派遣社員の人生に寄り添う。キャリアコーチという仕事
アデコ株式会社(以下、アデコ)でキャリアコーチとして活躍する長澤。現在地に至るまでには、幾多の壁と決断がありました。
「就職氷河期真っ只中に大学を卒業し、大手警備会社に入社しました。社会貢献度の高い仕事に当初はモチベーション高く取り組んでいたのですが、仕事や職場環境のストレスからメンタルヘルスに不調をきたしたり、体調を崩す社員がいる現実を目の当たりにして。この現状を変えたいという一心で人事部門を志すも、残念ながら希望はかないませんでした。
そこで組織を飛び出し、人財業界へのキャリアチェンジを決意したのです」
キャリアコンサルタントをめざし、人財紹介会社の営業職から一歩ずつ、着実に歩みを進めてきた長澤。複数の人財サービス会社で、キャリアコンサルタントとしての仕事や、取得した産業カウンセラーの資格を生かした仕事をする中で、有期雇用のあり方に変化をもたらした「2018年問題」と言われた労働契約法と派遣法改正が長澤の考えに大きな影響を与えました。
「この法改正の大きなテーマは、派遣社員が自らの意志でキャリアを築いていく、派遣元はそのためのキャリア形成支援を行うというものでした。雇用安定措置の義務化により、派遣社員の方々の長期的なキャリア形成が可能になったのです。働く人々が仕事に対してやりがいや生きがいを感じながら働く──私が新卒で入社した警備会社のときから願っていた実現したい想いです。この変革に、私も深く携わりたいと強く思ったのです。
派遣社員の長期的なキャリア支援のためのこの改正に、アデコはいち早く前向きに取り組んでいました。そんな会社で働きたいと、2021年に入社しました」
アデコのキャリアコーチの役割は、派遣社員が就業先で力を最大限に発揮できるようサポートすること。そのサポートは就業先に関することに留まりません。
「今抱えているお悩みのご相談はもちろん、就業先でのキャリアアップに限りがある場合は、アデコを卒業するという選択肢も含め、職務経歴書の添削からリスキリングの提案まで、あらゆる可能性を共に探ります。その人のキャリアのみにとどまらず人生をサポートすると言える、アデコ独自の体制になっているのです」
答えは対話の中に。派遣社員と共に成長できる仕事の醍醐味
アデコのキャリアコーチとして5年目を迎えた長澤。「支援者というよりは伴走者」というスタンスを大切にしています。その想いを、より強くした印象的なエピソードがあります。
「3カ月の契約更新時期が来るたびに、ご自身のキャリアを深く見つめ直す派遣社員の方がいました。ある時、アデコの無期雇用派遣(※)で働くという選択肢もある中で、『このまま現在の就業先に長く貢献することが、本当に自分の人生の幸せにつながるのか』と、真剣に悩まれたのです」
長澤は、アデコに留まることだけを勧めませんでした。
「これまでの経験を生かせる他の業界や資格取得など、さまざまな選択肢を一緒になって考え、提示しました。ご自身で丁寧に検討した結果、その方は今の就業先で継続して働くことを選択しました。
この経験を通じて、私たちの仕事は、その方の就業先における自己実現だけでなく、人生そのものを背負っているのだとあらためて実感しました」
定期面談では、表面的には課題がないように見える方でも、対話を重ねる中で、本音を打ち明けてくれることがあります。
「『とくに問題ないです』と話す方でも、対話を重ねるうちに本音や本質的な課題が見えてくることがあります。その方が大切にしてきた価値観や課題を共に紐解き、次の一歩を探っていく。こうした対話は、私たちのコーディネーションスキルやフォロースキルが生きる瞬間でもあります。
派遣社員の皆さんとの対話は、私自身にとっても大きな学びの機会となっています。 その方からの言葉に、私自身のキャリアのヒントが含まれていることが多いのです。
相手をサポートしながら自分も成長を実感できる。それがアデコのキャリアコーチの醍醐味ですし、私にとってのやりがいですね」
※ アデコと無期限の雇用契約を結び、派遣先で就業。派遣先での就業が終了した後も、アデコとの雇用契約は継続します
人生に後悔したくないから、やりたいことを全力で──挑戦を続ける原動力
長澤の情熱は、仕事だけに留まりません。キャリアコーチの他に、水泳選手、ボディフィットネス選手という顔を持っています。
「アデコは副業をはじめ、本業以外の仕事や活動といった社員一人ひとりの生きがいも応援してくれるカルチャーがあり、入社後から水泳指導をパラレルキャリアとして始めることができました。そして、3歳から水泳を始めた私が夢見ていたオリンピックの代わりに、年齢別の世界大会であるマスターズに挑戦しようと決意したのです」
世界大会で外国人選手との体格差を実感し、克服のために筋トレを開始したところ、その過程で新たな可能性の扉が開かれました。
「筋トレの指導者からボディフィットネスコンテストへの出場を勧められ、今は水泳のマスターズ選手とボディフィットネス選手として活動しています」
仕事とスポーツの両立を支えるのは、明確な時間管理と気持ちの切り替えです。
「トレーニング中に仕事が入ればたとえば30分と時間を区切って対応し、その後またトレーニングに戻るなど、時間を自らコントロールすることを徹底しています。『仕事のせい』『トレーニングのせい』というような他責にはしないと、心に決めています」
この挑戦を続ける原動力は、30代で経験した、両親との死別にあります。
「両親ががんを患い、10年近く介護していました。50代、60代という若さで両親が旅立っていく姿を目の当たりにし、人の命の儚さを身に染みて知りました。死ぬ間際に『あれをやりたかった』と後悔したくない。だから、『いつか』ではなく『今』やりたいことをやる。それが、私の人生の指針となりました」
その経験は、人生の価値観をも大きく変えました。
「30代という女性にとってさまざまなライフイベントに直面する大切な時期を、私は介護に費やすことになりました。気がつけば40代になり、別の形で自分の人生を楽しもうと考えを切り替えました。子育ての代わりに自分自身を成長させることで自己肯定感を高めるなど、今の自分だからこそ見つけられる楽しさや、やりがいに目を向けられるようになったのです」
人は1人では生きられない。頼って、頼られながら、「どう生きるか」に向き合いたい
長澤が大切にするのは、「今やりたいこと」を最高の形で実現するための、継続的な視点です。
「やりたいと思ったことを、ただ刹那的にやるのではありません。どうすれば一番良い状態で完成させられるかを考え、そのために継続的な努力をします。そうすれば自分に厚みが出て、人生が終わるときに後悔がないと思うから」
そんな長澤でも、常にモチベーションが高いわけではないと言います。
「ガス欠になってしまうこともあります。そんなとき、上司はそれを見逃すことなく、『このままではめざす方向に向かわないよ』と叱咤激励してくれるんです。優しくされるより、私にはそのほうが合っている(笑)。筋トレや水泳でも、必ずコーチやトレーナーをつけて、客観的な指導を受けています」
自分1人では生きていけないと、長澤は言います。
「助けを求めることは恥ずかしいことではありません。前に進むためには、自己開示をして、助けを求めることが大切だと感じています。これも重要なスキルです」
今後のキャリアの目標は、派遣社員へのサポートの質を、人生という広い視野で高めていくことだと長澤は考えています
「これまでは現在と未来のキャリアに焦点を当ててきました。これからは、その方の人生全体、生まれた時から最期の時までを見据え、『どう生きたいか』という根源的な問いにまで寄り添える、そんなキャリアコーチになりたいですね」
では、長澤のように自分らしく輝くためには、何から始めればいいのでしょうか。 その問いに、長澤は自らの経験を重ね合わせるように語ります。
「『今の自分が好きかどうか』を見直すことが大切です。好きであれば、もっと好きになるために今やっていることを積み上げていけばいい。もし今の自分が嫌いなのであれば、なぜ嫌いなのかを考え、どうすれば好きに変換できるのかを探っていく。そして迷ったときには、1人で抱え込まず、誰かの助けを借りることです。
時間は有限で、人生には想定外のことばかり起こります。だからこそ、今やりたいことをやってほしい。それを一つひとつ積み重ねることで、気持ちが上がり、幸せに生きることにつながると思うので」
長澤自身がそうであるように、後悔しないために「今」できることに挑戦し続ける。それこそが、自分らしく生きるための、力強い一歩となるのです。
※ 記載内容は2025年10月時点のものです
