地方創生の切り口から事業を行う新組織を立ち上げ、自治体との共創事業がスタート
吉田は現在、アデコ株式会社の人財派遣およびアウトソーシング事業のブランドであるAdeccoにて、キーアカウント事業本部 ソリューションセールス事業部 ソーシャルイノベーション課の課長として、社会変革を目的とした事業に携わっています。これは2022年11月にアデコ株式会社へ入社した際に、地方の持続可能なあり方を、民間資本を活用したサービスとして地域課題の解決を推進したいという吉田自らの考え方が組織に浸透し実現したものです。
「現在は、東京都事業や地方自治体との共創事業を平行して推進しており、業務の一環として、地方の人口減少に起因する課題解決に取り組んでいます。
デジタルトランスフォーメーション(DX)が進むことで起きる働き方などのパラダイムシフトを通じてさまざまな課題を解決に導くことが、将来における持続可能な地方創生につながるのではと考えています」
入社から組織の立ち上げまでの約1年半、吉田はソリューションセールス事業部で、公共事業の受託を主要業務として、DX化や女性活躍推進等の課題に取り組んできました。地方の人口減少に対処するにあたっては、外国人財の受け入れなども含め、さまざまな課題があります。そこで、地方創生に対してアデコらしい貢献ができないかと上長と共に考え、地域の課題解決のパートナーになって伴走していく、ソーシャルイノベーション課が生まれたのです。
「ソーシャルイノベーション課は、アデコの中から地方創生に意欲的な社員が参画しているほか、公務員経験を持つ社員など、現在は私を含めて総勢15名で構成されています」
業務の半分は、東京都からの受託案件であり、そこでの経験や知見を地方での活動に活かしていきたいと考えています。共創事業としては、地方自治体の職員さんとの信頼関係の構築に成功し、DXの推進やデジタル人財の育成に関して、滋賀県長浜市、愛知県長久手市、高知県と協定を結ぶに至っています。
それぞれの自治体が抱える課題は、地域によってさまざまだと吉田は言います。
「たとえば女性活躍支援事業に携わっている地域では、リモートワークでできる仕事を通じた女性の働き方の拡大や生きがいの創出を図っています。
また、業務の繁忙により、職員がなかなか現場に赴けない地域では、業務状況を改善するためにDX化を推進したり、職員が地域に出向けるマインドセットを含めた働き方改革に取り組んだりしています」
地域創生のプレイヤーが地域にいないと感じ、公務員との兼業で社団法人を立ち上げる
吉田が地域創生に興味を抱き始めたのは20代前半のころでした。日本の人口減少の現状について本で読み、将来的には今まで通りの社会を維持するのは難しいことを知りました。大きなパラダイムシフトが起こりそうと考え、人の生活が変わり、仕事が変わるときに「まちづくりのプロ」という立場で、人の役に立ちたいと思い、これらの課題に対して草の根で取り組む決意を固めたのです。
「課題感は若いころから持っていて、公務員として市役所で働きながら、地元の消防団やスポーツ少年団の指導、神社の氏子青年会会長といった地域活動にも参加してきました。
しだいに、県の研修センターでの行政職員が政策を作るにあたっての研修講師なども務めるようになり、1年間、別の市の政策形成の指導に通ったこともありましたね」
同僚とも多様な政策を考え、実行に移す努力を重ねましたが、机上では良いアイデアに思えても実際に実行に移すには、プレイヤーが必要だという現実に直面しました。
「プレイヤーがいないならば、まずは自分がプレイヤーとして行動しようと考え、市役所に兼業の許可を得て一般社団法人を立ち上げました。非営利団体なので無報酬だったのですが、公務員が本務外で活動していることに対して、なかなか周囲の理解を得ることが難しかったです。
成功が確約されていれば受け入れてもらえたかもしれないですが、その時点ではまだ前例がほとんどないチャレンジでしたから、その点からも理解が得にくかったのだと思います。
そこで、自分がこのまま公務員であり続けたときに実現できるであろう到達点と、民間企業に転職して資本を入れながらビジネスとして地域創生の成功事例を作り出して地域に還元するのと、社会を変革するスピードはどちらが早いか考えた末、公務員を辞める決意をしました」
とはいえ、地方創生という社会課題を解決する領域で利益を出している民間企業もそもそも多くはありませんでした。その中で知ったアデコの「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」という日本におけるビジョンや、ビジョンに向かって働く人と、ビジョンに向かって力を発揮できる組織環境を実現しつないでいくという「ビジョンマッチング」の考えが吉田の想いと合致。さらに、転職活動時のアデコの社員との面談の中で、自分のやりたいことに、共感してもらい、受け入れてもらえたことも大きかったと言います。
「三方良し」の精神で、関わる人のメリットだけでなく社会の役に立ちたい
吉田は、面接の際に語った自身の想いがソーシャルイノベーション課という組織を生み出したことからも、価値共創と共に、ビジネスとして結果を出す必要があると強く感じています。
「組織を立ち上げた以上、何らかの成果を上げたいですね。そして、その成果が収益につながっていることも重要です。利益が出れば、一般企業が地域に入っていけるようになりますから。
それが成功事例として経済を循環していけるようになったときこそ、自分の創りたかった姿が形になるのだと考えています」
近江商人の哲学である「三方良し」という言葉が、売り手と買い手が満足できるだけでなく社会に貢献できてこそ良い商売だと述べているように、関わっているすべての人が良い状態になり、ひいては社会の役に立てることをしていきたいと吉田は熱く語ります。
「まずは携わる共創事業を軌道にのせます。地方自治体との共創関係は維持しながらできるだけ早期にその事業から撤退し、地域が自立して歩める状態を目指すのが理想です。実績を積み上げ、その後は新たなテーマで新たな地方創生に携わっていく。そういうサイクルでペースアップしていきたいですね」
現在、吉田は東京都と滋賀県の2拠点で活動しています。月に10日ほどは地元で活動し、そこで地域の課題を吸収して持ち帰り、東京での提案活動に活かしています。公務員としての経験に加え、地域の実情について深い見識を持っていることが大きな強みです。
「地域での活動の際に、シルバー世代の方々としばしば意見が対立したりします。たとえば、草刈りのような作業は『でぼけ』と言って昔から地域住民全体の奉仕の一環として行われていましたが、人が減る中で若い人に以前の時代と同じように参加を働きかけても難しいですよね。
だからマインドチェンジが必要になりますし、地域内のお金の動きをもう一度編み直して、たとえば、草刈りを新たな『仕事』として創出していくこと等が大切です。地域内での雇用を生んで経済を活性化し、若い世代が地域に留まる仕組みを築くことをめざしています」
2拠点生活は、吉田に意外な効果ももたらしました。日々の生活のすべてが仕事と結びついているのは公務員時代も今も変わりませんが、自分のやりたいことに向き合って、創造する時間を持つことができるようになったと吉田は話します。
「公務員時代は、『常に地域のために何かしなければ』というマインドで、休暇中でも仕事に関連する活動を行っていました。アデコに入社してリモートワークができるようになり、滋賀と東京の2拠点で生活するようになってからは、時間の使い方がうまくなったように感じます。
人の役に立つためにしっかりインプットしてから、それを生かしてアウトプットする時間が確保できるようになりましたね。やりがいと生きがいは、より高まっています」
『脱成長』をキーワードに、ウェルビーイングの向上に価値を見出す社会を
自治体との共創事業を全国に広げるには、これからがより重要です。
「ある一つの成功事例が別の自治体に同じように生かせるわけではありません。地域ごとのオーダーメイドの伴走支援が重要であり、そのための共創事業です。
成功事例を積み上げていくことで社会にインパクトを与えられるよう、取り組んでいきたいと考えています」
吉田は、地方創生が実現していけば、人々の生き方さえも転換していくと考えています。その中での重要なキーワードのひとつが、昨今世界的にも話題になった「脱成長」です。
「これまでは、売れるものを大量に作り、大量に消費していく構造で成り立っていました。そういった成長を求める資本主義の考え方が主にあり、成長こそが価値だとされてきました。しかし、これからは、ウェルビーイングの向上にこそ価値を見出す社会になっていくと考えています。
すでに企業においてもESG投資が重視されるようになってきており、人的資本の観点からも、個人の魅力や能力、価値観、さらには社会性がより重要視されるようになるはずです。
そういった価値をきちんと可視化し、社会価値と経済価値を共に高めていくことが、私の考える地方創生の本質です。『脱成長』の考え方を広める使命を、私は仕事を通して果たしていきたいと考えています」
吉田の情熱と洞察力に支えられたアデコにおける地方創生の取り組み。今後も地域社会との共創を通じて、持続可能な未来を築いていくことが期待されます。
※ 記載内容は2023年10月時点のものです
