良いEVを世に送り出したい──売れるクルマづくりを、バッテリーの面から支える
日産自動車のR&D部門で、次世代のEV(電気自動車)に搭載されるバッテリーの開発に取り組んでいる加藤。現在は、パワートレインEV開発本部 パワートレイン・EVバッテリー戦略&製品技術開発部 EVバッテリーパック設計グループに所属しています。
「私の業務はバッテリー設計です。これから発売予定のEVに搭載されるリチウム電池の構造や性能を決めたり、コストを決められた価格内に収めるためにどうすべきかを考えたりしています。性能の面で言うと、航続距離や衝突安全性能といった技術課題を解決するために日々取り組んでいます」
EVの価格の約半分をバッテリーが占める現状において、コストと性能の両立は大きな課題です。また、リチウム電池を多く搭載しているため、衝撃がかかっても乗員の安全が守られるような構造にすることも必要です。さらに、バッテリー技術は半年~1年単位で急速に進歩しており、常に最新の動向をキャッチアップする必要があります。
「現状の仕様に合わせて必死に取り組んでいても、新しい技術が出てくれば、当社もそれを取り入れる必要があります。常に世の中の動向を見て、他社をベンチマークしながら、自分たちもオンタイムで技術開発していかなければいけないところが、この仕事の難しいところであり、刺激的なところです。新しい知識と技術を取り入れながら開発に携われる分、やりがいがありますね」
バッテリーには、実際のエネルギー源であるリチウム電池や構造を守るケース、補給類などの構成部品がたくさん存在します。加藤は、それぞれのパーツに対して、どうすればコストを減らせるかという課題に日々向き合っています。
「達成するのはなかなか難しいのですが、すべてを合わせると大幅なコスト削減につながるので、自動車の価格を決める重要なポイントに関われているという実感があります」
そんな加藤は、仕事をする上で「前を向いて開発に取り組むこと」を大切にしていると話します。
「苦労や難しさは絶えませんが、それは当社だけではなく、他社も同じこと。バッテリーの価格をできるだけ下げたり、技術を向上させたりすることで、結果的に良いEVになれば売上につながります。悲観的に捉えずに、『良いEVを世に送り出したい』という前向きな気持ちで取り組むようにしています」
環境問題への想いから挑んだ蓄電池研究の道。EV開発の先進性に惹かれ日産自動車へ
加藤がバッテリーやリチウム電池のスペシャリストとしての道を歩み始めたのは、大学3年生の頃でした。当初の専攻は、物質化学や生命化学という電池とはまったく別の分野だったと言います。
「当時、世の中では環境問題やエコ活動などが注目を集めていて、EVもどんどん市場に出始めていました。私もせっかくなら世の中の役に立つ研究がしたいと考えるようになり、環境問題の解決に活かせる研究として、蓄電池に興味を持ちました。そこで、同じ学科内で専攻を電気化学に変更したんです」
さらに、大学院の研究室で蓄電池の研究に携わる中で、将来のキャリアについても具体的なイメージを描いていきます。
「研究では目に見えない化学を扱っていましたが、就職後は目に見える実際の製品を扱いたいと考え、ものづくりの企業を志望しました。実際の製品をお客さまに届ける仕事は、大きなやりがいを持てるんじゃないかなと思ったんです。
そこに、研究内容を活かして環境問題に携わりたいという軸を重ねて、EVの開発ができる自動車業界に絞って就職活動を行いました」
その中で、加藤は日産自動車の先進的な姿勢に強く惹かれたと語ります。
「当時から日産は、他の日本の自動車メーカーと比べてEVのイメージが強く、ホームページでも電動化と知能化を掲げていました。やりたいことを実現するには日産が最適だと考え、入社を決意しました」
こうして、2017年に日産自動車に入社した加藤。配属されたのは、これまでの学んだ領域とは異なる、車両全体のレイアウトを行うR&D車両計画グループでした。
「通常、蓄電池の化学研究者は総合研究所などに配属されることが多いのですが、私はあえて車両計画グループを希望しました。自動車業界に入るなら、まずはものづくりの醍醐味や車両全体の最適化などを学びたいと考えたんです。
採用面接でも、入社したら、何万点もある部品のレイアウトを決めたり、さまざまな部署を取りまとめたりする立場に興味があると話していたので、その意思が伝わったことが嬉しかったですね」
自身の希望が叶った配属だったものの、周囲とのバックグラウンドの違いには苦労したと加藤は振り返ります。
「同僚の多くが機械工学科出身で、私のような化学研究をやっていた人は少数派でした。3Dモデル作成など機械系の分野の業務は経験がなく、とくに苦労しましたね。とにかく実務の中で、いろいろな車両のレイアウトを担当して数をこなすことで、知識を付けたり3Dモデルの操作を覚えたりして、3~4年かけて慣れていきました」
車両計画グループでの経験は、その後のキャリアの重要な基盤となりました。
「自動車に関するすべてのことを考える部署なので、どこにどういう部品が載っているかなど、純粋に商品としての自動車に詳しくなりました。
また、荷室のレイアウトを担当した時には、お客さまにとって使いやすい設計について考えるきっかけになりました。B2Cの企業にいる以上は、ただ技術や研究を極めるだけでなく、お客さまが何を求めているかの視点も大切です。
新卒で配属された部署で、お客さま視点を持ちながら自動車について網羅的に学べたことは、とても良い経験になりました」
世界中のどんな土地でもEVを走らせる。過酷な環境下でのバッテリー検証へのこだわり
2022年、加藤は入社6年目を迎え、車両計画グループからバッテリー開発グループへと異動します。これは、社内教育の一環としてのキャリアローテーションによるものでした。
「もともと上司との面談で、部品設計をやってみたいという話をしていて、ちょうど異動のチャンスを得ることができました」
部品設計という新しい分野に挑戦することで、仕事の進め方も大きく変化したと言います。
「1つの部品に注力するという意味では、これまでよりすごく集中できるようになりました。逆に、見る範囲は狭まったものの、より深いところまで設計や技術の知識を理解しないといけないので、新たな難しさを感じていますね。
また、車両計画の時は全体の取りまとめはしていたものの、実際の部品のスペックまで踏み込んで決めることはできませんでした。今は、バッテリーの性能コストなど細かい部分の設計を通して、直接お客さまに関わる部分を検討できることが、勉強になりますし、やりがいでもあります」
とくに印象に残っているのは、グローバルな使用条件に応じたバッテリーの性能検証だと話す加藤。
「EVは世界中のいろんな地域でいろんな温度条件や路面状況で走っていて、バッテリーの使われ方もさまざまです。そこで、実際にバッテリーを使って、いろいろな走行パターンを想定して、激しい走り方をしてもバッテリーが壊れずに耐え得るかという実験を行うんです。その結果次第で、使える領域を詰められたり、逆にギリギリの性能まで使い切らないと余計にアイテムを積まないといけなくなったりするなど、実際の設計に影響を及ぼします。
さらに、通例の実験だけではなく、『こういう検証も必要なんじゃないか』と突発的に準備して実験を行うこともよくあります。こういった、より深く踏み込んでこだわるところは、日産の『他のやらぬことを、やる』精神が表れているなと感じますね」
共に実験や開発を進めるチームの仲間からも多くの刺激を受けています。
「エンジニアとしてより深く技術を掘り下げたり、コスト削減アイテムを見つけたりなど、設計のスペシャリストがたくさんいます。また、急遽実験を行う場合なども、チャットや通話などですぐに関係者とコミュニケーションを取って連携するなど、フットワークが軽い人が多く、私も学びになっています」
妥協なきものづくりに必要なのは、タフに変化を楽しみ、チームで挑む姿勢
日産自動車で働く魅力について、加藤は以下のように語ります。
「日産の魅力は『妥協のないものづくりの姿勢』があることです。良い自動車を作るという共通の目標のもと、価格も性能も価値も、すべてを妥協せずに開発をしています」
そして、その裏側には、社員一人ひとりが高いモチベーションを持ち、タフな姿勢で仕事に取り組む環境があると語ります。
「皆さんのモチベーションの高さを感じることが多いです。納期に追われている中でも、『これでいいや』と諦めず、粘り強く、なんとか解決しようという気持ちがある人たちばかりです」
そんな日産自動車で活躍するには、どのような資質が求められるのか──加藤はこう語ります。
「変化に対応できる人、チャレンジングな風土を『楽しい』とか『刺激的だ』と思える人が向いています。自動車業界は、1つの技術だけを当たり前にやっているだけでは通用しない世界なので、前向きな姿勢が求められるんです」
また、大規模な自動車開発では、1人で抱え込まずにチームで課題を解決することも重要です。
「何十人、何百人の仲間と一緒に課題を解いているので、みんなを巻き込んで、詳しい専門家に助けを求めながらゴールに向かうという気持ちが大切です。周りを頼れたり助けを求めたりできる人の方が、大所帯の自動車開発では適していると思います」
さらに自身の経験をもとに、就活生に向けてこんなアドバイスも。
「大学時代の専門性や専攻にとらわれて、可能性を狭めないでほしいですね。自身のやりたいことをベースに、就職先や部署を選んでもらいたいです。私も化学専攻でしたが、機械工学出身者が多い部署でも、実務から学びながら働くことができました」
今後のキャリアについて、加藤は技術とビジネスの両面での活躍を視野に入れています。
「現在はエンジニアとしての技術力を培っている段階です。将来的には、その技術力を十分に身につけた後で、EVの収益性などビジネス視点を含めた業務にも携わりたいと考えています。
また、日産の優れたEVを世界に発信する立場にも興味があります。良い製品を作るだけでなく、それを世界に知ってもらうための発信者としての役割も担っていけたら嬉しいですね」
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
