皆がよく知っている特別な場所で、お客様それぞれに合わせたおもてなし
2024年12月に開業90周年を迎える札幌グランドホテル。国内外からの観光客はもちろんのこと、地元・札幌の人々にも食事会の場として長年愛され続けています。
中嶋が働くのは、ホテル内にある「ラウンジ・バー オールドサルーン1934」。ラウンジ・バーという通り、幅広いシーンで利用できる点が特徴です。
「札幌グランドホテルには2つのバーがあります。1つは比較的席数が少なく隠れ家的な雰囲気の『バー キャラベル』。もう1つが、80席ほどの広々とした空間の『ラウンジ・バー オールドサルーン1934』です。
366種のバースデーカクテルを含めた500種類以上のカクテルをジャズの生演奏とともにお楽しみいただけます。オードヴルの食べ放題がセットになったプランや二次会プランなどもご用意しており、カウンターでお1人の時間を過ごす方から大人数での会合まで、ニーズに合わせてご利用いただけます」
バーテンダーを務める中嶋は、お客様に心地良い時間を過ごしていただくための接客を大切にしています。
「カウンターに座っているお客様の接客は、主にバーテンダーが担当します。常連のお客様、初めてご来店されたお客様、ボトルキープされているお客様、旅行のたびに立ち寄ってくださるお客様、いろいろなシチュエーションでご利用いただくお客様お一人おひとりに合わせた接客を心がけています。
カクテルを作りつつお客様とお話をさせていただくので、常に頭をフル回転させていますが、とても楽しいです」
働き始めて1年あまり。当初は近寄りがたいイメージを持っていた札幌グランドホテルの違った一面が見えてきたと言います。
「地元の方々にとって、札幌グランドホテルはとても身近な存在なのだと感じています。歴史があるホテルのため、お客様からの期待値は高いですが、決して近寄りがたい場所ではありません。お客様とキャストの距離感も近く、親しみやすい雰囲気があると思います。
『皆がよく知っている特別な場所』で働けることに、日々喜びを感じています」
楽しい時も悲しい時も寄り添える仕事がしたい。予想もしなかったバーデンダーの道へ
学生時代は音楽の教員をめざし、教育学部で学んでいた中嶋。本人もまったく想像していなかったというバーテンダーの道に進むきっかけは、20歳の頃に知人に連れて行ってもらったバーでした。
「その時はテーブル席に座り、人生で初めてのバーに『格好いい場所だな』『カクテルがおいしいな』くらいの感想でした。バーデンダーの方に『1人で来てもいいんだよ』と言っていただき、次は1人で行ってみたんです。
そうしたら、私のことを覚えていてくださって、カウンターに通してもらいました。そこから通うようになり、次第にバーの魅力に惹かれていきました。
何より、バーデンダーの方がとても素敵で。静かに1人で飲みたい時も、おしゃべりしたい時も、楽しい時も悲しい時も、気持ちに寄り添ってもらえたことがとても心地良く、私もこういった仕事がしたいとバーデンダーをめざすようになりました」
最初に勤めたのは、地元である北海道から離れた長野県・軽井沢にあるバー。市街地にあり、地元の常連さんが多く訪れる店でした。そこで出会ったのが、「バーテンダーの基礎を教えてくれた」という上司。その仕事ぶりに圧倒されたと振り返ります。
「もともとホテルのバーに勤めていた方で、とにかく仕事が早いんです。ホテルのバーは、多くのオーダーを素早く正確に作る能力が必要ですし、お客様のニーズに合ったサービスを提供することが求められます。
一方で、街にあるバーは常連さんが多く、個性的なオリジナルカクテルといった独自性が魅力。どちらの魅力も知ることができたのは、良い経験になりました」
お客様とのコミュニケーションが重要なバーテンダーという仕事において、「自分の地元であること」がメリットの一つになると感じた中嶋は、北海道に戻ることを決意します。
「ホテルのバーで働きたいと上司に相談したところ、勧められたのが札幌グランドホテルでした。自分でも調べてみたところ、とても素敵な場所だったので応募することを決めました」
宿泊のたびに会いに来てくれる。心を込めた接客がお客様に届く喜び
どのようなシチュエーションのお客様にも、一人ひとりに合ったサービスを提供する──そのために、日頃からお客様の様子をしっかりと見て、コミュニケーションのとり方を工夫しています。
「たとえば、ドリンクメニューを長く見ている方には、『お好みがありましたらご提案いたします』とお声がけします。その際にお客様の反応を伺いながら、おひとりでゆっくり飲みたい方なのか、バーテンダーと会話を楽しみたい方なのか、ご希望を察知し、お客様が求める接客ができるよう心がけています。
ほとんどのお客様にとって、バーに来られるのは特別な機会であり、バーテンダーのこともよく覚えていらっしゃいますから、私もお話ししたお客様の顔は、できる限り覚えるようにしています。
すべてを覚えておくことはなかなか難しいですが、何をご注文されたか、どんな会話をしたかといったことから思い出すこともありますし、カウンターに座っている姿や仕草などは写真のように記憶しています」
一人ひとりに寄り添った接客を心がけている中嶋には、とくに思い出深いお客様がいます。
「札幌グランドホテルを宿泊で使われている常連のお客様が、初めてオールドサルーンに立ち寄ってくださったことがありました。あまりお酒が飲めない方で、『バーを楽しむにはどうしたらいいですか』と相談を受けたのです。
そこで、お客様がメニュー表を見て『飲みたい』とおっしゃったものを、可能な限りアルコール度数を下げつつ、味がなるべく変わらないように作ってご提供したところ、とても喜んでくださいました。それ以降、宿泊のたびに会いに来てくださるようになったのです。
お客様に喜んでいただけたことがなにより嬉しかったですし、ご宿泊以外のホテルの楽しみ方を知っていただけた機会になったのではないかと思います。『これぞバーテンダーの仕事だ』と感じました」
「おいしいね」「また来るよ」の言葉で頑張れる。お客様の笑顔を見るためスキルを磨く
自身の経験を機にバーテンダーの道を歩み、努力を続けてきた中嶋。仕事のやりがいをこう語ります。
「カクテルを作り、提供し、お客様にお召しあがりいただくまでの全工程を自分で担当できることがバーテンダーの醍醐味。お客様の反応を見ながら次の1杯を工夫し、お客様が笑顔になる瞬間を見られることが喜びです。
『おいしいね』『また来るよ』という言葉を1つでもいただけたら、どんなに疲れていても頑張れます」
バーテンダーとしてのスキルも磨き続けている中嶋は、2024年に「なでしこカップ」という女性バーテンダーの大会に出場。全国から書類審査で選ばれた10人だけが参加できる大会です。
「大会出場をきっかけに、東京からお客様が来てくださったことも。本当に素晴らしい経験になりました。これからも積極的に挑戦したいと思っていますし、いずれは総合力を求められる世界大会にも出場できるような実力を身につけていきたいと考えています」
自らも成長しながら、後輩たちにバーテンダーとしてのやりがいを伝えていきたいと話す中嶋。「未経験からバーテンダーに挑戦する方も歓迎しています」と続けます。
「バーテンダーはただドリンクを作るだけでなく、お酒類に関する知識やレシピの暗記、お客様をおもてなしする接客スキルやスマートな立ち居振る舞いを身に着けることも必要になります。
まずはホールキャストとして勤務しながら、バーテンダーとしてのスキルを学んでいただきます。その後、安定したクオリティのカクテルが作れるようになればお客様に提供できるようになります。練習中からバーテンダーがそばについて教えますので、未経験の方でも安心してチャレンジしていただきたいです。
また後輩たちにはバーテンダーという以前に、ホテリエだという意識を持つことを大切にしていただきたいと思っています」
「これからも、お一人おひとりのちょっとした表情の変化や飲むスピードに目を配りながら、お客様に楽しいひとときを提供していきたいですね」
これから入る後輩たちと共にめざすのは、お客様にとってさらに居心地の良い場所にすること。スキルとホスピタリティに磨きをかけながら、お客様にとって特別な1杯を提供し続けます。
※ 記載内容は2024年11月時点のものです

