感性と技術が紡ぐ理想──日産らしさを追求するEV開発の最前線で
第二製品開発本部に所属する小巻。10名ほどのチームのリーダーとして、5年以内の市場投入をめざすEVの車両計画を担当しています。
「現在担当しているのは、次期EV。人員配置や居室空間といったお客さまが直接見て触れる領域を計画しています。EVは床下に大容量の薄型バッテリーパックが搭載されるため、その特性を活かした居室空間の設計が重要になります。EVのお客さまは充電中の待ち時間を車内で過ごすことが多いので、運転時だけでなく、待機時も快適に過ごせる空間づくりを心がけています」
車両計画とは、これからのクルマのあるべき姿を追い求めて、車両全体で実現したい機能に対して最適な部品配置や構造を考えていく仕事。
「例えばバックドアのヒンジが車両の中心に近いところにあると、ヒンジのメカスペースの分、頭上の空間が狭くなってしまうので、そのヒンジをできるだけ外側に配置して、居住空間を確保するようにしたいと考えます。この配置の実現には設計部署とバックドアの形状や強度等について相談する必要があります。
このように車両を構成するすべての部品、すべての構造に関わり、関係する部署の方々と議論しながら、様々なことを決めていきます」
小巻が日々の業務で特に意識しているのは、相手の立場に立った丁寧なコミュニケーション。
「横柄な態度を取らずに、相手とどのように前に進められるかを常に意識しています。新しい技術や形状を実現しようとする際には必ず抵抗が生まれます。しかし、相手の都合も考慮しながらできることを見つけ出し、少しでも前に進める方向性を探ることが大切です。
現在の大きな課題は、日産らしさの追求。日産にはさまざまな人がいて、多様な技術と豊富な知見があります。外に調べに行くだけでなく、社内を歩いているだけでもヒントが見つかります。日産を好きなお客さまに、これまでの良さを保ちながら、他社にない独自の技術をどう融合させていくか。それが今、私たちが模索しているところです」
感性と技術の両面から理想的なクルマづくりをめざす中、デザインの議論では技術的な制約と美しさの両立に向けてチームメンバーと熱い議論を交わしています。
「私たちのチームは、入社2年目の若手から25年以上のキャリアを持つベテランまで、幅広い年齢層で構成されています。外国籍のメンバーも在籍しており、日産のダイバーシティを体現するような雰囲気。チーム内では年次に関係なく、技術やクルマに対して忌憚のない意見を交わしています。
人それぞれ良いと思う形があって、『こうしたらかっこいい。でも時間やコストの観点でできない理由があるから、どうやったら技術的にそこを乗り越えられるのか』といった意見を出し合って議論することが多いです。デザインの外観的な美しさだけでなく、思い通りに走ってくれるという機能としての美しさまでさまざまな観点から追求していくのが私たちの仕事です」
細部に宿るこだわりと美しさ。先進性と世界一を狙える環境に惹かれて日産へ
機械系の分野に興味を持ち、とくに乗り物が好きだった小巻。
「機械分野でブレイクスルーが起きるのには、メカニカルで何か新しいものを実現するよりも新しい材料の採用が大きな要因になります。そういうところを突き詰めて勉強したいと思い、大学院では材料分野に進みました。
自動車は内側の機械や電気/電子としての複雑さだけでなく、外観の感性に訴える美しさがあります。また、国の産業を支える側面や環境への配慮などさまざまな要素が複合的に組み合わさっている点に魅力を感じていました。とくに、日産スカイラインのフォルムには惹かれましたね。言葉では説明しきれない情報量の多さや美しさがあるんです」
そして、就職活動では日産を選択。その理由は主に2つありました。
「1つめは、他社に先駆けて新しい技術を導入するようなチャレンジングな姿勢や精神です。たとえば、スカイラインのダイレクトアダプティブステアリング(ステアリングバイワイヤ)など安全に関わる技術でも確実な検証を行いながら先進的な取り組みを行う点に共感しました。
2つめは、現在の企業としての立ち位置です。私は自分がつくるクルマを世界一にしたいという想いがあります。そのため、すでに成功している企業よりも、これからリードしていく過程に携わることで、より大きな達成感とやりがいを得られると考えたのです。『日産は世界一を狙える』──その可能性を感じたんです」
入社後は希望通り車両計画部署に配属。初めての経験となる車両計画の技術習得に励みました。
「ベースとなる技術知識を活かしながら、研究のように仮説を立てて実証するという方法で、一歩ずつ経験を積み重ねてきました。専門誌を読んだりモーターショーやショールームに足を運んだりして、常にアンテナを張っています。
入社当初、先輩からの指導で印象に残っている出来事があります。スカイラインのエンジンルームを見せられた時、私はエンジンの大きさや機能面に注目していましたが、先輩はハーネスのレイアウトというお客さまが意識しない部分でも、配線を美しく整然と配置することへのこだわりを教えてくれました。このような細部まで突き詰める姿勢を持った技術者が多くいることが日産の強みです」
未来を描き、仲間とカタチにしていく車両計画の醍醐味
小巻が印象に残っているのは、e-POWERシステムのバッテリー配置に関するエピソードです。従来とは異なる場所への配置を提案した際、現状からの変化のため設計部署から反対の声が上がりました。
「e-POWERは日産でしか実現しえなかったハイブリッドのシステムです。新しいセグメントに搭載して、お客さまに提供できることは大いに価値があることですが、側面衝突性能への対応を検討する必要がありました。
今までの構造では新しい技術を突き詰められないため、並走している他の車種の構造を参考にしたり、すでに世に出ている車の強度を確認したりしました。その結果、バッテリーを保護する車体断面を大きくすることで解決できると考え、そのためのスペースを確保する提案をしました」
何度も話し合いを重ね、最終的に新しい配置案を実現することができました。
「この経験から、価値を生むためには人を巻き込んで問題を乗り越えることが重要だと実感しました。基本的に、うまくいくことには価値は生まれにくいもの。問題があって、それを乗り越えた時に初めて価値が生まれます。物事を動かし続けることができれば事態は好転するというのが、日産に入って分かりました。
諦めずにもがきながら動かし続けると、それが熱を帯びて、いろいろな人の知見があつまり、もっと良い案になっていくんです。今までと違う角度から議論すると次のステップに進むことが多く、それが自分の成長につながると思います」
車両計画という仕事の魅力について、小巻は自分発信でやりたいことをスタートできる点を挙げます。
「ある部署では与えられた条件の中で制限されて仕事をすることになりますが、車両計画・プラットフォーム計画では、上記の開発条件を計画できるところに醍醐味があります。『先を見据えてこうあるべき、こうした方が会社にとってもお客さまにとってもいい』。そういう戦略を持ってスタートできる。それを1人じゃなくて、とても多くの人を巻き込んで形にできるところが魅力だと思います」
日産の内側だからこそ見える真実。計画に込められた挑戦と信念
日産の内側から見える景色は、外から想像するものとは大きく異なると小巻は振り返ります。
「日産を外から見た魅力よりも、中から見た魅力の方が大きいです。『ここまでやっているのか』、『こんなところまでこだわって突き詰めているのか』ということがたくさんあります。
たとえば、私が魅力的に感じたスカイライン。そのフォルムの美しさは、低いエンジンフードが形作っていたものでした。低いフードは衝突時にポップアップし、歩行者の衝撃を緩和する安全機能を備えています。安全機能とスタイリングの両立。それが美しさの答えでした。『なぜそうなっているのか』という疑問には必ず明確な答えがあり、それがすべて計画されて世に出ているのです」
そんな日産で、今後どのような存在になっていきたいかについてこう語ります。
「日産ではボトムアップ的に魅力をクルマに落とし込んでいく文化が根付いていますが、その中で私は尊敬する先輩の存在が大きいです。上司や役職に関係なく、これはお客さまのために良くないと判断した場合にはNOと言える精神を持ち、それを行動に移せる方がいます。職位が上がり責任範囲が増えると、守るべきことも増えてきます。
それでも、実現したいビジョンのために発言をためらわない。そういう姿勢が非常に尊敬できるところです。その方からは技術レビューの際に重要なポイントを教えてもらう機会も多く、私自身もそのような存在になりたいと考えています」
こうした経験を踏まえ、新しく日産に入社する人へメッセージを送ります。
「日産にはどんなバックグラウンドをもつ人でも好きになれるポイントがあります。クルマという工業製品としての特性はもちろん、若い人のチャレンジを許容し後押しする文化があります。自分のやりたいことに対して意欲的に取り組める環境が整っているので、ポジティブで積極性のある人が入ってくれたら、世界一をめざすという目標を一緒に実現できると思います。
そのためには、当たり前のことを当たり前にするということが大事です。人から言われたことや、やらなければいけないことを先延ばしにするのではなく、きちんと真摯にやる。それさえできれば、この会社で怖いことはありません。特別なことをしなくても、基本的なことを確実に実行していけば、必ず前に進んで成長できるはずです」
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
