法務担当──それは会社と会社の未来を守る仕事

新卒で株式会社大丸松坂屋百貨店に入社した岸本。現在は、同社や株式会社パルコなどを傘下に持つJ.フロント リテイリング株式会社に出向し、業務統括部法務部の法務担当としてグループ各社の支援に携わっています。

法務部は株式チーム、コンプライアンスチーム、法務担当の3つのチームで構成され、岸本が所属する法務担当は10人ほど。入社2年目の若手からベテランまで在籍します。法務という部署の特性もあり、他社で法務経験を積んでこられた中途入社のメンバーも多くいます。

岸本 「第一に、会社のビジネスにおいて必須である契約書の審査を行っています。この契約書で会社がやりたい事を実現できるか、リスクヘッジが十分にできているか、という書面上の審査はもちろんのこと、そもそものビジネススキームの適切さ等についても検討しています。

例えば、より低いリスク、より適切な方法で、同等のメリットを実現できる方法があれば、相談者に提案することもあります。

また、各社から相談を受けることも重要な役割です。ご相談事項は、新しいビジネスの導入に関するものから日々の困りごとまで様々です。これに対し、関連する法令を踏まえながら、会社としてのより良い解決策を検討し、相談者に提案しています。

最もボリュームが大きいのは大丸松坂屋百貨店の案件でしょうか。その他、契約に関する社内研修なども行っています」

さらにグループ各社でプロジェクトが立ち上がる際には、法務担当者がメンバーに加わる機会も多くあります。あらゆる企業活動に法律や契約が関連してくるため、この分野を得意とする法務の力が必要になるのです。実際に彼女も、大丸松坂屋百貨店が推進する賃貸借ビジネスのプロジェクトに携わっています。

岸本 「法務部のミッションは『会社の正しい意思決定を実現すること』です。

会社が法令違反をしないことは大前提ですが、それに加えて、『お客様と社会に貢献し、公正で信頼される企業であり続けること』を大切にしています。

例えば、この取組みはお客様からどのように見えるか、また、外部の方々と信頼関係を築いて協力し合うためにどうすべきか、などの視点を持ちながら、よりよい方法を検討し提案しています。このことが、大丸松坂屋百貨店の社是である『先義後利』と『諸悪莫作 衆善奉行』を守り続けることにつながると考えています。

また、各社が新規の取組みを開始しようとする際に『どのようなリスクが想定されるのか』『別のより良い方法がないのか』などを客観的に検討するのも私たちの役割です。 リスクの大小を検討・整理することで、各社が適切な判断をできるようにすることも大切な仕事ですね」

法務部の本質は「会社の正しい意思決定を実現すること」と捉え、グループのビジネスをサポートする中で、「より良い方法や解決策がないか」を考え、提案を行うのが岸本の仕事なのです。

挑戦する社風に惹かれ入社。自身も挑戦の日々

▲入社時に配属された大丸神戸店

大学時代、ゼミで“街づくり”を学んだ岸本。就職活動においても、地域コミュニティの中心的な役割を担う百貨店やショッピングセンター、都市部と居住地を結ぶ鉄道会社をはじめ、人々の暮らしと密接している企業を中心に見ていました。

その中で百貨店は、商品を仕入れて顧客に販売するというビジネスに留まらないことを知りました。大丸松坂屋百貨店でも、売り場の区画をテナントに貸し出す賃貸借ビジネスや、SDGs関連商材や防災備蓄品を扱うBtoBの法人外商事業など、多様なビジネスが存在することに驚かされたと当時を振り返ります。

岸本 「私は大学時代、大阪に住んでいたので大丸梅田店が身近にありました。キャラクターショップなども出店しており、いい意味で“百貨店らしさ”から脱却しようとしているのを感じていて、さらに就職活動でチャレンジングな社風を知って入社を決めました。

きっかけは店づくりやバイヤーといった花形の仕事への憧れでしたが、会社がさまざまなビジネスに取り組んでいるため、自分の可能性を広げられると期待できた点も大きかったです」

2017年4月に入社後、まずは大丸神戸店でリビングフロアの売り場に立ち、2018年3月には同店の営業推進部顧客政策担当に任命されました。きっかけはある日、大丸神戸店で開催されたICT(情報通信技術)の勉強会に参加したこと。百貨店の強みである顧客組織や、システムの活用に興味が湧いた旨を人事に伝えると、さっそく異動のチャンスが巡ってきました。

岸本 「顧客政策担当では、大丸神戸店の顧客データの分析をしていました。具体的には、当社グループが発行するカードのデータから、『顧客数・顧客層がどのように推移しているか』『イベントの結果、顧客層・買いまわりにどのような影響があったのか』といった情報を分析し、店づくりや販売促進の担当に伝える業務です」

中でも大丸神戸店は、当社グループが発行するカードを利用する顧客の比率が高く、分析したデータに重みがありました。たとえば100人の方が神戸店で買い物した場合、その内カード利用者が5人なのか50人なのかで、その分析の持つ意味は異なってきます。

岸本 「データを神戸店の売場づくりや、戦略・イベント企画の立案に役立てられるよう、数字から何が見えるのかを考え、提示することはやりがいがありました」

複雑に絡み合った問題をほどき、解決策を提案することが醍醐味

入社1年目は「大丸神戸店のリビングフロア”のみで世界が完結していた」と当時を振り返る岸本。2年目の顧客政策担当では“神戸店という組織”の中で動くようになり、まずは所属している人を知ることから業務を始めたといいます。

岸本 「組織にいる人と人との関係性がわからず、初めは大変でした。でも、営業部の上長に顧客政策がメインで使用しているシステムの操作方法をレクチャーするなど、今までにないコミュニケーションも生まれて新鮮でした。神戸店の皆さんが優しかったので大きな苦労はなかったです」

そして2020年3月、現在のJ.フロント リテイリングに異動し、今度は業務統括部法務部の法務担当に。岸本は、ここで初めて契約書に向き合いました。

岸本 「しかも案件ごとに様々な知識が必要になるため、日々の学習が必要です。案件に向き合いながら学び、その上で各メンバーが独自に勉強を続けています。1年以上が経過した今も“現在進行形”で慌ただしいですが、私にはこの仕事が向いているのかもしれません」

秩序立っていることが好きな性格で、「法律でどんなルールが定められているのか、実務とどのように関係しているのか」という構造を発見するのが面白いと岸本。「なかなかマニアックですよね。勉強も苦手ではないので、これからも法務で頑張りたいです」と話します。また、面倒見の良い部長から、法律関連の書籍を紹介してもらっては積極的に目を通すなど、周囲のサポートも存分に享受している様子が伝わってきます。

とくにやりがいを感じるのは、法律や契約に関する相談を受け、より良い解決策を提示できた時。案件によっては、前提となる情報が整理されておらず、情報自体が不足していたり、内容が誤っていたりすることもあります。それを丁寧に紐解き、相談者に解決策を提案できた結果、ビジネスが進んでいくことが嬉しいと岸本。

岸本 「『AとBという事象がある場合、Cという答えになる』という場合に、AとBという情報が揃って整理されていれば簡単だろうと思います。

でも『AとBがあるかどうか分からない、情報が整理されていない』状態で、相談が来ることが少なくありません。だから仕事のうち相談者へのヒアリングが占める割合は大きく、可能な限り電話を通して生の声を聞くことを意識しています」

チャレンジする制度や環境は整っている。「自分のやりたいことを考える」

入社から4年が経った今、岸本は「物事を客観的に考えられるようになったこと」が自身の中で大きく変わったと話します。1年目は目の前にいる顧客のため、2年目は大丸神戸店のために行動してきました。そして現在は会社・グループ全体を考える立場に。

岸本 「法務という立場上、ある部署から寄せられた相談に対して『会社全体として見たときに、正しいのだろうか』『関係する別部署との調整が必要ではないだろうか』などと、仕事を俯瞰的に見る1年でした。思考が会社・グループ全体という単位になったことが、今までと大きく異なります」

広い視野を養いつつも、一方で売り場から離れて久しく、より“現場”のリアルな声が聞けるポジションも経験したいと考えるように。そうすれば法務関係の経験がより役立つと考えているのです。こうした異なる立場でのキャリアプランを描けるのも、重要なことだと考えているといいます。

岸本 「今も現場の声に耳を傾けていますが、法務の仕事が机上の空論にならないよう、もっと寄り添った答えとは何かを、考えていきたいです。現在のまま、法務の勉強だけを続けていれば良いとは思っていません。現場との距離を縮めてリアルを理解したいです」

グループ全体としても従業員それぞれが、新しいビジネスにチャレンジしようとする雰囲気を持っており、会社としても実現に向けた制度等が整っているように思うと語ります。

岸本 「『会社で実現したいこと』と『自分の得意なこと』を意識するのが大切かな、と思います。会社では様々な人や部署の協力があって初めて、各ビジネスが成り立つので、自分の『実現したいこと』への関わり方は、幅広い選択肢があると思います。

私は、自分の得意なことがあれば、それを活かすことも大切だと思っています。必ずしも、自身がいわゆる花形の仕事に就くことだけが選択肢ではないと思うので、就職活動や自分のキャリアを考える中では、広い視野で検討するのが大切ではないか、と思います」

社員が得意とする分野を生かしつつ、さらに未知のスキルを伸ばすためのサポートをすることも、会社の重要な役割のひとつだと考える岸本。また、そんなチャレンジングな精神を持つ人間が協力し合い、それぞれのビジネスを成り立たせているのが、まさに大丸松坂屋百貨店をはじめとするJ.フロント リテイリンググループなのです。店づくりを夢見て入社した岸本は、今日も法務の仕事を通して店づくりを支援しています。