伝えたいのは、空間情報の可能性。次世代を担う学生とともに考える、社会実装の未来
アジア航測では、2022年から産学連携の取り組みの一環として、大学生向けに空間情報をテーマとしたワークショップを実施。航空測量業界の動向や技術的特徴、社会的インパクトについて、実践的なテーマを通じて理解してもらうことが狙いです。
瀨川:2026年現在、日本大学と大阪経済大学の2校で開催しています。日本大学では、複数の研究室に所属する3年生を対象とした2日間・計6時間のプログラムで、1日目は空間情報技術の解説、2日目はグループワークによるディスカッションと成果発表という構成です。大阪経済大学では、この構成を1日で4時間に凝縮して実施しました。
「空間情報技術によって社会課題をどう解決するか」という問いを軸に据え、毎回テーマを設定し、グループごとに議論しながらアイデアを磨き上げ、全体に共有するという流れで進めています。
ワークショップの進行役を務めるのは、入社3〜5年程度の若手技術者です。現場感のある議論が生まれるよう、参加するメンバーの専門領域と関連するテーマを設定しています。
空間情報技術センターで主に航空測量業務に携わる3人。同ワークショップには、運営の中軸を担う立場で関わっています。
瀨川:第1回のワークショップにテーブルファシリテーターとして、第2回は総合ファシリテーターとして参加し、その後は2025年の第4回まで、日本大学でのワークショップにアドバイザー的な立場で継続的に関わってきました。大阪経済大学での第1回開催時にも、同様の立場で参加しています。
内山:私は2024年の日本大学での開催時に総合ファシリテーターを務めました。司会進行やワークショップ全体のタイムマネジメントなどが主な役割です。
藤原:私が参加したのは、大阪経済大学でのワークショップです。2024年から参加し、2025年に総合ファシリテーターを務めました。
専門性と情熱が生み出す、新たな創造の場。三者三様の個性が、ワークショップを動かす
それぞれ異なる分野でキャリアを歩む3人。学生時代の専攻も、アジア航測を選んだ理由もさまざまでした。
瀨川:大学では交通土木を専攻し、自動車交通・鉄道・航空・海運など、交通分野に関わる幅広い技術体系を学びました。実は、私はワークショップを実施している日本大学の研究室のOBなんです。アジア航測に入社した先輩方と話す機会があり、業界の話を聞くうちに興味を持ち、入社を決めました。
藤原:大学では建築・都市デザインを学び、測量系の研究室に所属していました。航空写真撮影やドローンによるレーザ計測で取得したデータを解析・加工し、研究に活用していました。アジア航測を知ったきっかけは、研究室OBの当社の先輩です。業務内容が自身の研究テーマと重なる部分も多く、自然な流れでアジア航測を選びました。
内山:私は農学部で森林科学や農村社会学を学び、修士課程では森林政策学や農村社会学などを研究していました。私がアジア航測を知ったのも、当社に入社したOBの影響です。学生時代は登山が趣味で、地形や地図、空間情報への関心から入社を決めました。
3人がワークショップに関わるようになった当時の心境を、こう振り返ります。
瀨川:上長から「この研究室のOBだよね」と声をかけられたのが最初でした。企画の内容を聞いて興味を持った一方で、「学生時代の自分だったら、こんな難しい課題に取り組めただろうか」と思ったのを覚えています。
内山:自分がこれまで参加したことのないタイプのプログラムでしたし、当時は測量系の学生さんがどの程度の前提知識を持っているのかもわかりません。不安はありましたが、それ以上に「空間情報のおもしろさや社会的な意義を知ってもらいたい」という思いがありました。
藤原:私も、空間情報が社会にどう役立っているかを広く伝えていく必要があると感じていました。こうしたプロジェクトに参加できるのは、若手のうちだけです。とても前向きな気持ちで参加しました。
3人の中で最も早く、立ち上げ期からワークショップに関わってきた瀨川。前例のない取り組みを、手探りで形にしてきました。
瀨川:アジア航測では、産学連携によるワークショップの前例がなく、まさにゼロベースでのスタートでした。資料作成やタイムスケジュールの設計、プログラム全体の構成づくりなど、すべてを一から組み立てる必要があり、そこが一番苦労した点です。
第1回目のテーマは「共働き世帯における子育て負担」。保育園の立地や子どもが安心して過ごせる場所など、子育て支援に関する情報を整理し、空間情報として可視化した「子育てマップ」を学生さんに作成してもらいました。
2回目以降は、初回で見えてきた課題や改善点を踏まえながら、プログラムを更新しています。第1回の成果をベースに、毎年ブラッシュアップを重ねているイメージですね。
一方通行ではない、学びの交換。対話を通じて磨かれる発想、広がる視野
瀨川の後を継ぐ形で、日本大学での第3回ワークショップの総合ファシリテーターを務めた内山。従来の枠組みを踏まえつつ、独自の視点でプログラムをアップデートしました。
内山:私が担当した回では、具体的なテーマを決めず、学生さん自身に、空間情報技術を使って、自分たちにとって身近な社会課題をどう解決できるか考えてもらいました。
成果を最大化するには、緻密なプロセス設計が欠かせません。スケジュール管理と進め方の説明は、できるだけシンプルでわかりやすく伝えることを意識しました。
一方、ワークショップにはこれまでに2度参加している藤原。段階的に関わりながら、役割を広げてきました。
藤原:2年目に初めて企画と進行を担当しました。テーマは「山」。山岳地域に関わるさまざまな社会課題を、空間情報技術でどう解決できるかを検討してもらいました。
大阪経済大学は文系の学生さんが中心で、測量、とくに航空レーザ測量や空中写真に触れた経験がない方がほとんどです。専門的な内容をどう噛み砕いて伝えるかは、かなり試行錯誤しました。
ワークショップでは、3人は次世代人材を“育てる”側。しかし学生と向き合う中で、刺激を受ける場面が少なくないと言います。
内山:学生さんは理解が早く、こちらが説明した内容をすぐに吸収してくれます。議論も非常に活発で、短時間でスライド資料をまとめ上げるアウトプットのスピードにも驚きました。
藤原:測量の知識は私たちのほうが詳しいですが、文系の学生さんならではの視点や発想はとても新鮮でした。枠にとらわれないアイデアが出てくるのは刺激的ですし、視野が広がる感覚があります。
瀨川:私も学生さんの発想や表現方法に驚かされました。とくに発表資料のつくり方やプレゼンテーションの構成には、学ぶべき点が多いと感じます。社内発表やお客さまへの説明で彼らの表現の仕方を参考にするなど、ワークショップは私たちにとっても学びの場になっています。
日々の業務と並行しながらワークショップに取り組んできた3人。学生に近い世代だからこそ、その言葉には高い熱量とリアリティがにじみます。
瀨川:2025年は「卒業研究」をテーマにしました。卒業研究には必ず未解決の問いが残ります。社会課題という切り口から、研究テーマを深掘りしてもらいたいと考えたからです。3年生の段階で卒業研究に触れることは、4年次の研究の質を高めることにつながります。学びのプロセスそのものを前倒しで体験してほしいという意図がありました。
内山:私は、限られた時間の中で考え、形にする経験を学生さんに積んでほしいと思っています。ワークショップはテンポが速く、「考える→共有する→整理する→発表する」サイクルを短時間で何度も回します。自分自身も新入社員時代に似た研修を受け、その経験が仕事の基礎になりました。あの感覚を、彼らにも体験してほしいんです。
藤原:私も新入社員の頃、短い時間でアイデアを出す経験をしました。それが今でも役立っています。大学生のうちから、こうした議論や思考の訓練を経験できるのは大きいと思います。ワークショップが、成長のきっかけになればうれしいですね。
産学連携で養われる実践知。共創の経験を糧に、次のステージへ
ワークショップは、自分たちにとっても学びや成長の場に。この取り組みのやりがいについて、3人は次のように語ります。
内山:大勢の学生さんを前に話す機会はとても貴重です。相手が知りたいことを踏まえながら、自分たちが伝えるべき内容を整理していくプロセス自体が、コミュニケーションの質を高める訓練になっています。
藤原:私も、コミュニケーション力が鍛えられる点に魅力を感じています。ひとりで完成させられる仕事はほとんどありません。先輩や同期に相談しながらプログラムを形にしていく過程は、チームで成果を出す感覚を養うきっかけになりました。
また、所属部署以外からサポートメンバーを招き、他分野の技術紹介を聞く中で、新たな視点を得られたことも印象的だった点です。部門の垣根を越えた知見の共有という意味でも、有意義な場だったと思っています。
瀨川:総合ファシリテーターの役割を通じて、プレゼンテーション・資料作成・他部署との調整・スケジュール管理など、多様なスキルを横断的に経験できます。積極的に関わることで、必ずキャリアの糧になるはずです。
ワークショップを通じて確かな手ごたえを得た3人。視線はすでに、その先に向いています。
内山:ワークショップで自分の仕事について語る中で、「この業務にはこんな可能性がある」と話をしたことがありました。自分自身もあらためて、今取り組んでいる仕事の価値を再認識できた気がしています。
この経験を活かし、お客さまとの打ち合わせでも、仕事の魅力や可能性を印象的に伝えていきたいですね。
藤原:ワークショップには、実務の予行演習のような側面もあり、若手のうちにこうした経験を積める意義は大きいと思います。私も瀨川さんと同じく測量系の研究室出身です。将来的には自分の母校でも、こうした機会をつくれたらと考えています。
瀨川:航空測量や空間情報の仕事は、社会を支える基盤のひとつでありながら、まだ十分に知られていません。業務領域は幅広く、私たちの仕事は日常のさまざまな場面を支えています。その価値が広く伝われば、企業としての魅力もより明確になるはずです。ワークショップの内容をさらに磨き込み、認知の拡張につなげていきたいですね。
※ 記載内容は2026年1月時点のものです
