中東のAI活況市場の下、プラント自律運転の実現に奔走する
2023年9月より中東の営業拠点に出向し、アラブ首長国連邦にてAI・データ解析のコンサルタントとして働いています。
私たちが担当する中東地域のお客さまの7割は石油関連企業。その多くが、砂漠、海上油田など過酷な環境下でのプラント操業を行っており、遠隔化・無人化により人的リスクの削減・生産性向上を目指すAutonomous operation(自律運転)を経営計画として掲げています。様々なIT/OT技術がその実現手段としてある中で、特にAIの需要は活況で、企業にとどまらず国家戦略としてAIが中核に据えられています。
私の仕事内容として、2つの役割を兼任しています。
1つは、当社のIA2IA(※)のコンセプトのもと、中東のお客様の自律運転の実現に向けて提案をまとめる仕事です。
※ Industrial Automation to Industrial Autonomy(自動化から自律化への移行)の略。YOKOGAWAが製造業の未来への道のりとしてお客さまとともに描く指標
具体的には、お客さまのトップや現場を訪問して現状の課題を調査するとともに、自律化に向けて実現したいことをお聞きすることから始まります。その中で特にAIソリューションが適していると判断された案件については私が引き継ぎ、導入価値の試算、提案書作成を行います。
もう1つは、Global AI CoE(Center of Excellence)の一員として、中東だけでなくグローバルのお客様へAIソリューションの提案支援を行う仕事です。本CoEは、AI市場が活況な中東で蓄積された知見を世界中の営業拠点へ展開することを目的に、今年度から設立されました。その初期メンバーとして、他拠点の営業支援や、提案ノウハウ共有のための仕組みづくりを担当しています。
現在、中東事業所初の女性駐在員として、さまざまな挑戦をしています。「提案書を“昨日”持ってこい」と言われるほど非常にスピード感を求められたり、お客さまサイトでは女性用の設備が限られているなど、大変と感じる場面もあります。
しかし、ここでしかできない経験ができていることが大きなやりがいになっています。砂漠の真ん中にある製油所や海上プラットフォームへの訪問、AI担当代表者としてのお客さまトップとの協議参加などは、他ではめったにできない体験です。
プライベートでは、モスクを訪れたりアラビック料理を楽しんだり異文化に触れられることや、逆に日本人だからこそドメスティックに他社の駐在員の方と繋がれることは大きな魅力です。また連休時には、ヨーロッパやアフリカ圏へアクセスしやすい立地のため、他社で海外赴任中の夫と旅行を楽しむなど、充実した私生活を送っています。
やりたいことが見つからなかった学生時代。手に職で活躍の場を見出した新人時代
学生時代にはまさか10年後にこんな仕事をしているとは想像もつきませんでした。大学入学は、高校生の時に英語学習で海外のビジネス紙を読んでいた影響で、漠然と「海外で記者になりたい」という想いを抱き大学は文系学部に進学しました。しかし、ジャーナリズム系の授業を受ける中で、自分には向いていないと感じるようになりました。
やりたいことが見つからない中、必修で受講した統計学に面白さを感じたことと、手に職をつけられるだろうという漠然とした見込みから、3年時に理系転向を決意して知識情報学系の研究室に入室することにしました。
情報系の学生として就職活動を始めた際、プログラミングやデータ解析のスキルを活かせる業界は金融やIT、製造業、コンサル、建設業など多岐にわたっていました。さまざまなインターンを経験する中で、都心の金融系やIT企業といったキラキラしていそうな仕事よりも、工場やプラントといった泥臭い現場系の仕事の方が自分に合うと感じました。そんな時に横河電機と出会ったのです。
情報系の学生の視点からみた横河電機の魅力は、特定のプラントだけでなく、石油・化学・自動車などさまざまな製造業種のお客さまデータを扱える点です。業種が違えば課題や扱うデータも異なるので、好奇心旺盛な人にはぴったりな仕事だと感じました。
また、海外売上比率が7割以上と高いため海外で働きたい想いも実現できる環境や、三鷹という比較的郊外で自宅から満員電車に乗らずに通える会社の立地も、長期的なキャリアを考える上で重要な決め手となりました。
入社後は、プラント情報を活用した新規ビジネス立ち上げの部署に配属。ユーザー体験をベースに企画内容をまとめることが当初のミッションでした。
具体的には、ヒアリングに伺ったお客さまオペレータの困りごとや、自らプラントデータを解析する中で得られた苦労や課題を元に、データ解析システムの要件を決めていきました。
最初はお客さまの業務内容もアウトプットの出し方もよく分からない状態で、できることは議事録を取ることくらいでした。
しかし、ある時、学生時代に経験のあったR言語を活用してグラフ作成を楽にする簡単なツールを作ったところ、部内のメンバーやお客さまに喜ばれたことがありました。この時初めて「自身の学んだことが人を喜ばせる武器になる」と感じました。
その後、開発フェーズに移った際も、製品実装でのプログラミングスキルの活用や、海外拠点との製品開発で英語を生かすなど、新人ながらに学んだことを生かせる仕事を多く恵んでもらいました。こういった適性を見抜いて若手に活躍の場を与えてくれるところも、当社の魅力の1つと感じます。
「いつかは海外で仕事をしてみたい」。データ解析の専門性で叶えた海外駐在
ひとつの大きな節目を迎えたのは、2019年のことです。企画したデータ解析システム「Digital Plant Operation Inteligence(DPI)」のリリース後、国内の営業子会社である横河ソリューションサービスに出向してDPIの販売推進を担当することになりました。「作る仕事」から「売る仕事」に変わったのです。
作り手の視点からするとどうしてもシステムの仕様を説明したくなりますが、お客様を訪問する中でそのような「モノ売り」では喜ばれないことに気づかされました。そこで、DPIを活用し、お客さまと一緒に課題に取り組むコンサルティングサービスとして展開することにしました。
その中で大事にしていたモットーは、「お客さまを工場のヒーローにする」ということです。DPIを通じてデータ解析をしていただくだけでなく、お客さま自身が工場の課題解決の主役となれるよう支援していきました。その結果、品質改善や歩留まり向上という成果に加え、お客さまの若手社員にとってDPIが課題解決の有効な武器となり、上司の方々からもそれが高く評価され喜ばれるソリューションとなりました。
私はこうした取り組みを通じて、4年間で60工場以上のお客さまと一緒に課題解決に向き合う機会をいただきました。自分の開発したものでお客さまに喜んでいただけた経験は、まさに人生の宝物です。
2023年には国内外のDXコンサルを行う横河デジタルへの出向となりました。工場現場だけでなく経営層との関わりも増え、これまでのOT(※)分野に加えてIT分野、さらには国内市場から海外市場までと業務範囲が大きく広がりました。
※ Operational Technology(オペレーショナルテクノロジー)。工場や発電所などの制御・運用技術の総称
この頃、夫の海外赴任が決まり、キャリアの方向性を考える転機となりました。横河デジタルで海外案件を担当する機会を得たこと、夫が不在で自由に動ける今の時期だからこそできること、そして再燃した「いつかは海外で仕事をしてみたい」という想いを総合的に考え、海外赴任を希望することにしました。
当グループには12月にキャリア申告制度があり、そこでデータ解析コンサルの強みをベースに赴任の希望を出したところ、上司の目に留まり、中東の営業拠点にて現在のポジションに就くことが決まりました。
「漢気がある」横河。お客さまの本質的な課題に向き合うソリューションの提案へ
横河グループには「投げ出さない」文化があり、海外でもそのフィロソフィーは受け継がれていると感じます。自分事で考える、ないものは作る、最後まで伴走する、という姿勢は、お客さまからも高く評価されています。
私は「漢気がある」という言葉で表現していますが、そういった生き様がかっこいい先輩・同僚は私の憧れであり、自分もそうありたいと思っています。そんな方々と一緒に仕事ができることは横河の1つの魅力ですし、今後も大切にしていきたい価値観です。
横河グループにおけるIT/OTソリューションは、最後まで投げ出さずにお客様の期待に応えるための強い武器。重要なのは、これら自体は目的ではなく、お客さまの課題を解決するための手段だということです。お客さまがなぜ困っているのか。提供するソリューションがどう役立つのか。本質の部分を理解して初めてお客さまの利益に貢献できます。そのためには、IT/OTエンジニアは技術の専門家である前に、お客さまの業務内容や製造工程の専門家でもある必要があると考えています。
最近の実績として、当社は世界で初めてAIによる化学プラントの自律制御に成功しました。これは、当社の「FKDPP(Factorial Kernel Dynamic Policy Programming)」という独自のAIアルゴリズムを活用したものです。直近では、中東においても複数のプラントで成功事例を挙げ、無人化運転・プロセス安定化に貢献しています。
今から50年前に世界初のDCS(分散形制御システム)として「CENTUM」が当社から産声をあげたように、世界初の取り組みを生み出す気概は横河電機のDNAとして受け継がれています。これからも、お客さまの期待を超える世界初のソリューションをグループ一丸となって生み出していければと思います。
最後に、学生の方々へ。夢や目標を持てと言われることが多いかもしれませんが、学生の数年間で「自分のやりたいこと」を見つけるのは案外難しいことだと思います。それよりは、「仕事は他人のためにするもの」。「自分のやりたいこと」より「武器になること」を磨き、誰かの役に立てられることの方が重要と私は考えます。武器となる専門性を持っていれば、しなやかにキャリアを選択しやすくなると身をもって感じます。
その上で、当社のように若手であってもレアな経験を積める環境で自分のやりたいことを見つけていく――そんなキャリアも面白いのではないでしょうか。
※ 記載内容は2025年7月時点のものです
