全社一律のプロモーションから、各店舗に寄り添うプロモーションへ
衣・食・住のすべてを兼ねそろえ、シーズンごとに開催されるイベントや催事など、百貨店という存在に対して期待を膨らませる人は少なくありません。Mの仕事のメインは、営業企画部の販売促進・広報・インバウンド担当の中でも、全国の大丸・松坂屋にて開催されるイベントやプロモーションの企画立案です。
M「本社で企画するイベントやプロモーションは、全国にある大丸・松坂屋の各店舗を起点として、同テーマ同期間で実施されます。本社の販売企画担当として、売上・集客の拡大やブランディングのために、『どのような価値・体験を提供するか』といったことを考えるのが私の主な仕事です。
さらにはそれを各店舗の販売企画のマネジャーや各担当と打ち合わせを重ねて、店舗ごとにチューニングをしながら最終的な形にしていきます」
また、大丸松坂屋百貨店が取り組む社会貢献活動「Think LOCAL」の推進にもMは携わっています。
M 「『Think LOCAL』の活動は、日本各地に店舗を構える大丸・松坂屋が、それぞれのまちや、そのまちに暮らす人々の課題をお客様と一緒に考え、応援していくことを目的とした社会貢献への取り組みです。
『まちのために ひとのために 想いをつなぐ場所になる』というステートメントのもと、各地域・各店舗の魅力を全国に発信し、その地域や店舗の価値を上げていくことを目指しています。実は、私自身『Think LOCAL』を担当するまで、明確に地域や店舗ごとの違いに気づけていませんでした。
担当したことで、それぞれの地域や店舗のローカリティや色が異なることを実感をもってわかるようになってきたんです」
「Think LOCAL」の活動を進める上で、Mは実際に各店舗に足を運ぶことも少なくありません。
M 「その店舗の特色を知るために、可能な限り実際に赴き、お店の担当者と会話をし、お客様を拝見し、周辺環境を観察し、肌で感じることが大切だと思っています。そうした中で、地域・店舗の価値や魅力をあげるために、『店舗にとって何が大事か』『どうお客様に還元するか』を考えながら、売上・集客の拡大とブランディングという両軸を実現することが自分のミッションだと思っています」
Mは「ThinkLOCAL」を担当することで、抱えていた疑問の答えが見えた気がしたと語ります。
M 「全社一律の企画を行うという今までのやり方が、殊『ThinkLOCAL』に関しては本当にお客様が求める「価値・体験なのか」という疑問がありました。担当したことで成否はともかく、個人的に持っていた疑問に対しての答えを持つことができ、自分のやりがいを見つけることができたと感じています」
しかし、2020年から広がった新型コロナウイルス感染症の影響により、イベントの自粛など、お店というリアルな場にお客様を集めることができないという事態に。これを受けて、大丸松坂屋百貨店では新たな取り組みを始めます。
たとえばライブコマースの導入や、地域の魅力を届けるためのオンライン施策なども積極的に行ってきました。
M 「12月のクリスマスには、オンライン上での取り組みとして、それぞれの店舗の魅力を撮影するために全店舗を巡ったんです。
各店舗の伝えたい魅力・やりたいことに寄り添い、一つのプロモーションを作り上げたのは初めての試みでした。この取り組みは、大きな一歩になったのではないかと思います」
大丸・松坂屋は、北は北海道、南は福岡と全国に15店舗(分店・関連会社含む)を展開。時代の変化に合わせて、これまでにはなかったオンラインを含めた企画も検討します。
M 「百貨店のあり方が大きく変化しようとしている中で、今まさに岐路に立っていると感じています。手探り状態ではありますが、さまざまな取り組みをして検証していきたいですね」
コロナ禍を機に、百貨店のプロモーションのあり方も大きく変化しようとしています。そんな時代の変化に対して、葛藤しながらもMは新しいチャレンジを続けています。
社風はポジティブでアグレッシブ。転職レベルの経験もできたことに感謝
大学時代には、数多くのアルバイトを行うことで経験値を積み上げたM。こうした経験によって、就職活動で譲れない条件が3つ生まれたといいます。
M 「自分の中で広い視野と多くの選択肢を持ちたいという想いから、大学時代はアルバイトなどを通して、いろいろな角度から、さまざまな経験を積みました。接客業や広告代理店の仕事など、幅広い職種を経験し、『経験や選択肢の幅が広いこと』『変化や挑戦に対してアグレッシブかつポジティブな会社』、そして『お客様の顔が見えること』。この3つが、就職活動における会社探しの軸になりました」
この3つを軸に就職活動を行っていたMは、さまざまな業種業態を調べていく中で、百貨店という業種にたどり着きます。数ある百貨店の中でも、大丸松坂屋百貨店を選んだ理由について、次のように語ります。
M 「大丸松坂屋百貨店に決めたのは、キャリアの選択肢が広いこと、そしてポジティブな会社の姿勢に魅力を感じたからです。
グループ会社では、カード事業やショッピングセンター事業、不動産事業など百貨店以外の事業も行っています。百貨店の枠を超えた、幅広い経験をさせてもらえると感じたのも決め手となりました」
そうして2015年に新卒入社したMは、松坂屋名古屋店の婦人洋品売場に配属。最初は接客業務でしたが、次第にイベント運営にも携わっていくことになります。
M 「就職活動をする上で、3つ目の軸であった『お客様の顔が見えること』では、接客をしてお客様に商品を売るというよりも、最終的にお客様が必要としているものを届けたいという想いがあったんです。徐々にさまざまな企画を担当させてもらえるようになり、こうした想いにもつながっていると実感しています」
その後、入社2年目にして豊田店のバイイング担当に。その後、東京に転勤となり大丸松坂屋百貨店初のコンセプトストア GINZA SIX「シジェームギンザ」のオープニングスタッフ、本社の営業企画部にてトリプルメディア運営やCRMなどのデジタルメディア担当、2022年現在は同部販売企画担当になるなど、Mはキャリアを着実に積み重ねていきます。
M 「会社は変わっていませんが、仕事内容は転職レベルで変わっていますね(笑)。バイヤーもほかの仕事もそうですが、希望を出せる環境が整っているので、興味のあることややりたいことは上司や人事にどんどん伝えてきました」
大丸松坂屋百貨店では、百貨店の仕事を理解するために、入社1年目では店頭業務に配属されます。また、入社3年目までは人事と定期的に面談があり、自分のやりたいことを伝えられる環境が整っているのです。
M 「もちろん、すべての希望が通るわけではありませんが、自分の想いを伝えられる環境があったことで、さまざまな経験ができたと思います。経験や実績がなくてもチャレンジできる場を用意してくれるのは、大丸松坂屋百貨店の魅力のひとつだと思っています」
自分のできる範囲を見極め、頼るのではなく協力を仰ぐことの大切さを実感
接客・バイイング担当・販売促進と、大丸松坂屋百貨店でキャリアを重ねてきたM。しかし、すべてが順調に進んだわけではなかったといいます。中でも入社2年目でアサインされたバイイング担当について、当時のことをMはこう語ります。
M 「バイイング担当というプレッシャーはもちろんですが、知識も経験も圧倒的に足りないことに対しての絶望的な不安がありました。当初は社外のつながりもなければ、社内のつながりもほとんどありませんでした。ゼロベースから始まり、バイイング担当として何をすればいいのかすらわからない状態だったんです。
そのとき、名古屋店でお世話になった方々に、毎週のように話を聞いてもらったり、一緒に商談に入ってもらったりして、助力を得られたのは大きかったですね」
そこでMは、周りに頼るのではなく、他の人の力も借りながら周囲を巻き込んでいくことの大切さを知ったといいます。そうしてコネクションも経験もない中、対前年比を大きく上回る売上達成に貢献できたのです。
M 「自分だけでできる範囲は、とても狭い。周りの助力があってこそ、達成できることの幅が広がりますし、より大きな仕事を成し得るんだということを2年目で実感できたのは良かったなと思います」
自分の力だけを過信せず、人の力を借りる大切さを学べたことは、Mにとっての転換期だったと語ります。そんな経験が、後の本社での仕事で体現される出来事がありました。
M 「コロナ禍を機に、新しい販売手法を至急導入しようという大きなプロジェクトが始まりました。そこで、ライブショッピングの仕組みを、新たに全店に導入することになり、販促の代表としてこのプロジェクトに参画することとなりました。
新しい仕組みですし、売り上げの立て方も決まったフォーマットもない状態からのスタート。ですから、いろんな部署に掛け合って、何が必要なのかというところから模索し、ゼロから構築していったんです。
このときも、自分でできる範囲とできない範囲をしっかりと見極めて、できない部分に関してはできる人にお任せし、チームで力を合わせることで成果をより大きく生み出せるように心掛けました」
Mが担当したライブショッピングの全店導入への取り組みは、驚くほどのスピード感で進み、わずか2カ月間で実施にこぎつきます。
M 「この取り組みは、世情やマーケットの変化に応じて、ポジティブに変化することを会社のメッセージとして伝えることができたと思っています。大丸松坂屋百貨店は変わっていいんだと、新しい発見もできたことは大きな収穫です」
Mは変化を楽しみながら、周囲に協力を求めつつ、自らのミッションに邁進しています。
「Think LOCAL」で大丸松坂屋百貨店のブランディングを推進
現在、Mは「Think LOCAL」によるブランディングと、売上や集客を上げる営業活動の推進という2つのミッションを掲げています。
ですが、大丸松坂屋百貨店は、もともと関西を地盤とした大丸と、名古屋で圧倒的なブランド力を持つ松坂屋が合併した百貨店。暖簾も違えば、暖簾に対しての地域ごとのイメージや顧客層もまったく違います。
そうした中で、Mは大丸松坂屋百貨店としてのブランディングをなしえるためには、まずは「Think LOCAL」でのストアブランディングの推進が必要だと考えました。
M 「コーポレートのブランディングにつなげるためには、ストアブランディングは非常に重要だと考えています。私が担当する『Think LOCAL』でも、実現に向けて貢献していきたいと思っています」
そんなMが、働く上でやりがいを感じる瞬間についてこう話します。
M 「どんな部署にいても、自分が起こした行動が、リアルな反応として返ってくることにやりがいを感じますし、百貨店で働く意義だと思っています。例えばバイヤーとしては、お店に来てくださったお客様が、自分が買い付けた商品を買ってくださる姿を見たときが一番嬉しかったですね。今の部署にきてからは、本社が実施した企画や提案でお店が喜んでくれることにやりがいを感じます」
また、やりたいことができる環境があったことも、Mのやりがいにつながっているといいます。
M 「当社にはやりたいことができる環境、そして社員の声に耳を傾けてくれる風土があります。たとえゼロベースでも挑戦させてくれる、意志や意欲を最大限尊重しようという姿勢が感じられます。百貨店は接客というイメージがありますが、そうではなく、さまざま経験できる風土・文化・選択肢があることを知ってもらいたいですね」
日本で初めてデパ地下のスタイルを築いた松坂屋と、海外ブランドとの独占契約をいち早く取り入れた大丸が合わさった“大丸松坂屋百貨店”は、数多の百貨店の中でも確固たる存在感を示しています。
これからも百貨店の殻を打ち破った、新しいスタイルの確立に向け、Mの挑戦は続きます。
※所属部署・担当は、取材当時のものです。

