「自然の恵みをより良いカタチに」──研究開発部門のミッションを捉え直す
池田糖化工業(以下、池田糖化)の研究開発部門では約250名の技術者が所属しており、部門のリーダーを務める福松は、入社以来30年以上にわたり研究開発に携わってきた身です。
「池田糖化の研究開発部門には、基礎研究部隊とアプリケーション開発部隊があり、品質管理部門として分析室、細菌検査室、品質情報室を設けています。とくに品質情報室では、商品企画書の作成から表示のチェックまで、他部門とも密に連携を取りながら業務を進めています」
また、研究開発部門に加え、昨今では知財戦略部門も設置。他社特許との抵触チェックや自社特許の権利化判断など、開発の上流から製品化までを見据えた体制を整えています。
「4年ほど前には市場開発室も新設しました。これまで当社は、お客さまの要望に応えることで成長してきました。しかし、人口減少や海外展開を見据えると、自社でマーケティングを行い、強みを活かした商品開発を進める必要があると考えての動きでした」
1992年の入社以来、福松は一貫して技術開発に携わってきました。第二開発室での最初の15年間を経て、工場での現場経験を積み、2012年からは海外事業本部で7年間、東南アジアでの事業開発を担当。その後、2019年に研究開発部門の部門長に就任。研究開発部門の理念として「自然の恵みをより良いカタチに」を掲げ、5年後の食を創造することを目標に掲げています。
「私たちは世の中の1つの駒として、それぞれに重要な役割を担っています。自分の部署だけではなく、会社全体、さらには社会全体を見据えて、技術を磨いていく。それが日本の食品に携わるメーカーとしての使命だと考えています。
また、私は基本的に、より良い方向を検討して現状を変えたい性分なので、ルールや施策など、この6年間でかなりの数を変えてきました。とくに営業部門とは意見を交わすことが多いですね。自分の中で固まりがちな常識が変わるので」
「自分たちは何を提案すべきか」海外経験や工場経験をもとに問い直す日々
池田糖化では長年、BtoB事業を中心に、顧客の要望に応える形でビジネスを展開してきました。しかし福松は、そこに大きな課題を感じていました。
「お客さまの要望に応えることを主として伸びてきた会社なのですが、個別対応でお客さまの意向に沿うことだけをしていると、自分たちが本来何をしたいのか、何をするべきなのかという意思を持てなくなってしまいがちなのです」
その課題意識は、2019年に福松が部門長に就任してから、具体的な施策として動き出します。
「日本の社会において人口が減少していく中で、海外に向けての取り組みも強化していかなければなりません。ただお客さまの要望に応えているだけでは、徐々にご要望自体が減っていきます。そこで自社でマーケティングを行い、自社の強みを活かした商品を作り、お客さまへと提案していく。そういうスタイルを強化していく必要があると常々、感じてきました」
そこで福松は、市場開発室を設立。これは従来、池田糖化の別部門が担うべき機能ですが、研究開発との連携を重視し、あえて研究開発部内に設置することを決めました。
「組織編成を大きく変えることでも今までの常識が変わるので、とくに営業担当とは意見を交わすことが多くなりました。開発担当側には、商品を主体に売るという経験が少ないので、最初、抵抗感があるのは当然のことですけれども、そういう部分こそをやっていくことを重視しましたね」
この課題意識は、福松自身の海外経験からも強く影響を受けています。入社2年目から台湾への出張が始まり、その後、海外事業本部でミャンマーを中心とした東南アジアでの活動を経験。
「とくに頻繁に足を運んだミャンマーでは、国民の大半は貧しい生活を送っていましたし、現地の状況を肌身で感じるのと同時に、日本の品質管理や衛生管理の高さを実感する機会が多くありました。
そこで食品企業として、衛生管理の問題や、こういう調味料があれば人が救われるといったことを、配送手段も含めて全体像で考える必要性を感じましたね。中間原料品メーカーとして、より良い製品を、より早く、より安く届けるためには、技術力を活かしながら、部署間の連携を強化する必要があることも強く感じました」
そしてこの経験も、2024年9月に策定された研究開発部門の理念に反映されています。
部門を越えた連携こそが未来への力に。手を取り合って池田糖化全体の価値を発揮
2024年9月に完成した研究開発部門の理念には、福松自身の考えが色濃く反映されています。
池田糖化の理念は、
私たちの存在価値「自然の恵みをより良いカタチに」。
それをもとに、研究開発部門として、
私たちがなすべきこと「5年後の食を創造する」。
私たちの行動指針①連携する②役を果たす③挑戦する④思いやる⑤変化する⑥持続する
と、策定をしたのです。
「120年の歴史を持つ会社として、私たちは天然素材を活かし、化学合成ではなく極力自然な方法で商品を作っていく。これが『自然の恵みをより良いカタチに』という理念の根本にある考え方です」
また、部門として現在、とくに重視しているのが「連携する」という行動指針。福松自身の若手時代の経験が、この言葉に込められています。
「私が若手の頃、4つの部署を横断して協力し、お客さまのニーズに応えられた経験があります。ただ、当時は部署ごとの成果が重視されていたため、そのような動きは上司からはよく思われなかったこともあったのです。
けれども、各部署が持つ優れた技術を掛け合わせることで、1+1が2、ではなく、掛け合わせていくことで10や100にもなる。それができれば会社は一段上のレベルに到達できるはず、ということは手応えとしてありましたし、私の中では確信になっていました。
連携という言葉を、自分の仕事を人に押し付けることだと誤解することなく、自分の役割をしっかりと果たした上でともに動く仲間と手をつなぐこと。それを実現するために、今もさまざまな取り組みを続けています」
研究開発部門の代表となって約6年。役割を担うことの大切さを説く福松は、研究開発部門のリーダーという立場に就いたことでの自身の変化も実感しています。
「代表就任後の最初の3〜4年間は、部門のメンバー一人ひとりとの関わりに時間を多く費やしていました。しかし、ここ1〜2年は会社全体の営業や制度面での調整、そして社外とのやりとりにも時間を割くようになってきていますね」
ただ、自身の立場が上がったことで、相手が構えてしまう場面も多くなるのも事実。そのため、福松はコミュニケーションの取り方にも工夫を重ねていると言います。
「極力笑顔を心がけています。また、これまでの自分の恥ずかしい失敗談なども先にこちらから話すようにして、チームの中で話しやすい雰囲気を作っていきたいんですよね」
今では研究開発部メンバーの意識改革にも手応えを感じ始めています。とくに、自社発信型の商品開発と販売という新しい取り組みでは、確かな変化が見えてきました。
「初めは『販売活動は開発職の仕事ではないのではないか』という意識がみんなの中でも強かったのですが、今では若手社員の多くが、会社の看板商品を持って販売活動を行うようになっています。本当に採用につなげようと、足しげく通って熱心に取り組むメンバーも出てきていることは本当に嬉しいですね」
日本が持つ危機感をむしろ力に変えて──未来の食への役目を果たす
研究開発部門の理念として掲げられている「5年後の食を創造する」。その背景にも、確かな意図がありました。
「私たちは研究開発部門なので、未来を見つめてやっていく必要があります。しかし、人がどこまで先を見通せるかを考えた時に、5年くらいがギリギリ実感を持って見据えらえる範囲なのかなとも思います。
また、研究開発部門が存在することは、その会社に余裕があることの証。だからこそ、常に5年後も存在し続けられる会社であるよう、ここで働く仲間には常に考えてそれを仕事につなげてほしい、という思いを『5年』に込めています」
こういった福松の経営哲学の根底には、親から受けた教育が強く影響していると振り返ります。
「私自身は本当に大した人物ではなくて、これといってやりたいことがあったわけでは、とくにないんです。ただ、大事にしていることは『役を果たす』ということ。
これは絶対的に母親から教育を受けたことなんです。私自身はトップになりたくて今のような立場をめざしていたわけでもなくて、ひたすらに与えられた役を果たそうとしてきた結果ですし、今もその過程ですね」
けれども、現在の立場で求められる役割について、福松は明確な認識を持っています。
「今、私に与えられている役割は研究開発部門だけでなく、会社全体を伸ばしていくことです。でも、この会社を伸ばすにあたっては、世の中に必要とされる会社であり続けなければいけない。
世の中に必要とされる会社であるために、当社がどういう役割を担うのか、そういう方向性を見出し、社員の目を向かせることが大切です」
さらに、企業間連携の重要性も強く意識しています。
「業界内で得意分野を持つ企業同士が手を組み、オールジャパンで海外展開をめざす動きが増えています。各社の利害関係があり、そう容易には進展しませんが、これは継続して取り組むべき課題。
このまま進まなければ日本は『茹でガエル』のような状態になってしまうんじゃないか。そういう危機感を持って、日々、食の仕事に取り組んでいます」
日々の業務に追われる中でも、常に将来を見据えた経営を心がける福松。その姿勢は、現在の研究開発部門を担う社員一人ひとりにも着実に浸透しつつあり、ここから池田糖化は、より専門性を大切にしつつもその枠を超え、お客さまへの提案をできる一丸のチームとなっていくことをめざしていきます。
※ 記載内容は2025年4月時点のものです
