新ビジネス創出と新人研修。いまのふたりを育んだ原体験
現在、JapanリージョンManufacturing事業本部S&GXクリエーション統括部にてシニアディレクターを務める伊良波。特定のお客様を担当するビジネスプロデューサー(BP)とは異なり、製造業のお客様を幅広く担当し、サステナビリティ・トランスフォーメーション(SX)とグリーン・トランスフォーメーション(GX)領域のビジネス拡大をミッションとしています。
伊良波:キーワードで言うと、カーボンニュートラルやデジタルサプライチェーンといったもの。サステナビリティに関心がある、または経営目標のひとつとして掲げている製造業のお客様に対し、ESG経営への転換を促進し、その下支えを行うべく、BPと連携しながらさまざまな提案活動を行っています。
いわゆる「モノ売り」からは少し離れ、お客様が社会課題の解決と企業価値最大化の両立を見据えたESG経営を実現するために何をすべきかを共に考えることからはじめています。
これからの富士通が注力していく新しい領域をリードする伊良波ですが、現在に至るまでには数多くの部署と業務を経験してきたと言います。
伊良波:2002年に入社してから、自治体、文教、金融、メディア、公共団体、流通、ヘルスケアと、ありとあらゆる業種のお客様を担当してきました。
中でもとくに印象に残っているのは、心臓シミュレーターを使ってスタートアップ企業とともに新しいビジネスの創出にチャレンジしたことです。当時、学生向けの教材としては使われていましたが、医療サービスやツールとしてのビジネス活用はされていませんでした。
その活用について、話が進むにつれて、知財に関する調整であったり、マネタイズの仕組みであったりと、初めて経験するようなことが次々と出てくるんですね。それを一つひとつ自分たちで決めて、社内外の関係者と合意形成していかなければならないのですが、これが大変な作業で。
でも、この経験のおかげで、前例や決まり事がない状態からプロジェクトを前に進めていくための基礎を身につけることができたと思っています。
一方、淺間が籍を置くのは社内IT部門であるデジタルシステムプラットフォーム本部。約2,000名が在籍しており、最先端の技術で富士通を強化し、グローバルなビジネス戦略を支える組織としてさまざまな取り組みを展開しています。
淺間:私のいるデジタルシステムプラットフォーム本部では、富士通グループ12万人規模のDXツールの企画、適用、運用保守などを行っています。全社規模でのサービス適用は、単なるシステム導入に留まらず、いかにカルチャーとして浸透させられるかがカギです。私はとくに、こうしたカルチャー変革に従事しています。
入社3年目にして、社内のさまざまなプロジェクトに参画し、部門や役職を超えて全社DXに取り組む淺間。いまの活動からは富士通や変革への強い想いが感じられますが、それは入社間もないころのある出来事が関係していると言います。
淺間:実は、富士通がどんな会社なのか、あまりよくわかっていませんでした。他の同期と比べると、不真面目な就活生だったと思います(笑)。そんな調子で入社した2021年、富士通は変革真っ只中で。CEOの時田さんやCIOの福田さんのリーダーシップが強く、本気で会社を変えようとしているということは新人の私でも強く感じられました。
そういう会社ならと、私も研修の進め方で気になったことがあり、ここをこう変えられないかと提案したことがありました。それに対し、事務局の方がその提案を受け入れてくれたんですね。それは小さなことかもしれませんが、会社のやり方を変える、という今の業務につながる原体験となりました。
生成AIを社内に広める淺間と、いち早くBP業務に取り入れた伊良波
それぞれ所属部門での業務を推進するかたわら、伊良波はDX Officer(自部門のDX責任者/以下、DXO)として、淺間はDXO補佐としての活動も行っています。
伊良波:私はJapanリージョンにおける民需領域のDXOとして、田中 雅宏さんともにその任についたのですが、さて何からやるべきかと考えました。というのも、私はグループ会社の富士通Japan(以下、FJJ)に当時所属していて、田中さんは流通業を担当する部門にいました。私たちがDXOとして見るべき範囲は、Japanリージョン内の製造業や金融業を担当する部門なども含まれていて、お互い自部門だけを見ていればいいというわけではなかったんです。
そこで最初にはじめたのは、各部門でやっている取り組みを互いに共有しあい、あかぱけ(※1)することでした。
伊良波:私からは生成AIを活用し、BP業務のタイムパフォーマンス(タイパ)を上げる取り組みを紹介しました。当時、私の部署のミッションに、ホワイトスペース攻略がありました。これまで富士通とあまり接点がなかったお客様や業界に対しアプローチしていくのですが、まず相手を知ることから始めるんですね。いろいろなところから情報を集めて、分析し、資料にまとめていくわけですが、それはものすごく時間のかかる作業です。
するとどうしても、お客様先に行くのが遅くなってしまったり、その数を増やせなかったり、お客様のキーマンにたどり着かないケースもあったりします。そこをなんとかしたいと思った時、頭に浮かんだのが生成AIの活用でした。
そこで伊良波は、戦略立案部門の協力も得て、これまで人の手で行っていた作業の一部を生成AIに任せることにしたと言います。
伊良波:これまで何日もかけてやってきたことがあっという間にできてしまう。世の中で流行っているタイパを実感しました。もちろん、生成AIが100%正しいわけではないので、必要に応じてファクトチェックや一部修正は行いますが、確実に最初のアプローチは早くなったと思いますし、実は別の効果もあって。
たとえば、生成AIで御社を調べるとこういう結果が出て、とお客様との会話のネタにも使っています。流行りものということもあり、富士通はおもしろいことをする会社だと覚えてもらえたり、たとえ間違った内容であっても、それはそれでお客様のお話を伺うきっかけになったりすることもあります。
他のBP部門に先駆けて行われた生成AIの活用実践。この話の裏側には、淺間がDXO補佐として活動が大きく関わっていました。
淺間:富士通における生成AIのアプローチは3つあります。1つめは社内実践。社内で生成AIを体験できる環境の整備はもちろん、勉強会の開催や実際のユースケースへの伴走など、カルチャー変革もこれに含みます。
2つめは社外実践。生成AIがお客様や社会にどのような影響を及ぼすかをテーマに実証実験を行うのに加え、富士通自身が培ってきた技術やナレッジを提供しています。こうした先端技術のプラットフォームとして、Fujitsu Kozuchi(code name)- Fujitsu AI Platformを公開し、ビジネス活用も推進しています。3つめは研究開発。話題のChatGPTを始めとし、ハルシネーション(※2)検出技術など、独自のAIソリューションなどを含んだお試し環境をポータルサイトにて無償公開しています。
私は、生成AIに関連する幅広い取り組みに携わっているのですが、中でも現在、社内実践・浸透に注力しています。伊良波さんたちの取り組みは、多くの部門があかぱけしやすい好事例。同様に特定業務に特化した、現場に効果的な事例を生み出すお手伝いを今後もできればなと思っています。
※1 あかぱけ…相乗り(あ)、掛け算(か)、パクる(ぱ)、KPT(け)の頭文字をとった造語。自部門でアイデアや実践例を閉じず、相互に共有、活用しあうことで、新たな価値を生み出すためのDXマインドセットのことを指す当社の造語
※2 ハルシネーション…AIが事実に基づかない虚偽の情報を生成してしまう現象
課題は最初の一歩。社内浸透、定着に向けて取り組んでいることとは
生成AIの活用には、伊良波たちが行った業務効率化としての使い方以外にもあるという淺間。
淺間:たとえば、自分では思いつかない観点や新しい気づきを与えてくれるという側面もあります。私が生成AIと出会ったきっかけにもなったのですが、あるワークショップを準備していたときの話です。
ワークショップの参加者の方には、これまでの自身のキャリアと向き合うために、自分自身が「やりたい」と思うアイデアをもとに、本業とは異なる取り組みをサイドジョブとして立ち上げてもらう企画を行っていました。ですが、そもそも自身のやりたいことが明確になっている人が少ないという課題が出てきたんです。
そんな状況でありきたりなワークショップをやっても、一歩目で躓いてしまう。では何かいい方法はないかと探していた時に出会ったのが、後にChatGPTへとアップデートされる「GPT3」と、画像生成AIとしてリリースされたばかりの「Stable Diffusion」でした。
これほどまでにAIが進化していることに驚いたとともに、これは使えそうと思いました。そこで、参加者がやりたいことを考えるのではなく、参加者がAIを使ってやりたいことを見つけるというワークにしてみたんです。
この件をきっかけに生成AIへの興味がさらに湧いたという淺間。その後自身で知識を高めていき、現在の業務に大いに役立てています。
淺間:社内のどの部門、業務でも活用できるシーンはあると思っています。富士通社員なら一度は生成AIやChatGPTという言葉を耳にしたことがあるはず。富士通グループでは12万人規模での生成AI利活用をスタートしていますが、まだまだ実践的な利用が100%できている訳ではありません。本番はむしろここからです。
伊良波:利用登録さえすれば、富士通社員はだれでも使える環境が提供されていますが、まだまだ「使わなくても当面は困らない」と思っている社員も多いのかもしれませんね。
淺間:そうですね。これは生成AIに限らず、一般的なDXツールでも同様です。実際に使ってみてもなかなか思ったような回答が返ってこないということもよくあるので、それで見切ってしまうというケースも多そうですね。
伊良波さんが先ほど言ったように、ChatGPTが間違った回答を出すこともあります。ただ、技術的には日々進歩していっていますし、自分が欲しい回答を得るためのテクニックや、そもそもの生成AIとの正しい付き合い方などが重要だと考えています。
これらの課題に対し、具体的に取り組み始めているというふたり。
伊良波:論より証拠ではないですが、実際に生成AIを使って資料を作成する様子を動画にまとめて社内に公開したんですね。さらに、お客様名などを入れればすぐにプロンプト(AIに対する指示文)として流せるようなテンプレートも作って公開しました。これが好評で。これをきっかけに使い始めた人が増えましたし、もともと使っていた人は、より欲しい回答を得るためにテンプレートに修正を加えたりして、さらに活用してくれています。
淺間:生成AIのメリットを理解してもらうには、たとえば優れたプロンプトやユースケースを共有するなどの情報発信だけでは足りません。手を動かし、どう指示を与えるのが良いのかしっかりと腹落ちすることが何より重要です。
そのため、ハンズオン形式での勉強会をいろんな部門で開催していて、参加者の方が作ったものを見せてもらいながら、具体的なアドバイスを行っています。社内浸透、定着に向けては、そういったインタラクティブな機会をとにかく繰り返すというのが重要だと思っています。
生成AIの活用で、富士通にしかできない社会課題解決を
ChatGPTの登場により、急速に、そしてグローバルに注目を集めている生成AI。多くの企業が競うあう形で自社に取り込み、ビジネスに転換しようとしています。富士通としての展望をどう見ているかをふたりに聞きました。
淺間:ビジネスという側面において、現在は、ChatGPTを始めとした生成AIアプリケーションそのものを売る、お客様環境への導入を行うというものが多くを占めていると思います。富士通としても同様のサービスを提供していますが、まだまだChatGPTが持つ有用性を生かしきれているとは言い難いと思っています。生成AIがもたらす効果が経営レベルで実証されていくにつれて、より現場に最適化された、より手軽で実践的なソリューションなどへ変容していくはずです。
富士通として、めざすべきは、Fujitsu Uvanceをはじめとしたオファリングのなかに、他のテクノロジーとともにどう組み込んでいくかや、お客様への提案のなかに当たり前のものとして生成AIを取り入れていくかだと思います。さらに言うと、富士通の研究所が持っているテクノロジーやAI同士の掛け算によって、富士通にしかできない社会課題の解決や価値提供につなげられると一番ですね。
伊良波:私も同じ見立てをしています。たとえば、私が推進しているSX・GXでいうと、ESG経営に向けて、GHG(温室効果ガス)排出量や人権デューデリジェンスなどに対し、データの収集や可視化、分析、さらには対外的に情報開示する必要があります。
その一連の流れの中に、自然な形で、かつ効果的に生成AIが組み込まれていて、お客様の業務や経営をサポートする。それが、Fujitsu Uvanceのオファリングのひとつとしてお客様に提供できるようになるのが理想であり、めざす姿だと思っています。
富士通において、また社会において、生成AIが当たり前になるために必要なこととは。
伊良波:今後、より多くの人が日常的に使っていくことを考えると、生成AI特有のリスクが顕在化してくると思います。たとえば、個人のプライバシーの問題であったり、AIが偏った倫理性で回答したり、ハルシネーションといったものがあるかと思います。
ただ、そういったリスクは、ユーザーには見えないところで解消されることが求められるようになると思います。それを実現する下支えとして、富士通のテクノロジーが使われていくことをめざしたいですね。
淺間:組織として高いリテラシーを形成していけるかだと思っています。富士通は、ビジネスの道具として生成AIを扱っているわけで、少なくともお客様に接する部門において、自らが説明や提案できるようになっていかないといけないと思っています。
そのためには、各自の業務効率化のために使うのが一番であり、さらにそれを実現するためには、自身の業務を改めて考え直すといったプロセスが不可欠です。小手先でのAI利用ではなく、より本質的で根底から生成AIを当たり前とした業務変革、カルチャー変革に今後も挑んでいきたいです。
※ 記事内容は2024年1月時点のものです
