年齢や立場の壁を越えてつながるために。国内最大規模の富士通eSports部が誕生
デザインセンター エクスペリエンスデザイン部に所属する有馬。これまで一貫してUIのデザイン領域でキャリアを築き、現在は富士通のパソコンに使用されているアプリケーションソフトのUIデザインを担当しています。
有馬:前職ではベンチャー企業でECサイトのWebデザインを担当していました。それ以前はMRIやCTなどの医療機器に用いる画面や、今ではガラケーと呼ばれる携帯電話の画面など、さまざまな分野でUIデザインを手がけてきました。
学生時代からデザインスキルを磨き続けてきた一方で、有馬が熱を入れていたのがゲームでした。2016年に富士通グループへキャリア入社したことで、デザインとゲームへの情熱が「富士通eSports部」の設立へと有馬を向かわせます。
有馬:設立のきっかけは2つありました。まず1つは当時業務でeスポーツに携わっていたことです。私は入社後、スポーツICTに携わり、体操競技の採点をAIで支援するシステムのデザインなどを担当していました。その流れで、同じスポーツでも「eスポーツ」の案件に関わる機会があり、社内でもeスポーツを実施できないかという考えがありました。当時、日本でもeスポーツへの関心が高まりつつあり、富士通はその可能性にいち早く注目していたのです。
もう1つは富士通にはゲーム愛好者が数多く存在したことです。社内では以前からゲームのコミュニティが点在していました。そこで、オンラインでつながれるeスポーツの良さを活かし、全国の社員同士をつなげば、大きなムーブメントが起こせるのではないかと考えました。
eスポーツの魅力は、距離はもちろん、年齢や性別、人種など、さまざまな壁を一瞬で乗り越えられることです。その魅力を肌で感じ、社内はもちろん社外へと広げていきたい。そんな想いから、2020年に「富士通eSports部」を設立しました。
参加者を募るため積極的に活動様子を社内に発信した結果、部員数は約700人に増加。企業のeスポーツ部では国内最多の部員数を誇るまでに成長しました。
有馬:最初は数名で運営チームを立ち上げ、社内で宣伝するうちに人づてにどんどん部員が集まっていきました。活動は主にオンライン上で平日の業務後や休日に定期的に集まったり、その場で仲間を募ったりして交流しています。また、大会が近くなると、練習の頻度を増やしてプレイすることもあります。
大会で上位をめざして真剣に練習する部員もいれば、好きな時にカジュアルに楽しむだけの部員もいる「富士通eSports部」。設立以来、大切にしている活動方針があります。
有馬:それは心理的な壁を作らないことです。部は組織や立場などの壁を超えて楽しめるように、メンバーは匿名で参加が可能です。それにより、普段の上下関係を持ち込まず、新人も役職者も皆伸び伸びとゲームを通じて交流しています。
そして、大会で勝ちたいメンバーもカジュアルに参加したいメンバーも、皆が共存できる、互いを尊重できる場づくりを心がけています。
入社3年目で挑んだ社内変革。「Max20%ルール」の導入を実現した強い想い
同じころに、業務時間の最大20%を通常業務とは別の取り組みに使うことで、イノベーションを促す「Max20%ルール」という制度が立ち上がります。この制度の提案者である小島は、導入の経緯をこう振り返ります。
小島:私が2018年に富士通へ新卒で入社した時のこと。新しいことに挑戦したいという熱い想いを抱き、それが可能な環境で働けることにとてもワクワクしていました。しかし配属先のIT部門は、当初、想像以上に保守的で縦割りの組織。私も含め、与えられた仕事をこなすのに精一杯で、社員の個性は発揮されておらず、新たなことにチャレンジできない現状に、課題を感じるようになりました。
そうした中、2019年後半から2020年に入る頃にかけて会社の中で変革への気運が高まり、さらに新たなCIO兼CDXO補佐として福田が富士通へ入社することになりました。
福田の入社後、私は「現状を打破するために、社内の誰もが新しいことに挑戦できるルールをつくりたい」という想いを伝えました。すると福田はすぐに快諾してくれ、Googleの20%ルールに倣った新しい制度の導入が検討されることになったのです。
そこから制度の詳細を詰めていき、まずIT部門でPoCを実施することが決定。提案からわずか約3カ月というスピードでした。
小島:IT部門には国内外で当時約2,000名が在籍しており、グローバルなルール設計が必要でした。総務や人事、労政部、ワークス・カウンシルなど、国を越えてさまざまな部門と調整しながら、合意形成を図っていきました。
当時はまだ入社3年目だったため、経験が浅く、調整が難しい局面もありましたが、私には会社を変えたいという誰にも負けない強い想いがありました。それをエンジンに、同期や幹部を巻き込みながら、多くの人に支えられて制度の導入を推進していきました。
そしてPoCでの成果が認められ、「Max20%ルール」は正式に社内DXの施策として採用されることに。運用開始から約4年が経ち、小島は成果を実感しています。
小島:日本の企業にとって、DXを推進する上で大きな障壁の1つとして挙げられるのが組織文化です。その組織文化を変えるためにわれわれIT部門に期待される役割は大きいはずです。12万もの人間が乗る富士通という巨艦を“支える”IT部門がリードして、最先端の技術を活用し、自ら学び変わり続け、他の部門とコラボレーションすることにより、イノベーションを起こしやすくするための文化やスキルを構築することができると考えました。
今回のルール導入で誰でも自ら手を挙げれば、新しいことに挑戦できる。私たちの取り組みが、そうした組織風土が醸成される一助になったと感じています。その結果「富士通eSports部」の活動も含め、「自分もチャレンジしてみよう」と思ってくれる社員が着実に増えてきました。
単に「Max20%ルール」の導入が実現しただけでは、こうした成果は得られなかったと思います。この制度をどんな想いでつくったのか、背景にあるストーリーを社内のSNSやイベントなどを通じて伝え続けたこと。それが全社での制度の利用促進につながったと感じます。
「Max20%ルール」を導入した功績が評価され、DXリーダーに任命された小島。その後、「xF(クロスエフ)」という活動を立ち上げ、現在はデジタルシステムプラットフォーム本部 xF Officeで活動に取り組んでいます。
小島:DXリーダーを務める中で、IT部門は直接利益を生み出す組織ではないことから、コスト部門として捉えられてしまい、ビジネスに直接的な貢献がしにくいという組織の在り方に悔しさを感じていました。
その一方で、「Max20%ルール」から派生したボトムアップ活動を含め、富士通社内のさまざまな取り組みは必ずビジネス貢献という価値に変えられると信じていました。そこで富士通が取り組んできたDXの実践知を体系化し、新たな価値としてお客様に提供する活動「xF」を立ち上げました。
この活動を通じて、私は社内実践メンバーとして、1年で約300件の商談に携わってきました。成功体験はもちろん、泥臭い失敗談も含めてお客様の課題解決に活かしていただくことで、お客様の変革のパートナーになることをめざしています。
eスポーツを新たな社交手段に。自社のデータ分析技術を用いたビジネスイベントを開催
富士通は、今回新たに社外のお客様や関係者と交流するイベントを2024年4月に開催しました。
有馬:きっかけは、本業のデザイン思考に取り組む中で、eスポーツをお客様との新たな交流や接点の構築の手段にできないか、と考えたことです。かつて家庭用のゲーム機に熱中した世代が管理職を務める年齢になり、交流を図るツールとして、eスポーツがゴルフや会食の代わりを担えるのではないかと感じました。
すでに「富士通eSports部」で社内の壁を超えられることを経験していたので、今度はそれを社外に広げられないか、会社間の壁を超えられないかと考えたのです。それを福田に直訴したところおもしろがってくれて、積極的に協力してくれました。そして「Max20%ルール」を活用することで、今回のイベントに必要な人とコラボすることができました。
主要メンバーは「富士通eSports部」の私のほか、各部門から必要なノウハウを持つ有志が集まり、社内横断でチームが結成されました。さらにプロゲーミングチーム「SCARZ(スカーズ)」を運営する株式会社XENOZ(ゼノス)様とのご縁もあり、共同でチームを組んでの開催となりました。
このイベントはボトムアップで一から作り上げる初の試みであり、営業担当が顧客向けに実施するイベントやターゲットが明確なソリューションの説明会とは異なります。有馬がぶつかったのが、集客についての課題でした。
有馬:わざわざ忙しい時間を割いて富士通の事務所に来てまで、eスポーツをプレイすることにどうすれば価値を感じていただけるのか。そもそもどの企業に声をかければ良いのか。最初はまったく見当がつきませんでした。
その状況を打開したのが、有志メンバーの一人である小島。これまで培った人脈を活かし、集客に大きく貢献しました。
小島:最初はSNSを活用して告知を行っていたのですが、イベント開催2週間前になってもほとんど集客できていない状況だったんです。開催を危ぶむ声も上がっていましたが、私はここから挽回すればいいだけだと考えていました。
ここで私が集客のために最大限に活用したのが、「xF」の活動を通じて培った社内外の人脈です。企業の役員が集まるイベントに参加して直接勧誘したり、社内の営業組織を巻き込んで顧客アプローチの戦略を考えたりと、全力で集客に取り組みました。その結果、27社67人のお客様にご参加いただけることになり、イベント開催にこぎつけました。
もう1つの課題であった顧客への価値提供については、富士通のデータ分析技術とeスポーツを融合することで解決。3部構成の充実したセミナーが実施されることになりました。
有馬:第1部では、eスポーツとビジネスの未来をテーマにパネルディスカッションを行いました。第2部は、参加者でチームを組んでeスポーツの対戦を実施。第3部ではネットワーキングの場を設け、第2部の戦績やウェアラブルデバイスを通じて収集したデータを分析し、プレイヤー同士の類似性や相性などを発表しました。
これはたとえばプロジェクトチームを編成する際に活かせるなど、ビジネスにも応用できるデータ活用法です。
「eスポーツ×データ分析」の新たな可能性も提示し、イベントは盛況のうちに終了。参加した顧客からの感想を受け、有馬も小島も手ごたえを感じています。
有馬:とくに第2部は、プロゲーミングチームの実況も入って会場は盛り上がり、みんな仕事のイベントであることも忘れてゲームに夢中になっていた姿が印象的でした。
お客様からは「富士通がこうしたイベントをやるのが意外で、仕事だけどとても楽しかった」などと感想をいただき、新たな社交手段として今後多いに活かせることを証明する機会になったと感じます。
小島:お客様の声はもちろん、さらにうれしかったのは社内からも反響があったことです。営業担当から「自分たちにはない発想の企画で、新たな顧客へのアプローチに役立った」など、次の開催を期待する声が多く届きました。
今回のビジネスイベントを通じ、さまざまな壁を越えて交流できるeスポーツの可能性を、社内外に伝えられたと感じます。
自ら行動を起こせる環境を活かして。新たな挑戦を通じ、富士通のビジネスに貢献
こうしたeスポーツイベントをはじめ、個人のスキルアップや組織横断の新たな活動を支えてきた「Max20%ルール」。その活用によって生まれたさまざまな成果を発表するため、社内でピッチ大会が開催されました。
小島:今回のイベントでは、運営メンバーを集めるところから企画の実施までに「Max20%ルール」を活用しました。その取り組みをピッチ大会で発表したところ、私たちのチームが優勝。成果が認められてうれしかったです。一方でメディアからの取材依頼が増えるなど、社内だけでなく社外からの注目も高まってきました。SNSでの発信を地道に続けてきたことで、変革に取り組む企業として、富士通のプレゼンスアップにつなげられたのではないかと感じています。
eスポーツという通常業務では扱うことのない切り口にも関わらず、そのイベントの実現に多くの部門が協力してくれたのは、「Max20%ルール」ならではと思います。また、これまでは社内の変革活動として進めてきましたが、今回、ベクトルをお客様に向けた取り組みにすることができました。今後も、ビジネスへの広がりやつながりを意識したものにしていきたいです。
富士通の多様な取り組みを、社内外へ発信することに注力してきた小島。今後の目標は、富士通のビジネスに貢献することだと話します。
小島:「xF」で社内の実践知をアセット化し、ビジネス部門と連携しながらお客様への提案活動を行う機会は着実に増えています。一方で、そうした私たちの取り組みが直接ビジネスにつながったとはまだ言えない状況です。そうした課題としっかりと向き合い、ビジネスに貢献する具体的な成果を追求していきたいと思います。
ビジネスとしての成果を追求する姿勢は有馬も同じです。eスポーツでの取り組みを、富士通の成長につなげていきたいと語ります。
有馬:今後も引き続き、eスポーツを活用して富士通のビジネスに貢献する活動を展開していきたいです。会社説明会にeスポーツを取り入れ、従来とは異なる角度から富士通の魅力を学生にアピールするなど、新たな取り組みも始まっています。
eスポーツというテーマを活かし、富士通の成長に貢献するのはもちろん、1人のゲーマーとして自分がワクワクする取り組みを追求していきたいと思います。
自身の好奇心を追求できるのは、社員の挑戦を支援する環境があるからこそ。それが富士通の大きな魅力だと、有馬と小島は口をそろえます。
有馬:フジトラを1つの契機として、手をあげれば自らやりたいことに挑戦できる組織に変わってきたと感じます。チャレンジする気概さえあれば、私のように「富士通eSports部」の設立や、eスポーツのビジネス活用など、職制や年齢に関係なく想いがかなえられる環境が実際にあるのです。
やってみたいことがあるのなら、周囲の意見を気にする前にまず自ら行動を起こし、同僚も上層部も巻き込んで実現していってほしいと思います。
小島:やりたいことを実現するには、まず自分の想いをしっかり持つことが大切だと思います。「As is」を「To be」に変えたいという想いが、めざす未来へと自分を突き動かしていくはずです。
その想いを受け止めてくれる懐の深さが富士通にはあり、社員が変革を起こすことを期待してくれていると私は感じます。自分の想いを大切に、新しいことに積極的にチャレンジする人がさらに増えるのを楽しみにしています。
※ 記載内容は2024年12月時点のものです
