幼少期に経験した山村留学。マイパーパスを育んだ原体験とは
現在、デジタルシステムプラットフォーム本部 CIO Officeにて、CIO秘書官兼シニアマネージャーを務める曽根崎 輝太。CIOの右腕として、ITのど真ん中にいる彼ですが、その原点とは意外なものでした。
「実は、僕は農学部出身で、ITからはずいぶんと離れたところにいました。当時はIPS細胞が話題になっていて、『自分も歴史の教科書に載りたい。そんな大きな発見をしたい』と思い、遺伝子学の道を選びました。研究に没頭する中で、在学中に新種のウイルスも発見しました。でも、期待していたような高揚感や達成感はなくて。自分でもびっくりですが、あんまりおもしろさを感じなかったんです(笑)。
僕が本当にやりたいことはなんだったのか。それをきっかけに、あらためて考えるようになりました。そうして行き着いた答えが『自分を大切にしてくれている人たちを幸せにすること』だったんですね」
そこには、小学生時代の原体験があると続けます。
「親元を離れて、自然豊かな山村で生活する『山村留学』というものに2年間ほど行っていたんですね。1週間おきにいろいろな人の家を転々とし、そこにホームステイしながら学校に通うわけですが、どの家でも実の息子のように優しく、大切に接してくれました」
そのときの記憶は、いまもずっと強く心に残っていると語る曽根崎。
「これまでの人生を振り返ると、山村留学で知り合った村の皆さん以外にも、僕を大切にしてくれている人たちがいること、その人たちが笑顔になったり、喜んでくれることが何よりも自分にとっての幸せなんだと気づいたんですね。
では、どうしたらその人たちを幸せにできるだろうかと考えた時に、これからの時代、ITは必須要件だなと思ったんです。まずは、そこからキャリアを始めよう。どうせ行くならおもしろい会社に行きたいと思い、国産のERPパッケージを開発、販売し、世界的にも早い時期からERPにAIを組み込もうとしていたソフトウェア会社に入社しました」
入社後は、営業部門に配属された曽根崎。当時の新入社員最高売上を達成すると、上司とともにERPのコンサルティングにも携わるようになったと言います。そして、さらに入社から数年で副社長補佐のポジションに就きます。
「当時、サポートしていた副社長がDX推進に向けた国の研究会委員を務めていた影響もあって、日本国としてのIT、DXの促進を司る国の関連機関に僕が出向することになりました。
海外の事例を収集しながら、日本国としてどうDXを推進していくかの制度設計や、そもそも日本でDXが進まない原因の分析などに携わりました。そうした中で、日本特有のある課題が見えてきたんです」
日本のDXの現状を目の当たりにした曽根崎が、転職先として富士通を選択したわけ
日本において、DXが進まない理由として2つ挙げた曽根崎。
「1つは、経済産業省発信のDXレポートでも指摘されていて、いまやITに関わる人の常識でもありますが、多くの企業のITシステムが複雑化・ブラックボックス化しているという点です。日本はITシステムのカスタマイズが多く、IT予算の大部分がその維持費が占める状態に陥っています。
また、もう1つは、日本企業の多くが自社だけで頑張ろうとしている点です。世界を見ると、ビックテックをはじめとした急成長している企業は、スタートアップ企業を積極的に買収したり、自社ではできない領域についてはパートナー企業に助けてもらったりしています。出向中にいろんな会社の方とお会いしましたが、隣の企業すら敵対視する状況を目の当たりにしてきました。そんな状態でDXなんて進むわけがない。そう感じていました」
ある日、自身と同じく民間企業から出向していた隣の席の社員からある話を耳にします。
「その富士通出身の社員から『うちは、従来型のSIビジネスからサービスビジネスに変わろうとしている』と聞きました。DXが進まない日本において、その中心の1社である富士通自身が変わろうとしていることに興味が沸き、自分でもいろいろと調べてみたんですね。
たしかに、従来型のSIビジネスからの脱却を掲げ、苦労しながらもさまざまな打ち手を講じていることがわかりました。富士通は、変革の真っ只中。僕がその変革を加速させる力になれないだろうか。そう思ったんです」
その後、一度出向元に戻り、新規事業の立ち上げや経営プロジェクトに従事。2021年7月に、縁あって富士通に中途入社することとなります。
「DXの肝はアライアンスと考えていたので、調達部門の中にあったアライアンス統括部という部署に入りました。富士通にとって新規のパートナーを探したり、アライアンス推進のための組織を立ち上げたりしていたのですが、自分が思い描いていたような活動がなかなかできなくて。そんな時に、自分にとって最も理想的な動きをしている人を見つけました。それが福田さん(CIO、CDXO:福田 譲)だったんですね。
その福田さんが、『僕の右腕を募集します』という社内SNSの投稿と共に、CIO秘書官のポスティングが出ていました。思い描いていることを実現するならここだなと思い、すぐに応募しました」
相当数の応募があった中、2022年7月にCIO秘書官に就任します。
CIO秘書官の真髄。役員には「役員にしかできない偉業」を
秘書官の仕事とは「CIO自身がやりたいことに対し、どうしたら実現できるかの仮説を立て、その実現のための体制を整え、実行していくこと」と語る曽根崎。
「CIOに限らず、各役員には、役員にしかできない偉業があると僕は思っています。一方で時間は有限であり、誰もが1日24時間しかありません。偉業以外のそのほか一切を巻き取る。それが役員に対して行える最大のサポートであり、それができるのは秘書官だけだと思っています。
ただ、当社のCIOは、一般的なCIOとはまったく違う動きを取っていて(笑)。ITという領域を優に超え、時には人事、時には会計の領域にも自ら出向いていくんですね。先日は、子育てをしている社員が子どもを連れて出社したり、働いたりする環境が整っていないんじゃないかという話にも口を出していて。そういった話は山ほどありますし、そこから新規プロジェクトが立ち上がり、秘書官としてリードすることもよくあります」
まったく知見のない領域でのプロジェクト推進に苦労することもあると語る曽根崎だが、「福田さんがやりたいと思ったことはすべて実現したい」と続けます。
「偉業の実現を支えるという秘書官としての仕事という側面もありますが、それよりも自分のパーパスを大切にしたいからという側面のほうが大きいかもしれません。福田さんは僕のことを大切にしてくれていると感じています。時には、僕に対して言いたいことがあっても、ぐっと堪えて僕の考えを尊重してくれることもあります。
そんな福田さんに応えたい。だからこそ、その実現に向けて、誰よりも本気で取り組みたいと思っています」
福田CIOに「福田にとって曽根崎の存在はどういうものか、また彼の強みは何か」と聞くと、次のように答える。
福田 「曽根崎さんの存在は『分身』であり『実行支援エージェント』です。僕自身の考え方・価値観・判断基準・優先順位などを良く理解し、あれこれ細かく伝えなくても、さまざまなタスクをこなし、代行し、時には自律して実行してくれる『分身』のような存在です。
また、僕自身/本体が何かをするときには、準備やアクション、フォローアップなど、僕の負荷を下げ、パフォーマンスを最大化することをサポートしてくれる、『実行支援エージェント』とも言えます。
曽根崎さんの強みは、『さまざまなものごとのコンテキストを含めて理解するセンスと能力』、『アクションの速度』、『学んで身につけるチカラ』でしょうか。本当にそう思ってますし、感謝してます」
福田CIOの言葉からは、2人の強い信頼関係が伺える。
パーパスを胸に働く曽根崎。そんな曽根崎だからこそ、実現できたあるイベントがあります。
「『富士通eSports部』部長(当時)の有馬さん(有馬 和宏)が、eスポーツを切り口に社外のお客様や関係者と交流するイベントをやりたいと言い始めたんですね。有馬さんとは以前から面識があって、僕のことをとても大切にしてくれていたんです。これは、僕も一肌脱ごうと。僕の持てるすべてを使ってサポートし、イベントを実現させたいと思い、裏方として企画、準備に取り掛かりました。
といっても、実は僕はまったくゲームをしないのでルールには疎いですし、eスポーツ選手の名前を出されても誰一人わからない(笑)。でも、企画は得意なので、マーケティング観点でどうしたらお客様が楽しく参加してくれるか、イベントとしての効果を最大化するにはどういう仕掛けが必要かなどを考えていきました。
また、裏方の仕事を僕ひとりでやるのは大変です。『この指とまれ』形式で仲間を募集し、さまざまスキルを持った方々を集めました。集まってくれた一人ひとりと会話し、その方がやりたいことや得意なことを整理しながら、個々のスキルが最大化できる形でチームを作っていきました」
同じ目標に向かって、歩みを進むために。CIO秘書官としての経験を活かす新たな挑戦
イベント当日は非常に盛り上がり、参加してくれたお客様からの評価も非常に高かったと言います。
「さまざまな企業や世代の人が集まったイベントとなりましたが、『企業間交流の場で、こんなに笑顔で喋ることがあるのか』と感じるくらい、皆さん非常にテンション高く、距離感ゼロで話してくれたことがとても良かったです。
ただ、『楽しかったね』では終わりにしたくないですね。めざすべきは、同じ目標や志をもった人たちが、業種業界の垣根を越えてつながり、社会課題の解決にあたることで、今回はその一歩だと思っています。ゲームをやって『さよなら』ではなく、この場で出会った人たちと一緒に、ビジネスの話までできるような関係性にしていきたいですね」
そんな曽根崎が、新たに取り組んでいるのが、社内IT部門としてのゴールとKPIの設定です。
「2030年を見据えて、社内IT部門として会社にどう貢献していくべきかを丁寧に整理しはじめています。これまでは実績数字の管理に終始し、経営に紐づくようなKGI、KPIがきちんと設定できていない状況でした。社内変革が進む富士通において、社内IT部門の役割が大きく変わってきています。
そんな時に、いま自分たちはどこにいるのか、これからどこに向かい、どこまできているのかがわからないでは困ります。そのため、検討チームを新たに立ち上げ、取り組んでいるところです」
パーパス起点で動きつつも、物事をロジカルに捉え、常に仮説を立てながら歩みを進める曽根崎。そんな彼が、最後に伝えたいこととは。
「理想のキャリアプランだとか、実現したい夢だとか、達成したい目標だとか、みんなそれぞれ持っていると思うんですね。それは、隣の人とは形も違えば、大きさも違うかもしれない。でも、あるはずなんです。
また、先ほどのDXが進まない日本企業の話じゃないですが、なんでも自分だけでやろうとはせずに、周りや会社をうまく活用すればいいと思うんです。会社が持っている、ヒト・モノ・カネは、自己実現のためのリソースであり、遠慮なんていらない。理想の自分に近づくための糧として使い倒してもらうといいんじゃないかなと思います。僕はこれまでそうしてきましたし、これからもそうしていきたいです」
※ 記載内容は2025年1月時点のものです
