JR九州へ入社して約20年を迎える山路。鉄道の営業系統の業務や構造改革などを経験し、現在はJR九州グループ全体の事業ポートフォリオ戦略を担当している。学生時代からこれまでのキャリアを振り返りながら、JR九州で働く魅力について語る。
「生まれ育った九州を元気にしたい」熱い想いを抱いてJR九州へ入社
鹿児島生まれ鹿児島育ち。大学は東京。学生のころから興味の対象は「まちづくり」だった。
山路 「大学時代は県人寮に住んでいたことも影響してか、東京に居ながらも都市と地域の両方を常に意識した学生生活を過ごしていた気がします。大学では都市社会学のゼミに所属していました。地域活性化に関する懸賞論文に挑んだり、東京の道をひたすら歩いたり。
ただ、ゼミの卒業論文のテーマにしたのは“焼酎”でした。愛着ある郷土・鹿児島の代表的な産品である焼酎がどのように浸透し、お客さまに嗜まれ文化が形成されたのかを研究するアプローチで論文を書きました。お認めいただいた先生や支えてくれたゼミの仲間には今でも感謝しています(純粋に焼酎が好き、というのは偽らざる本音です)」
就職活動中、JR九州が、生まれ育った鹿児島ににぎわいをつくり出している姿は印象深かったと振り返る。
山路 「大学生時代に九州新幹線が部分開業したんです。鹿児島中央駅に大きな駅ビルができ、まちの新陳代謝が活性化していました。ソフト面・ハード面であらゆることがアップデートされ、まち全体がワクワクして高揚感が沸き上がっていることが肌感覚で伝わってきました。
そしてその中心にJR九州がいたことは、素直に驚きでもありました。そもそも、まちをつくり、にぎわいを生み出すまちづくり事業は自治体などの専売特許、との先入観があったんです。JR九州は民間企業でありながらもまちに大きな影響をもたらすアプローチができることを実感していましたし、実は入社して約20年経つ今もその可能性を疑わず信じています」
当時、就活時の企業選びの軸は、「一過性ではない持続可能な視点でまちづくりに携わりたい」、「民間会社でビジネスの採算性や経済性を学びたい」、「早く高く成長し、のびのびやりたい」の3つ。そして自然と3つの軸の中心にあったのがJR九州であった。
山路 「数多くの会社を受ける過程でエントリーシートを書き面接に臨みましたが、根っこでは共感していないのに志望動機を書く際、無理矢理に対象業界にあわせて作文していた自分がいました。JR九州のエントリーシートを書くときには、素直な気持ちをぶつけることができ、本音を自然と書けたのを覚えています。学生身分ながら、『入社後のミスマッチが少ない企業ってこういう会社なのかもしれないな』と妙に自分を客観視したことを覚えています」
就職活動終盤ではJR九州と東京の不動産会社、どちらへ就職するのか悩みに悩んだと言う。そんな中、決め手となったのは、故郷への想いだった。
山路 「ロジカルに説明できないのですが、九州で生まれたこともあり、どうせなら故郷に貢献したいし、衰えゆく地方をほっとけないと思いました。『九州を元気にしたい』というピュアな想いを抱いて帰ってくる若者がいてもいいじゃないかという、勝手な使命感を抱きUターン就職を決断しました。九州でうまくいけば他の地方にもノウハウを応用できるし、世のために人のためになるのではないか、とも」
JR九州のどの部署でもグループ会社でもめざす方向は同じ
山路はJR九州における約20年のキャリアの中で1~3年のスパンで、10回近い異動を経験した。
山路 「主に鉄道の営業や人事、全社管理の業務などを担当してきました。鉄道の営業チームではシステムに関わる仕事が多かったですね。たとえば、駅の自動券売機や自動改札機、ICカード『SUGOCA』、インターネット列車予約やアプリなどに関する仕事に従事していました。
そのほか、CS(Customer Satisfaction:顧客満足)戦略 や全社的なサービス改善の働きかけ、お客さまからのご意見ご要望をふまえ改善につなげる取り組みなど、サービスに関する業務にも携わっていました。直近では、経営企画部にて、鉄道の構造改革を行う BPR(Business Process Re-engineering)プロジェクトに携わりました。
現在の担当は『事業ポートフォリオ戦略』です。チームのミッションはJR九州グループの事業をより最適化していくこと。JR九州は国鉄分割民営化以降、鉄道事業と基軸としつつ不動産やホテル、流通・外食、建設、ビジネスサービスのセグメントなどに果敢に挑戦し多角化を進めてきました。私たちの使命は全体のポートフォリオを最適化し、まちづくりの領域で最大限に貢献できる事業を育て、成長し続けることです。
アプローチの一例をあげると『M&A』があります。九州には良いブランドをお持ちの歴史ある企業様が数多くあります。ただしオーナーや経営者の方に事業承継の課題を抱えていらっしゃる企業様が少なくない。そのようなとき、JR九州がお手伝いできないか、と考えます。事業を永続させるだけでなく、ブランドを強化しJR九州グループの力でより進化に弾みを付けられるかもしれません。大変意義深い仕事だと思っています」
複数の部署を経験することができるメリットは、多様なスキルを身につけられる点にある。山路はどのように捉えているのだろうか。
山路 「私はポジティブに捉えています。JR九州は私たちの“あるべき姿”として、“九州、日本、そしてアジアの元気をつくる企業グループ”を掲げています。事業は多角化し、グループ会社も40社を超える数がありますが、グループ全体が“地域を元気にしたい”という同じベクトルに向かって事業を営んでいますし、さまざまな営みがまちづくりを通して地域に貢献し続けることに帰結します。
まちづくりをライフワークにしたいと考える私にとっては、極端な話、どこに異動したとしても、私の意の射程内に収まると思っています。私は学生時代、まちづくりとはすなわち「デベロッパー」をイメージしていました。実際にJR九州では、駅ビルを通してまちづくりに貢献する事業開発系統を強く希望していました。一方で、入社して約20年が経つ今ではもう少し柔軟に構えることができています。
まちづくりのアプローチはさまざまで、駅ビルのような施設をつくることのほかにも、イベントを通したにぎわいづくりのアプローチもあります。鉄道、観光、流通・外食、建設の観点もありますし、CS(顧客満足)やシステムの開発・運用、などの切り口があり得ます。M&Aも間接的にはまちづくりに寄与できると考えます。JR九州では定期的な人事異動を通じて多様なスキルを身につけることができます。物事を多面的に捉えることができ、視野や価値観が豊かになる。もしかすると業種や仕事内容は大きく変化しながらのジョブローテーションになるかもしれませんが、広く、時には深くスキルを磨き自身の『タグ』が増えていく。同じ会社に居ながらにして、あたかも転職を繰り返すかのように動き、己のまちづくり人材としての戦闘能力を上げていける点で私は前向きに捉えています。世の中の第一線で活躍されているまちづくりのエキスパートの皆さまに比べればまだまだですが。
なお、私の現在の仕事のM&Aの関係ですが、JR九州はしばしば対象会社に若手を経営陣として送り込む人事運用も行います。実際に経営をしてみることでしか見えない景色があると思いますし、修羅場の連続。JR九州では若くしてそれを体験でき自分の糧にすることができる。ここで得た経営の経験を今度はもっと大きな組織で発揮する。それらを通じてまちづくりに貢献する。これがJR九州の働き方ですし人の育て方の特徴です」
コロナ禍の影響で事業存続が危ぶまれる状況に。V字回復をめざしBPRプロジェクトに参画
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、JR九州にも深刻な影響を与えた。この危機的状況を打開するべくコロナ禍の最中に結成、開始したのが、「BPRプロジェクト」だ。ここでの経験がターニングポイントとなった。
山路 「パンデミック前は社外の皆さまから『JRはインフラだから安定していて潰れるわけがない』との評価をいただく場面が少なからずありました。しかし、コロナ禍の威力は想像以上で、『潰れるかもしれない。でも、潰してはいけない』と目の色が変わったタイミングでした。
コロナ禍の最中、鉄道事業のV字回復をめざして、『BPRプロジェクト』という構造改革に呼んでもらいました。まずは2年ほど鉄道事業の固定費削減の構造改革に注力し、その後は2年ほど未来志向の成長戦略に取り組みました。私は事務局の一員として仮説、分析、計画、実行、モニタリングに至る一連のプロセスへ関わりました。今までの延長線上にない、重たく大きな判断の繰り返しでしたが、経営陣の近くでそれを経験できたことは貴重な経験でした」
鉄道事業の収支改善を図り、輸送サービスを維持するためには固定費削減は避けられない。一方、数ある交通機関の中からお客さまにJR九州を選び続けていただくためには、提供するサービスの質も維持が必要だ。トレードオフになりがちなこの2つの命題に挑み、正解のない中で進む道を決めなくてはならない。
山路 「当社のステークホルダーは多様です。ご利用のお客さま、自治体を含めた地域のみなさま、株主さま、社員、家族……さまざまな方々がいて鉄道が成り立っている。固定費を削るため徹底して分析をしました。鉄道事業は安全にかけるコストは圧倒的に膨大ですし、人件費の割合も大きいのが特徴的です。
聖域のない改革を掲げる中でも、鉄道として譲れない部分を見定め、優先順位を付け圧倒的な速度で実行していくことの繰り返しでした。今後ともお客さまのご利用状況を丁寧に確認し適切に見直していくことが重要だと考えています」
コロナ禍という倒産をも頭をよぎるほどの大きな試練も、山路は前向きに捉えていると振り返る。
山路 「『禍転じて福となす』というように、構造改革を通じてJR九州として得たものはたくさんありました。鉄道会社として、持続的にまちに貢献できるための筋肉質な経営体力も養えたと、ポジティブに捉えています。何か有事がある際に当事者意識を持って行動できる人的な強さも手に入れたような気がします。
現在は、フェーズが移り、V字回復の反転攻勢を仕掛けています。未来鉄道と題し、いくつかのテーマで2030年を見据えた鉄道の未来について構想し、実際に実行へ落とし込んでいます。テーマの一例は、『未来の稼ぎ方』『未来の輸送体系』『未来のメンテナンス』『未来の設備』『未来の収支管理』など。産みの苦しみはありますが、こんなに楽しい仕事もないでしょう。だって仕事を通してワクワクする鉄道の未来をつくるのですから。これから一緒に働くこととなる方々にはこの未来志向のプロジェクトにぜひ参加してほしいと思っています」
経営陣、そして現場との距離が近い“コンパクト”な会社。充実した教育制度もあり、成長できる環境が整っている
JR九州グループは社員数2万名を超える規模の企業グループ。一般的に会社の規模が大きくなればなるほど社員1人の裁量権が小さくなるケースが多いとされるが、JR九州は若手でも大きな裁量権を持って自由を尊重しながら働ける環境が整っていると言う。
山路 「そもそも、どこの会社もこの類のテーマでは、『うちは若手がイキイキとしています』とアピールすると思いますが(笑)。何を比較対象とするかによりますが、少なくとも私は、JR九州は自由と裁量の点で極端に仕事がしにくいと思ったことはありません。若いころから多くの挑戦の機会をもらって、それぞれの職場や組織では実際に経営陣や現場と近い距離感を実感してきました。スピーディで主体的な働き方について維持するだけではなく改善を心がける職場が多いように感じます」
JR九州では、教育制度も充実させて社員の成長を後押ししている。
山路 「私は30代半ばの2年間、会社の制度で九州大学のビジネススクールで学び直しの機会を頂きました。実際の経験と理論の合流はもちろんのこと、社外の方との多様な接点にも恵まれました。仕事をしながらのMBAプログラム受講はなかなかしびれましたが、タイムマネジメントや優先順位のつけ方なども学びました。
周りを見渡すと、学び続けている人が多い会社だなと思います。MBA関係やマーケティング、ファイナンス、会計、語学、不動産、データ分析、先端技術など、みんな自己啓発に余念がありません。学びを支援するプログラムが十分に整備されていますし、意欲を持って行動すれば成長できる機会を得られる会社です」
お客さまと地域への密着感を忘れずに、新しい事業の形をつくっていく
過去の仕事で思い出に残っている仕事があると言う。
山路 「2010年ごろ、九州新幹線のネット予約を担当していましたが、自分が手掛けたネット予約の割引きっぷの話題が、新聞の一面を飾ったことがあったんです。客観的にみると、民間会社の一つの商品に関するニュースなのですが、思いがけず新聞の一面で取り上げて頂けた。それほど世の中の関心事であるし影響力の大きい仕事をしていることを強く実感し、JRで働くことの意味を体感して鳥肌が立ったことを覚えています」
VUCA時代(※)において、鉄道会社はどこも新たな戦略を模索している。JR九州が事業を行う上で大切にしているのが、「お客さま」と「地域」との密着感だ。
※ VUCA時代:Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取った造語で、社会やビジネスにとって、未来の予測が難しくなる状況のことを意味します
山路 「VUCA時代で未来を明確に予測し完璧な打ち手を講じることは難しいですが、答えは『お客さま目線』にあることだけは確信しています。JR九州は鉄道や駅ビルなどを軸としてさまざまな場面でお客さまとの接点を有しています。そこでお客さまに価値を提供し喜んでいただき、豊かなまちづくりに挑む会社です。
また、地域との密着感もJR九州の特徴です。われわれは地域から逃げることはできません。地域には可能性もあれば課題もあります。実際に九州では人口減少が全国レベルより早く進展する課題先進エリアです。JR九州は長期的な視点でまちに責任を持ち、ともに考え乗り越えていくことができる稀有な企業だと理解していますし、私はそこにやりがいと誇りをもっています」
まちづくりのアプローチにはこだわりがある。
山路 「経済的な価値と社会的な価値を追求して世の中の役に立ち続ける。この最先端のやり方を九州から発信していきたいです。難しい課題に対峙し、地域の皆さまと同じ目線で取り組む。九州を中心に、住んで訪れるお客さまに新しい価値をお届けし、豊かなまちづくりに挑む。この仕事にやりがいを感じアドレナリンが出る、そのような多様な方々に仲間に加わってもらえますとこの上なく幸せです」

