お客さまの声を形にする技術者。市場品質改善部が追求する理想のクルマづくり
日産自動車の市場品質改善部。ここでシャシー班の課長を務める豊住は、グローバル市場における日産車の品質向上に日々取り組んでいます。
「シャシー班では、車の骨組みとなるシャシーとエアコンのシステムや部品の市場品質改善を担当しています。具体的には、初期不具合、耐久性の問題、使用時の不満など、グローバル市場におけるお客さまの声を集めてものづくり部署と共有し、品質改善に努めています」
シャシー班は日産車の全モデルを対象に品質改善活動を行っています。
「基本的に、販売会社が修理した結果の情報、交換した部品を回収して調べ、不具合の原因を究明。その原因に対して必要に応じて対策を講じていく形でお客さまの声を拾っています。主に日本の設計・製造責任の自動車を担当しますが、一方でグローバルファンクションの役割も担っており、各地域の責任案件のサポートも行っています」
豊住は、チームマネジメントとピープルマネジメントも担当。チームは3グループに分かれ、それぞれ担当の部品やシステムの改善を行っていると言います。
「難解な不具合があった時や原因がなかなか究明できない場合は、必要に応じてメンバーが国内外の現場に赴くこともあります。最近ではタイに出張してもらったこともありました」
仕事をする上で大切にしていることをこう語ります。
「TCSXは、お客さまに最も近い部門とされており、お客さまの立場に立って仕事に取り組むことが重要。そのため、お客さまが経験された不具合・不満を、とにかく自分ごととして捉えるように心がけています。“自分の家族がクルマの不具合で予定を変えなければならない。”そんな経験をしたらどう感じるか常に意識し、周囲と協力しながら熱意を持ってクルマづくりに取り組んでいます」
一方で2年前からマネジメントも担当するようになり、新たな課題にも直面しています。
「今までは自分の仕事でいかに結果を出すかが重要でしたが、管理職になると仕事のマネジメントだけでなく、メンバーが気持ちよく働ける環境づくりやワークライフバランスを考えた仕事のアサインをしていかなければいけません。見守る範囲が広がり、まるで家族が一気に増えたような気持ちですね」
乗り物への興味が導いた20年。日産TCSXで世界を舞台に活躍する技術者の軌跡
大学時代、機械工学を専攻していた豊住。そこにはモビリティへの興味がありました。
「とくに自動車やバイクに興味があり、構造を知りたくて分解したり、自分でメンテナンスをしたり。その経験は今の仕事にも活きていると感じています」
就職活動は乗り物に関わる仕事がしたいと、航空業界や自動車業界を中心に応募していたと言います。
「実は第一志望は航空業界で、航空機の整備などの仕事につきたいと考えていました。しかし、就職活動をしていく中で、他業界にも興味を惹かれ、縁のあった日産自動車に入社することになりました。当時は迷いもありましたが、決めつけず色々な業界をみられたことはとても良い経験になりました」
入社後、豊住は日産のTCSXに配属されます。この部門を選んだ背景には、学生時代のアルバイト経験がありました。
「学生時代、写真の現像とプリントのアルバイトをしていました。お客さまに綺麗な写真をプリントしてわたすと、『ありがとう』『あなたに依頼してよかった』と言っていただけることがあり、その言葉が大きなモチベーションになっていました。お客さまの近くで、ご意見を伺いながらできる仕事がしたいと思い、この部門を選びました」
入社から20年。これまでに数多くの経験をしてきたと振り返ります。
「ほとんどの期間はTCSXに在籍し、保証業務に携わったり、より効率的な修理方法を開発したり。中でも印象的だったのは、電気自動車である初代LEAFの品質改善。
日本・アメリカ・欧州の3市場で一気に販売がスタートしたので、対応がとにかく大変で。朝はアメリカ、昼は日本、夕方は欧州と会議を実施する日々が続きました。その後、一時生産技術部門に配属されていた期間もありましたが、再びTCSXに戻ってきました」
豊住の20年間の歴史の中で切っても切り離せないのが、海外との関わりです。
「日産自動車は本当にグローバルな会社です。入社2年目にいきなりアメリカ出張を任され、インドへの出張やアメリカへの出向など、さまざまな国際経験を積むことができました。これらの経験が、私の仕事に対する価値観や人生観を大きく変えたのは間違いありません」
豊住は日産自動車でなければ、このような経験や成長の機会は得られなかったかもしれないと振り返ります。
「もともと海外にあまり興味がなく、英語もそれほど得意ではありませんでした。しかし、日産自動車でのキャリアを通じて多様性や異文化を理解し、ビジネスに取り組む能力が身につきました。海外の人々と一緒に働く機会が多かったことで視野が広がり、グローバルに活躍できるキャリアを歩めたことをうれしく思います」
悔しさを成長に変えたアメリカ駐在──日産エンジニアが経験した文化と仕事の融合
豊住の価値観を大きく変えた国際経験。しかし、初めての海外出張は苦い思い出でもあると語ります。
「入社2年目、半年間アメリカ出張を経験しました。当時の私は英語も十分に話せず、現地のスタッフとコミュニケーションをとるので精一杯。思ったように成果が残せず、悔しい思いをしたことが忘れられません。
しかし、一方で広い世界を学ぶよい経験にもなりました。たとえば、自動車大国と呼ばれるアメリカにとって、いかにクルマが重要なものか、どれだけ日本車が普及しているかということを肌で感じました。『必ずリベンジしてやる』という気持ちで帰国してきたことを覚えています」
そして、再びアメリカへと渡るチャンスがやってきたのは、2018年。北米日産会社への出向です。日本企業に勤めながら海外で現地に住み、仕事ができる環境を経験できたことは、豊住にとって非常に印象深いものでした。
「アメリカでの働き方は日本とは大きく異なっていました。残業が圧倒的に少なく、夜はオフィスに日本人出向者しか残っていないような状況。アメリカ人は夜に家族と一緒に過ごす時間を大切にしており、その働き方に合わせるのが最初は大変でしたね」
このような文化の違いを肌で感じることで、豊住の視野は大きく広がりました。とくに仕事と家族のバランスを考える上で重要な気づきを得たと言います。
「アメリカでは比較的残業が少ない環境で働きながら、家族との時間も大切にできました。この経験もあり、今上司として男性女性にかかわらず積極的に育休を取るよう促しています。家族が増える大切であり、大変な時ですからね」
海外での経験は、豊住のワークライフバランスの考え方に大きな影響を与えました。しかし、海外での仕事が常に順調だったわけではありません。豊住は、アメリカ駐在時に印象に残っているエピソードを語ります。
「スポーツカー【Z】のオープンカー仕様で、電動ルーフトップの不具合が発生しました。この問題解決のため、日本とアメリカの間を橋渡しする役割を担うことに。最終的には日本の設計者にアメリカまで足を運んでもらうことになりました」
この決定を下すまでにはさまざまな困難がありました。
「北米日産自動車と日本本社の双方からのプレッシャーに挟まれ、緊張感のある日々を過ごしました。【Z】は、日産自動車を代表するスポーツカー。長年日産車を愛してくださっているファンの方々を裏切ることはできません。数値だけでなく、ファンならではの特別な思いやブランドイメージの重要性を説得材料に使い、なんとか調査を実現させることができました」
この経験を通じて、豊住は重要な教訓を学びました。
「人を動かすためには、データだけでなく感情に訴えるような説得も時には必要だと気づきました。お客さまの声を届けることが私たちの部門の使命であり、その経験を通じてそれを体現できたと感じています」
最終的に問題は解決し、アメリカ人の上司から「よくやった」と言われた時の喜びは今でも鮮明に覚えていると言います。
「長く働いていると、どの様なアプローチで改善点をまとめる必要があるかという嗅覚が養われます。それを逃さず対応できたことがよい結果につながったと思います」
言葉の壁を越えて築く信頼──世界中の同僚と本音で語り合える関係性をめざして
これまでのあゆみを胸に、豊住が今後の展望を語ります。
「日産自動車は個人が成長し、その結果会社にもよい影響が生じるサイクルを大切にしています。これからも自身を成長させ、会社にいい影響が与えられるような存在になっていきたいと考えています。また世界中で働く同僚がいるので、みんなでよい品質のクルマづくりをしていきたいです。
そのためにも世界中の同僚から信頼される存在になるのが目標です。やはり公私共に本音で語り合える人とは円滑に仕事が進んでいくもの。言語・文化が異なる中でも、同僚たちとそんな関係性を築いていきたいですね」
世界中の同僚とのコミュニケーションを重要視する背景には、自動車産業の特殊な環境があります。
「自動車って結構特異な工業製品だと思っています。企画から開発、製造、販売後のアフターサービスまで、これだけたくさんの人が関わる工業製品ってあんまりないと思います。関わるすべての人とうまく円滑なコミュニケーションを取らないと、仕事がスムーズに回らないということを日々感じています」
とくに品質改善の仕事は、時として同僚にネガティブな側面を指摘する必要があり、より繊細なコミュニケーションが求められると言います。
「時には設計や製造の手順についてネガティブな指摘をしなければならないこともあるので、発言にはより一層慎重になります。でも、それを乗り越えてみんなでよいクルマを作っていくことにこそ、この仕事の醍醐味があると思うんです。
海を越えて、文化や人種、言葉の壁を超えてワンチームになった時の達成感はたまらないですね」
日産自動車の魅力について、豊住は個人の成長を支援する環境を挙げます。
「日産自動車は『成長したい』という人に多くのチャンスをくれる会社だと思います。これからも現状に満足せず、新しいことに挑戦し、自分を成長させることで会社に還元していきたいです」
※ 記載内容は2024年10月時点のものです
