運転支援システム“ProPILOT 2.0”のさらに先へ──次世代運転支援技術を開発
現在、AD/ADAS先行技術開発部に所属する伊東は入社9年目。次世代の運転支援システムの開発を行っています。
「私の所属するチームでは、日産の運転支援システム“ProPILOT”の開発を行っています。ProPILOTとは、高速道路などで先行車と車間距離を保ちながら車線中央付近を走行するための運転操作を支援するシステムです。
ProPILOT 2.0ではドライバーがハンドルから手を離した状態での車線維持、追い越しや設定されたルートに沿った走行のための車線変更アシストなどが追加され、すでにアリアやセレナに搭載されています。現在はより多くのシーンでProPILOTをお使いいただけるよう開発を進めているところです」
同部署では、初期の試作から完成まで先行開発のプロセスを一貫して行っています。
「今、力を入れて開発をしているのがLiDARを用いた運転支援機能の開発です。現在はカメラとレーダーを用いて周囲をセンシングしていますが、これにLiDARを加えることによりさらに遠方の状況に応じた制御や、飛び出しなど急に変化する状況に応じた制御を行うことができます。
目下、試作車をつくる準備中で、試作車のセンサーを整えたら、新機能を載せた試作車を走らせて検証段階に入る予定です。その後も、先行開発の最終段階まで私たちが担当します」
自動運転化技術は、日産自動車の“知能化”にかかわる先進技術領域。その最前線で働く先行開発メンバーは、意外にも若手が多いと言います。
「私が所属しているチームは多くを入社3~5年目ぐらいの若手が占めています。入社9年目の私で年次としては上のほう。若手の業務をフォローしながら自分の担当を遂行し、チームリーダーのサポートも行っています」
伊東のポジションは若手筆頭といったところ。大切にしている価値観があります。
「若手に対しては、一人ひとりのバックグラウンドに応じてフォローすることを大切にしています。われわれのチームはメンバーの出身の専攻が多彩なのが特徴で、機械系だけでなく、私のような電気系や情報系を専攻していたメンバーも多く所属しています。
たとえば、情報系出身で自動車を目下勉強中のメンバーであれば、自動車特有の物理的な側面や使われ方といったところを考慮することをサポートしつつ、より良いソフトウエア開発に集中できる環境を整えます。メンバーのバックグラウンドによって長所が異なるので、それぞれが強みを発揮できて、なおかつチームとして開発スピードが滞らないようフォローすることを心がけています」
電気系工学を修了して1年目から先行開発チームに。世界に日産自動車の先進技術を披露
子どものころから自動車が好きで、将来は自動車会社で働きたいと思っていた伊東ですが、大学院時代の専攻は電気系工学の集積回路設計。研究成果を活かせないのではないかとの不安から、自動車業界に進むことを迷っていたと言います。
「夢をとるか、専門をとるか……。迷いながら就職活動を始めたのですが、日産自動車の企業説明会に参加して吹っ切れました。日産自動車の皆さんの雰囲気が、ほかの会社の人たちとはまったく違っていたのが理由です。
伝えたいことを率直・明瞭に話すのが印象的で、『なぜこんなにズバズバ話せるんだろう?』と考えるうちに、自社に誇りを持っているからだと気づきました。自社と自社製品に自信があるから、堂々と話せるのだと。
そんな社風に魅力を感じ、日産自動車で自分の専門知識を活かしたい、ドライバーの使い勝手が向上する機能をつくりたいと考えるようになりました」
また、出身地である神奈川県に拠点があることも決め手になりました。
「小学生のときに日産自動車の工場見学に訪れたことがあり、馴染みがあったんです。関東に開発拠点がある自動車会社は少なく、地元で開発ができるのは魅力でした」
2015年に日産自動車に入社した伊東。現在も所属しているAD/ADAS先行技術開発部に配属され、入社1年目から先進技術の開発に従事することになりました。
「入社1年目から自動運転化技術の開発チームに入り、国内外の交通環境を考慮した自動運転化技術の開発に携わりました。とくに貴重な経験となったのが、入社2年目のロンドンでの開発です。
ロンドンには日本ではあまり見かけないラウンドアバウト(環状交差点)がたくさんありますが、当時はラウンドアバウトを自動走行できる機能がなく、機能を一から作る必要があったんです。現地の交通ルールを調べ、どのように認知、判断をする必要があるかを考えるところから始めました。
試作車を日本で準備した上で現地へ。現地で調整を重ねた結果、理想通りの走りが実現できました。開発後半では、海外メディアを集めて開発した技術をデモンストレーション走行で披露することもしました」
日産自動車の先進技術を世界にお披露目することに成功した伊東ら。このとき開発した自動運転化技術も、その後、ProPILOT 2.0へとつながっていきます。
伊勢志摩サミットのミッションをチームワークで成功させ、アメリカ出向で成長
自動運転化技術試作車によるデモンストレーション走行は、2016年の伊勢志摩サミットでも行われました。チャレンジングなミッションで、チームワークが大いに発揮されたと言います。
「伊勢志摩サミットのミッションは、各国の首脳を自動運転で安全に運ぶという緊張感のあるものでした。しかも、会場の警備の都合で、現地での最終調整は短期間。日頃のチームワークが、ここぞとばかりに発揮されました。
チームは10人ほどの少人数で、東京やロンドン、シリコンバレーでのデモンストレーション走行を成功させてきた精鋭たち。環境や条件が違っても、積み重ねたチームワークでそれぞれが計画どおりに調整を行い、成功させることができました」
大きなプロジェクトを次々と成功へと導いた後、その経験を生かし、量産車の開発として人気車種スカイラインに搭載した世界初の先進運転支援技術ProPILOT 2.0の開発にも携わりました。若くして幅広い業務を経験し、2021年には入社7年目で北米日産会社への出向も果たしています。
「ProPILOT 2.0を北米の環境に合わせた仕様にチューニングするのが目的でした。私が出向メンバーに選ばれた理由は、ProPILOT 2.0に開発初期から携わっていたからです。運転支援システムは、システムがサポートする領域と、ドライバーが操作する領域の切り分けが重要です。
『なぜここからここまでをシステムが作動するよう設定したのか』というところまで把握していることは、海外で少人数での作業になってしまうことが多い中で非常に役に立ちました」
ProPILOT 2.0のスペシャリストとしてアメリカに派遣された伊東。文化もユーザーも違う異国で多くを学んだと言います。
「現地スタッフに、『アメリカと日本では、ユーザーの考え方が違う』と強く言われて、はっとしました。交通ルールが違うだけでなく、お客さまの使い方や好みなどが想像以上に大きく異なり、実際に話を聞いたり体感したりしないとわからないことが多くありました。
普段からお客さまが車を使うことをイメージして開発をしていますが、実感を伴って使われ方のイメージの引き出しを増やすことができたのはとてもいい経験でした」
学んだのは、海外ユーザーの視点。出向の成果について伊東はこう続けます。
「出向を経験したことで視野が広がり、これからはより多くのニーズがあることを念頭に置いた上で開発しようと考えるようになりました。今後の開発業務に活きてくると思います」
ソフトウエア領域でありながら目に見えるかたちで製品化できるのが日産自動車ならでは
入社以来、自動運転化技術の開発に従事してきた伊東。開発者として日産自動車で働く醍醐味についてこう話します。
「自動運転化技術試作車に搭載したシステムの一部が、現在のProPILOT 2.0に採用されました。最初は一点ものの試作車で開発を始めた機能が実際に量産車に搭載されたときは不思議な気持ちがしましたが、これこそが日産自動車でシステム開発をする魅力だと思っています。
自分が直接携わっているのはソフトウエアですが、最終的には車という形でお客さまにお使いいただきます。自分たちが開発したProPILOT 2.0がCMでも流れ、実際に街を走ることに、確かな手ごたえを感じています。
また、自動運転化技術は世界中から注目され、ドラスティックに進化している先進領域です。とくに当社の開発レベルは業界内でも高いと自負しており、その先行開発に携われていることが大きなやりがいになっています」
今後の目標は、次の自動車に何が必要か考えること。自身の将来をこう展望します。
「私はこれまでは、『何を作るか』を与えられた上でチームの一員として『どう実現していくか』に注力していました。今後は世の中の流れや日頃の開発での気づきから『次に何をつくるのか』という議論にも積極的にかかわっていきたいと考えています。これからも、開発した技術をお客さまのもとに届けていくつもりです」
私たちを新たなドライビング体験へ先導する日産自動車の自動運転化技術。私たちの想像をはるかに超える未来の実現に向けて、伊東ら開発者たちの創造力はこれからも進化し続けます。
※取材内容は2023年5月時点のものです。
