エレクトロニクス出身だったため、物理現象や材料に関する知識の習得から始める必要がありました。基礎理解だけで1〜2年は費やしたと思います。また、その中で会社組織の構造なども理解していきました。
衝突安全グループでは、始めに安全性能計画の仕事に従事することになりました。衝突安全には前面衝突、側面衝突、後面衝突、歩行者保護という4つの分野がありますが、その内の歩行者保護以外の3分野を経験しました。後面衝突では異なる領域の人たちと議論を交わしながら車体性能を学び、前面衝突や側面衝突では乗員保護性能を学ぶというステップを踏んできました。そして、2024年からは衝突安全性能先行開発・安全戦略グループに異動して前面衝突の担当として活動し、今に至ります。
岩渕:私も、入社時から安全性能計画グループに配属され、7年間前面衝突を担当してきました。その後、上司へ相談の上、日産が社内教育の一環として設けているキャリアローテーションという制度を活用して現在は衝突安全実験グループで修行を積んでいます。
これまで衝突安全における性能を作るための技術の計画段階について学んできましたが、そこから実際に具現化されたクルマが実際に衝突するとどうなるのかを検証する段階へと業務内容が変化しました。この業務を通じて、クルマの安全性を保証することの大切さをあらためて学びました。制度は約2年間なので、今後は再び安全性能計画のグループに戻る予定ですが、それまでに当グループで多くのことを吸収したいです。
海外拠点への出張がもたらした確かな手応え。命を守る技術の進化の最前線で
神保と岩渕は、これまで異なる立場から車両開発に携わってきました。それぞれ、とくに印象深かったエピソードを振り返ります。
神保:中国で性能確認実験を行ったときのことです。私は初めての海外出張で、現地でのサポートもいない状態でした。緊張しながら、ひとりで実験のオペレーションを行ったのですが、環境がまったく異なる中での作業は難しかったです。それでも、無事に安全性能が認められ、お客さまに安全な車をお届けできたことは良かったと思います 。
中国のスタッフとは通訳を介してコミュニケーションを取りました。環境が変わると実験の進め方も変わるため、ミスなく完了させるには、実験のオペレーションで重要なポイントをしっかり伝える必要がありました。このポイントを伝えられたのは、出張前に関係者と議論し、理解を深めていたことが大きかったです。
岩渕:印象深いエピソードが2つあります。1つめは、担当したクルマが、衝突安全性能を評価するアセスメント(JNCAP)にて最高評価の5スター賞を獲得したことです。安全な車を世に送り出すことができた成功体験でした。開発におけるさまざまな局面で、設計部署など関連部署の方々と協力しながら試行錯誤して進んできたという苦労が実った瞬間でした。
2つめは、技術課題解決のためのアメリカへの単身出張です。衝突安全性能の開発拠点は日本だけでなくアメリカやイギリス、中国にもあり、衝突業界で抱えている技術課題が各拠点で考えられています。
そこで、現地エンジニアと技術論議を行い、提案やフィードバック、知見の共有などを通してチャレンジングな課題を与えられながらも成果を形にして帰ることができました。この経験は自分のキャリアにとってかなりインパクトのあるものでした。
さまざまな経験を通して現在はチームリーダーとして活躍する2人。責任感が増し、部下への指導という新たな役割に直面しています。
神保:私の役割として部下の成長支援があります。チームリーダーとして、メンバーをどのようにサポートし、引っ張っていくかといったマネジメントを考えるようになりました。先行開発という未知の課題に取り組む環境では、アドバイスのタイミングを見極めることがとくに重要と考えており。
昨今のテレワーク環境ではメンバーの顔が見えないため、思考が負のスパイラルに入らないよう、雑談を通じてコミュニケーションを取りつつ体調や状態を観察することを日常的に行っています。
岩渕:チームリーダーになってから責任感と使命感が強まりました。チームの成果や成長に対してより敏感になり、どうしたら今よりいいアウトプットを出せるか、いい仕事をすることができるかを考えるようになりました。リーダーとなって、課題解決する際に人を巻き込む力がある強みをあらためて知れたので、その強みを活かしながらマネジメントをしています。
衝突安全グループでの仕事の魅力についても、それぞれ独自の視点を持っています。
神保:先行開発・安全戦略グループは、従来とはまったく違う未来のレイアウトの車に対してゼロから安全技術を考えています。そのため、前例のない突拍子もないアイデアを自由に出せるのがおもしろいところです。
専門外の知識も必要で大変な部分はありますが、クルマだけでなくいろいろな方面へアンテナを張ることで出てくるアイデアもあり、それも含めて楽しい仕事だと思っています。
岩渕:衝突安全実験グループの仕事に従事する中で、やりがいが3つあります。1つめは、お客さまから感謝の手紙が届いたりする中で人の命や安全を守ることに直接貢献できているという実感を得られる職場だということ。2つめは、各部署との議論や連携の中で日々進化していく技術の具現化に携われるということ。3つめは、年々死者数が減っていく中で社会への貢献ができている実感を持てることです。
日産自動車の衝突安全技術開発において、現場経験を通じた成長は技術者たちにとって重要な財産となっています。
事故のない未来をめざして──世界とつながり、「やりたい」が尊重される職場で挑戦を
クルマの安全技術開発において、先行開発から実験まで幅広い領域で活躍する神保と岩渕。日産自動車で働く魅力について伝えます。
神保:会社の規模が大きいので、自分が今やっていない分野でも気になることがあれば、体験できる場所があります。安全開発から動力性能、音振性能、マーケティングまでさまざまな分野があり、社内で異動するだけでも転職するぐらい新しいことに挑戦できるのが大きな会社特有の魅力だと思います。
また、当社では働きやすさの制度も充実しています。とくに助かったのは、男性の育児休暇もしっかりと取れる環境です。私が妻の妊娠の報告をした際も、何カ月ぐらい取りたいかという内容から話を進めてくれました。育児休業以外にもファミリーサポート休暇があり、子どもが熱を出した時や突発的に休みが必要な時は有給とは別枠の休暇も準備されています。また、部署には女性のお母さん的存在もいて、育児相談に乗ってくれるなど制度だけでなく文化としても根付いています。
岩渕:やりたいという声を上げれば、それが正しいことであればやらせてくれる文化が若手にもあることが大きな魅力です。また、拠点が世界各国にあるため世界を見据えた仕事ができ、アメリカやイギリス、中国などで仕事をしたいという希望にも応えてくれます。
働きやすさで言えば、スーパーフレックス制度を挙げます。たとえば、家族の体調が悪い時に早めに上がって病院に連れて行くことができたり在宅勤務も活用できたりしています。そうして、QOLの高い状態で仕事ができているので助かっています。
そんな当社で、2人が求める人財像には共通する部分があります。
神保:自分の専門だけに特化しないで、いろいろな専門外のことに興味を持ってくれる人が向いています。いろんな価値観の人に出会えるので、自分の世界だけに閉じこもらず、相手の意見を受け入れられる柔軟性が大切です。
個人的には雑談が好きな人も重要だと思います。開発分野は刻々と新しいことが進歩するので、いろんな人と話して新しい視点を得ることができる雑談は非常に有意義です。
岩渕:チャレンジが大好きな人は、かなり向いている職場だと思います。やりたいと言えば、それが正しければやらせてくれる文化が当社にはあります。
衝突業界で言えば、一つのことを探求して極めたい、プロフェッショナルになりたい人は向いていると思います。加えて、関わる人が多いため、みんなと協力し合いながら最良の結果を追求する姿勢を持っている人が活躍できるのではないでしょうか。
技術への情熱と人命を守る使命感、そして仲間と共に未来を築いていく2人。最後に、それぞれの今後の目標について語ります。
神保:時代や流行などに伴って、その時々で人々の欲しいものは変わっていくと思っています。そんな中で、クルマに限らずに本当に自分が欲しいと思えるような何かを作り上げられる人になっていきたいです。多くの人に「あっ、これいいな!」と思ってもらえ、自分自身もそう思えるような製品作りをめざしていきたいと考えています。
岩渕:衝突安全性能のエンジニアとして、日産車が関わる交通事故の死亡者数をゼロにするゼロフェイタリティの実現を自分のキャリアの中で成し遂げたいと思っています。ぶつからないクルマの技術開発も含めて総合的にお客さまを守るという意味で、自分のキャリアの中でゼロフェイタリティにかなり近づけるのではないかと思っています。
※ 記載内容は2025年11月時点のものです
