AI研究室が挑む未踏の領域。新しいビジネスパラダイムの実現に向けて
2020年に発足した先端技術研究所 AI研究室の2期目から室長を務める角田。社内研究のマネジメントや社内生産効率化の研究など、幅広い業務を担っています。
「当室は現在、私を含むエキスパート2名、大学でAIを専門に学んだ若手1名、新入社員1名という構成です。若手社員がAIの専門的な部分を担当していますが、写真測量やリモートセンシングの分野はニッチな領域ですからAIを適用した事例がまだまだ少なく、長年この業界に携わってきたベテランの経験や知恵と新技術を融合させながら取り組んでいます」
中でも、いま角田が中心となって進めているのが、深層学習を用いた衛星画像の超解像技術の開発です。
「超解像とは解像度の低い画像ではうまく表現できない細部情報を復元する技術のことで、テレビや映像の世界で発展してきたものです。高度数百km以上の上空から撮影する人工衛星の画像では見えない道路標示の矢印記号なども、高度数千mから撮影する航空写真では読み取ることができます。そこで当社では、 深層学習を利用することで衛星画像をもとに航空写真のような自然な画像を生成する取り組みを2021年から進めてきました。
学習にもとづいて細部を復元していくため、生成された情報は必ずしも正しいとは限りません。インプットする情報量が不足しているため、完成度を高めていくのはこれからですが、手ごたえは感じています。今後、安全保障や農業、環境といった幅広い分野への適用が期待されている状況です」
最先端のAI研究に携わる中で、角田は大切にしていることがあります。
「ひとつは、年齢や経験を問わずにアイデアを取り入れること。年功序列で上の人がすべてを取り仕切って指示出ししているような時代ではありませんし、私自身がAIの専門家ではありませんから、幅広く意見を募っています。さまざまなアイデアや提案を検討することで良いものが生まれると考えているので、多くの声に耳を傾けながら、そこから学ぶ姿勢を大事にしています。
もうひとつは、開発した技術を社内の他部門に導入するだけでなく、使いこなせるようサポートすること。つくりたいものをつくるのではなく、利用価値があるもの、使いやすいものを開発することが私たちの果たすべき責務だと考えています。
研究所は間接部門であるため、やっていることが他の部門にも公平に貢献できること、あるいは会社全体のアピールになるなどプラスの効果をもたらすべきだと考えているからです。多くの人に利用されることでブラッシュアップされどんどん良いツールになっていきますし、それが新しいアイデアに結び付く可能性もあります」
リモートセンシングを軸に歩んだキャリア。プロジェクト一つひとつが成長のきっかけに
「実家が青森でしたので、子どものころは、幼なじみと山肌が剥き出しになった斜面を登ったり雑木林を歩いたり、冬に雪でかまくらを作ったり神社の急な階段をソリで滑り降りたり、外で遊ぶことが多かったです。卓球と水泳と長距離走が得意でした。今でもスタミナのあるほうだと思います。小さいころから、頑固だとか真面目だとか努力家と言われていました。それは今でも変わらないと思います」
大学院で情報工学を専攻した角田。研究室で学んだ衛星リモートセンシングの知識が活かせる環境を求めて選んだのがアジア航測でした。
「情報工学を専攻したのは、大学進学時にこれと言って何かやりたいことがあったわけではなく、高校時代の友人が『これからはコンピュータの時代になるから情報工学に行った方が良い』と言ったからでした(笑)。最先端技術を好むようなタイプではなく、大学に入るまでパソコンを触ったことがありませんでした。
研究テーマも衛星画像を使ったものだったので、衛星画像を使う仕事ができたらと思っていました。ただ当時は就職超氷河期。贅沢は言えない状況だったので、就職させてもらえるならば入った先ではどんなことでもやるつもりでいました」
学生時代に角田がもうひとつ注力して取り組んでいたのがプログラミング。必要に迫られて始めたものでしたが、入社後はその技術を活かしながら業務の幅を広げてきました。
「情報工学科なのでプログラムくらい書けなければと、専門書を買ってきて本に書いてある通りに打ち込み始めました。するとこれがおもしろくて……!どんどんのめりこんでいきました。
入社当時、私が任されていたのは、磁気テープから衛星画像データを読み出し、コンピュータに転送してデータベース化し、検索ソフトを作成する作業でした」
最初はプログラミングスキルを軸に、着実に社内でさまざまなプロジェクトに関わりながらキャリアを積み、一方では2016年からAIを活用した社内生産効率化の研究にも携わってきた角田。
幅広い領域の仕事に携わり、コア技術を担い続ける醍醐味をこんな言葉で表現します。
「以前、新旧2枚のデジタル写真画像を比較して変化した箇所を自動抽出し、経年変化をモニタリングしたりできる当社の生産ツールとして自社開発したソフトウェア『判読名人』を使って、お客様に販売するシステムを改良したことがありました。また、監視カメラを使って火山の噴石物の落下地点を推定するシステムの開発を担当したこともあります。
私が携わってきたそれらの仕事の多くの軸になっているのがリモートセンシングの技術。ひと口にリモートセンシングといっても種類はさまざまで、地球レベルの範囲を観測できるものもあれば、都市の細かいところを見るものもあります。
中には私たちの可視域を超えて、植物や鉱物の種類を見分けられるようなものも。新しい業務を担当するたびに勉強し、先端技術も取り入れながらお客様のニーズに応えようと検討を繰り返してきました。そうやって努力を重ね、成果につなげてきたことが私の人生の中でも大きな財産になっていますね」
使ってもらえるより良いものを。誰かの役に立ちたいという想いが原動力に
このように、ここまで長くリモートセンシングに携わってきた角田は、技術や組織の移り変わりを間近で見てきました。
「以前、衛星画像から特徴量を抽出するための処理方法はすべて人が考えていました。これが機械学習の発展と共に人の手を離れ、深層学習が進化を遂げて現在に至っています。
また、 衛星画像から土地被覆などをマッピングする研究を長く続けてきましたが、近年、AI技術が急速に発達したことで業界が劇的に変わろうとしています。近い将来、これまで私たちが苦労して取り組んできたことだってAIが簡単にやってのけるようになるかもしれません。
研究所や顧客業務を手がける部門を何度も行き来する中で、組織の変遷も見てきました。とくに、研究所は他部門とずいぶん歩み寄りながら連携を強化するようになってきていると感じます」
そんな角田がこれまでを振り返ってとくに貴重な経験だったと話すのが、一般財団法人宇宙システム開発利用推進機構に出向したときのこと。当時をこう振り返ります。
「国産衛星データのアプリケーション開発の発注先への出向でした。 当時はちょうど東日本大震災があったころ。衛星打ち上げが延期されたことを受け、衛星に搭載するはずだったセンサーを他国の衛星に搭載させてもらうよう働きかけたことがありました。相手国の政府の方と打ち合わせをするなど、アジア航測内にいるだけではできないことをたくさん経験できたと思います」
幅広い事業領域に精力的に取り組んできた角田の原動力となってきたのは、誰かの役に立ちたいという想い。とくに印象深い出来事があると言います。
「航空レーザー測量のレーザー光は、建物や樹木にも反射して戻ってきます。そのため、地表の高さを示したい場合は、それらの高さを除去するフィルタリングという処理が必要です。
以前、この作業はすべて人の手で行っていたのですが、たいへんな時間と労力がかかっていました。そこで、2016年末から深層学習を使って自動的にフィルタリングする社内ツール の開発を進めていたんです。
私がその仕事を引き継いだのは出向から戻った後でしたが、着手してから半年後にはリリースすることが決まっていたんです。無事にリリースまではできたものの、性能には多くの課題が残ったままでもあり、なかなか生産の現場で使っていただくことのできない状態が続いていました。
その後、データを追加したりアルゴリズムを変更したりを繰り返すうちに精度が向上し始めて、結果的に、『これは使えるね!!』と生産現場から言ってもらえたときは、本当に大きな手ごたえを感じました。
技術的なことや数値的な目標を達成することが次の仕事へのモチベーションにつながることももちろんありますが、そうやって、自分たちの開発した技術が誰かの役に立てるという実感が一番のやりがいになっています」
技術の進化に合わせて組織が成長できるよう、技術研究の面からのサポートを
今後はアジア航測にとって軸となる技術にますます磨きをかけていきたいと話す角田。一方で、同社の技術や活動の周知にも力を入れていくつもりだと言います。
「今もこれからも、当社にとって核となるのはやはり航空レーザー技術です。先ほどお話ししたフィルタリングの技術もようやく使ってもらえるようになってきましたが、導入したまま放置していればすぐに停滞してしまいます。AI技術の台頭により、新しい技術が過去のものとなるスピードが驚くほど早まりました。主幹技術の向上にますます努めていきたいと考えています。
一方で、社内で役に立っているということはとてもうれしいことなのですが、AIによって誰かの仕事が奪われるということも考える必要があると思っています。仕事が楽になる分、手作業ならではの丁寧さが求められる他の価値について社内の人たちと一緒に考えていきたいと思っています。
また、リモートセンシングや写真測量といった技術は、一般にはあまり知られていないかもしれませんが、このニッチな業界について学生の方にもまずは知ってもらい、未来を担う技術開発者に私たちの仲間となってもらうためにも、引き続き学会や展示会、セミナーなどで、当社の技術や活動を積極的にアピールしていきたいです。
取得したデータや仕事の成果が政府の事業などに活かされるなど、社会的貢献が高いプロジェクトに関われるのが当社の強み。やりがいを感じながら取り組める仕事があることを伝えていけたらと思っています」
※ 記載内容は2023年9月時点のものです
