「札幌店らしさ」を大事にしながらマーケットの変化にも柔軟に対応
綱島は2022年現在、大丸札幌店の営業1部に所属しています。
綱島 「札幌店の営業1部には売場販売員を含めて約70名ほどが在籍し、札幌店の1階から4階までが担当範囲となります。扱うカテゴリーとしては、化粧品、特選ブランド、婦人雑貨、婦人靴、婦人服、婦人肌着、子供服など多岐にわたり、美、食、雑貨の編集ゾーン『KiKiYOCOCHO(キキヨコチョ)』もここに入ります」
そんな綱島の役職は、戦略・改装スタッフです。
これらすべてのカテゴリーの改装窓口として、新規開拓からオープンサポートまで、一連の流れを担当しています。
綱島 「役職に戦略・改装とありますが、実際の役割としては、改装業務が8割です。改装業務では、まず改装計画を策定し、新規のお取引先様の開拓や出店交渉も行います。決定後には設計の打ち合わせを行い、オープンの際の販促の準備まで担います。改装を実施する際はフロアをまたぐことも少なくありません。そのため、私が入り口になって各フロアのマネージャーと連携し、進めているんです」
綱島は、マネージャーたちと連携し、コロナ渦のマーケット変化にも対策を講じています。
綱島 「業務を進める際は、今のフロアの課題を明確にしつつ、解決策を考えることを意識しています。
そういった中で、現在の大きな課題となっているのは、やはりコロナ禍によるマーケットの変化です。百貨店は今まで、お呼ばれや進物など『ハレの日の需要』に強くて、そこにマッチするショップはとても多いんです。ですが、コロナ禍で外出が少なくなり、家中(いえなか)の需要が増えてきて、今後はカジュアルテイストのショップも増やしていきたいと考えています」
変化するマーケットの中でも、北海道の人たちや札幌らしさは常に意識しているという綱島。
綱島 「札幌店は地域一番店ですから、本州で流行しているものを知りたいというお客様のニーズは非常に強く感じますね。オンラインで購入される方もたくさんいらっしゃいますし、新しいものを求められる方が多いんだろうなと実感しています。
ですが、最先端よりも安定感を求めている方も多いため、トレンドを追いすぎないこともポイントだと思っています。そうしたお客様のニーズをキャッチアップし、また札幌店らしさも取り入れていきたいと考えています」
綱島は、北海道の社会課題の解決のために、一般社団法人で社外活動もしています。
綱島 「『一般社団法人QUALITY HOKKAIDO』にて、北海道の主要企業20社様とともに、北海道の社会問題の解決に取り組んでいます。取り組みの1つである『地域デジタル通貨(コミュニティマネー)』は、もともと私が関心を寄せていたもので、大丸札幌店が運営会員としてリードしているプロジェクトです。
このプロジェクトは、北海道で使えるデジタル通貨を作ることで、北海道の中で経済を循環させていこうというのが目的です。飛騨高山のデジタル通貨『さるぼぼコイン』の開発者の方をアドバイザーにお迎えするなど力を入れています。北海道の経済圏をより豊かで強いものにしていきたいですね」
百貨店や小売の様々な経験を経て、札幌の地へ
もともと服や雑貨が好きだった綱島は、2007年に松坂屋に入社。入社理由についてこう振り返ります。
綱島 「大学時代は金融系企業に興味があって、面接を受けて内定をいただいた会社もありました。ですが、『本当に好きなものはなんだ』と考えたときに、自分が好きな服や雑貨に関わる仕事がしたいと思ったんです。それができるのは小売・百貨店だと思い、松坂屋に入社を決めました」
綱島は入社後、東京の店舗や本社で経験を重ね、ビジネススクールで経営戦略を学んだことで会社の枠組み作りに興味を持つようになったといいます。
綱島 「入社後は上野店と東京店で働き、本社の経営企画室やスタイリングライフHDのPLAZASTYLEへ出向するなど様々な経験をしました。経営戦略の講座も受講し、その経験から“一から何かを作りあげること”や“会社の枠組み作り”に興味を抱いたんです。実現には至りませんでしたが、事業会社設立を検討するプロジェクトに携わることもできました」
入社から約10年たった2018年、もっと現場を知りたいという想いから綱島は大丸札幌店へ異動します。
綱島 「もう一度、一からお客様の顔が見える現場で企画を組んでみたい。そして現場をもっとよく知りたいと思ったことが、異動を希望したきっかけです。販売を通じて好きなものに携われた反面、現場よりも仕組みを作る側、いわば裏側にいることが多かったので、『自分で何かを生み出した、やり遂げた』という経験を積みたいという想いが強くなったんです。
自分の想いを伝えることは大事だと思いますし、大丸松坂屋百貨店にはやりたいことを発言する機会や、それを聞いてくれる環境もあります。私も人事にそういった気持ちを伝えたところ、札幌店への異動が実現しました」
そして綱島は生活の場を北海道に移します。
綱島 「異動によって生活の場を移し、それがきっかけで札幌、そして北海道が大好きになりました。ローカルならではの魅力と、存在価値を唯一無二の視点で発信していくことが、私の大きなミッションです」
スピード感×深掘りで成功させた「キキヨコチョ」の立ち上げ
大丸札幌店に異動後、綱島が携わったのが、キキヨコチョの立ち上げに関わるプロモーションです。
綱島 「私が本社で勤務しているときから、キキヨコチョの立ち上げは進められていて、おおむね形はできていました。私はそのプロモーション担当をすることになり、役割としては『お客様に継続的に愛していただくためには何ができるのか』を考えながら実際に運営することでした」
プロモーションでとくに意識したのは「インサイトの深堀り」です。
綱島 「キキヨコチョは、美、食、雑貨のカテゴリーミックスのゾーンです。そのため従来のように年齢やテイストの軸でフロアを区切らず、お客様個人がどのように感じ、何を思っているかという、つまりインサイトを深掘りして作られた売り場です。
キキヨコチョのコンセプトは、『ワガママ女子のための横丁』。いっぱい食べたいけれど太りたくない、流行のものを身につけたいけれどみんなと同じはイヤなど、相反する女子のインサイトを肯定し、いろいろな想いを持つ人に向けて、いろんなニーズを満たすゾーンです。
このようなインサイトを探す中で、北海道の方は今どんなことを思っているのか、どんなものに興味があるのか、本当にやりたいのかなど、さまざまなアプローチを考え、プロモーションを進めました」
同時にスピード感を持って取り組めた点が、プロモーション成功にもつながったと綱島は感じています。
綱島 「プロモーションでは、Webクリエイターのパントビスコさんを起用した『パントビスコ展』も開催しました。これは販促メンバーから教えてもらったのですが、面白そうだと思って、すぐに企画案を立て、東京の先方オフィスへ提案にいき、お願いして実現することができた企画です。パントビスコさんは、女子のいろんな側面・インサイトを表現していらっしゃるので、今回のプロモーションにぴったりだったんです。
実際にトークショーも物販も完売御礼で、『本当に札幌でパントビスコに会えるの?』『待ってました!』などの声がSNS上でも多く、それに応えられたのはすごく嬉しかったですね。他にも、立ち食い梅干し屋やDJイベントなど、『百貨店でそんなことやるの?』というような面白いこともできたので、大きな達成感がありました。スピード感=熱量だと思っているので、素早く行動することを常に意識したことで、これらの企画実現につながったと思っています」
この経験は現在の仕事にも活かされている、と綱島は語ります。
綱島 「人のインサイトを深掘りして、いろんな側面から見たことで、より幅広い視点で改装業務に取り組めるようになったと思います。お客様がいらっしゃったときに、どんなものをどう買うのかを意識して、動線やお取引先様についても深く考えるようになったのは収穫です。より『北海道の人とは』を深く考えるようになったので、良い売り場を目指すきっかけになりました」
11年目の遅咲き──土台があるからこそ新しいことにも挑戦できる
キキヨコチョの立ち上げに関わった経験は、綱島に新たな視点とやりがいをもたらしました。
綱島 「キキヨコチョのプロモーションでは、お客様に喜んでいただくため試行錯誤を重ねてきました。大変なこともありましたが、オープンのときにお客様が走ってきてくださるのを見て、泣きそうになりましたね。こうしたお客様の反応を実際に目にして、『ああ、やってよかったな』と大きなやりがいを感じたんです」
キキヨコチョで大きなやりがいを得た綱島は、次のビジョンをこのように描いています。
綱島 「キキヨコチョみたいな形で、改装・プロモーションも含めたフロア作りにチャレンジしたいと思っています。単に物を売る画一的なフロアではなく、お店を『メディア化』するようなイメージで、メッセージ性を伝えられるフロアを作りたいですね。お客様に、『このフロアは私のフロアなんだ』と感じていただけるようなイメージです」
およそ10年の土台作りを経た、新たなチャレンジ。これまでに葛藤もありましたが、綱島の大きな支えとなったのは関わった人々の言葉でした。
綱島 「要所要所で上司や周りの人にかけていただいた言葉は、すごく私の心に残っています。たとえば、自分の中で自信をつけたいという理由から、MBAを受講したいという話を上司にしたことがあるんです。その際に『MBAは自信をつけるためにやるのではない。PDCAを回していくことで自信につながるんだよ』といわれて、ハッとしたことがあるんです。そういった上司の言葉は、『これはやってないからやってみよう』とか『いいと思ったら、まずははじめてみよう』という指標になりましたね。
そのおかげで継続して頑張ってくることができましたし、そういう言葉が残っているからこそ、やったことのないものへのチャレンジの原動力になっていると思います」
大丸松坂屋百貨店では、若手だけでなく綱島のような中堅社員に対しても、たくさんの機会を与えてくれる環境が整っているといいます。
綱島 「これだけ機会を与えてくれる会社って、本当に珍しいと思います。やろうと思えば新しいことにトライできる。大丸松坂屋百貨店へ入社する若いメンバーの方々には、こうした環境があることをぜひ伝えたいですね。私は遅咲きだったと思いますが、会社に様々な機会を与えてもらって、ここまで来られました。
若手の頃は、どちらかというと考え込むタイプでしたが、札幌に行く機会を与えられたことで、たくさんの気付きがあって11年目にして新しいことにチャレンジできました。スピード感を持って、アウトプットできるようになるなど、自分自身の大きな変化も実感しています」
年齢に関係なく自ら行動を起こせばチャンスがもらえる──それが大丸松坂屋百貨店です。これまで培ってきた経験を活かし、綱島は今後も新たな挑戦を続けていきます。