アリの付着機構から生産技術へ。研究室で培った「データで改善を回す」姿勢
学生時代に最も力を注いだのは、研究室での活動です。クリーンルームをはじめとする最先端設備を活用し、情報・医療・バイオ分野での応用が期待されるマイクロロボットやマイクロマシンの研究に取り組んでいました。中でも注力していたのが、マイクロロボットの開発です。昆虫などの微小生物が持つ優れた機能に着目し、壁面歩行や水面移動、さらには羽ばたきによる飛翔といった、「小さいからこそ実現可能な動き」のメカニズムを工学的に解明。その知見をもとに、ロボット上での再現をめざして研究を進めてきました。 私はその中でも、アリの付着機構に着想を得て、液滴の表面張力を活用しながら、平滑な壁面や天井面を自在に移動できるロボットの開発に取り組んでいました。 脚を使って“貼り付くように動く”——そんなスケールの小ささならではの移動様式を、工学的に再現しようと試みていました。
中でも力を注いだのが、脚部に取り付けるパッドの開発です。クリーンルームにこもり、表面処理の条件をわずかに変えながら、付着力の変化を一つずつ確かめていく。地道な試験を何たびも積み重ねる日々でした。 当時は、現在の設備設計業務とは直接結びつかない研究だと感じることもありましたが、振り返ってみると、要素技術を積み上げていくプロセスはまさに今の仕事そのものだったと感じています。データに基づいて仮説を立て、検証し、改善につなげていく——その姿勢は、この経験を通じて自然と身についていきました。
就職活動を始めた当初は、「ものづくりに関われること」という漠然とした軸を持っていました。転機になったのは、横河マニュファクチャリングのインターンシップです。生産技術職という仕事を知り、開発から設計、組み立て、さらには保守まで、ものづくりの一連に関われる点に強く惹かれました。
もともと、部分的に関わるよりも、0から10まで一貫してやり切りたいという思いがあります。現場の課題を起点に構想を描き、形にし、その後の運用や改善まで責任を持つ——そんな働き方ができる生産技術職は、自分の志向にぴたりと重なりました。
加えて、工程ごとに扱う装置や技術が大きく異なるため、常に新しい知識を吸収し続ける必要がある。裏を返せば、飽きることなく成長し続けられる環境でもあると感じました。こうした魅力から、生産技術職に従事したいという就職活動の軸が次第に明確になっていきました。
研修から実践へ。OJTで学んだ「挑戦と安心感のバランス」
入社後は段階的に研修が進み、最初の3週間はYOKOGAWAグループ全体研修で企業理念や価値観を学びました。その後の横河マニュファクチャリング単体での研修では、生産方式やPDCAの考え方など、ものづくりの基礎を体系的に習得。 さらに、旋盤やフライス盤、溶接といった機械加工に加え、ソルダリングや圧着といった組立工程も実際に体験し、製造の流れ全体を身体で理解していきました。
3カ月目からは横河ソリューションサービスでのサービス研修に参加し、ダムや化学プラント、製紙工場などを訪問。自社製品が現場でどのように使われ、どのように安定稼働が支えられているのかを、肌で感じる機会となりました。 仮配属を経て、8月からは8カ月間の製造実習へ。品質がどのように現場で守られているのかを体感すると同時に、配属予定ラインでの実習だったこともあり、その後の改善活動にも自然とつながっていきました。製造部門の方々とのつながりを築けたことも、大きな財産になっています。
実際の配属は2年目の4月です。そこからはOJTを中心に仕事を学んでいくことになります。配属直後には、ライン構築プロジェクトのなかで一つの装置を任されることになりました。装置を一から作り上げる過程を通じて、メカ設計の基礎を身につけていく——それが最初の仕事であり、同時にトレーニングでもありました。
もちろん、不安がなかったわけではありません。それでも、先輩が丁寧にサポートしてくれたことで、少しずつ理解を積み重ね、最終的には無事に導入までやり遂げることができました。それ以上に印象的だったのは、若手であっても積極的にチャンスが与えられる環境です。 入社前は、まず先輩のサポートを通じて経験を積み、その後に装置を任されるものだと考えていました。しかし実際には、配属直後から主体的に関わることができ、自働機の立ち上げという貴重な経験をOJTの中で得ることができました。
とはいえ、決して一人に任せきりにされるわけではありません。困ったときには上司や先輩がレビューや相談に乗ってくれますし、トラブルの際には部署を越えてサポートが得られる風土があります。 こうしたセーフティネットがあるからこそ、安心して一歩踏み出せる。挑戦を後押ししてくれる環境が整っている点は、いい意味で想像を超えていました。
主力製品の心臓部を支える自働化装置。現場の声を形にする、ものづくりの達成感
現在所属しているのは、GSCM本部グローバル生産技術センターです。
私のチーム(課)では、グループ全製品の生産活動を支える自働化技術の開発を通じて、品質・納期・コスト(QDC)の革新をグローバルに実現することをミッションとしています。自働化のベストプラクティスを海外拠点へも展開しながら、コア工程を中心に省人化と品質向上を進めています。
ただ人の作業を機械に置き換えるだけではなく、機械でも品質を確実に担保し、リードタイム短縮や安定稼働まで実現する——そのために、工程ごとの特性に踏み込み、要素技術の開発から条件最適化まで担っているのが、この仕事の特徴です。
その中で、2025年にはインドネシアの生産拠点に赴任し、生産性向上施策や新製品案件にも関わりました。国内とは異なる設備環境や人材構成の中で改善を進めた経験は、「どこでも再現できる技術とは何か」を考える契機になっています。現在、グローバル展開を前提に技術を設計していくうえでも、この経験が大きな支えになっています。
私自身の業務は、自社工場における生産設備の立ち上げを軸に、既存工程の課題やニーズを洗い出し、最新技術と自らのアイデアを組み合わせた自働機の設計・導入を行うことです。
現在は、特定案件のリーダーとして、課題整理から要求仕様の策定、構想検討までを主導しています。対象は、主力製品である伝送器の中核となるセンサー部品の組立工程です。
この工程は、位置ズレの許容が±0.02ミリときわめて厳しく、部品自体も繊細で損傷リスクが高い。そのため、長年にわたり熟練作業者の経験や勘に依存してきた領域でした。
そうした工程を自働化し、作業者への依存を低減しながら増産にも対応できる体制を構築する——それが現在取り組んでいるテーマです。
また、展示会や日々の情報収集で得た最新技術を自社工場へ展開することも、重要な役割の一つです。海外拠点との連携も継続しており、赴任時に関わった案件については、現地で円滑に進むよう、進捗確認や課題整理、技術情報の提供といった支援も行っています。
入社8年目となり、組織の中では中堅層にあたることから、先輩と後輩の間をつなぐ役割も意識しています。上位者の意図を踏まえて方向性を整理しつつ、後輩が動きやすいよう論点や段取りを整える——そんな役回りを担う場面も増えてきました。
成功体験という意味では、一つひとつの設備導入が、そのまま自身の積み重ねになっています。自分のアイデアや工夫が最終的に設備として形になり、現場で実際に使われて、作業者の負担軽減や品質向上に貢献する。その瞬間に、仕事の手応えを強く感じます。
もともと工作や美術といった創作活動が好きで、「考えたものが形になる」ことにおもしろさを見出してきました。その感覚が、今の仕事にも自然につながっているように感じています。
大型案件になると、構想から設備の引き渡しまでに2年以上を要することもあります。その分、完成したときの達成感はひときわ大きなものです。
生産技術の直接の“顧客”は製造現場の方々であり、その声を直接聞きながら改善に反映できるのも、この仕事の魅力の一つです。「作業が楽になった」「助かった」「次も期待している」——そうした言葉をいただけることが、何よりのやりがいにつながっています。
設備を導入して終わりではなく、安定稼働に至るまでのプロセスの中で、品質・納期・コスト、さらには安全性まで改善効果が可視化されていく。成果が実感しやすいのも特徴です。甲府工場では、自分が導入に関わった装置が日々稼働している様子を目にすることができます。その光景を見たとき、この仕事に携わってきてよかったと、あらためて感じる瞬間があります。
「学び続けられる人」と共に挑みたい、グローバルに広がる生産技術の可能性
短期的な目標としては、これまで幅広く学んできた電気設計・メカ設計・ソフト設計のスキルを、さらに深めていくフェーズに移りたいと考えています。 入社当初はプログラミングも含めて分からないことが多く、とくにラダープログラムは学生時代に学んでいた言語とは大きく異なり、戸惑うこともありました。それでも、社内の学習機会や先輩のサポートを通じて基礎を固め、実際に手を動かして試行錯誤を重ねる中で、少しずつ理解を深めてきました。
こうした経験を踏まえ、今後はより難易度の高い自働化にも踏み込み、技術の解像度を一段高めていきたいと考えています。装置を「作れる」だけでなく、品質を安定して担保し、リードタイムを短縮し、現場で確実に稼働し続けるレベルまで作り込む。そのために、要素技術の開発や現象の本質理解、データに基づく分析力といった技術力をさらに磨いていきたいと考えています。
中長期的には、海外拠点での経験も生かしながら、引き続きグローバルに関わる業務に携わっていきたいと考えています。異なる環境で得た知見をもとに、「どこでも通用する技術」として再構成し、各拠点へ展開していく。その一方で国内拠点の理解も深め、両者を俯瞰できる視点を持ちたいと思っています。 そうした視座を持つことで、課題の発見から企画・提案、さらにはプロジェクトの牽引まで担える人材へと成長していきたいと考えています。国内で培った品質と安全のノウハウと、海外での実践経験を掛け合わせながら、自働化技術をグローバルに広げていける存在をめざしています。
そして、これから一緒に働く仲間には、「今できること」よりも「これからやってみたいこと」に目を向け、挑戦できる人に来てほしいと思っています。 実際、私自身も最初からすべてができたわけではなく、分からないことは周囲に教わりながら、試行錯誤を通じて身につけてきました。ときには思い通りに動かないプログラムに向き合いながら、原因を考え、改善していく——そうした積み重ねが理解につながっていったと感じています。
必要な知識の多くは、こうした実務の中で自然と身についていくものです。設計やプログラミングの経験があればスタートしやすい側面はありますが、決して必須ではありません。それ以上に大切なのは、周囲とコミュニケーションを取りながら素直に学び続けられること、そしてものづくりそのものを楽しめることだと考えています。
技術の進歩が速い時代において、学び続ける姿勢そのものが大きな価値になります。生産技術は工程ごとに求められる仕様や使う技術が大きく異なるため、常に新しい領域に踏み込み、課題を解いていくことが求められます。 だからこそ、自分のスキルに安住することなく、新しいことに挑戦し続けられる人。そうした人が、この環境で大きく成長し、活躍していけるのではないかと感じています。
