より良い未来の実現に向けた、挑戦と持続的成長への道筋
社会課題が複雑化し自然災害が激甚化するなど、より高度なリスク対応が求められる中、安全・安心で豊かなサステナブル社会の構築に貢献するべく、アジア航測では2023年9月に長期ビジョンと中期経営計画(以下、中計2026)を新たに策定しました。
畠山:長期ビジョンは2023年10月〜2033年9月までの10年間を対象としたもので、「空間情報技術で社会をつなぎ、地球の未来を創造する」とのミッションステートメントのもと、当社がめざす姿を明らかにすると共に、財務・非財務の両面で具体的な数値目標を設定しています。
一方、中計2026が対象とするのは、2023年10月〜2026年9月までの3年間です。長期ビジョンの第一フェーズと位置づけ、「事業ポートフォリオ経営の確立」「多様な人財が集まる企業グループの形成」をテーマに5つの重点施策を示し、既存事業と並行して新規事業に本格着手しながら、人的資本投資と多様性を受容する風土・制度づくりに向けて取り組むことを指標にしています。
臼杵:長期ビジョンと中計2026を策定する上でベースとなっているのが、今後10年のあいだに起こる出来事をまとめた「未来年表」です。社内に部会を設置し、経営理念に則り、「無人航空機レベル4飛行」「日本人口1.2億人を切る」といった技術動向や課題にどう対応していくべきかについて議論を重ねながら事業展開を検討してきました。
経営陣として長期ビジョンと中計2026の策定を主導してきた畠山と臼杵。それぞれが組織の方向性を示す指針に込めた想いについてこう話します。
畠山:当社ではこれまで、空間情報技術に代表される「測る技術」を軸として事業を展開してきました。ミッションステートメントには、先人たちが築き上げてきたそれらの技術や事業を基盤に、過去と現在、未来をつなぐ地理空間情報を核に据えてさらに技術を深化させ、新たな価値創造に挑戦し続けるとの強い意志が込められています。
私は高専を卒業後に1996年に中途入社し、事業部長、常務取締役などを経て2021年に代表取締役に就任しました。そんな異色の経歴も影響してか、これまでのキャリアでは、どちらかというと新しい取り組みや変革に対して積極的な立場を取ってきたと思います。
しかし、これからの10年においては、過去と未来をつなぐ橋渡しとしての役割も担い、お客様、株主、パートナー、地域社会、そして従業員と共に、豊かで楽しく、安全な地球の未来づくりに貢献していきたいと考えています。
臼杵:私は、この会社を元気にしたいという強い願いを長期ビジョンに込めました。会社が元気になることが、日本を活性化させることにつながり、それが世界の直面するさまざまな問題の解決に貢献すると信じているからです。
また、中計2026にはさまざまな挑戦を盛り込んでいます。攻めの未来像を描くことができたのは、新しい取り組みに前向きな代表がいるからこそ。そうした組織風土のもと一つひとつの目標に取り組み、うまくいかなければ見直して、何度でも再挑戦していきたいですね。
「両利きの経営」でめざす持続的な成長戦略
中計2026では、「事業ポートフォリオ経営の確立」がテーマのひとつに設定されました。その背景について畠山はこう説明します。
畠山:国土強靭化、インフラDX、安全保障など国の政策が追い風となって事業量が大幅に拡大しているいまこそ、未来を見据えて種蒔きをするべきときです。ビジネスモデルの多様化に向けて事業ポートフォリオを強化し、積極的な成長投資を行うのに最適なタイミングだと考えています。
もちろん、それができるのは既存事業があってこそ。主要分野事業の成長・生産構造改革と同時に、新規事業への本格着手をめざす「両利きの経営」の実現をめざし、最先端技術を活用した省人化・自動化による生産性の向上や、コア技術の確実な伝承と研さんにも力を入れていく予定です。
臼杵が本部長を務める事業推進本部配下の社会インフラマネジメント事業部でも、さまざまな新事業が進められています。「グリッドスカイウェイ有限責任事業組合」への参画もそのひとつです。
臼杵:無人航空機がレベル3やレベル4の飛行が可能になることを受け、グリッドスカイウェイでは、ドローンが安全に飛び交うための航路として有力視されている電力設備の上空などに全国共通の「ドローン航路プラットフォーム」を構築し、労働力不足や自然災害対策をはじめとするさまざまな社会課題の解決に向けて検討しています。ドローンの活用拡大に対する期待は今後さらに高まってくると考えられ、当社の空間情報技術を活かして、全国の送電線上のドローン航路整備に向けて検討を進めています。
統計学的に、新規事業の成功確率は10%未満。その上、プロジェクトの規模が大きくなるほど多額の投資がともないます。事業参入には慎重な経営判断が求められますが、畠山は既存事業の深化の重要性を認識しつつも、「おもしろいほう」に挑戦する意義を説きます。
畠山:当社では公共事業を数多く手がけるなど、堅実な分野で実績を重ね成長してきました。これからも引き続き主要分野事業に軸足を置くことに変わりはありませんが、新しいアイデアにも取り組める環境づくりにも注力していく方針です。
やはり私は、社員みんなに楽しく仕事をしてもらいたいんです。アイデアを出し合って、おもしろそうだと感じたことで盛り上がって、それが新たな事業となっていくような後押しがしたい。私のように外から入ってきたメンバーも、年齢の若いメンバーも、いろんな発想を出し合える環境が理想的だと思っています。
臼杵:そうですね。お客様からいただいたお仕事だけでなく、自らのアイデアで仕事の幅を広げられるのはとてもおもしろいことですから。私自身もそうしたチャレンジをしてきましたが、若い方々はさらに柔らかい発想を持っていると思うので、積極的に意見を集めていきたいですね。
畠山さんは事業部長時代から「まずはやってみよう」と言ってくれることが多かったですし、うまくいかなかったら一緒に頭を下げにいってくれるような人でしたから(笑)。失敗を恐れず、挑戦を応援していくような風土は今後も高まっていくのではないでしょうか。
畠山:重要なのは守りと攻めのバランスですね。いまあるものを大切にしながらも、新たな機会を社員に進んで提供することが、持続的な成長には欠かせないと考えています。
人的資本戦略による多様性の促進を。付加価値を生み出す組織づくりに向けて
「事業ポートフォリオ経営の確立」と共に中計2026のもうひとつのテーマとなっているのが、「多様な人財が集まる企業グループの形成」。重点施策として「積極的な人的資本投資(育成・採用)と多様性を受容する風土・制度づくり」が挙げられています。
畠山:無形の商品やサービスを扱うことが多い当社では、知識や経験豊富な特定の技術者に業務が集中する傾向があります。入社以来、私はこうした状況を解消し、チームやグループが効率的に機能する組織体系の構築に努めてきました。
また、社会課題が複雑化する現代において、企業の成長には多様な価値観の融合が不可欠です。年齢、性別、国籍、バックグラウンドの異なる多様な人材が、それぞれのスキル、知識、経験を活かし、付加価値を生み出せるような環境づくりをめざしています。
一方、これまで多くの災害対策の現場で活躍してきた臼杵。自身の経験を振り返りながら、人的資本経営の実現に向けて、社内の人材交流の重要性を強調します。
臼杵:富士山の大沢崩れや雲仙普賢岳の溶岩ドームの挙動など、そのような現場がどんな状況でどのような対策が行われているのかなど、他部署の社員にも知ってほしいと思っています。現時点では部署間での情報交換を促進するためのプラットフォームがないため、そういった交流ツールもできたら良いなと。
畠山:雲仙普賢岳の写真を見ましたが、あれはすごいですよね。巨大な転石がゴロゴロ積み重なって、通常は立ち入り禁止になっているような山頂部の区域を調査するんですから。私はどちらかというと情報システム分野でキャリアを歩んできたので、現場に行った経験はほとんどなく、率直に驚きました。
臼杵:同じ会社にいながら、まったく知らない世界で仕事をしていたりもするので、お互いのことを知ることは大事ですよね。私たち現場技術者が、データ集計の方法など情報システム分野を担うメンバーから学ぶことも多いはず。これまでの業務のやり方を変える、DXにもつなげられるはずです。これも新しいチャレンジですよね。社会インフラマネジメント事業部では、社員が自身の業務内容について互いに発信する取り組みを始めていますが、そうやって社内の交流を深めていくことは、人的資本投資の観点からとても有意義だと考えています。
安全・安心で持続可能な社会の構築をめざして。社内外に向けた広報活動にも意欲
社会インフラマネジメント事業部在籍時に新たな事業分野を開拓した畠山。同事業に携わるメンバーに向けて、こんなエールを送ります。
畠山:特定の事業に肩入れするわけではありませんが、以前、私がゼロから立ち上げたDS(Defense and Security)事業には特別な思い入れがあります。私が担当していた当時は赤字続きで、経営陣を説得しながら事業を継続していた覚えがありますが、地道に事業を続け、顧客との信頼関係を築き、時代も徐々に国防に対する意識が高まってきて、事業が大きく成長する環境が整いました。
中計2026の中でも成長・変革分野と位置づけ、IT・DX戦略の一環として「DX5カ年計画」を策定し、「各種施策実行」「DX認定の維持」「DX認定事業者として先進的な取組みの推進」に取り組むことを明言しています。時代の追い風を受けて、さらに飛躍していきたいですね。
また、中計2026では、「流域マネジメント事業」「森林・環境事業」「道路・鉄道事業」「エネルギー事業」「行政支援事業」の5つを重点分野として挙げていますが、これらすべてが成功するとは限りません。それぞれが補完し合いながら成長していけたらと考えています。
新たな長期ビジョンの実現をめざして走り始めたアジア航測。住みよい地球の未来づくりに向けて、ふたりは次のように抱負を述べます。
畠山:数値目標を達成することもさることながら、まずは中計2026を社員一人ひとりが私たち経営陣の想いとめざす方向性を理解し、それぞれが十分に納得した上で、各自の目標へと落とし込んでもらいたいと考えています。
臼杵:私が長く携わってきた防災分野における空間情報技術の活用は、日本の国土防衛に関する技術にも幅広く応用できると思います。安全安心な国土づくりをめざすという点で両分野は共通しています。これからも安全・安心で持続可能な社会づくりに貢献していきたいです。
また、当社が幅広く事業を手がけていることを社内外に広く伝えていきたいとも考えています。先日、関ヶ原の合戦をバーチャル空間上に再現する番組がNHKで放送されていました。当社独自の開発による新しい地形表現技法「赤色立体地図」をベースにした興味深い内容でしたが、当社が扱う基盤技術やデータをこうした広報活動にも今後は積極的に応用していきたいと考えています。
※ 取材内容は2023年12月末時点のものです
