売上ではなく“基盤”を創る。700人の情熱を束ねるPMOの使命
私が現在携わっている「HOPESプロジェクト」。これは、YOKOGAWAの見積・受注から製造、出荷、請求までの全プロセスを支える基幹システムを次世代のERP(統合基幹業務システム)へと刷新する大規模な取り組みです。2021年にスタートし、2025年にIT戦略本部グローバルアプリケーション・データマネジメントセンターHOPES部という名称になりました。YOKOGAWAは、「自律と共生によって持続的な価値を創造し、社会課題の解決をリードする」をモットーに、効果的な「つながり」を進め、統合化・自律化・デジタル化による「全体最適」の価値を生み出していきます。HOPESプロジェクトは、中期計画「Growth for Sustainability 2028(GS 2028)」の基本戦略である「経営・事業基盤の強化」に大きく寄与するプロジェクトです。
当プロジェクトは、外部パートナーを含め約700人体制という大規模なもので、もともとスクラッチ開発によるシステム運用時代から携わってきた約30名のメンバーが中心となってGo-liveをめざして進めています。
今回の刷新は、単なるソフトのバージョンアップではありません。現行バージョンSAP ECC6.0から新しいS/4 HANAへの移行という大規模な規格変更を伴います。これまで私たちが大切に守ってきた独自仕様(スクラッチ開発)という過去の資産をあえて手放し、世界標準のパッケージに業務を合わせる「フィット・トゥ・スタンダード」への大転換です。YOKOGAWAが世界で戦い続けるための、盤石な土台を創り直す──それをミッションと捉えて体制を整えています。
この刷新は、グローバル展開における価値も大きいものです。オペレーションを汎用化することで、全世界約70拠点に跨るグループ会社全体でも同じマスタを使った業務オペレーションが可能になります。受注売上を直接伸ばす取り組みではありませんが、工数削減や原価削減といったコスト面で当社グループに大きく貢献する仕組みを構築しています。
私自身はPMO(プログラム・マネジメント・オフィス)として、システム側のプロジェクト管理を担当しています。プロジェクトには要件定義、システム設計、開発、テスト、インフラ設計・実装というフェーズがあり、並行してユーザートレーニングや既存システムから新システムへのデータ移行も進めています。
その中で、私はシステムに関連するアクティビティの品質・納期・コストの管理、進捗管理を行っています。各フェーズ毎の納期に間に合わせるようスケジュールを調整し、プロジェクト全体を円滑に進めることが私の役割です。
文化を変える挑戦──“フィット・トゥ・スタンダード”導入の苦労と決意
私は、1999年にYOKOGAWAグループの情報子会社に入社し、スクラッチ開発保守から始まり、SAPの開発保守とこれまでYOKOGAWAの基幹システムの歴史を見てきました。2012年にSAPシステム導入プロジェクトへ参画のため本社へ出向し、2016年には部署のメンバー全員で本社へ転籍。2018年頃には、パッケージに独自のカスタマイズを施した現行のSAPシステムをすべてのグループ会社に導入完了を果たしました。
しかし、標準のSAPをそのまま使った方がコストの削減に貢献できることや、今後のパッケージのバージョンアップもスムーズに行えるという観点から、パッケージのスタンダードに合わせていくフィット・トゥ・スタンダードの考え方がトレンドへ。弊社もそのトレンドに則り、フィット・トゥ・スタンダードの重要性を理解した上で、システム刷新にとどまらず、抜本的に業務を変革すべく、プロジェクトが動き出したのです。
しかし、立ち上げ当初は本当に苦労の連続でした。仲間も少なく、現行システムの方も並行してやっているので、新しいシステム導入にリソースを割けない。さらに、「業務に合わせてシステムをカスタマイズすべきだ」という根付いた文化をなかなか変えられず、協力体制が得られず、業務とITの衝突の毎日で、会社の経営陣もそこに対してあまり注力してもらえなかったというのが実情でした。
逆風を追い風に。全社を巻き込む熱量で、AI活用とDXにつながる未来へ
2025年度からプロジェクトのオーナーが変わり、関係するステークホルダーを巻き込み、また以前プロジェクトに参加していた方を呼び戻し、その結果、全社で「HOPES」の名を知らない人はいないほど知名度が上がってきました。
プロジェクトに対しては、期待のみならず、厳しいお声も多い現状ですが、こうした声が聞けるようになったこと自体前向きなことだと捉えています。寄せられる不安や課題の一つひとつに誠実に向き合い、対策を打つ。その積み重ねが、いずれ信頼に変わるはずです。そんな想いでローンチに向かってチーム一丸で走っています。
現在、プロジェクトは全体の50%程度まで進行しており、ITのプログラム開発とテストが完了すれば50〜約60%に到達する見込みです。しかし、そこからが本当の正念場だと考えています。すでに約70ある拠点をグローバルワンインスタンスにて実現しているため、ダウンタイムを最小限に抑えながらデータを一斉に入れ替える必要があるからです。徹底したプランニングと繰り返しのデータ移行訓練と、万が一のトラブルへの対応、各リージョンが持っている周辺システムとも連携など、まだまだ大きな山が待ち構えています。
このプロジェクトを通じて私が得た最も大きな学びは、報告の重要性です。当プロジェクトはこれまでとは規模感がまったく異なり、自分の力だけではどうにもできないことが数多くあります。一人で抱え込むのではなく、チーム全体で課題を共有して解決していく。この姿勢が、大規模プロジェクトを成功に導く鍵だと実感しています。
Go-live向けて道のりはまだ長いです。しかし、システムが刷新されれば、その先には大きな可能性が広がり、今後のAI活用やDXにもつなげやすくなるはずです。いずれは全社のビジネスを支える基盤として、しっかりと機能させていきたいです。
世界を舞台に、ITの枠を超える。「ゴーライブGo-live」の先に待つ未来
YOKOGAWAのIT部門のおもしろさは、圧倒的なグローバル環境にあります。英語が得意でなくても、会議で発言し、実践の中でスキルを磨いていく。そんなタフな環境がここにはあります。
また、いろんなタスクを経験でき、世界最先端のナレッジやスキルが身につく機会が豊富という点も魅力です。技術的な観点で言うと、多くの企業が導入しているSAPのスキルを身につけることができ、使い方やカスタマイズの仕方を身につけておけば今後の大きな武器になるはずです。さまざまな人とのコミュニケーションを通じてYOKOGAWAの受注、生産、エンジニアリング、購買、出荷、請求までの業務プロセス全体を学べる環境もあり、自分のスキルを伸ばすという点ではとても良い環境だと思います。
業務面でのフォロー体制も整っています。プロジェクトを進める中でいろんなワーキンググループに所属して動いていくため、専門的な知見が必要なところはチーム内のエキスパートに聞いて知識共有もできます。また、パッケージ御大でもあるSAP社との連携で、難航する課題も解決しやすい環境があります。
そんな当社のIT部門ですが、私たちが求めているのはSAPの知見はもちろん「自ら動いて情報を掴みに行く」姿勢を持った仲間です。そして、プロジェクトが完遂した後は海外の拠点、具体的にはアジアリージョン、ヨーロッパリージョン、北アメリカ、南アメリカ、中東リージョンなどに、システムをうまく浸透させていくために海外駐在のケースも出てくると考えています。Go-liveまでがゴールではなく、Go-live以降のシステム維持も視野に入れて取り組んでいただきたいと思っています。
実際に、プロジェクトメンバーの中には、米国、欧州やアジアに数年赴任し、ITスキルだけでなく現地のビジネスを深く理解して成長した人間がたくさんいます。そんなIT人財を、YOKOGAWAでは、“BizTech Specialist” と命名し、業務知見を持ちながらも、先端技術の活用提案ができるITのプロフェッショナルとして、ビジネスの最前線で活躍する。そんなキャリアパスがYOKOGAWAにはあります。なお、早期立ち上がりのため業務・IT実習を含めた手厚い育成プランも用意しております。
「システムが新しくなった」だけで終わるプロジェクトにはしたくありません。その先の受注や売上、そして世界の産業にどう貢献できるか。巨大な変革の熱量を感じながら、私たちと一緒に新しいYOKOGAWAの歴史を創りませんか。
※ 記載内容は2025年12月時点のものです
