工場の課題をリアルタイムで可視化。カスタマーイン型ITサービスで全体最適を実現
日立産業制御ソリューションズは2020年、工場業務見える化ソリューションとして「MONOSOLEIL」をリリースしました。工場の原価低減や生産効率向上、リードタイム短縮、在庫削減に貢献するサービスとして注目を集めています。
園田:「MONOSOLEIL」の最大の特長は、組立・加工向け製造業の工場業務における課題を「見える化」すること。工場の責任者が現場に足を運ばなくても、生産量や製造の進捗、設備の稼働状況などをすばやく収集し、「いま何が起きているのか」をリアルタイムで確認し、迅速に対応できる仕組みを構築する製品です。
「MONOSOLEIL」は工程や部門ごとの個別最適化ではなく、各プロセスを連携した全体最適化で課題を解決することをめざしています。「行動促進型PDCAボード」や「課題解決型KPIツリー」といった機能を活用し、課題を明確化した上で情報を特定し、最適なシステムを構築します。
また、「MONOSOLEIL」はパッケージ製品でありながら、ニーズに応じてカスタマイズが可能で、導入後に業態の変更があった場合でも、柔軟に対応できる設計となっています。
システム導入に際しては、随時約5名~10名程のチームを編成。各メンバーが連携しながらプロジェクトを進めています。
園田:私は主にお客様への提案や要件定義を担当しています。業務を整理・切り分けした上でシステム要件へと落とし込み、仕様を固めていくことが役割です。
富永:私は開発メンバーとして、要件を満たすための機能拡充を行っています。また、協力会社の方々と連携することも多いため、メンバーが入れ替わってもスムーズに作業できるよう、標準マニュアルの整備も進めているところです。
組立・加工工程でのPoCで、確かな効果が確認された「MONOSOLEIL」。業界内から大きな反響を呼んでいます。
園田:当社はOT(Operational Technology)に強みがあり、制御系デバイス関連の豊富な実績を持っています。一方で、「MONOSOLEIL」は経営視点の機能が充実しています。現場に偏りすぎず、トータルバランスの取れた設計が、お客様に選ばれている要因だと思います。実際に導入数は増えてきているんですよ。
柔軟な業務モジュールで多様な製造現場に対応。現場の知見を製品の力に
「MONOSOLEIL」の開発につながるプロジェクトが始動したのは2017年。立ち上げの経緯や直面した課題について、ふたりは次のように振り返ります。
園田:プロジェクトの発端は、日立製作所で業務コンサルティングを実施されている方から、お客様とのやりとりを通じて明らかになった課題を解決するシステムの要望を受けたことでした。
当時、個別に実績収集するシステムや作業を指示するシステムはありましたが、収集された情報が十分に活用されていなかったんです。そこで、PDCAサイクルの「C(チェック)とA(アクション)」の部分をまかなえるシステムを開発することになりました。
富永:私がプロジェクトに参加したのは、最初のお客様への導入を終え、ほかのお客様への展開を進めようとしていたタイミングでした。品質不良があったときの処理プロセスなど、業務フローはお客様ごとに異なり、すべての標準機能を一律に適用することはできません。共通化できない業務をどのように扱うかが、当時の大きな課題でした。
園田:いま富永さんが指摘した標準機能としての仕様設定に加えて、どの程度の柔軟性を持たせながら汎用化を図るかについても慎重に検討を重ねてきました。開発面では、新たなアーキテクチャを導入したり、メンバーと議論を交わしながら、開発効率や保守性の向上を追求したこともチャレンジングでしたね。特に、汎用化をはかるあまり、別の開発言語を作ってしまうのは違うのではないかという意見もありました。
結果として、「MONOSOLEIL」ではさまざまな業務要件に柔軟に対応できるよう、個々の機能は、より要件にフィットする形で開発を行い、要件ごとに機能の入れ替えが可能なアーキテクチャを採用しています。この仕組みを「業務モジュール」と位置づけ、各業務モジュールを独立性の高い構造とすることで、業務間の結合度を低くし、システム全体の適応力を向上させました。
具体的には、AMQP(Advanced Message Queuing Protocol)を用いた非同期メッセージングシステムと、Spring Bootを基盤とするマイクロサービスアーキテクチャを組み合わせることで、業務モジュールの交換が容易に行える設計を実現しています。これによって、業務プロセスの変更や追加が必要になった際も、システム全体の構成を大きく変更することなく、迅速な適応が可能となりました。
一方、プロジェクトの立ち上げ以来、「MONOSOLEIL」の汎用性を高めるためにチームが一貫して重視してきたのが、「現場」の存在です。
富永:作業計画があり、それをもとに実績を収集するという点では共通していますが、実績の収集方法や計画の粒度はお客様によってさまざま。そのたびにゼロから構築するのではなく、「この企業ではこう運用していた」「あの企業ではこう対応していた」といった現場の知見を蓄積し、共通化可能な部分を抽出して標準機能に落とし込んでいくことが重要だと考えています。
園田:その通りですね。提案の際にも、事前にお客様の現場を見せていただくことが少なくありません。受注に至らなくても、工場を見学するだけで多くの知見を得られます。こうした経験を地道に積み重ね、製品としてあるべき姿を見極めながら、より良い開発につなげていきたいと思っています。
1号機導入の成功と展示会での画期的なデモシステムが認知度向上のきっかけに
ともにプロジェクトの中核メンバーとして活躍してきた園田と富永。それぞれ、とくに印象に残っている出来事があります。
園田:2020年に某大手二輪車メーカー 歯車加工工程へ導入した「MONOSOLEIL」の1号機がもっとも印象深い案件です。品目ごとに多くの異なる工程パターンがあり、フローが複雑に絡み合っていたため、かなり難しい条件の中、精緻な作業計画を立てる必要がありました。
スケジューラーを導入し、収集した実績データを適切に活用することで、生産計画通りに製造を進めることができるようになり、不要な残業や在庫の大幅な削減が図れました。1号機を導入した結果、お客様に「効果が出た」と評価いただいたことで、この実績が次の案件への導入へとつながっています。
富永:1号機はお客様の要求をきちんと把握したうえで取り組んだので課題もなく、うまく導入できたのですが、それが他部門・他社に対し、2号機、3号機と導入していくにつれて、パッケージとしての課題が見えてくるようになりました。改造や追加改修が多くなると、パッケージ本来の強みが損なわれてしまうため、標準部分としての機能と個別にカスタマイズする機能のバランスにはとくに気をつけるようになりました。
私が印象的な出来事として思うのは、展示会向けの工場完全自動化のデモシステムを構築したときのことです。ロボットに対して指示を行い、ロボットがカメラで(品質の)合否を判定し、その結果を「MONOSOLEIL」が受信・表示するというもので、自分の仕事が現場のオペレーションに直結していることを実感し、大きな手ごたえを感じました。
展示会でロボットとMESが連携し、実際に動作するデモを見せるケースは多くありません。来場者の反応は非常に良く、工場全体の可視化に対するニーズの高さを肌で感じました。この展示会をきっかけに、「MONOSOLEIL」への引き合いも増えているんですよ。
「MONOSOLEIL」のさらなる進化と拡張。市場の期待に応える体制の構築へ
今後、「MONOSOLEIL」をデジタルトランスフォーメーションサービスとして拡大していくには、不可欠となるのが人財の育成です。
園田:プロジェクトマネージャー、要件定義を担う上流設計者、開発者など、各職種のメンバーを増やし、システムを安定的に立ち上げるための仕組みを構築することが目下の課題です。
富永:そうですね。標準機能を含め、「MONOSOLEIL」の全体像を理解できるメンバーを育成し、増やしていかなくてはなりません。
設計が得意な人、開発が得意な人、異なるタイプのエンジニアが必要です。システムの構造設計に関心がある人もいれば、仕様をどのように実装するかを考えることにやりがいを感じる人もいると思います。両方のスキルを持つ人財にジョインしてほしいですね。
園田:同感です。プログラム開発はもちろん、要件定義や設計のプロセスにおいても、やはりその分野に興味を持ち、楽しんで取り組める人が適任だと考えています。挑戦する気持ちが、成長の原動力になるものです。意欲のある方々の参加をお待ちしています。
「MONOSOLEIL」を組立・加工向け製造業にとどまらず、バリューチェーン全体へと拡張していくために。ふたりはすでに、次のステージを思い描いています。
園田:現時点で我々が強みを持っているのは組立・加工向け製造業ですが、生産管理系の現場システムに携わる社内の他部署にも「MONOSOLEIL」を展開し、活用範囲を広げていくことをめざしています。
一方で、お客様に対しては、ほかのシステムとの連携を含めたノウハウを蓄積し、「このような課題がある場合には、こうしたアプローチが有効です」と具体的に提案できる体制を整え、スムーズに製品を提供できる仕組みを確立していきたいと考えています。
「MONOSOLEIL」の普及が本格化するのはこれからですが、将来的には競合メーカーに脅威と感じてもらえるほどの存在になれればいいですね。
富永:私は、お客様のシステムを実現するための課題を解決することに強い関心があります。お客様の要件に確実に応えられる設計ができるよう、今後も成長を続けていきたいです。
いまはプロジェクトを軌道に乗せようとしている最中ですが、市場の確かな期待の高まりを感じています。新たな段階に向けて、挑戦を加速していきたいですね。
本格的な普及をめざし、新たな価値を生み出す未来へ──「MONOSOLEIL」とともに進化を続けるふたりの挑戦は、まだ始まったばかりです。
※ 記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商号、商標もしくは登録商標です
※記載内容は2025年2月時点のものです

