成長と貢献のチャンスだと迷わず手を挙げた、派遣協会との兼務
20代でアパレル業界の営業職とプレスを経験した後にアデコ株式会社へと中途入社した永井が配属されたのは営業職でした。人財サービスの営業は未経験ながら、「自分がどこまでやれるか試してみたい」という思いで努力を重ね、着実に実績を上げてきました。その後、結婚・出産を経て、復職のタイミングで大きな転機が訪れます。
「育休から復職する際、『セールスコンプライアンス部で人員を募集しているけれど興味はある?』と聞かれ、思い切って飛び込んだのが、法務関連の業務に携わることになったきっかけです」
営業とはまったく違う分野であり、法律に関する専門知識も必須でしたが、5年間の営業職での経験を活かして貢献できると確信していたと振り返ります。
そんな永井の現在のポジションは、リーガル&コンプライアンス本部 コンプライアンス室長。さらに、2023年からは日本人材派遣協会(以下JASSA)のコンプライアンス事業部長を兼務しています。
「アデコ株式会社では、労働者派遣・職業紹介・請負という根幹の事業に係る労働関係法令を中心とした法務と、派遣社員の就業に関する業務などを担当するコンプライアンス室の責任者をしています。
2023年4月から兼務を始めたJASSAは、労働者派遣事業の適正な運営及び健全な発展を図ることを目的とした団体組織で、820以上の会員企業から構成されています。
そのため、派遣業界を代表して行う仕事が多いですね。具体的な業務としては、業界の未来を考えた派遣法の在り方の検討や会員企業に向けての法改正に関する情報発信やトレーニングの提供などを行っています」
兼務をはじめてから半年ほどですが、単純に仕事量は倍になった、と笑って話す永井。それでも、派遣業界を代表する団体での、しかもコンプライアンス事業の責任者のポジションに誰か希望する人はいないかと社内で打診があった際、「これは自分が手を挙げるしかない」と思ったと言います。
「派遣業界を代表する団体、しかもコンプライアンス事業に携われるということは、今まで自分がやってきた経験を絶対に活かすことができるし、よいチャンスだと思いましたね。自分のやってみたいと思うことを実現できるかは、自分の心の持ち方次第だと思います。そもそも、出向という働き方自体にも私は興味があり、経験してみたい気持ちもあったため、思い切って立候補しましたね」
また、一緒に業務に携わってきたコンプライアンス室のメンバーたちの存在も大きいと言います。
「私を含めてコンプライアンス室には6名のメンバーがいますが、ほとんどが産休や育休取得経験者で、時間の使い方が上手な人ばかり。そうはいっても、子どもの急病や家族の介護などで急に仕事を休まないといけないこともあります。
そんなときも気負うことなく、メンバー同士が何かあったときはお互いさまなのだから、皆で支え合っていきたいと考えているので、チームとしてもよくまとまっています。
私が常にいなくても、安心して任せられる土壌が既にできている。だからこそ、私自身もこの大きなチャンスを逃したくないと思いました。アパレル業界から転職して以来、ずっとアデコで働いていますが、今の職場にいながら他の組織での仕事や経験ができるチャンスはそうそうありませんから」
異なる2つの組織を兼務することで、見えてくるものがある
JASSAの事務局は直接雇用のメンバーに加え、会員企業からの出向者、派遣社員など、さまざまなバッググラウンドを持つメンバー20名ほどで構成されています。組織としての規模の大きさの違いも働き方に大きく影響していると永井は語ります。
「多くの会員企業からなるJASSAは団体としては大きいのですが、実際に業務に携わる組織の規模や人員数は弊社よりもずっと小さいのです。組織が小さいからこそ、メンバー一人ひとりが担当する業務は多岐にわたります。
たとえば、何かを作るときには、自分の専門業務だけでなくスタートからゴールまでいろんな人たちと一緒に進めていく。まさにスタートアップの組織にも近い感じで、とても新鮮です」
業務の住み分けが明確でない分、タスクの範囲も非常に広い。中には今まで経験したことのないタスクもあり、それも新たな学びの機会になっていると永井は言います。
「あとは意識の変化ですね。兼務する前は、『顧客と会社にとって一番よい方法は何か?』という考え方でしたが、JASSAでは『派遣業界全体にとってどうしていけばいいのか?』『今後の社会を見据えてどう変えていけばいいのか?』というように、より大きな視点で物事を見られるようになりました」
会社のことも把握しつつ、JASSAで勤務することで一層視野が広がったことは、永井にとって大きな学びになっています。
「今までの経験をJASSAでどう活かすか、JASSAで考えたことを自社で展開したらどうなるかという2つの視点を持つことで、どちらにとってもプラスになるように働きかけることができるのは、兼務の特権であり魅力だと捉えています」
たとえば、自社で起こっていることは、他の派遣会社でも起こりうること。そう考えれば、JASSAとして何をしたらいいのかが自ずと見えてくる。他の派遣会社にとっていいことは、自社にとってもいいことであり、さらには派遣業界全体の向上へとつながると、永井は捉えています。
人生100年時代を見据え、さらなる知識を習得するためにあらためて大学で学ぶ
アデコとJASSAの兼務により、目まぐるしくも充実した日々を送りつつ、さらには大学にも通い学びを深めるなど、自身のスキルアップにも注力し続けている永井。大学に通いはじめたきっかけは、専門分野であるコンプライアンスの知識を深めることではなく、さらに別の動機があったと言います。
「人生100年時代。『自分は一体いくつまで働くんだろう?』と考えてみたら、やっぱり元気で働けるうちは働いていきたいと思ったのです。もしかしたら、定年制も近いうちになくなるかもしれません。そうだとしたら、少なくとも70歳くらいまでは働くだろうと。
そのためにも、この先必要な知識や自分の興味がある分野について学んでおきたいと考えたのですが、それがITの領域でした」
たとえば、世の中にスマートフォンが登場してからほんの10数年の社会の変化を振り返ると、これから先の10〜20年後は一体どうなっているのだろう。そう考えるとワクワクするしITについて一通り学びたいと思ったと、笑顔で語る永井。将来的には起業も視野に入れていると言います。
「私の娘は将来農業をやりたいと言っているのですが、センサーを使った農地の管理やドローンでの水やり、ピンポイントで農薬を散布するなど、既にITを活用したスマート農業は始まっています。労働力人口も減っていきますし、これからの未来にITは不可欠です。
つまりITの知識があれば活かせる場はきっと多いはずです。どのような分野にも言えることですが、知識は自分にとって武器にはなるけれど邪魔にはなりません。だからこそ、きちんと勉強して、今仕事にしていることとは別に、新たな知識を身につけたいと思ったのです。学ぶこと自体、非常に楽しいですし!」
そんな永井には、中学生と高校生の子どもがいます。
「子どもたちに対して、『私はこれから大学に行くから、あなたたちも将来やりたいことの選択肢を広げるために勉強しておきなさい』と話してきた手前、絶対に私も卒業しないといけません。自分が言ったことには責任を持ち、有限実行する姿を子どもにも見せないといけないな、という思いがモチベーションにつながっていますね」
学業と仕事と家庭。社会人としてそれぞれをきちんと両立していくためには、ある程度、時間的な余裕が必要だと永井は語ります。
「編入制度を使って2年間で卒業することもできましたが、余裕をもって学ぶ時間を確保したいと思ったので、4年制を選択しました。それでも実際は日々ギリギリの状態で、『ちょっと考えが甘かったかな』と思うこともあります。
ですが、自分で選択したからには最後までやり遂げたいですね。授業はオンラインが中心なので、主に土日、それに朝の時間をうまく有効活用しています」
大切なのはやはり「人」。今後も人に関わる仕事で社会貢献していきたい
大学での学び以外に、永井が日頃から心がけていることは、多くの人たちとの交流です。
「どんなに社会の姿が変わっても、最終的に大切な存在はやはり『人』だと思うのです。だからこそ、仕事はもちろん、プライベートでも人との関わりを大事にしていきたいと考えています。
私は元々めんどくさがり屋なところがあり、プライベートでは出不精になりがちなので、意識して、直接会って話す機会を作るようにしています。さまざまな人たちとつながることで得られるものは少なくありません。人との関わりは、生きていくことそのものだと考えています」
「人財=人間」に携わる仕事を続けてきたからこそ、やはり何よりも「人」とのつながりを大切にしたいと永井は語ります。
「上司から言われた、『MBAよりPTA』という言葉がとても印象に残っています。まさにその通りで、娘が通う高校でPTAの役員をしているのですが、PTA活動はボランティアですから、さまざまな人たちとの関わりの中で、給与をもらってする仕事では経験できない経験ができる。人との関わり合いの中で学んだり成長したりすることは本当に多いと実感しています」
いつもポジティブに、前を向いて進み続けている永井。そんな永井のこれからの目標の一つが、派遣業界全体への貢献です。
「派遣という働き方は雇用形態の多様化であり、働き方の選択肢の一つだと考えます。JASSAにいるからこそ、派遣という働き方の魅力をひとりでも多くの人に広く伝えていきたいですね。
自身のライフやキャリアプランにあわせて働き方を主体的に選べるということはとても大事なことだと思いますし、選択肢の一つとして、派遣を選ぶ人が増えてくれるとうれしいです。そのために何をすればいいか考え続けていきたいと思っています」
派遣という働き方の認知を広げることで、多くの人が働きやすい環境で、生き生きと働くことができる社会づくりに貢献していきたい──永井の貪欲な挑戦は、これからも続いていきます。
※ 記載内容は2023年12月時点のものです
