頭に浮かんだ「ある疑問」。ICT業界を選んだ理由
2023年4月現在、パブリック&ヘルスケア事業本部システム品質保証部に所属する吉崎。自部署で開発したソリューションの品質評価を担当しています。しかし、就職活動を始めたころはまったく違う業界を志していたと振り返ります。
吉崎 「始めは、自分の好きなことを仕事にできたらいいなと思っていました。映画や音楽が好きということもあり、エンタメ業界を中心に就職活動をしていました。ただ、そううまくはいきませんでした。
一度立ち止まって、さあどうしようかと考えていたときに、そもそも世の中の人はエンタメを楽しむ時間を十分に確保できているのかと、ふと思ったんです。たとえ、質の高いエンタメを提供できたとしても、受け手がそれを享受する時間がなければ意味がないのではと」
そんな吉崎が次に目を向けたのはICT業界。中でも、富士通であったと言います。
吉崎 「日々の生活の中でエンタメを楽しむ時間を生み出すためには、『やることが当たり前』と誰もが思っていることを変えていく必要がある。それには、テクノロジーを活用することや、自治体や国、社会全体のしくみを変えていくことが重要だと考えました。その2つを実現できそうな会社を探している中で見つけたのが当社だったんです」
富士通入社後、吉崎の希望通り、国や自治体向けのソリューション開発を担当する部門に配属されます。
吉崎 「私が今、所属するシステム品質保証部は、自部署で開発したソリューションを第三者視点で評価することがミッションです。最近、私が担当したものでいうと、渋滞、事故、火災が起きた場合などの情報を一元管理して、必要な情報をハイウェイの情報板やハイウェイラジオで流すシステムがあります。
業務の流れとしては、まず開発部門にてシステムが仕様通りに動くかを確認し、その後、われわれがお客様の業務を想定した動作確認テストを行います。ポイントは、お客様の利用環境において、いかなる操作が行われても問題が起らないか、問題を解消できるしくみになっているかを確認する点です。
もちろん、正しく使っていただくことが大切なのですが、そうではないときでも、安全に稼働できるものをお客様に、そして社会に提供していくことがわれわれの役割だと思っています」
入社から1年が経過し、少しずつ業務にも慣れ始めた2022年、吉崎はFujitsu Convention(※)に参加。この挑戦が彼を大きく成長させることになります。
※論文執筆による技術・ノウハウの形式知化や共有を通じて、個人や組織の成長に寄与するとともに、お客様への価値提供や富士通グループのビジネス拡大につなげることを目的とした富士通グループ全体の取り組み
紆余曲折を経て、たどり着いた論文テーマ。自分ゴト化した社会課題とは
吉崎は、Fujitsu Conventionに参加することになったときのことをこう振り返ります。
吉崎 「所属部署では、入社2~3年目社員は教育の一環としてFujitsu Conventionの論文を書くことになっていました。それを知ったとき、正直に言うと、ちょっと面倒くさいなと思いました(笑)。
募集カテゴリは3つあるのですが、私が選んだのは『未来提言』です。残り2つは、ある程度業務経験がないと書くのが難しそうと感じたのもあるのですが、この先10年後くらいの理想像を考える方が楽しそうだなと思い、選びました」
執筆期間は3カ月ちょっと。早速、執筆テーマの選定に取りかかったという吉崎。
吉崎 「まずは、社内図書室に通っていろんな書籍や資料に目を通しました。また、未来年表やSDGsなどで取り上げられている課題に対する解決策、新技術の新しい分野への応用など、さまざまな角度からアイデアを出してみたのですが、どれも決め手に欠けるものばかりで。
振り返ってみると当たり前なのですが、世の中のトレンドワードや思いつきだけでは論文は書けないんですね。その社会課題が自分ゴトになっていて、現状の何が問題なのか、その問題を引き起こしている要因とは何か。それらが自分の中で整理できていないと、社会課題を解決するアイデアはいつまでも具体的にならなかったんです」
悩み続けて約1カ月が経ったころ、あるキーワードが頭に思い浮かんだと振り返ります。
吉崎 「最近、ニュースでよく聞くようになった豪雨災害とそれに付随する『逃げ遅れ』という言葉でした。私はニュースを見るたびに、こんなに天気予報の精度も上がって、どこからでも情報を得られる時代に、来るとわかっている脅威から逃げ遅れてしまうのはなぜだろうと常々思っていました。
よく、ハザードマップで避難場所を確認しましょうと言われますが、引っ越し時にもらったきりで、どこにしまったかをぱっと思い出せない人もたくさんいらっしゃると思います。
また、もし見つかっても、ナビゲーションしてくれるスマホアプリに慣れた今、そのマップを見て、ここに逃げようとはなりにくいのではと感じました」
自分だったら何があれば適切に災害の脅威から逃げられるだろうか。論文テーマを「逃げ遅れ」に設定した吉崎は、その解決策を具体化させていきます。
「逃げ遅れ」は意識の問題?テクノロジーで社会課題を解決したい
吉崎 「ハザードマップを見ていても、警報が鳴っていても、逃げ遅れてしまうのは『これは大したことではない。私は大丈夫だ』と自身に言い聞かせてしまう心理的メカニズムによるものです。心の安定を保つために必要なものですが、災害時には当事者意識を遠のかせ、避難行動の足かせとなってしまうものでもあります」
災害への備えとして、日頃からもしものことを意識して生活すべきと言われるが、それはあまり現実的ではないと続ける吉崎。
吉崎 「水や非常食、懐中電灯くらいは用意すべきですが、それ以上の備えは、過去に災害を体験した方やよほど意識の高い方ではない限り、なかなか難しいと思います。『逃げ遅れ』を住民側の意識の問題と捉えてしまうことには、私としては違和感がありました。では、どうしたらよいか。
たとえば、災害が起きたときに、自治体から避難場所や避難経路や災害状況などの必要な情報だけが送られてきて、住民はそれに従って逃げるだけでいい。テクノロジーを使ったしくみによって、逃げ遅れを解消する方法はないかを検討し、論文に仕立てていきました」
その後、上司や同僚からのフィードバックをもとに、何度も書き直したという吉崎。
吉崎 「最初はダメだしばかりされていた論文が、繰り返し書き直していくうちに、いい論文に磨かれていくのを実感しました。すると、もっといい文章に仕上げたい、もっと良くなるように作っていきたいという気持ちになってくるんですね。最初は面倒くさいとさえ思っていた論文執筆に、いつしか没頭している自分がいました(笑)」
自分ゴトとして捉えた社会課題から、具体的なソリューションアイデアを創出し、自身の論文にまとめた吉崎。その努力は、実を結びます。
結実した「努力」と確かな「成長実感」。次に見据える挑戦とは
Fujitsu Conventionにて、優秀発表賞を獲得した吉崎。また、論文執筆の経験が日常業務のスキルアップにもつながったと言います。
吉崎 「論文を書き始めたころはスケジュール管理が甘く、上司のレビュー間際になっても予定のレベルに達していない、また直前に慌てて作業を進めることもしばしばありました。しかし、今ではスケジュールを立てるときは、まずは作業の締め切り日を決め、そこから逆算する形でマイルストーンを設定できるようになりました」
また、別の形でも自己の成長を実感していると続けます。
吉崎 「あまり自覚はしていなかったのですが、あるとき上司から『ノーと言えるようになったね』と言われました。入社年次が浅く、経験もなければ自信もない。そんな私は、上司や先輩からの依頼やアドバイスに、ついつい『はい』と答えてしまっていました。
ただ、論文執筆を進めていく中で、すべてのアドバイスをそのまま受け入れるのではなく、自分の考えをもった上で、そのアドバイスを咀嚼できるようになりました。また、ときには『ノー』と言えるようになり、論文執筆はイエスマンから脱却する、いいきっかけになったと思います」
入社2年目に確かな成長実感を得た吉崎がこの先に見据えているのは、入社時の想いの実現です。
吉崎 「論文では防災をテーマとしましたが、解決すべき社会課題は各方面にあります。その課題解消にむけ、さまざまなステークホルダーを巻き込み、今の当たり前を変える。富士通でなら、それができるのではないかという考えは、今も変わっていません。
今までもこのやり方でうまく回っていたのだから、そのままで良しとしている慣例やしくみは、当社の中も、世の中にもたくさんあると思っています。
そういったものをひとつずつなくしていき、誰もが働きやすく、充実した『ライフ』を過ごせる社会を実現していきたいです。また、その社会のしくみに、当社のテクノロジーやソリューションが役立てられているのが理想ですね」
