それぞれの部門が担う役割と、DXOとしてめざすもの

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▲同じJapanリージョンでDXOを務めるふたりが対談

小松が本部長を務めるオファリングセールス本部は、2023年4月にJapanリージョンに設立されたばかりの部門。これまでアカウントBP(ビジネスプロデューサー)が注力してこなかった顧客領域の開拓に取り組んでいます。

小松:従来のセールス部門であるアカウントBPが業種別にお客様を担当するのに対し、クロスインダストリーで営業するのが私たちオファリングBP。特定領域の専門性を持って新規開拓することが当本部のミッションです。

1,000億円以上の売上がある民間企業のうち、現時点で当社を主要なパートナーに選んでいただけていないのは、製造、サービス、流通、金融など約300社。これらの企業に、過去に当社とまったく取引がない企業を加えた約800社にアプローチを行っています。

一方、田中が統括部長を務めるCPS(Consumer Products & Service)&Retail事業本部 コ・クリエーションデザイン統括部は、流通小売業を手がける顧客を担当する製販一体のセクション。業態や市場をまたいでビジネスを推進、創造することをめざして立ち上げられた組織です。

田中:これまで、業界やマーケットごとに各事業部がDXに取り組んできましたが、富士通がDX企業として変革を加速させていくには、個のDXビジネスに留まらず、マーケットとマーケット、企業と企業同士をつないでいくことが欠かせません。また、各事業部門は従来のビジネス領域であるITの業務に追われ、なかなか新しいビジネスを創出できずにいました。

そこで、業態や市場を超えてDXビジネスにドライブをかけていく専門組織となるべく、2021年に当部門が立ち上げられました。

初年度はBP17名で構成された組織でしたが、上流企画やDXビジネスコンサルといったロールを担うメンバーが加わり、現在は120名ほどの規模に。上流から下流までの一連のプロセスに伴走しながら、お客様が新たな世界へとトランスフォームするのに貢献することをめざして取り組んでいます。

流通小売業のお客様のDX伴走支援はもちろん、たとえば、不動産会社×健康飲料メーカーで介護ビジネスを展開できないかなど、各企業の強みを組み合わせながら新ビジネスを考案し、お客様に提案したり、それぞれの企業を引き合わせたりする企画も進めているフェーズです。

それぞれ自部門のDX責任者(DX Officer/以下、DXO)として変革活動を推進してきた小松と田中。自らに課された役割をこう説明します。

小松:当本部のメンバーに、「富士通自身のDX活動を武器にすれば、『富士通となら前に進んでいけるかも』とお客様に感じていただけることが十分可能だ」と伝えることが、DXOとしての私の役目だと思っています。取引のないお客様にアプローチしていくわけですから、すぐに商談に至るケースは稀ですが、どの大企業もDXに課題を抱えているはず。まずは私たちに興味を持っていただくために、われわれが全社DX「フジトラ」を試行錯誤しながら取り組んでいる様子を、包み隠さずありのまま伝えるようにしています。

そうやって、私たちの苦労や失敗の体験を学びとして伝えることで、「この人たちの力を借りることで、富士通の苦労を参考材料とした上でスキップし、DXを加速させられるのではないか」と感じていただければと考えています。

田中:DXは、社内DXとお客様の事業DXに大きく分けられますが、前者に関しては、「フジトラ」の活動を3年続けてきたことで、社員が目を輝かせながら働ける環境づくりの土壌固めがある程度できてきました。今後は、「フジトラ」の活動をより事業DXへとシフトさせていくために、CPS&Retailのマーケットと、Japanリージョンのエンタープライズ領域のDXビジネスの昇華に直接関わるようなビジョンの醸成ができたらと考えています。

今めざしているのは、お客様のCxOのコミュニティづくり。個社のトランスフォーメーションを支援するのはもちろん、企業様同士をつなげることで、日本の企業全体のDXを加速させるような取り組みを実現したいと思っています。社員たちが胸を弾ませながら夢のある未来に挑む──そんなビジネス環境にしていけたらいいですね。

ふたりの風雲児は、富士通で出会った。異なるキャリア、異なる挑戦

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▲小松がキャリアの集大成として富士通への転職を選択した理由とは

小松が富士通に入社したのは2021年。外資系ベンダーの営業管理職、日本法人社長などを経ての決断でした。

小松:新卒でソフトウェアメーカーに入社し、営業としてキャリアをスタートしました。15年ほど在籍しましたが、コンピューティング環境がメインフレームからクライアントサーバーにシフトする中、新しい営業スタイルに惹かれ、外資のソフトウェアベンダーに転職。37歳のときでした。

その会社が大手ソフトウェア会社に買収されたことがきっかけで、富士通の現・EVP CDXO、CIOの福田さんと出会い、部下を連れて当時福田さんがいたSAPジャパンへ。社会人として、また営業として多くを学ばせてもらいました。

その後、アメリカのSaaS企業・Kyriba(キリバ)の日本法人社長を経て、富士通に入社しました。

前職時代、富士通とは犬猿の仲だったと言う小松。あることを機に、富士通に対する印象が大きく変わったと振り返ります。

小松:おそらくは面識のあった営業やSEとの相性が良くなかったのだと思いますが、外資にいたころは、富士通とは反りが合いませんでした。ところが、現CEOの時田さんが就任し、福田さんが富士通に移ったことを受けて調べるうちに、どうやら組織が劇的に変わろうとしていることがわかり、新しい富士通に関心を持つように。

「嫌い」が「好き」の裏返しであることは往々にしてあるもの。当時、現・SEVP 島津さんと話す機会があり、外部の話に真摯に耳を傾けるトップがいることを知り、自身のキャリアの集大成として日本企業に貢献したいという想いから、入社を決めました。

一方、田中は1996年に富士通へ新卒入社。以来、一貫して流通業界で営業に携わってきました。

田中:運輸業、とくに陸運業・海運業のお客様とさまざまなビジネスを経験しました。その後、管理職として、マーケットイニシアチブを取っているような大企業のお客様に特化した他社攻略部隊の立ち上げに関わりました。

それまでまったく取引のなかった複数のお客様をロイヤルカスタマーとし、中には100億規模のリターンを獲得できるまでに成長させたケースもあります。

その後、運輸業を担当する部隊に戻り、事業部長代理として陸海空の運輸業におけるBP活動すべてを管掌しつつ、2022年にCPS&Retail事業本部内にコ・クリエーションデザイン統括を立ち上げました。

他社攻略部隊を組織化したころから、ITが目的解決のための手段だと気づいていたと言う田中。DXOのポジションに就任したのは自然な流れでした。

田中:お客様のあるべき姿を見据えながら現場の問題や経営課題にアプローチし、最適なITソリューションを提案するなど、早いタイミングからカスタマーサクセス思考的な動きをしていました。事業直結のDXを企画立案する部門の長として自分に白羽の矢が立ったのは、そのためだと思います。

小松とは逆に、田中は「富士通愛」を貫いていてきました。就職活動において、数あるITベンダーの中で富士通を選んだのは、お客様を大切にする組織文化を感じたから。当時の印象は、30年近く経ったいまもまったく変わっていないと話します。

田中:当時の富士通にはキラーソリューションがありませんでした。それでも支持いただけたのは、お客様と綿密なコミュニケーションをとりながら、製品とソリューションをコンバインして及第点のものに仕立てあげ、アカウントBPやアカウントSEらが高いサービス品質で残りを補完することで、極致点と信頼を勝ち得てきたからだと信じています。

まったく異なるキャリアを歩んできた小松と田中。それぞれ明確なパーパスを持って仕事に向き合ってきました。

小松:「いつも新しい一歩を踏み出し、変化を楽しむ」が私のパーパスです。変化を恐れていれば、コンフォートゾーンから抜け出せなくなるだけ。困難も含め、あらゆる出会いを楽しむことを是としています。

田中: 私は、自分の職種を、「ビジネスエンターテイナー(BE)」と呼んでいます。ビジネスというフィールドの中で楽しく仕事をしながら新しい世界にチャレンジしていくには、プロデューサーでもコーディネーターでもなく、お客様はもちろん自組織にとってもエンターテイナーであるべきだと考えています。娯楽性を強みとして、よりワイルドかつダイナミックに活動していくことをめざしています。

互いの接点を探り、部門間の新たなシナジーにつなげていけたら

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▲富士通愛に溢れる田中がいま取り組んでいることとは

立ち上げから約1年になるコ・クリエーションデザイン統括部。社内の各事業部と連携しながら、各マーケットの特性を捉えたオファリングの創出や本部横断アプローチに取り組んでいます。

田中: アフターコロナのいま、オンラインとオンサイトを並行して機能させることでもっともビジネス効果が高まると感じています。ハイブリッドのチームワーキングでメンバーのモチベーションと戦闘力を高めてきました。とくに徹底してきたことがイシュードリブンとカスタマーサクセスの連続性の浸透。向かうべきは経営課題・事業課題であり、それを解決する手段がITであるという思考。その結果によって事業変革が促され、経営変革へと昇華する。その伴走が富士通への信頼とビジネスの連続性につながっていくと理解しています。

またDXに関しては、どこから着手すべきかわからず手をこまねく企業が少なくありません。業務に直結したDXを実現することをめざし、各社のCxOをエンゲージさせることでビジネス上の気づきやきっかけを促すような企画の立案を進めています。

EVP CDXO、CIOの福田さんたちとも連携しながら、各事業部門で個社戦略に取り組むアカウントBPやアカウントSEをつないだり、個社戦略を盛り上げるようなオファリングやイベントを提供したりするための準備が進行中です。

一方、新規領域の顧客開拓に取り組むオファリングセールス本部。個社の課題を個別のシステムインテグレーションによって解決する営業モデルからの脱却を図るべく、型化された標準オファリングを提供するモデルの確立を進めています。

小松:当本部には営業経験者がきわめて少ないことから、私が外資で学んだメソドロジーをもとに人材育成に取り組んできました。

日本企業では、営業において勘や経験が重要視される傾向がある一方、外資には全員がベストプラクティスと呼ばれる標準化された考え方をベースに営業活動を行うことで全世界共通の営業手法を浸透させています。そこで当部門では、その一部を取り入れ、約半年の講習を継続的に実施しています。

めざしているのは、営業活動における科学(サイエンス)と化学(ケミカル)の融合です。サイエンスとはデータに基づいたお客様のプロファイリング、商談状況分析、今後の行動計画などを指し、ケミカルとは限られた時間で適格な相手に的確な話題をベストなタイミングで伝えることで相手の「化学変化」を起こしてわれわれに対しての印象を変えるコミュニケーション手法を指します。営業経験が浅いメンバーの生産性向上につながればと、そのふたつの要素を身につけるためのトレーニングを行っています。

コミュニケーション能力のスキルアップは守破離の3段階。教科書通りにお客さんとディスカッションするのが守。自分なりのエピソードを交えるのが破。自分なりのストーリーでお客様に変化を促すのが離です。

まだまだ変革の途中ですが、3カ月前と現在の姿を比較するデータを示して成長の度合いをわかりやすく伝えていることもあり、メンバーたちはとても前向きに取り組んでくれています。

これまで部門ごとに活動を進めてきた両部。今後は互いに連携を強めていきたいとふたりは口を揃えます。

小松:先行していた競合他社よりも優位に立つ営業を田中さんがされていたと聞いて、私たちの動きに通ずるものを感じています。ディスカッションの場を設け、コ・クリエーションデザイン統括部との接点を探っていきたいと考えているところです。

田中: 私も同意見です。組織戦略の変革を進めていくためにも、お客様のビジネス成長と社会課題の解決に挑む富士通のソリューション「Fujitsu Uvance(以下、Uvance)」を展開していくためにも、人材の育成は急務。先ほど小松さんがおっしゃった、成長の度合いを数値化して可視化する仕組みについて、ぜひ私も勉強させていただきたいです。

IT企業からDX企業への変革に向け、富士通は新たなチャプターへ

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▲異なるキャリアを経てきたふたりがめざす「これからのJapanリージョン」とは

DXOとして共に自部門の変革活動を推進してきた小松と田中。富士通の魅力に触れながら、同社の可能性をこう展望します。

小松:富士通の強みはなんといっても組織の規模の大きさ。それに応じて顧客基盤も相当なものです。

また、優秀な社員が多く在籍し、さらに多くの中途社員を受け入れることで異なる視点が融合し、新たなシナジーを生み出しつつあるところも当社の魅力だと思います。

先ほど田中さんがおっしゃった通り、富士通では「Uvance」を通じて、社会課題の解決に取り組むことを明言していますが、足元のIT化やDX、働き方変革ができていなければ、課題を抱えるお客様と良いパートナーシップを築いていくことは到底できません。

将来的に世界的なプレーヤーの仲間入りを果たすために、当社は自らの基盤を再構築してきました。社会課題を解決するに当たって、まずはこの分野に注力しましょうというのが「Uvance」の考え方。富士通はお客様のDXを実現し得る数少ない日本の組織ではないかと思っています。

田中:私は、お客様との信頼関係をつなぎ続けてきた実績こそが富士通の最大の魅力だと思っています。決して逃げも諦めもせず、お客様と向き合い続けた結果、確固たる顧客基盤を築けたのだろうと。

しかし、これはあくまでIT企業時代の遺産です。これからDX企業へと変革していく上で鍵となるのは、「Uvance」にどう取り組んでいくか。変えていくべきところはまだまだたくさんありますが、現場で築き上げてきた信頼を守り続けながら、新たな価値を提供することができれば、この会社はグローバルで戦えるもっと強い組織になっていくと思っています。

 IT企業からDX企業へと変革を果たすために、今こそ社員が足並みを揃え、前に進むべきとき。それぞれの視点から、Japanリージョンのメンバーに向けてふたりはこんなメッセージを送ります。

小松:大規模な組織再編を受けて富士通のほとんどのお客様がJapanリージョンに集まり、富士通Japanと一体となってお客様を支えています。現在のJapanリージョンは、10年前の富士通とほとんど同じ規模になっているはず。

当社が成長エンジンであり続けるためには、私たちもどんどん変わっていかなければいけないし、従来のお客様との接点ももう一度つなぎ直す必要があります。IT企業として取引のあるお客様との関係を継続しつつ、まだ手が届いていない事業部門と接点を持つことで、次のフェーズへと進むための道筋が見えてくるというのが私の考え。

アカウントBPやアカウントSEだけがお客様との窓口を担うのでなく、Japanリージョンの全員がお客様とのコンタクトを図っていくことがいま求められていると思っています。

田中: 私も小松さんの意見に賛成です。2023年の4月に新生Japanリージョンが立ち上がり、公共も民需も、文教もへルスケアも、そして富士通Japanと一体化した組織になりました。ただ、ずっと中から当社を見てきた私からすると、いわば「One・Japanリージョン」として富士通がこれほどまでにひとつになったと実感しているのは今回が初めてです。

これまで別個に動いていた各マーケット、各事業本部がつながり、ナレッジを共有していくことで、ホワイトスペースでの成功を収めることができるのではないかと期待しています。

Japanリージョンが一体となって邁進できたなら、社会課題を解決するような質の高いビジネスを生み出していくことも可能なはずです。そんな富士通ならではの醍醐味を、全社で感じられるような組織になっていく夢を私は描いています。

※ 記載内容は2023年8月時点のものです