巨大水彩画の制作で出会った仲間と協力する楽しさと達成感
幼少期の佐藤は、大勢で賑やかに遊ぶよりも、気の合う友人と数人で穏やかに過ごすことを好む子どもでした。自分から積極的に発言したり、集団のリーダーシップをとったりするタイプではなく、どちらかといえば一歩引いて周囲を観察しているような、落ち着きを持っていたといいます。
「小さい頃は人見知りが強くて、新しい環境や知らない人の輪の中に自分から入っていくのは、正直とても苦手でした。その代わり、家や図書室で静かに本を読んでいる時間が何よりも好きだったんです。とくに現実を忘れさせてくれるようなファンタジー小説が大好きで、一度読み始めると物語の世界にどっぷりと浸かり、周りの音が一切聞こえなくなるくらい没頭してしまうタイプでした」
そんな静かな時間を好んだ佐藤ですが、中学校に進学して入部した美術部での経験が、「誰かと協力する喜び」を知る大きな転換点となりました。
最も印象に残っているのは、夏休みという長い期間をフルに使って部員全員で取り組んだ、教室の壁ほどもある巨大な水彩画の共同制作です。描かれたのは、画面いっぱいに広がる色鮮やかな花畑でした。
「一人でキャンバスに向かって集中するのもおもしろいけれど、仲間と一緒に一つの大きな目標に向かっていく時間は、それまで経験したことのないほど充実していました。このパーツの彩色は私、細かい描写は友達というように、それぞれの得意なことや役割をパズルのようにつなぎ合わせていき、ついに一枚の大きな絵が完成した時、言葉にできないほどの達成感がこみ上げてきたんです。一人で作品を作り上げた時に感じる個人的な喜びよりも、みんなで苦労を分かち合い、最後に笑い合える喜びの方が、私にとっては遥かに大きかった。その時に肌で感じた『みんなでやる楽しさ』こそが、今の工場で大切にしているチームワークの原点なのだと感じています」
仲間との綿密な連携によって、巨大な絵が少しずつ形になっていく。この感動的な体験をきっかけに、佐藤の関心は「チームで力を合わせる楽しさ」へと広がっていきました。
「高校では部活動には入りませんでしたが、あの時みんなで筆を動かし、絵を完成させた光景は、今も鮮明に心に残っています。誰かと深く関わり、助け合いながら何か一つの形あるものを作り上げる。そんなつながりがある場所で働きたいという願いが、私の中に根付いていきました」
進学か就職かで揺れた冬、地元企業で見つけた安心と働く覚悟
高校卒業を控え、佐藤は進学か就職かで、冬が近づくまで悩み続けていました。もともと本を読むことが大好きで、一時は文学部への進学も考えていました。しかし、行きたい大学は地元から遠かったため、とことん悩んだ結果、最終的に選んだのは「地元で、身近な食を支える道」です。
「地元を離れたくないという気持ちがあったのと、何より食べることが大好きだったんです。食に関わる仕事なら、ずっと頑張れるのではないかと思って。池田糖化のことは、就職担当の先生から教えてもらい初めて知りました。歴史が長く、地域に根ざしている会社なら、私のような性格でも温かく受け入れてもらえる気がして、ここで一歩ずつ成長していきたいと考えたんです」
佐藤は高校生向けの応募前見学で初めて池田糖化の工場を訪れました。
「アルバイト経験もなく、初めて働く現場を目にする不安もありましたが、そこで目にしたのは整然と並ぶ機械と、真剣ながらも落ち着いた空気が流れる現場の様子でした。製造の現場はもっと慌ただしいものかと思っていましたが、ここなら自分もやっていけそうだと感じましたね」
入社後、まずは1週間ほどの集合研修で社会人としてのマナーを学び、その後約2カ月にわたる丁寧な工場見学や実務研修が続きました。この期間、佐藤の支えになったのは、約20名の同期の存在。人見知りが強く、幅広い年代の人と関わることに不安を感じていた佐藤にとって、同じスタートラインに立つ仲間の存在は格別でした。
「研修中は、慣れないことばかりで戸惑うこともありましたが、同期とは『ここが難しいよね』と弱音を吐いたり、教え合ったりできる関係を築けました。本格的な配属を前に、互いの不安を分かち合えたことで、社会人としての第一歩を孤独にならずに踏み出せた気がします。
池田糖化の歴史ある安定感と、そんな温かな仲間の存在。派手なことは得意ではありませんが、この場所で周りの人と信頼を築きながら、長く丁寧に仕事をしていきたいと思いましたね」
チームでつくる流れの中で見つけた、自分の役割と支え合い
研修を経て配属されたのは、第二工場の「粉体ブレンド」部門でした。ここは、性質の異なる粉と粉を均等に混ぜ合わせる工程。佐藤は包装材の準備やサンプルの採取、機械の手入れなどを担当していますが、何より意識しているのは周囲との連携に他なりません。
「粉体ブレンドは、6~7人のチームで進める仕事です。だからこそ、自分の手元だけを見ていてはいけません。配属されたばかりの頃、先輩から『自分の作業を考えるのと同じくらい、周りが何を必要としているかにも目を向けてみて』と教わりました。誰かの作業が遅れていたら、手伝いに行く。そうして皆で一つの流れをつくっていくことが、この仕事の大切なポイントです」
佐藤が担当する「包装」の工程は、製品がお客さまの手元に届く直前の、重要な工程。多い日には1日で6tもの粉体を扱いますが、佐藤はどれほど忙しくても、丁寧な作業を心がけています。
「重量の確認やラベルのチェックなど、細かい確認の連続です。以前、少しの読み落としをしてしまったことがあり、その時は申し訳なくて。それからは確認の大切さを改めて痛感しました。自分がしっかりチェックすることで、次の工程の人に安心してバトンを渡せる。どんなに細かい作業も注意を払っていきたいと思っています」
日々の仕事を前向きに取り組めているのは、プライベートでの読書と同期の存在だと佐藤は言います。
「仕事が終わったら、大好きな推理小説を読んで切り替えています。読んでいるうちに、仕事の緊張が解けていくんです。それから同期の存在も大切ですね。一緒に映画に行ったり、おいしいものを食べたり。配属先は違っても『あの子も頑張っているから、私も頑張ろう』と思える。同期の存在が、私にとって励みになっています」
迷いながらも一歩ずつ、着実に進んできた日々。選んだ道を正解にしていく
入社からこれまでの道のりは、決して楽なことばかりではありませんでした。佐藤にとって大きな経験となったのは、部署の体制が変わり、慣れ親しんだ先輩たちが異動してしまい、入ったばかりの後輩の指導を佐藤に任された時期でした。
「あの時は不安でした。自分のことだけでも精一杯なのに、後輩にどうやって伝えたらいいのかわからなくて。でも、そんな私を助けてくれたのは周りの先輩たちでした。何も言わなくても私の様子を見て、『ここはやっておくから、教えてあげていいよ』とフォローしてもらったんです。気にかけてくれる人がいるんだ、一人じゃないんだと、現場の温かさを実感した出来事でした」
この経験を経て、佐藤は大きく成長しました。助けてもらう側から、助ける側へ。現在は後輩が困っていると、かつての自分がしてもらったように、そっと寄り添う佐藤の姿があります。
「今の目標は、尊敬している10年目の女性の先輩に近づくことです。その先輩は知識が豊富で、私が困っているといつも的確に教えてくれる。私もいつか、後輩から『佐藤さんに聞けば安心』と思ってもらえるような、頼れる存在になりたいですね。忙しい時こそ落ち着いて、周りを見る。そんな心を忘れずにいたいです」
一歩ずつ、着実に。佐藤は悩みながら選んだ道を、自らの努力で「正解」へと変えてきました。
最後に、悩める未来の仲間たちへ向けて、メッセージを贈ります。
「進路に迷うのは、特別なことではありません。私自身、アルバイトの経験すらなく、初めて働くことに大きな不安を抱えていました。 ですが、勇気を出して一歩踏み出してみると、そこには温かく迎え入れてくれる仲間がいました。たとえできないことがあっても、周りの方々が待ってくれますし、必ず手を差し伸べてくれます。 大切なのは、素直な気持ちで向き合うこと。皆さんと一緒に働ける日を心から楽しみにしています」
※ 記載内容は2026年4 月時点のものです
