調達業務が出発点。フジトラのスタートを機に本部内DXをリードする立場へ
石崎が所属するグローバルサプライチェーン本部(以下、GSC本部)は、サプライチェーンを巻き込んだESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance))実現とベストインクラスな調達、リスクマネジメントやコンプライアンスの推進を担っています。入社以降、長く調達の業務に携わってきた石崎ですが、サプライチェーンが置かれている状況の変化を感じるようになってきたと言います。
「サプライチェーン全体で、ESG対応の重要性が高まっていて、お取引先とともにサステナビリティに配慮した調達活動を推進しています」
サプライチェーンの変化や外部パートナーとの協業の重要性が増す中で、今まで通りのことをただ続けるだけではいけないという危機感を覚えます。
「ビジネスの土台となる私たち自身が、変化を恐れず、成長していくことが大切。今までは調達という限られた範囲のみを見てきましたが、2020年に始まった全社DXプロジェクト『フジトラ(Fujitsu Transformation)』を機に、より広い視野で見るようになりました」
石崎は部門内のDXをリードするDX Officer(自部門のDX責任者/以下、DXO)の補佐役に任命されます。今でこそ「フジトラ」という言葉は浸透していますが、当時はまだ誰もが手探りの状態。石崎も試行錯誤しながら、本部内のDX活動を始めます。
「2021年2月から、GSC本部内のDX活動を開始。それに先立ち、本部のメンバーに対して事前説明会を実施しました。説明会では、フジトラの概要や、本部内のDX活動について説明をしたほか、当時GSC本部長だった山西(現CSSO)の公開Purpose Carving(パーパスカービング)(※1)をメインコンテンツとしました。また、参加者も一方的に話を聞くだけでなく、過去に夢中になったことなどを振り返るライフリフレクションを行ってもらいました」
この説明会には100名を超えるメンバーが参加していましたが、その後の申込の状況は芳しくありませんでした。
「初回の説明会こそ盛況だったものの、その後は10名ほどの申し込みに留まっていて。何が参加の障壁になっているのか聞いてみると、業務が忙しいという声に加えて、周りの目が気になる、活動の内容がもう少しわからないと参加しづらい、自分たちの部門にとってのDXがわからないなど、参加が難しい理由がたくさん出てきました。そこで、皆さんの声に答える場を再度設けて、参加における不安を解消するようにしました」
※1 Purpose Carving(パーパスカービング):社員一人ひとりのパーパスを彫りだし、言葉にする富士通独自の対話のプログラム
手探りの中の本部内のDX活動。エモーションマップを使って課題を明らかに
GSC本部内DX活動の説明会を経て、次のステップとして展開したのがパーパスカービングでした。
「最終的には業務効率化やデジタル化、会社に貢献できる人材となることをめざしていますが、一足飛びには行かないと考えました。とくに『なんのためにやるのか?』といった腹落ちがとても重要なことが、説明会後の申込状況からも見て取れたからです。
そこで、個人のパーパスを言語化することと、デザイン思考によりユーザ起点に立つことという、自他両面の視点や想いを持つことを重要視し、本部内DXの次のテーマに据えました」
パーパスカービングは進め方の型があった一方で、デザイン思考については、何をすればいいのか悩んだという石崎。そこで、フジトラをリードするCDXO Division(現DX Division)のメンバーに相談したところ、提案されたのが「エモーションマップ(※2)」というツールでした。
「『GSC本部のお客様、または本部員への最高の価値提供ってなんだろう?』というテーマを定め、喜怒哀楽の表情から、それぞれ相手が何を感じているか書き出すことにしました。
たとえば、驚いた表情の横に『そんな活動していたの?』、悲しい表情の横に『残業が多くて疲れている』といった言葉が書かれていて。今まで見えてなかった課題が明らかになり、コミュニケーションや働き方などのエンゲージメントに関わる施策がまずは必要だと感じました」
そこから、魅力を伝えやすくする自己紹介用の社内アプリや、わからないことがあった際にViva Engageに質問を投稿し、本部員が解決してくれる「GSC ライフハック」などを展開していきます。
※2 エモーションマップ:感情を表現する技法「Emography(emotion+graphy)」を活用する手法の1つ。人の本能に作用する表情を描いて発想することで、まだ言葉になっていない想い(インサイト)を発見するための手法。
デジマルがもたらした変化と価値。当たり前を見直すことで工数削減に成功
本部員のエンゲージメント向上に関しては、一定の手ごたえは得たものの、もっと業務に寄った施策ができないかと考え、方針を見直したという石崎。
「私自身が長らく同じ業務に携わっていた時の経験から、当たり前を見直す機会を見出す難しさを感じていました。それを当たり前で通さず、『もっと良いやり方はないのか?』『自分たちの手で解決できないのか?』と考え始めていたんです」
ちょうどその頃、他の本部で推進されたデジマル活動(※3)を見て、可能性を感じたと言います。
「この活動をGSC本部でも取り入れられないかと考えました。デジマルでは、今のプロセスをそのままデジタル化するのではなく、そもそものプロセス自体から考え直すことを重視しています。その過程で、あるべき姿を考え直して、新たな価値を提供することがねらいです。実際に、問い合わせ対応や依頼管理など、プロセス自体を見直すことで、大幅な工数の削減にも成功しています。
たとえば、チャットボット以外に届く質問メールを、Microsoft Power Automateでデータ化し、Qlik Senseで可視化。データ分析結果を関係者にすばやく共有することで、マニュアルやチャットボット拡充などにつなげ、質問の数を減らすことにも役立てました」
自分たちで考えて、手を動かすことによって、気づくことが多いと語る石崎。デジマル活動を継続することで、本部内のより多くの人が当たり前を見直すきっかけになるのではないか。そう考えた石崎は、誰もが参加しやすい環境をつくることに注力していきます。
「デジマル活動は、活動自体に手を取られてしまう印象があるため、取り組むことへの心理的なハードルが高く参加しづらいという意見がありました。そこで、展開にあたっていくつか工夫を凝らしました。
発表会には本部長や他本部の有識者などにも参加してもらうことで、活動に取り組むことに対して組織内で承認を得やすくするように働きかけました。また、『アイデア、スキルがなくても参加可能』、『実現したいアイデアをもとにハンズオン形式で実践的に学べる』ということを伝え、参加の敷居を下げるようにしました。さらに、社内報を活用して積極的に情報を発信することでイベントへの注目度を高め、本部員全体の意識改革を促しました」
4半期に1度のペースで開催されているこのイベント。継続的な取り組みにより、当初は10名ほどしか手が上がらなかったですが、今では関わる人が大幅に増え、約300名の本部員がデジマル活動に参加するまでになりました。また、社内報の発信を見た営業部門の人からも声をかけられるようになってきたと言います。
※3 デジマル活動:デジタルツールを活用した市民開発によるデジタル化で、部門・間接業務の時間短縮、属人化の排除を推進する取り組み
現状を捉えアップデートしながら進める。GSC本部内DXの今後とは
誰もが参加しやすい環境づくりを続け、イベントへの参加者数も増えてきたものの、まだ悩みは尽きないという石崎。また、本部のグローバル組織化に伴い、新たな課題や機会も生まれていると言います。
「本部内で活動を推進するリーダー層は、まだ2~3割といった感覚があります。自発的に動く前向きな層が、中間のマジョリティ層を引っ張る構造になっているので、このリーダー層をいかに増やしていくかが、鍵になると考えています。
リーダー層を増やすために、積極的に本部メンバーと会話をするように心がけています。グローバル組織化に伴い、より変化しないといけないという危機感があるのに参加に踏み切れない人に対しては、その理由を確認するなど、地道なコミュニケーションを続けています。そこから何気なく『これってデジマルで解決策がありますか?』といったことを聞かれることも出てきました」
いろいろな試行錯誤を繰り返す石崎が、今後取り組みたいことを最後に聞きました。
「これからも本部のデジマル活動は続けていきたいです。デジマル活動を始めた当初に比べて、改善されたことも増えましたが、もっとより良い形にできると感じています。また、新しいツールの登場、とくに生成AIが出てきたことで、アイデアの幅が広がったり、解決策が見つかったり、というケースもあります。
継続的なデジマル活動を、と言っていますが、同じことをただ繰り返すのではなく、時代に即してアップデートしていく。また参加していないメンバーの巻き込み、他部門との連携などをもっと加速させていき、新たな価値提供につなげる。常にアンテナ高く、いろんな部門のいい取り組みを取り入れて、部門の変革を、富士通の変革をリードしていきたいです」
※ 記載内容は2024年11月時点のものです
