誠実であることを、判断の中心に置いてきた理由
私が仕事をするうえで、判断の中心に置いている言葉があります。 それが、当社の企業理念の一つである「誠実・信用・信頼」です。 とてもシンプルな言葉ですが、仕事や人との関わりの中で判断に迷う場面に直面すると、自然と立ち返っているのは、この考え方で、企業にとっても、個人にとっても、欠かせない姿勢だと思っています。
私がこの価値観を大切にするようになった背景には、幼少期のある出来事があります。 父は、かつて誰もが知る大企業で、経営に近い立場として働いていました。ある日、その会社で大きな横領事件が起き、複数の逮捕者が出ました。事件の全容がわからない中、実家にはマスコミが押し寄せ、父にも疑いの目が向けられました。その光景は、今でもはっきりと覚えています。結果として、父は事件に一切関与しておらず、潔白でした。しかし父は、管理監督責任を自ら引き受け、長年勤めた会社を辞職します。生活は一変し、信頼していた仲間からの裏切りも重なり、父はしばらく塞ぎ込む日々を過ごしていました。 そんな中で、父からかけられた言葉があります。
「人を騙すような生き方だけは、してはいけない」
当時は、その言葉の重みを十分に理解できていたわけではありません。ただ、この出来事を通じて、私の中には一つの感覚が残りました。それは、どんな局面でも、誠実であることから逃げない、という姿勢です。
現在、私が19年間勤めてきた当社では、「誠実・信用・信頼」を企業理念の第一に掲げています。人も企業も、平時ではなく、ピンチのときにこそ本性が表れるものです。当社は、厳しい局面においても、その判断基準を一貫して「誠実」に置いてきました。私はその場面を、現場でも、経営の立場からも、何度も目にしてきました。
振り返ると、私がこの会社で働き続けている理由は、とても単純です。判断基準が、自分自身の大切にしたい価値観と重なっているからです。 仕事は、人生の多くの時間を占めるものだからこそ、どこで、どんな考え方のもとで向き合うかは重要だと思っています。誠実であることを判断の中心に置けるからこそ、この会社で前を向き続けられている。私はそう感じています。
「なぜその会社に?」自身で下した迷いのない決断
私が仕事や経営に興味を持つようになったきっかけは、とても身近なものでした。 高校生の頃、何気なく目にしていた自動販売機です。まったく同じ商品が並んでいるのに、置かれている場所が違うだけで、売れる数が大きく変わる。「その違いは、どんな考えや判断によって生まれているのだろう」そんな素朴な疑問が、経営やマーケティングへの興味につながっていきました。
大学では経営学を専攻しました。就職活動の時期を迎え、いくつかの企業から内定をいただいた際、私はすべての企業に同じお願いをしました。 「一年後に力になれる状態で入りたい。無給でも構いませんので、学ばせてほしい」 今振り返れば、少し変わった申し出だったと思います。 実際に受け入れてくださった複数の企業で働きながら、現場の方々と積極的に話をしました。
その中で、今でも強く印象に残っているやり取りがあります。私が「将来的には経営に携わりたい」と伝えたときの反応です。 多くの企業では、「まずは現場で経験を積もう」といった返答でした。それは否定ではなく、現実的で真っ当な考え方だと思います。ただ、当社で働く方々の反応は、少し違っていました。 「おもしろいね。どうしてそう思ったの?」 「それなら、一緒に考えていこう」 年次や立場に関係なく、意欲そのものを一度受け止め、対話しようとする姿勢がそこにはありました。
当時の当社は、上場もしておらず、知名度も高くありません。条件面だけを見れば、決して恵まれている会社ではなかったと思います。正直、周囲からは、「なぜその会社を選ぶのか」と驚かれることもありました。それでも、私の中では迷いはありませんでした。 自分が経営に関わりながら、多くの人に支持される会社にしていけばいい。そう考え、入社を決めました。 この選択の背景にあったのは、「会社の規模」や「条件」ではなく、「どんな考え方で、人と向き合っているか」という一点でした。
可能性に蓋をせず、意欲や挑戦を歓迎する文化。その空気感こそが、私にとって、この会社を選ぶ決め手でした。
経営理念を羅針盤に、立場をこえて本音で向き合える風土
私がこの会社で大切にしているのは、相手が誰であっても、「お客さまにとってどうか」「経営理念に照らしたときにどうか」を軸に考え、意見を伝えることです。 入社して間もない頃から、この姿勢は変えていません。 上司や目上の方の考えに触れたとき、経営的な判断として理解できる場面も数多くあります。それでも、お客さまの視点や理念の観点から見て違和感を覚えたときには、「私はこう考えます」と、自分の意見を伝えてきました。
あるときは、すでに決まりかけていた方針について、現場で感じた課題を伝えた結果、親会社の役員の方がその判断を取りやめ、意見を取り入れてくださったこともあります。どちらが正解、不正解という話ではありません。現場の声や別の視点を踏まえ、より良い判断を選ぼうとする姿勢が、そこにはありました。
このように、立場や年次に関係なく意見が受け止められる背景には、経営理念が共通の判断軸として浸透していることがあります。感情や個人のエゴではなく、「理念に照らすとどうか」という共通言語があるからこそ、本音での対話が成り立つのだと思います。 私はこの感覚を、「経営理念に背中を預けて仕事をする」と表現しています。「この意見を言ったら不利になるのではないか」といった余計な気遣いをせず、まっすぐにお客さまへ向き合える。そうした環境が、個人の挑戦を後押ししています。
中堅と呼ばれる立場になった現在は、私自身が、その文化をつくる側に回っています。 過去の成功体験ややり方に固執せず、部下や後輩、現場に近い声に耳を傾ける。お客さまにとってより良い形は何かを、一緒に考える存在でありたいと思っています。 現状維持は、衰退につながります。 だからこそ、新しい意見や挑戦が自然と生まれる状態を、意識して育て続けていくこと。その積み重ねこそが、この会社が成長し続けてきた理由であり、これからも大切にしていきたい風土です。
自らで考え、決断し、その結果を引き受ける
仕事は、人生の中で多くの時間を占めるものです。 だからこそ私は、ただ忙しく働くのではなく、自分なりの基準を持って仕事と向き合うことが大切だと考えています。何を選び、どこに力を注ぐのか。その一つひとつの判断が、結果として自分自身のキャリアや、人生を形づくっていくと思うからです。
現在、私は経営に携わる立場として、事業や組織の意思決定に関わっています。ただ、立場が変わったからといって、仕事への向き合い方が大きく変わったわけではありません。お客さまにとってどうか。ともに働く仲間にとってどうか。その視点を起点に考える姿勢は、入社当初から変わっていません。
当社はこれから、売上高1,000億円規模の企業を目指していきます。規模を大きくすること自体が目的ではありません。『世の中から必要とされ続け、信頼される企業であり続けること』そのために、変化を恐れず、新しい挑戦を積み重ねていきたいと考えています。 個人にとっても、組織にとっても、成長には必ず判断が伴います。正解が用意されている場面ばかりではありません。だからこそ、自分で考え、選び、その結果を引き受ける。その経験が、人を育て、組織を強くしていくのだと思います。
これから社会に出る皆さんも、就職活動を通じて、多くの選択に出会うはずです。その中で、「どんな会社か」だけでなく、「どんな考え方が根付いているか」に目を向けてみてください。可能性に蓋をせず、意志や挑戦を歓迎する文化の中で、自分自身の成長に向き合いたい。そう感じたなら、ぜひ一緒に挑戦していけたらと思います。
